日はまた昇る – そうだ、モダン建築の京都行こう。

長い夏の蒸し暑さが去り、あっという間に季節は秋へとうつりかわりました。

秋の行楽シーズンといえばJR東海の名キャッチコピー「そうだ、京都行こう。」が思いうかびますが、京都の見どころは歴史ある寺社仏閣だけでなく、実は街のあちこちに残る明治〜昭和に建てられたモダンな建築も見逃せません。

そんな「モダン建築の京都」をテーマにした特別展が今年(令和3年)、京都市京セラ美術館で開催されています。

https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20210925-1226

明治天皇の東京への行幸(いわゆる遷都)にともなって一時は衰退したという千年のみやこ。

その危機感をうけて、京都は官民あげての近代化による復興をめざします。

琵琶湖の水を京都まで運び灌漑や発電、舟運に利用した琵琶湖疎水。

全国に先駆けて設置された小学校。

そして平安遷都1100年を記念した内国勧業博覧会と、それに隣接する平安神宮。

今もその地に立つ京都市京セラ美術館での展覧会ということで、歴史を肌で感じることができます。

昨年に改装オープンしたこともあり、アプローチも優雅です。

現在は事前予約制、公式サイトで日時を指定してチケットを購入できます。何種類かの展示が同時に行われているので、館内で迷ったらスタッフの方に聞きましょう。
一日に複数のチケットも購入できますが、どれも見ごたえたっぷりなので、1時間以上は余裕をもっておきましょう。

会場内は一部写真撮影が可能です。
写真や図面だけでなく、模型やインテリアの実物などもあるのが建築展としては嬉しい構成ですね。

円山公園にある長楽館の螺鈿細工の椅子。いつまでも眺めていられそう。
紙巻煙草で財を成した村井吉兵衛の別宅ということで、当時の商品「サンライス」も展示されています。

ほとんどの建築は京都市内に現存しているため、気になったら街に出て実物を見に行けるのも良いところですね。

言わずとしれた京都市役所。

三条通御幸町東入ル、アートスペースとして活用されている1928ビル。
四条大橋沿いのヴォーリズ建築、東華菜館。
現在は中華料理店として営業されており、なかなか敷居が高いですが、いつかは中に入ってみたいところです。
ちなみにレストラン矢尾政として開業した当初は、1階は大衆食堂だったそう。

モダン建築の京都展では、3階ホールベンチが展示されていました。

こちらは京都帝国大学花山天文台の初代台長・山本清一さんの使われていた天球儀。
天の星座をうつしとった天球儀は、地球儀と違って、模型なのに実物が存在しない不思議さが、なんだかわくわくします。

じっくり見ていると時間が無くなり、すぐに18時の閉館、外は本当の夜空が見えていました。

夜でも月光と、人工のライトアップがあたりをほのかに照らします。

そして、どんな逆境にあっても日はまた昇る。

モダン建築が息づく、京都のまちのかがやきは失われません。

トンネルを抜けると霧の国 – 亀岡まちあるき

以前「半歩踏み出す、ものがたり旅」という記事で〈半日旅〉をすすめる本を紹介しました。

この本で気になった場所のひとつに、京都府亀岡市があります。

JRで京都駅からも20分程度、けれど旧国名では丹波国に属し、京都に似ているようで違う、落ち着いた雰囲気の街らしいです。

ということで、さっそく行ってきました。

 

まずはJR京都駅、嵯峨野線(山陰本線)ホームへ。

今年(2019年)3月には、京都鉄道博物館や梅小路公園の最寄駅として梅小路京都西駅も開業予定です。

駅構内ポスターは安定のPOP体でした。

嵯峨嵐山駅を過ぎると、ぐっと乗客は減って、長いトンネルで険しい山峡を越えます。

山城国と丹波国、国境のトンネルを抜けると、霧の国だった——

そう言いたくなるほど美しい霧が広がる市街が見えてきました。

盆地のため霧が広がりやすく、竜ヶ尾山の山頂付近には「霧のテラス」という名所もあるそうです。

かめおか霧のテラス ライブカメラ|ぶらり亀岡 亀岡市観光協会

かめおか霧のテラス ライブカメラ|亀岡市観光協会のページです。亀岡の観光の見どころや、湯の花温泉、保津川下り、嵯峨野トロッコ列車の紹介はもちろん亀岡の、四季の花や、グルメ情報、イベント情報を発信しております。いろいろな亀岡を探索して頂きながら、あなただけの亀岡を探してみてください!

