日本の明朝体を読みなおす – 月刊MdN 2017年10月号特集:絶対フォント感を身につける。[明朝体編]

すっかり季節も秋めいてきました。

昨年(2016年)の記事 読書の秋、フォントの秋。文字を特集した雑誌を読みくらべ で紹介した雑誌「月刊MdN」では、今年もフォントの特集が組まれています。

 

今回は「絶対フォント感を身につける。[明朝体編]」。

日本語フォントの中でも基本と言える明朝体だけに、骨格が似通っていて、なかなか見分けることはむずかしい。

けれど、今でも毎年、いくつもの明朝体フォントがこの世の中に生み出されています。

ということは、それぞれにコンセプトがあり、それを主張できるだけの、ほかのフォントにはない違いがあるということです。

 

本書では、明朝体を歴史的な観点から「レトロ系」「ベーシック系」「アップデート系」の三つにざっくりと分類した上で、それぞれのフォントの特徴と見分け方を解説していきます。

レトロ系とは、かつての金属活字の時代に使われていたフォント、あるいはその影響を強く受けたフォントとしています。

その二大巨頭が築地体秀英体。

活字で組まれた古い本をめくれば、今からすると文字組も小さくでちょっと読みにくい、けれどやっぱり、その時代ならではの味わいがあります。

 

アップデート系は逆に、現在主流の、横書きやディスプレイ上でも見やすいように新しくデザインされたフォントたち。

MacやiPhone、iPadなどアップル製品に標準搭載されているヒラギノ明朝体をはじめとして、今も多くのフォントが生まれています。

 

この中間にあるのが、ベーシック系。モリサワのリュウミンなど、安定感のあるオーソドックスな明朝体です。今回の記事も本文にリュウミンを使用しています。

筑紫明朝もベーシック系に入れられていますが、そのバリエーションである筑紫Aオールド明朝や最近リリースされた筑紫Q明朝などはレトロ系に分類されています。

わたしの場合、筑紫シリーズを目にしたら、レトロ系とかベーシック系とか考える前に一瞬で絶対フォント感が発動するくらい、大好きなフォントです。

ぜひ、この本で、あなたもお気に入りの明朝体を見つけてみてください。

 

たとえば秋の観光シーズン。

まちなかや旅行先で修学旅行生たちとすれ違ったとしましょう。

彼ら、彼女らはみんな同じ制服を着ていて、大人の目からは見分けがつきません。

けれど、その子たち自身は、何ヶ月も、何年も同じ時間を共有していて、お互いの個性もわかっている。

仲良しの関係もいたり、ひっそりと想いを寄せる相手もいたり。

 

フォントも同じことです。

みんなちがって、みんないい。

 

この世に同じ人間がいないように、同じ明朝体はひとつとしてないのです。

 

教えるフォント、学ぶフォント – 教科書体

日本各地で雪模様となった土日、大学入試センター試験が執り行われました。

受験生のみなさんも、まわりに受験生がいる人も、落ち着かない週末になったかもしれません。

さて、そんな受験シーズン、名古屋の駅構内には、こんな広告が出ていました。

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河合塾は、名古屋を本拠地とする予備校。

大学受験の予備校 河合塾

大学受験の予備校、学校法人河合塾の公式ウェブサイトです。大学受験の予備校、学校法人河合塾の公式サイトをご利用ください。

わたしは予備校に通ったことはないのですが、高校時代、模試や参考書(河合出版)でお世話になりました。

河合塾千種校のそばには、ちくさ正文館書店もあるので、いまでもなんとなく親近感をおぼえています。

 

そんなわたしでなくても、きっと日本で学校教育を受けた人なら誰しも、なんとなく懐かしさを憶えてしまうであろう、このフォント。

国語の教科書などで使われることを想定した、モリサワの教科書ICAと思われます。

教科書ICA R | 書体見本 | モリサワのフォント

「教科書ICA」は、教育分野に必携の書体です。筆書きの楷書体から生まれた教科書体は、一点一画が分かりやすいように字画が整理されてきました。現代では毛筆の勢いは抑えられて硬筆的な書風が一般的になっており、字を習うための規範となる形が素直に表されています。字形は、文部省発行「小学校学習指導要領」に準拠していますので、教科書、参考書、副読本、学習塾テキストなどの用途に安心してお使いいただけます。

