四国の山と海を感じる – 屋島・四国村

瀬戸内国際芸術祭の舞台である、香川県高松市。

港や市街地から少し離れた、屋島にも作品が展開されていることをご存知でしょうか。

公式ガイドブックにもひっそりとした記載なので、穴場のような感じですが、また島とは違った楽しみ方ができます。

 

屋島山上へのアクセスは、JR屋島駅、あるいは琴電屋島駅から30分〜1時間おきに出ているシャトルバス。

今回は琴電高松築港駅から瓦町駅で乗り換え、ことでん志度線へ。構内に動く歩道もあるほど、意外に乗り換え時間がかかるので要注意です。

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琴電屋島駅、フォルムもカラーリングもかわいいですね。

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駅の目の前にあるバス乗り場で、琴電のマスコットキャラクター、ことちゃんがお出迎え。

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バスが来ました。通常運賃は後払い100円、ただし瀬戸内国際芸術祭のチケットを見せれば無料です。

 

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屋島は日本書紀にもその名があり、源平合戦の舞台にもなった古刹。さっそく良い文字に出会います。

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四国霊場、屋島寺。

その奥を進んでいくと、作品がありました。

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長谷川仁さんの猪おどし。

その奥にも同じシリーズの猪が。

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このフォルム、かわいすぎます。

 

せっかくなので、そのまま屋島城跡まで歩いてみました。

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ご注意!! イノシシが出没しています。はい、先ほど会いました。

 

10分ほど歩くと、屋島城跡です。復元された城門遺跡の奥に、高松市街が見渡せます。

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ここは昔、海でした。(ブラタモリのナレーション風)

それはそうと、これはうつくし明朝体ですね…!

 

来た道を戻り、屋島山上商店街へ。

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れいがん茶屋。厄除けの瓦投げができるそうです。一日に投げられる数が決まっている…のかどうかは知りません。

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山の中に山がありました。その名も喫茶マウンテーン。メニューは名古屋のマウンテンに比べたら普通…かどうかは知りません。

 

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気を取り直して、ふたつめの作品。ジョン・クルメリングさんの hi 8 way。

「作品には、上らないでください」と書いてはありますが、案内の方によると、決まった時間だけのぼれるそうで、ちょうどのぼらせてもらえました。

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展望台よりも、さらに上から、瀬戸内海の多島美を見下ろす特別な体験。

 

先に進むと、長谷川仁さんの作品がもうひとつあると教えてもらいました。

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やけにキラキラした目のイルカが出迎える、新屋島水族館。

で、これはフォントワークスのぶどうですね…!

ぶどう L | デザインクラブ | 書体を選ぶ | FONTWORKS

フォントワークスは日本語書体・フォントの販売、OEM書体・フォントの開発、LETSを提供しています。

イルカショーをやっているようで、看板の影からちらっと見えるのですが、今回は入りません。

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おすすめされても買いません。

 

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最後の作品。文字通り、木の上にすずめがすずなりになっていて、すばらしくかわいいです。

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さらに進むと、ぐるっと一周してバス乗り場のある駐車場まで戻れます。

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ここに来てのPOP体まつり…!

 

さて、帰りは少し時間があったので、ふもとの四国村にも寄ってみました。

四国村 – 来たことのある 初めての場所

四国村は、民家を中心とする古建築をテーマにした広大な野外博物館です。彫刻家・流政之氏や建築家・安藤忠雄氏の作品や季節の花々の他、本場讃岐うどんもお楽しみいただけます。

 

四国各地から古民家などを移築して作られた野外テーマパーク。愛知県でいうと、明治村やリトルワールドに近いでしょうか。

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シャトルバスは行きしか停まりませんが、琴電屋島駅からも徒歩5分ほどで行けます。

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村内にある四国村ギャラリーでは11/27(日)まで、藍染の布などを展示した「JAPAN BLUEの世界」展が開催中。

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安藤忠雄設計のギャラリー、中庭からの眺めもまた絶景です。

 

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うさぎで有名な、大久野島の燈台が!

