あたらしい時代のまじめなフォント – 凸版文久体

今回ご紹介するフォントは、凸版文久体。
凸版印刷 | 凸版文久体

その名の通り、凸版印刷の活字「凸版書体」からつくられたフォント。

しかし、むかしの活字をそのまま復刻しただけではありません。

紙の上だけでなく、デジタルで文章を読むことも多くなったいまの時代に合わせて、より見やすく読みやすいフォントとしてデザインしなおされています。

 

凸版文久体は、大きく明朝体とゴシック体に分かれますが、どちらも他のフォントと異なる大きな特徴があります。

そのひとつが、ペン字のようなひらがな。

「そ」や「さ」などの文字に、つながっていない部分があり、すっきりと読みやすい印象を受けます。

 

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さらにゴシック体には、いまの時代だからこその工夫が。

よく見ると、文字のはじまりのでっぱりが、左側についています。

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他のゴシック体だと、右にあるか、でっぱり自体がないのが普通。

これは、横書きにしたときに、自然な文字の流れがうまれるようにという考えからだそうです。

 

でっぱりが左にある…というので、思い出したのはこちら。

ポンジュース ラベルデザインについて|えひめ飲料

「愛媛のまじめなジュース」こと、えひめ飲料のポンジュースのロゴタイプ。

ホームページを見ると、少なくとも1998年のペットボトル発売時から同じロゴが使われているようなので、ポンジュースは時代を先取りしていたと言えるかもしれません。

ちょっと凸版文久ゴシックと、ヒラギノ角ゴシックで組んでみました。

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オリジナルのロゴとはまた印象が違いますが、なんとなくヒラギノよりも文久くんのほうがまじめな子に見えてこないでしょうか。

 

凸版文久体は、2016年9月にリリースされた macOS Sierra で追加インストールされるようになるので、Macユーザーの方はぜひお試しください。

まだアップグレードしていない場合も、ブラウザ版の iCloud Keynote でも使うことができるようです。

 

ブログの記事タイトルに魂をこめる – わたしがハイフンを使う理由

ブログとTwitterの大きな違い。それは、タイトルがあるかないか。

比較的長い文章を書くことになるブログでは、記事の内容を的確に表すためにタイトルが欠かせません。

 

わたしの場合、ある程度書きたい内容を頭の中でまとめたら、実際に文章を書く前に、記事タイトルを先に考えます。

これは、好きな作家のひとりである森博嗣さんの創作法に習ったもの。

 

タイトルを先に決めることで、書くべきテーマが明確に定まり、途中で迷うことがなくなります。

ついつい書きすぎてしまった場合も、読み直してタイトルにそぐわない内容なら思いきって割愛する、という判断材料にもなります。

この手法はブログに限らず、エッセイ・小論文・プレゼン資料・メルマガなど、さまざまなものに応用できます。

 

そして、どれだけ読み手の興味をひきつけるタイトルを考えられるかが、書き手の腕のみせどころ。

「凪の渡し場」の理想とするところは、タイトルを見ただけでも、なんだか楽しそうと思わせる、いい意味で気の張らない雰囲気が伝わること。

それと同時に、ちゃんと内容を伝えられるようにしたいので、本やイベントに関する記事ではハイフン(-)や読点(、)を多用します。

まず、対象となることがらについて自分の視点で表し、それと明確に分けて、対象の正式名称を記載するというスタイル。

文字と路上観察が出逢う夜 – よきかな商店街

水のような、空気のようなフォントを世の中に生み出す人がいる – 文字を作る仕事

 

ちなみに、フォントによっては見分けがつきにくいときもありますが、ハイフン(-)とダッシュ(—)や長音(ー)はそれぞれ違う文字なので、気をつけましょう。

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ところで、更新した記事をTwitterなどに流すときのコツとして、タイトルだけではなく、読んでほしいポイントを伝えるようにしたほうがいい、というものがあります。

そのメリットは認めつつも、個人的には、自分のサイトの記事ならタイトルだけで充分なのでは、と思うタイプです。

Twitterのように文字数制限のあるメディアに発信するなら、できるかぎり表現を研ぎ澄まし、シンプルにしたい。

もともと、Twitter以外からブログを訪れた方のために過不足ないタイトルを考えているので、あえて説明を加える必要はないと思っています。

 

ただし、他人のブログであれば、また別の話。

タイトルで書き手が伝えたいと思ったポイントと違うところで共感したり、自分なりの視点でとらえることもあるでしょうから、それを表明することで、ひとつの記事が多面的なひろがりをもっていきます。