 

日本語フォントのスタンダードといえば明朝体ですが、歴史的経緯から、書き文字とは異なる骨格になっています。

それこそ「」という文字の縦棒も、手で書くときはまっすぐに伸ばさず、ちょっと猫背に書くはず。

漢字をおぼえはじめる子供たちが、そういった違いで混乱しないように、特別にデザインされたフォント、それが教科書体です。

 

児童、生徒にとってはあたりまえのように触れてきた、学ぶためのフォント。

でも、実は一文字一文字、教わる相手のことを思って作られた文字なのです。

 

これまで毎日、一歩一歩、着実に踏みしめた足取り。

その力を出し切れば、きっと花は咲く。

 

そんなメッセージにふさわしいフォントです。

 

明朝体とゴシック体のあいだ – アンチック体

日本語フォントの代表といえば、明朝体とゴシック体。

でも実は、そのどちらでもないフォントが、あるジャンルの本では多く使われています。

それが、今回紹介するアンチック体

アンチックAN1 | 書体見本 | モリサワのフォント

「アンチック体」は、ゴシック体漢字にあわせた太かなとして誕生したと言われ、辞書の見出しや絵本、マンガの吹き出しなどに多く用いられてきました。全体に太みの差が少なく、丸みを帯びた表情が特徴で、漢字に負けない安定感と可読性があります。「アンチックAN」シリーズは、「ゴシックMB101」ファミリーや「太ゴ」など各ゴシック体と組み合わせてお使いいただける、幅広いラインナップです。

いっけん明朝体のように見えますが、縦棒と横棒の太さが同じゴシック体に近く、筆の強弱がおさえられています。

アンチックはAntique、つまりアンティークと同じ語源。

その名から連想するように、昔の金属活字時代、ゴシック体の漢字と組み合わせて使うためにデザインされた書体だといいます。

 

いまでもアンチック体が使われているのは、辞書の見出しや、マンガのフキダシ(登場人物のセリフ)。

マンガの本編を紹介することができないので、表紙にフキダシのある作品を探してみました。

 

 

ゆるい読書家ネタが楽しい「バーナード嬢曰く」。残念ながら(?)表紙のひらがなは普通の明朝体に見えます。

単に本編のコマを拡大したわけではなく、あくまで表紙として描き下ろされたものだからでしょうか。

 

 

もちろん、フキダシにはアンチック体しか使われないわけではありません。

キャラクターの感情やシーンに応じて、さまざまなフォントが使いわけられています。

ときには、そうやってフキダシのフォントに注目してマンガを読んでみるのも面白いです。

 

そして、その感情が引き立つのも、普通のフキダシにアンチック体が使われているからこそ。

明朝体とゴシック体、そして漫画家と読者をつなぐ、欠かせない存在。

 

ちなみに、フリーフォントでアンチック体を使いたいときは、フロップデザインさんのブログが参考になります。

 

大阪に息づくたてものをめぐる – イケフェス大阪2016

大阪といえば、どんなイメージをもたれるでしょうか。

天下の台所、お笑い、たこ焼き、ソース二度づけ禁止、カモノハシのイコちゃん…。

でも、それだけではありません。

大阪には、明治から昭和まで、いわゆる日本の近代建築が数多く残り、その多くが、いまも現役で使われています。

その魅力に着目し、大阪のまちをまるごと建築の博物館に見立てて楽しむのが「生きた建築ミュージアムフェスティバル」、通称イケフェス。

生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2016

大阪の’生きた建築’が扉を開く特別な2日間。昨年は延べ3万人が参加した日本最大級の建築公開イベント。普段何気なく使われている大阪の’生きた建築’が主役の2日間です。いつもは中に入ることができない「あの建築」を見学する絶好のチャンス。秋の週末、一味違った大阪をお楽しみ下さい。

 

毎年開催されており、2016年は11月5日(土)と11月6日(日)のあいだ、多くの建物やビルが特別公開されました。

いくつかは、事前に申し込みが必要な抽選制となっており、残念ながら今回は落選してしまいました。

しかし、当日でも先着順で入場できるところが多くあり、じゅうぶん楽しめるイベントとなっています。しかも驚くことに、すべてが無料。

今回は、そのうちの一部をご紹介します。

 