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今回はあまり時間がなくて駆け足になってしまいましたが、また時間をかけてゆっくり村内をまわりたいですね。

(四国村の閉村時間は4月〜10月は17時、11月〜3月は16時半)

 

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ちょうど村を出るころ、赤い夕陽が建物を染めます。

写真には撮りましたが、きっと記録よりも記憶に残る光景です。

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瀬戸内国際芸術祭 – 西の島・粟島で、記憶を未来につないでゆく

はやくも暦は11月となり、瀬戸内国際芸術祭2016の秋会期も終わりが迫ってきました。

どうしても会期中にお伝えしたいのが、秋会期だけ会場となる西の4島、本島・高見島・粟島・伊吹島の魅力。

(四国本島と陸続きになっている沙弥島のみ、春会期)

 

東の島々に比べれば宇野港や高松港からも遠く、面積も小さいながら、そのぶん濃密な、島の時間を味わうことができます。

 

アート作品自体も、島の歴史や風習をテーマにしたり、島の人々といっしょに作り上げたものが多く見られます。

そこで、この島々では、ぜひ地元の人に話を聞くことをおすすめします。

芸術祭の公式サポーター・こえび隊のみなさんはもちろん、それ以外でもボランティアでガイドや手作りのおみやげをつくられている方が多くおられます。

 

粟島や伊吹島には、島四国とよばれる八十八か所めぐりがあります。

四国本島のお遍路さんと同じく、そうした旅人へのお接待の文化が引き継がれているおかげかもしれません。

 

今回は、そんな西の島のひとつ、粟島をご紹介します。

 

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日本初の海員養成学校だった建物を利用した、粟島海洋記念館。

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記念館向かいの「一昨日丸」とともに、日比野克彦さんのプロジェクトが展開されています。

一昨日丸が海底から引き上げたものを展示し、見る人に想像させる SOKO LABO。

路上観察学ならぬ、海底観察学でしょうか。

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ここから三十分ほど歩き、港と反対側の西浜へ。

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引き上げたレンガでつくられた「Re-ing-A」(レインガ)が沖合に漂流しています。

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堤防には、日比野さんのことばを、地元の小学生が一文字ずつ手書きしたパネルがまっすぐに並びます。

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そこにあるのは、過去形の記憶。けれど、こどもたちといっしょにことばをつむぐことで、それは現在進行形になり、未来へと向かっていく。

そんな希望を感じさせます。

 

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漂流する記憶といえば、漂流郵便局。

届け先のわからない、あるいはもう届けることのできない人へ向けた手紙を預かる郵便局です。

三年前にはじまったこのプロジェクトが、ずっと継続され、いまも毎日、誰かからの手紙が届き続けています。

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さいごに、旧粟島中学校の校舎を利用した粟島芸術家村。

 

島に滞在するアーティストが、島にゆかりのある人々から注文を聞いて作品を作り上げる「誰がための染物店」。

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作品を見るということは、人の記憶にふれるということ。

ものがたりに耳をすますということ。

 

あなたは、島から、どんなものがたりを聴くでしょうか。

 

 

西日本まちあるきのおともに – マイ・フェイバリット関西・北陸・瀬戸内

広島をはじめとする瀬戸内地方への偏愛を公言しているわたしですが、その地方に住んでいないぶん、イベントやおでかけスポットなどの情報収集はこまめに行う必要があります。

おもしろそうなイベントを見つけても、直前すぎて予定が合わない、あるいはすでに終わっていた、となっては悔しいもの。

今回は、そのために便利そうなウェブサイトを見つけたのでご紹介します。

関西・北陸・せとうちエリアのおでかけ&観光情報【マイフェバ】

マイフェバは関西、北陸、瀬戸内(せとうち)エリアの旬なおでかけ&観光情報を提供!話題のカフェやグルメ、最新の雑貨や手みやげなどのスポット情報から週末のイベントまで多数掲載。おでかけのスポットやイベント情報を探すならマイフェバへ。

トップページは「マイ・フェイバリット関西」ですが、上部のバーから北陸や瀬戸内のページに切り替えることができます。

北陸のおでかけアプリ&WEB マイ・フェイバリット北陸

北陸の旬な観光&おでかけ情報をお届け!話題のカフェ、地元グルメから週末のイベントまで多数掲載。

 