 

亀岡駅舎、特徴的な形をしています。

北口では京都スタジアム(仮称)が工事中でした。2020年のオープン予定だそうです。

 

「国鉄山陰線」という表記におどろいた看板、〈京都府下随一のスケールと楽しいインテリアを創造する〉というスケールの大きい謳い文句も惹かれます。

 

まるいフォルムと外階段の対比がかわいい。

マンホールは上下どちらから見ても亀の形をしています。

「🐕のフンは飼主が持ち帰りましょう!」と、犬のイラストを絵文字のように使うあとしまつ看板は意外にめずらしい。

 

まちあるきを楽しんだら、亀山城址へ向かいます。

亀岡市は明智光秀が築いた丹波亀山城の城下町として栄えました。

織田信長の謀反人というイメージが強い光秀ですが、2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主役となるなど、再評価が進みそうな予感がします。

そして、城の名前は「亀山城」なのに何故「亀岡市」なのかというと、三重県に同じ亀山という地名があってややこしいため、明治の廃藩置県ごろに亀山から亀岡に改称したとのこと。亀岡県となるも、ほどなく京都府に合併されます。

なんだか数奇な運命をたどったまちですが、さらに変わっているのは現在の亀山城、実は宗教法人大本の所有する土地となっています。

大本の聖地〈天恩郷〉とされていますが、一部の禁足地以外は本部で申し出れば誰でも自由に見学できます。

 

亀山城址の近くには亀岡市文化資料館もあります。

もとは亀岡市立女子技芸専門学校だったそうで、白い建物はなつかしい学校らしさを感じさせます。

入館料は210円、古代からの亀岡の歩みを学ぶことができます。

そして、ここ亀岡は「こち亀」で有名な秋本治先生の新作漫画「ファインダー」の舞台ともなっています。

文化資料館にも作品や秋本先生の紹介があり、さらに近くのハンバーガーショップ「ダイコクバーガー」は登場する女子高生たちの行きつけの店として大々的にコラボレーションしています。

こちらの意味での〈聖地巡礼〉をする人も増えているのだとか…。

 

いろんな楽しみ方ができる、亀岡市まちあるきでした。

 

半歩踏み出す、ものがたり旅

このブログ「凪の渡し場」では、日常に新しい視点を取り入れるために、旅に出ることの効用を何度も書いてきました。

自分だけの物語を見つける – ぼくらが旅に出る理由

自分視点の旅のすすめ – できるだけがんばらないひとりたび

また、一歩を踏み出す勇気が出ない人には、〈片足を日常に置いたまま、半歩ずつ踏み出す〉というコツもお伝えしました。

一歩を踏み出す勇気が出ないなら、半歩踏み出してみる

 

それを実現できるのが、日帰りで近隣の府県を訪れる「半日旅」です。

わたしは名古屋在住なのですが、愛知・岐阜・三重のいわゆる東海三県だけでなく、京都・滋賀・奈良・大阪といった関西地方も、その気になれば日帰りで行けてしまうのが便利なところです。

東海道新幹線を使えば大阪まで一時間ですが、在来線や高速バス、そして近鉄特急といった手段でも往復できます。

関西は歴史も古いだけ、さまざまな文化が何層にも重なり合っていて、新しい視点をみつけたり、いつもと違った経験をするのにうってつけです。

たとえば近鉄で大阪難波に着いたら、南海電車で和歌山に足をのばしたり、阪神電車で神戸に行ったり、さらにはそこから阪急電車で京都に行って、京阪電車でまた大阪に帰ってくるといったこともできてしまいます。

わたしはとりたてて鉄道マニアというわけではありませんが、ふしぎと関西の鉄道にはこころ躍るものがあります。

こちらの本では、漫画家・イラストレーターの細川貂々さんが描くイラストが、見事にそのときめきを表現しています。

表紙に描かれた顔をながめているだけで、行く先々に待ち受けているものがたりを予感させます。

 

ときめきといえばこちら。関西を中心に〈いいビル〉の魅力を発信するBMC(ビルマニアカフェ)のメンバーが執筆する、喫茶店という空間に秘められたものがたりを記録する写真集です。

関西に行くたび、こちらで紹介された喫茶店をひとつひとつ訪れるのが密かな楽しみです。

 

こんなふうに、ひとつのテーマに沿って旅をすることは、本を読むことにも似ています。

それは、さながら「ものがたり旅」といえます。

 

はじめて訪れた場所でも、前に行った場所と似た雰囲気を感じたり。

その街やお店の歴史を学ぶことで、思わぬつながりをみつけたり。

そして、次に行きたい旅の目的地が頭に浮かぶことも。

 

ものがたりの世界は、はてしなくひろがっていきます。

明治維新が変えた都 – 京都がなぜいちばんなのか

日本には多くの魅力的な街があります。

なかでも、京都という街は、とりわけ多くの日本人、さらには世界の人々の心をとらえています。

 

けれども、歴史を感じるその印象とは裏腹に、この街の風景は、明治以降に大きく様変わりしました。

明治維新と、それに引き続く明治天皇の東京行幸によって、「千年の都」という絶対的な立場が揺らぐことになったのです。

そのときに京の人々は、おそらく必死になって、京都という街の新しいアイデンティティを模索したことでしょう。

 