まず、イケフェスを楽しむために必須なのが、公式ガイドブック(税込300円)。

2016年版は大阪市内の一部書店でしか販売されていないようだったので、当日購入することにしました。

今回は前から気になっていた、柳々堂さんへ。

地下鉄四つ橋線・肥後橋駅近く。店内に所狭しと並べられた建築関係書籍の数々、短い時間ながら楽しませてもらいました。

柳々堂(@ryuryudo)さん | Twitter

柳々堂 (@ryuryudo)さんの最新ツイート 大阪の建築書専門店です。営業時間は平日が8:30~19:00、土曜が8:30~15:00、日曜祝日は定休日です。 大阪市西区京町堀1-12-3

ここから東の御堂筋線・淀屋橋駅〜本町駅、堺筋線・北浜駅〜堺筋本町駅あたりは、イケフェス参加の物件が密集しています。

竹中工務店の入居する御堂ビル。こちらではガイドツアーに参加することができました。

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シンプルな内装を楽しめる受付ホール。改装前は、また違った雰囲気だったそう。

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屋上も。

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お土産に、神戸にある大工道具館の招待券もいただけたので、またそのうち行ってみたいです。

 

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ここからは戦前の建物。入口がかわいい芝川ビル。

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新井ビル。撮りたかった階段の写真!

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生駒ビルヂング。地下サロンのブループリントに、思わず溜息が漏れます。

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そして三井住友銀行大阪本店ビル。

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内部は天井のステンドグラスの一室のみ撮影可能でしたが、吹き抜けの営業フロアがすばらしい。

まさに商都としての大阪を象徴するような場所です。

ふだんの日常のなかで、こんな空間に訪れることができる大阪の人がうらやましく思えます。

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川を渡って、となりの住友ビルディングとツーショット。

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なんかいました。

 

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少し北に行って、イケフェスの公開対象ではないですが、大江ビルディング。

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この一室で、連携事業「みんなの建築ミニチュア展」が開催されていました。

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お城や太陽の塔など、名建築の数々をミニチュアで再現。

 

ちょっと寄り道して、京阪中之島線で天満橋駅まで。

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素敵かわいい紙もの・雑貨を扱う夜長堂さんにお邪魔しました。

夜長堂 | レトロモダン雑貨

~お知らせ~ 「夜長堂さんは何屋さんですか?」と、出会った人からよく聞かれます。 夜長堂は2006年頃より、古道具の買い付けと卸をメインで活動していました。 …

 

店主の井上タツ子さんは、関西のいいビルを愛好するBMC(ビルマニアカフェ)のお一人でもあります。

最新刊「喫茶とインテリア」はビル好き・喫茶店好きの方どちらにもおすすめ。この本についての記事は、またいずれ…。

 

さて、今回は基本的に中之島周辺に絞って建物を巡ったのですが、一か所、どうしても行きたいところがありました。

それは、地下鉄四つ橋線/御堂筋線・大国町駅近く、モリサワ本社ビル。

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言わずと知れた、大阪ならず日本を代表するフォントメーカー。このサイトでも、Webフォントサービス「TypeSquare」でお世話になっています。

株式会社モリサワ

「文字を通じて、社会に貢献する。」株式会社モリサワの企業サイト。フォント製品・ソリューション、文字を通じた文化活動、カスタマーサポート、企業情報を掲載しています。

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受付ホールの椅子、これがホントの字形!

イケフェスの一環として、5Fのショールーム「MORISAWA SQUARE」が特別公開されていました。

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エレベータ前フロアの数字も立体化。

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展示はというと、巨大フォント見本帳、活字、写植機など、まさにモリサワと文字の歴史を実感でき、とても今回だけでは時間が足りません。

モリサワ主催のイベント・セミナーで見学できることもあるそうなので、また何かの機会を見つけて、ぜひ再訪したいところ。

 

 

イケフェスの建物は、ふだん一般公開していないところもあれば、お店として普通に入れるところもあります。

その混在ぶりもまた、生きている都市らしさを感じます。

 

 

漢字に触れて楽しむ、漢字ミュージアム

今回は、この6月、京都の祇園にオープンした漢字ミュージアムのご紹介。
漢検 漢字博物館・図書館 [漢字ミュージアム]

