誤解されるフォント – 創英角ポップ体

これまで、このブログではさまざまな日本語フォントについて取り上げてきました。

多くのところで使われているフォントといえば、創英角ポップ体の話題を避けては通れません。

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マイクロソフト Office に標準で搭載されているフォントということで、Windowsユーザであれば誰もが一度は目にしたことがある、そして何の気なしに使ってしまったことがあるフォントだと思います。

 

しかし、フォントというのは、話し方やファッションのように、それぞれに目的があって使い分けるためのもの。

その場その場で、もっともふさわしいフォントは何か? を考えるのが本来のありかたです。

 

創英角ポップ体の場合、なんとなくパソコンに入っているから、太字で目立たせたいから、といった理由で使われてしまっている、というのが正直な印象。

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では、創英角ポップ体の本来の目的とは何なのか?

 

実は、それはしっかりとフォントの名前に示されています。

ポップ体のPOPとは「Point of Purchase」、つまり商品の購買意欲をそそるための広告の意味。
あの「HG創英角ポップ体」の元となった直筆生原稿を見た – デイリーポータルZ

レジの売り上げを管理するシステムをポス(Point of Sales)と言うのと同じ。

わたしのまわりで最近よく聞くところで言うと、コーチングツール・Points of You をPOYと略すのと同じです(笑)

 

それはともかく、広告だからこそ、わざと個性的な、目を惹くデザインがされているフォント。

なので、たとえばこんなのは、正しい創英角ポップ体の使い方ということになります。

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東京で見かけた、イオン系のスーパーマーケット・まいばすけっと。この看板がなければ、外壁や電灯からはスーパーとは気づけなさそう。

 

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こちらは…どうでしょう? なんとなく親しみは感じる気がします。それで購買意欲をおぼえる人がいるかもしれませんものね!

 

しかし残念ながら、商品とは関係のない場所で使われて浮いてしまっていることが多い創英角ポップ体。

その点で、もっとも誤解されている日本語フォントであると思います。

 

もちろん、フォント自体が悪いわけではありません。

そうと知らずに、うっかり本来の目的から外れた使い方をしてしまった人が悪いわけでもありません。

 

それはたとえば、セイヨウタンポポなどの外来種が在来種を駆逐して広がってしまったように。

いまさら誰が悪いと言ってみても仕方のないことではないかと思うのです。

 

ただ、強いて言えば、ポップ体というその名前が、そもそもの誤解のはじまり。

いまや「Point of Purchase」ではなく「Popular」のほうが通りが良いほど一般に人気のあるフォントになってしまったことが、歴史の皮肉と言えるかもしれません。

 

まさに文字通り、名は体を表す。

 

Published by mizuho

——策を練るのが策士なら、探索するのが探索士だ。

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