瀬戸内(岡山・広島)のおでかけ&観光情報【マイフェバ】

マイフェバは瀬戸内の旬なおでかけ&観光情報を提供!(岡山、広島、愛媛、香川)などの町で話題のカフェやグルメ、最新の雑貨や手みやげなどのスポット情報から週末のイベントまで多数掲載。おでかけのスポットやイベント情報を探すならマイフェバへ。

この地域区分とロゴの色でわかる人にはわかるのですが、実はこのサイト、JR西日本が運営しています。

関西地方はJR東西線のラインカラーをイメージしたオレンジ。

瀬戸内地方は山陽本線やJR四国をイメージした青と緑。

北陸地方はJR東海をイメージしたオレンジ。

あくまで推測ですよ(笑)。

 

もちろん、鉄道沿線だけでなく、さまざまなおすすめスポット、イベントが紹介されています。

無料会員登録すると、マイページがつくられ、気になる場所をブックマークしておくことができます。

さらにスマートフォンアプリと連携して、実際にそこを訪れてチェックインすることもできるようです。

フレンド登録機能もあるので、SNS的な使い方も想定されているようですね。

 

自分でスポットを登録することもできます。

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実際に訪れないとチェックインできないので、事前に行きたい場所のリマインドとして使えないのはおしい。

ですが、友人に自分のおすすめスポットを共有するという使い方はできそうです。

 

マイ・フェイバリットを活用して、文字通り自分だけの偏愛スポットを見つけてみましょう。

トリエンナーレの裏側で – 岡崎タイポさんぽ

いよいよ閉幕まで一ヶ月を切った、あいちトリエンナーレ。

10/16まで、岡崎公園で「アーキテクツ・オブ・エアー」が開催されるため、岡崎を訪れる方も多いと思います。
アーキテクツ・オブ・エアー | あいちトリエンナーレ2016
といいつつ、すでにトリエンナーレ作品は多くのブログやメディアで取り上げられていることもあり、あえて「凪の渡し場」では紹介しません!

そのかわり、例によって「タイポさんぽ」の視点で、まちを歩いて気になった文字を紹介していきます。

トリエンナーレの裏側で、ひっそりとまちを見守ってきた文字たちが、旅人を待ち受けていました。

 

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まずは、トリエンナーレ会場にもなっている、名鉄東岡崎駅の岡ビル百貨店。

昭和の時代から変わらない駅ビルの雰囲気。

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「キッチンこも」にメガネ・補聴器「ウツノ」、どちらも左右でロゴが微妙に違うのが気になります。

お店のキャッチフレーズも、じっくり読んでみると味わいがあります。

美容室のキャッチフレーズ、ちょっと長すぎないでしょうか。短く切ってさっぱりしたい! あっ、もしかして、そういう狙いがあるのでしょうか。

 

市街地へは、この駅からバス、あるいは徒歩で向かいます。

まずは、インパクトのあるものから。

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過去の店舗のロゴが地層のように積み重なった、記憶の残響。

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「岡」が、ちょっとオカザえもんさんっぽい…?

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いいじゃん!安いじゃん!おもしろいじゃん!

「人気ナンバーワン」と「穴場です」は果たして両立するのか? というツッコミも無用のテンション。

 

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カラオケスズメ。イラストもいい味出してます。

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さらに謎のイラスト。喫煙者への風当たりがいまほど強くなかった時代をしのばせます。

 

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はい、あまりのテンションに疲れました。ちょっと一休み。

ここからは、癒やしを求めていきましょうね。

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「シ」のはねに合わせたのであろう、「イト」のまるかぎがかわいい。

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このステンシルが、とても好きです。側面の「P」がちっちゃいのもかわいい。

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渋ビルでよく見る、ちょっと斜体のかかった宋朝体のようなロゴですが、ここまで素晴らしいものは見たことがありません。岡崎に住んでいたら、ここをかかりつけ医にしたいくらいです。

 