 

本にたとえれば、カバーにかけられる帯のキャッチコピーを考えるとわかりやすいでしょう。

基本的には、帯のキャッチコピーは著者自身ではなく、編集者が考えたり、他の作家などが推薦文として寄せたりするもの。

自分が帯を考えるよりは、まずはタイトルで勝負したいところです。

 

 

真っ赤に燃える広島のコンビニ、ポプラ

広島東洋カープの優勝決定後、なかなか広島に行くことができていません。そのもやもやを解消する意味もこめて、ひさびさの広島偏愛シリーズをお届けします。

カープと言えば、真っ赤なチームカラーがトレードマーク。

ですが、広島には他にも、赤色をモチーフにした会社があります。

そのひとつが、コンビニエンスストア・ポプラ。
ポプラ | コンビニ

東京や大阪にも店舗がありますが、本社は広島。

名古屋をはじめ東海地方には店舗がないので、広島に行ったときはもちろん、他の地方でも見つけたらつい入ってしまいます(笑)。

広島の店舗の写真が見つからなかったので、瀬戸内海を挟んでお向かいの愛媛県松山市、南堀端店の写真をどうぞ。

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と思ったら、2016年9月現在、なんとこの店舗だけでなく、四国地方からポプラは撤退してしまっているようです。はからずも、貴重な写真になってしまいました。

 

そんなポプラの主力商品といえば、こだわりのHOT弁当、ポプ弁。
ポプラのこだわりHOT弁当(ポプ弁) – 商品のご案内 | コンビニ ポプラ

棚にはおかずだけのお弁当が並んでいて、レジで炊きたてのご飯を、その場でよそってくれるというサービス。

ご飯の量も、ちょっと少なめ・大盛など、自分の好みに応じて変えられるのもうれしい。

旅行で訪れると、なかなかコンビニ弁当を買う機会もないかと思いますが、素泊まりのホテルを利用した際など、一度ご賞味を。

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お弁当だけでなく、スイーツもお気に入りです。

こちらも広島を代表する洋菓子店・バッケンモーツアルトと共同開発したというhitotemaシリーズは、他のコンビニチェーンにも負けない味。

平和大通り近くに位置するクリスタルプラザ店では、他にも各種ブランドのお菓子が揃っていて、ちょっとしたお土産にも使えます。

 

最後に、もうひとつ。

ポプラでは、楽天スーパーポイントが貯まる楽天ポイントカードも使えます。

同じく楽天ポイントカードが使えるサークルKサンクスといい、なぜか赤系統のトレードマークが共通していますね。

そのサークルKサンクスは、親会社・ユニー(愛知県稲沢市)のファミリーマートとの合併で間もなく消滅してしまうので、いずれ楽天ポイントカードが使える唯一のコンビニチェーンになってしまうかも。

愛知の仇を広島で討つ…というわけではないですが、他のチェーンに負けず頑張ってほしい! と応援したくなるコンビニでした。

 

そこは長久手、別世界への道 – 愛知県立芸術大学50周年記念展示

それは昨日のこと。

いつものように、あいちトリエンナーレのイベントに参加するため、名古屋市東区東桜にある、愛知芸術文化センターを訪れました。

その地下に、アート関係の本やグッズが置かれている本屋さん、ナディッフ愛知があります。

これも普段通り、一通り店内をのぞいたあと、ふと店の外のパンフレット置き場を眺めていると「芸術は森からはじまる」という展示カタログを見つけました。

100ページ超オールカラーの、かなりしっかりした装丁。

これが無料配布されていることに驚いて、手に取ってみると、愛知県立芸術大学の50周年記念展示とのこと。

創立50周年記念展示「芸術は森からはじまる」 « 創立50周年記念公式サイト

しかも、会期は当日2016年9月24日(土)まで。

なんだか呼ばれた気がする…ということで、思い立ってその足で展示に向かうことに。

 

愛知県立芸術大学の最寄駅は、リニモ(東部丘陵線)芸大通駅。

栄からは、地下鉄東山線で20分ほど、終点・藤が丘まで行ってから乗り換えます。

地下鉄の駅が地上にあり、リニモの駅が地下にある、というのは地元では有名な話。

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わたしからすると、リニモは愛・地球博記念公園(モリコロパーク)へのアクセス路線というイメージでしたが、芸大をはじめ、沿線には大学がいくつかあり、学生の足にもなっています。