やがて、千本鳥居の伏見稲荷神社、金箔に彩られた金閣寺など、京都の名勝・古刹は鮮やかな色彩のイメージをまとっていきます。

それがカラー写真の普及した時代にマッチし、フォトジェニックな観光都市としての地位を確固たるものとしていきました。

とくに、東山区、岡崎公園のあたりは京都でも変化が大きな場所のひとつです。

琵琶湖からの水を水道や発電に使う琵琶湖疎水は、明治の一大事業といえるもので、それは京都の人々の暮らしを大きく変えていきます。

漆塗りの大鳥居が印象的な平安神宮も、明治に入ってから建てられたもので、応天門は、平安時代に放火されて失われたものを模して作られました。

この一帯では、明治150年記念である今年(2018年)10月に「岡崎明治酒場」というイベントも行われていました。

 

ロームシアター京都(京都会館)2Fの京都モダンテラスでは、平成の京都に鹿鳴館も出現していました。

 

明治からの歴史を持つ京都市動物園もリニューアルされて、かわいいロゴになっていました(漢字部分のフォントはダイナコムウェアのDF綜藝体)

 

少し南に行けば、こちらも漆塗りの社殿が目を惹く八坂神社があります。

この八坂神社も、明治の神仏分離によって祭神が素戔嗚尊(スサノオノミコト)とされるまでは、祇園精舎の守護神・牛頭天王をまつる祇園社という名前で、仏教色が強い場所でした。

地名の祇園も、祇園祭も、ここから来ているのですね。

祇園のパイロンは、こんなにもフォトジェニック。

 

そして祇園には祇園閣という、ちょっと変わったスポットがあります。

大雲院という寺院の中にある昭和初期の建築で、祇園祭の山鉾に似た建物は別名「銅閣」、本当に金閣・銀閣を意識して建てられたのだそうです。

ふだんは非公開ですが、不定期に「京の夏の旅」で特別公開されます。

第43回 京の夏の旅 文化財特別公開|京都市観光協会

第43回 京の夏の旅 2018年7月~9月/文化財特別公開や定期観光バスコースなど、京の夏ならではの魅力たっぷりのイベントが満載!

今年も公開されたので行ってきましたが、階段の壁いちめんに仏画が描かれていたり、最上階から京の街が見渡せたり、とても印象的な場所です(内部は撮影禁止)。

ほかにも祇園には歴史的な建物をリノベーションした施設やお店がたくさんあります。

 

「いちばん」という言葉は絶対的な優劣を表すものではなく、いわばナンバーワンではなくオンリーワンというべきでしょう。

自分だけの「いちばん」を探しに、京都に行きましょう。

 

人それぞれの京都偏愛マップ – 京都の迷い方

千年の歴史を持つ京都。

世界遺産に指定された史跡も数多く、観光地としても根強い人気を誇ります。

けれど、普通のガイドマップや旅行本で紹介されるような情報だけでは物足りない。

千年分の人の歩みが凝縮されたこの街には、もっと多様な楽しみ方があるはず。

 

そんなコンセプトで作られた本が、今回ご紹介する「京都の迷い方」。
株式会社 京阪神エルマガジン社|書籍のご案内「京都の迷い方」

京都にゆかりのあるライター、イラストレーター、あるいは京都に店を構える店主など、50人の執筆者が、それぞれが偏愛する京都をテーマに執筆。

そのテーマをAからZまでアルファベット順に並べた構成になっています。

 

…なぜ50音順じゃなくてアルファベット順なのか、とふしぎに思いますね?

その答えは本文を読んでもわかりません(笑)

表紙にもあるブラックレター体スクリプト体(いわゆる筆記体)が記事ごとに交互に使い分けられた構成にはタイポグラフィの味わいを感じることから、編集者、あるいはブックデザイナーの偏愛のようにも推察されます。

そんなデザインで、一冊の本としての統一感は出しつつ、書かれた内容は実に多彩。

Anko(あんこ)」「Kashiwa(かしわ)」「Senmaiduke(千枚漬け)」など、有名なものからそうでないものまで、好きな食べ物を紹介する人。

Daimaru Chika(大丸地下)」「Jazz Cafe(ジャズ喫茶)」「Public Bath(銭湯)」などの建物、スポットに注目する人。

もちろん、「Jintan(仁丹)」「Kanban(看板)」「Moji(文字)」など路上観察学的な視点で街の看板や文字を収集する人も。(全部同じテーマにまとめれば…とか言ってはいけないのです)

 

この本を片手に街を歩くというよりは、この本に載っていない自分だけの偏愛はなんだろう? と考えるほうが、楽しみ方がひろがる一冊。

 

じゃあ、とりあえず「文字」は除いて、わたしの偏愛する京都は…、と考えてみても、これだ! というのがとっさに思い浮かばず、はっとさせられました。

行ったことのあるお店、好きな作品のモデルになった街並み、そういったものは思い出せても、それが本当に偏愛と言えるかというと、疑問符がつきます。

 

まだまだわたしは、京都のことを知らない。

 

もっと京都のことが好きになりたい。

 

でも、好きになろうなんて気持ちでいたら受け入れてはくれない。

そんなふうに人を迷わす、それもきっと、京都というまちの魅力。