万博、建築の記憶 – EXPO’70パビリオン

あなたには万博の記憶がありますか?

 

万博と言っても、愛・地球博ではありません。

1970年に開催された日本万国博覧会、大阪万博。

 

「人類の進歩と調和」をテーマに開催されたこの万博では、当時の社会背景もあり、独特の熱気を帯びていたといいます。

わたしもまだ生まれていない時代、もちろん当時の記憶はありません。

 

今回は、その片鱗をすこしでも感じようと、万博の記念館である「EXPO’70パビリオン」を訪れました。

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万国博当時の出展施設であった「鉄鋼館」が記念館「EXPO’70パビリオン」として甦る。未公開を含む約3000点もの資料や写真、映像が一堂に公開され、館内に入れば瞬時にして当時にタイムスリップ!

場所は万博記念公園

新大阪駅から地下鉄御堂筋線・北大阪急行で千里中央駅から、または阪急電鉄京都線で南茨木駅から、大阪モノレールに乗り換えます。

 

中国自動車道が間近に迫る大阪モノレール万博記念公園駅。出入口は南側にあり、跨線橋で北に渡ります。

広大な敷地を誇る万博記念公園、まずはその一角の自然文化園に入ります。入園料は大人250円。

万博と言えば岡本太郎の「太陽の塔」ですね。手前のロゴもかわいい。

万博公園の積まれパイロン。

 

パビリオンで開催中の企画展「建築の記憶」を案内する立て看板。となりの創英角ポップ体は見なかったことにします。

 

素敵なモダニズム建築が見えてきました。

前川國男により、当時「鉄鋼館」として設計された建物が現在のEXPO’70パビリオンです。

館内に入ると、館員の方から、企画展の入場料は400円、ただし常設展のチケットとあわせて購入すると300円と説明を受けます。

一瞬、「じゃあ企画展だけのチケットを発売する意味があるのか…?」と思ったのですが、常設展チケットが200円で、それに加えて300円かかるということでした。

とはいえ、常設展もかなり見ごたえがある、というよりむしろ企画展より充実しているので、はじめて訪れる方はぜひ両方観ることをおすすめします。

 

企画展では、今はもうない万博当時に建てられた建築の設計図などを展示。

2階は、万博終了後も近年まで残っていたエキスポタワーの模型と、定点観測の写真を展示していました。

※1階は撮影禁止、2階はよくわからなかったので、常設展にあったエキスポタワーの写真を代用します。

 

ということで、ここからは基本写真撮影が可能な常設展をご紹介します。

やけに赤い廊下にタイポグラフィックな壁面展示。

このグッズがあったら絶対買うと思ったのですが、しっかり「日本万国博覧会」「EXPO’70」ロゴのポストカードがありました(笑)。

万博を数字で記録する。「出産1人」…!?

万博で使われたピクトグラム。いまでも見かける迷子のピクトさんは、4万8000人の迷子を救ったですね。

迷子案内のシステムは当時としては画期的なLANを使用していたそう。

冷戦当時、ソ連館もあったとは。

 

とにかく模型が素晴らしい。

 

当時の最新技術を駆使したスペースシアター。中に入ることはできませんが、ガラス越しにイリュージョンのような世界を楽しめます。

その周囲には、これまた太陽の塔の模型。

外に出ても太陽の塔。目が光ります!

まだまだ見どころはたくさんあるのですが、続きはぜひ現地を訪れて体感ください。

時代の空気を濃密に感じつつ、現代の技術のルーツにも触れられるEXPO’70パビリオンでした。

 

おまけ。記念スタンプの奇妙なジョジョっぽさ。

路上と動物との共存を考える – さんぽあとしまつ

まちあるきをしていると、路上のあらゆるものが観察の対象になります。

 

たとえば、お店の看板や貼り紙の文字に目を向けたタイポさんぽ

たとえば、一般にカラーコーンという商標で知られるパイロン

 

そして最近、ひそかに気になっているものがあります。

 

それは、犬などのペットを散歩させる飼い主に向けて書かれた注意書きの立て看板。

すでに決まった呼び方があるのかもしれませんが、わたしは仮に「あとしまつ」系とよんでいます。

今回は、ペットも連れずに、立て看板だけを目当てとした「あとしまつ」散歩を楽しんでみましょう。

 