ただ、駅からは距離があったり、運賃が高かったりで、バスで通う学生も多いのだとか。

ちなみに、藤が丘から芸大通までは4駅、10分弱で290円。栄から藤が丘(300円)とあまり変わらない(^^;

そうはいっても、記念すべき日本初の磁気浮上型リニアモーターカーを実用化した路線。乗り心地のよさも地下鉄とは比べものにならないので、なるべく乗って応援したい…という気持ちもあります。

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芸大通駅に着きました。その名の通り、駅の北側、大学までの坂道を芸大通とよぶようです。

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ここは長久手市、近くにはトヨタ博物館もある、ということを感じさせます。もうインスタレーションがはじまっているかのような錯覚。

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金属活字のような大学銘が見えてきました。

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文字の墨だまり(画の交わるところ)が印象的なロゴ。

 

展示は校舎内のものと、大学周辺の森にまでひろがる屋外作品が多数。

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寺井尚行さんのサウンドインスタレーション。時にはひとりでつぶやかれる、ときには唱和する学生(?)の声。

 

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大学キャンパスを楽器に見立てたという、土屋公雄さんの「フォルテ」。

 

写真撮影NGなのかどうか不明だったので写真は控えておきますが、奈良美智さんと森北伸さんの作品がとても印象的。

森の中に出現する、大きな頭のような土塀の小屋。

 

また、吉村順三・奥村昭雄により設計された校舎自体も、すぐれたモダニズム建築として見ごたえがあります。

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芸術大学というのに足を踏み入れたのは、おそらくこれが初めて。

サークル活動や講義案内の掲示板があるのは総合大学と同じでも、石膏像に埋まった建物があったり、アトリエがあったりと、別世界に迷い込んだようなふしぎな感覚。

美術館のように作品を展示するだけではない、まさにここからアートが作られているという熱気の気配を感じることができました。

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【追記】

2016年11月18日からは、新栄町のヤマザキマザック美術館で「森のDNA 芸術は森からはじまる」と題した展示が始まるようです。

 

人それぞれの京都偏愛マップ – 京都の迷い方

千年の歴史を持つ京都。

世界遺産に指定された史跡も数多く、観光地としても根強い人気を誇ります。

けれど、普通のガイドマップや旅行本で紹介されるような情報だけでは物足りない。

千年分の人の歩みが凝縮されたこの街には、もっと多様な楽しみ方があるはず。

 

そんなコンセプトで作られた本が、今回ご紹介する「京都の迷い方」。
株式会社 京阪神エルマガジン社|書籍のご案内「京都の迷い方」

京都にゆかりのあるライター、イラストレーター、あるいは京都に店を構える店主など、50人の執筆者が、それぞれが偏愛する京都をテーマに執筆。

そのテーマをAからZまでアルファベット順に並べた構成になっています。

 

…なぜ50音順じゃなくてアルファベット順なのか、とふしぎに思いますね?

その答えは本文を読んでもわかりません(笑)

表紙にもあるブラックレター体スクリプト体(いわゆる筆記体)が記事ごとに交互に使い分けられた構成にはタイポグラフィの味わいを感じることから、編集者、あるいはブックデザイナーの偏愛のようにも推察されます。

そんなデザインで、一冊の本としての統一感は出しつつ、書かれた内容は実に多彩。

Anko(あんこ)」「Kashiwa(かしわ)」「Senmaiduke(千枚漬け)」など、有名なものからそうでないものまで、好きな食べ物を紹介する人。

Daimaru Chika(大丸地下)」「Jazz Cafe(ジャズ喫茶)」「Public Bath(銭湯)」などの建物、スポットに注目する人。

もちろん、「Jintan(仁丹)」「Kanban(看板)」「Moji(文字)」など路上観察学的な視点で街の看板や文字を収集する人も。(全部同じテーマにまとめれば…とか言ってはいけないのです)

 

この本を片手に街を歩くというよりは、この本に載っていない自分だけの偏愛はなんだろう? と考えるほうが、楽しみ方がひろがる一冊。

 

じゃあ、とりあえず「文字」は除いて、わたしの偏愛する京都は…、と考えてみても、これだ! というのがとっさに思い浮かばず、はっとさせられました。

行ったことのあるお店、好きな作品のモデルになった街並み、そういったものは思い出せても、それが本当に偏愛と言えるかというと、疑問符がつきます。

 

まだまだわたしは、京都のことを知らない。

 

もっと京都のことが好きになりたい。

 

でも、好きになろうなんて気持ちでいたら受け入れてはくれない。

そんなふうに人を迷わす、それもきっと、京都というまちの魅力。