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最後は、岡崎信用金庫資料館をご紹介。

この建物は、もともと岡崎銀行本店として建築家・鈴木禎次により設計されました。

その後は東海銀行の所有になったり商工会議所になったりしつつ、取り壊しの危機にあったところを岡崎信用金庫が買い取って資料館としたそうです。

館内では、日本や世界の貨幣がずらりと並んでいて見ごたえがあります。

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信用金庫なのに、なぜか日本銀行券が…。そして国立印刷局のプロモーションビデオが流れていたりと、なかなかふしぎな空間で紹介したくなりました。

まあ、漢字ミュージアムでも昔の硬貨の展示がありましたし、お金に文字はつきものということで。

 

フォントはお金で買えるけれど、まちもじはお金で買えない。でも、そこに行けば会えるのです。

いつかなくなってしまうかもしれない、その前に、会いに行きましょう。

 

そこは長久手、別世界への道 – 愛知県立芸術大学50周年記念展示

それは昨日のこと。

いつものように、あいちトリエンナーレのイベントに参加するため、名古屋市東区東桜にある、愛知芸術文化センターを訪れました。

その地下に、アート関係の本やグッズが置かれている本屋さん、ナディッフ愛知があります。

これも普段通り、一通り店内をのぞいたあと、ふと店の外のパンフレット置き場を眺めていると「芸術は森からはじまる」という展示カタログを見つけました。

100ページ超オールカラーの、かなりしっかりした装丁。

これが無料配布されていることに驚いて、手に取ってみると、愛知県立芸術大学の50周年記念展示とのこと。

創立50周年記念展示「芸術は森からはじまる」 « 創立50周年記念公式サイト

しかも、会期は当日2016年9月24日(土)まで。

なんだか呼ばれた気がする…ということで、思い立ってその足で展示に向かうことに。

 

愛知県立芸術大学の最寄駅は、リニモ(東部丘陵線)芸大通駅。

栄からは、地下鉄東山線で20分ほど、終点・藤が丘まで行ってから乗り換えます。

地下鉄の駅が地上にあり、リニモの駅が地下にある、というのは地元では有名な話。

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わたしからすると、リニモは愛・地球博記念公園(モリコロパーク)へのアクセス路線というイメージでしたが、芸大をはじめ、沿線には大学がいくつかあり、学生の足にもなっています。

ただ、駅からは距離があったり、運賃が高かったりで、バスで通う学生も多いのだとか。

ちなみに、藤が丘から芸大通までは4駅、10分弱で290円。栄から藤が丘(300円)とあまり変わらない(^^;

そうはいっても、記念すべき日本初の磁気浮上型リニアモーターカーを実用化した路線。乗り心地のよさも地下鉄とは比べものにならないので、なるべく乗って応援したい…という気持ちもあります。

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芸大通駅に着きました。その名の通り、駅の北側、大学までの坂道を芸大通とよぶようです。

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ここは長久手市、近くにはトヨタ博物館もある、ということを感じさせます。もうインスタレーションがはじまっているかのような錯覚。

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金属活字のような大学銘が見えてきました。

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文字の墨だまり(画の交わるところ)が印象的なロゴ。

 

展示は校舎内のものと、大学周辺の森にまでひろがる屋外作品が多数。

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寺井尚行さんのサウンドインスタレーション。時にはひとりでつぶやかれる、ときには唱和する学生(?)の声。

 

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大学キャンパスを楽器に見立てたという、土屋公雄さんの「フォルテ」。

 

写真撮影NGなのかどうか不明だったので写真は控えておきますが、奈良美智さんと森北伸さんの作品がとても印象的。

森の中に出現する、大きな頭のような土塀の小屋。

 

また、吉村順三・奥村昭雄により設計された校舎自体も、すぐれたモダニズム建築として見ごたえがあります。

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芸術大学というのに足を踏み入れたのは、おそらくこれが初めて。

サークル活動や講義案内の掲示板があるのは総合大学と同じでも、石膏像に埋まった建物があったり、アトリエがあったりと、別世界に迷い込んだようなふしぎな感覚。

美術館のように作品を展示するだけではない、まさにここからアートが作られているという熱気の気配を感じることができました。

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【追記】

2016年11月18日からは、新栄町のヤマザキマザック美術館で「森のDNA 芸術は森からはじまる」と題した展示が始まるようです。