まずは、文字通り、ペットのあとしまつを飼い主にお願いするメッセージが書かれたもの。

地方自治体の名前と、犬のキャラクターが描かれたものがよく見られます。

ふしぎなことに、同じ自治体でも、少し歩くと違う犬のキャラクターに出会うことがあって、探すのが楽しくなります。

描かれるのは犬が多いですが、たまに猫が登場することも。野良猫へのえさやり禁止を兼ねたメッセージのようです。

 

なぜか、この犬だけはあちこちで見かけます。下のふたつはフォントも同じですね。

 

ピクトグラムになった犬。ピクトさんに飼われるピクトワンでしょうか。

 

ピクトさんといえば、日本ピクトさん学会会長・内海慶一さんのイベントで岡山に行ったときに見つけた、こちらのあとしまつ。

自分であとしまつをするという、かしこい犬。

タウンボーイDSKというのが検索しても出てこなくて謎です。

 

ときには、ちょっと強い口調で怒られたり。

 

と思ったら、「ワンちゃん」とやさしく諭されたり。

 

もはや文字が消えていてもなんとなくつたわってしまいます。それこそがペットへの愛情の証かもしれません。

 

まちには人間ばかりではなく、ペットも、野良犬、野良猫だっている。

そんな人間と動物との共存についても考えさせられてしまう、まちあるきでした。

 

今回のおまけ。

しゃちほこ立ちをしつつ、目も名古屋市章の「まるはち」に。

なんとも名古屋愛にあふれた犬でした。

 

芸術の、その先へ。路上観察レジェンドDay

路上観察といえば、「凪の渡し場」でも何度か取り上げられている、赤瀬川原平さん。

その赤瀬川さんと生前ゆかりのあった方々を招いてのトークイベント、その名も「路上観察レジェンドDay」が先日、岡山市で行われました。

 

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当日のJR岡山駅。

駅前では「おかやま国際音楽祭」のマーチングコンサートがあったり、「岡山芸術交流」という芸術祭の会期がスタートしたりと、同時多発的にさまざまなイベントが行われていたようです。
岡山芸術交流については、後ほど別の記事で取り上げようと思います。

 

駅の西口から徒歩で数分、奉還町商店街へ。

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相変わらず、タイポさんぽをはじめると足の進みが遅くなってしまいます。

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このとなりのカフェバー、KAMPが会場です。

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主催は、日本ピクトさん学会の内海慶一さん。

「ピクトさん」とは、案内や警告に使われる人型ピクトグラム。
ときに、その身を犠牲にしてわたしたちに警告してくれる献身的な姿勢に対する敬称です。

 

ゲストは小学館「ドラえもんルーム」編集長の徳山さんと、おかやま路上観察学会主宰の河原さん。

徳山さんは、ご自身の路上観察の話だけでなく、赤瀬川さんが作られた「本物の零円札」を持参されていました。

世に言う「千円札事件」、千円札を模写したアート作品が偽札にあたるとして有罪判決を受けたあとの作品。

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この作品が「つくる」アートだとしたら、路上観察は「みつける」アート。

赤瀬川さんの著作「超芸術トマソン」は、当時の読売巨人軍の4番バッターながらまったく活躍しなかった助っ人外国人になぞらえて、街中にある無用物を「トマソン」として収集、分類した本です。

その記念すべきトマソン第一号が、このチラシのロゴにもなっている「四谷の純粋階段」。

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のぼっておりるだけで、どこにもつながらない階段。それは、すでに現代アートを超えた存在。

 

河原さんのトークでも、岡山にあったトマソン物件が話題に。

内海さんが地名を口に出されたので、気になってイベント後に現況を見にいってきました。

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こちらが、その階段。

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のぼると前には進めず。

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左に曲がるとスロープがあるのですが、

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それをおりると元の場所に戻るという。

 

近くに公園があり、当日はここでもおかやま国際音楽祭のイベントが行われていました。

芸術祭ではなく、音楽祭のイベントというのがおもしろいところ。

階段上のベンチで休憩したり、スロープで遊ぶ子供の姿も見られ、もはや無用物ではなさそうです。

かつてトマソンだった頃のエピソードは、地元でもほとんど知られていないとのこと。

引退して芸能界に転身した野球選手が、現役時代よりも有名になった…という感じなのでしょうか。

 

あまり岡山のことを知らない身からしたら、新鮮な話もありつつ、路上観察学の奥深さを感じることができました。

まちあるきには、無数の視点がある。