京阪電鉄・祇園四条駅から徒歩5分。と案内の上ではありますが、一大観光地のなかにあるので人も多く、たどり着くのには時間がかかります。

市バスだと「祇園」バス停すぐですが、渋滞がひどく確実に遅延するので、時間に余裕をもって行きましょう。17時閉館ですが、16時半には受付終了となります。

漢字ミュージアム

漢字ミュージアム

正式名称は「漢検 漢字博物館・図書館」というそう。

これも隷書ですが、DF隷書体ではなく、モリサワの陸隷に見えます。ロゴのほうはちょっとアレンジしているようです。

陸隷はTypeSquareでも使えますが、さくらのレンタルサーバで使えるWebフォントには入っていなかったので、かわりにこの記事のタイトルは「隷書101」にしてみました。

 

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となりのビルのモザイク画、ちょっとひらがなの「」に見えませんか?

というのは、中のロビー部分で「漢字のある風景」というフォトコンテストの展示をしていたので、あとで写真を見返して気づいたこと。

漢字に限らず、文字に見える風景をさがすというのも、まちあるきの新しい楽しみ方になりそうです。

 

さて、受付で入館料(大人800円)を払うと、体験シートという冊子をもらえます。

よくある展示案内とは一味違って、実際にこのシートを使っていろいろと楽しめる工夫がされています。

漢字ミュージアム

まずは甲骨文字占い。漢字のもとになった甲骨文字が印刷されていて、展示のところにある金属片でこすると、漢字と占い結果が出てきます。

他に団体で来ていた人の様子を見ても、ひとりひとり違う文字が印刷されているようです。

わたしの結果は…

新 - 新しいことが何かはじまるよ

このあとの、よきかな商店街イベント(というか二次会の交流)を思うと、当たっていたかも…!

 

漢字ミュージアム

さらに、万葉仮名や、ひらがな・カタカナのもとになった漢字のスタンプが並んでいます。

スタンプで自分のなまえを押すと、漢字として結果が押されます。

万葉仮名とは、日本に漢字が伝わった当初に使われていたもので、漢字を意味ではなく音として使ったもの。

知識としては覚えていても、ひらがな・カタカナのもとの字とはまた違うものだというのが、こうしてみると実感できました。

 

1Fは他にも、漢字の成り立ちから今に至るまでの歴史までが絵巻になって解説されていたり、書・印刷の道具が展示されたりしています。

漢字ミュージアム

漢字ミュージアム

定番の金属活字に、和文タイプライターまで。

 

2Fに上がる前に、階段の横にある大きな柱に注目。漢和辞典に採録された約5万の漢字が全面に印刷された「漢字5万字タワー」になっています。

漢字ミュージアム

漢字ミュージアム

青色の大きな文字は教育漢字。オレンジ色は常用漢字。

自分のなまえを探そう! と言われても、これだけあって探せるのか…と思ったら、偶然にもあっさり見つかりました(笑)

 

2Fは、さらに漢字と触れて楽しめる体感スペースになっています。

漢字ミュージアム

ワークショップも多数。あっ、どうしてここでPOP体を使ってしまうのか…。

漢字ミュージアム

気を取り直して、お待ちかねのフォント(書体)のコーナー!

漢字ミュージアム

フォントの実例のチョイスが、何故か丸明オールドじゃなくて丸明Fujiだったりと、ツッコミどころが少々(笑)

 

漢字ミュージアム

「乾拓であそぼう」のコーナー。

日本や中国の昔のコイン(復元)を紙の上からこすって、文字を浮かび上がらせます。

漢字ミュージアム

 

漢字ミュージアム

9月30日までは、「漢字縁日」というイベントも実施中。

縁日の屋台を、漢字で再現。

漢字ミュージアム

漢字しおり、釣れました!

 

全体を通しての印象は、ここはひとりで学びに行くより、誰かといっしょに行ったほうが楽しい施設ですね。

夏休みとあって、親子連れの姿も目立ちました。

いつか結婚してこどもができたら、ここに連れてきて、漢字や文字の楽しさ、奥深さに気づいてもらいたい…そんなことを思いました。

もちろん、大人同士でも楽しめます。ぜひ、知人・友人を誘って、訪れてみてください。