DMVという乗り物をご存じでしょうか。
Dual Mode Vehicle(デュアルモードビークル)という名の通り、電車とバス両方のモードで走行が可能な車両のことです。
渋滞などに左右されない、鉄道路線の定時性。
地域のニーズにきめ細かく対応できる、バス路線の柔軟性。
その両方のメリットを兼ね備えつつ、乗客は乗り換え不要で目的地に向かうこともできます。
名古屋人としては大曽根駅から高架を走る「ゆとりーとライン」を思い出しますが、あちらはあくまでゴムタイヤで走る〈ガイドウェイバス〉で、タイヤと鉄車輪の両方を備えたDMVとしては2021年に運行を開始した徳島県の阿佐海岸鉄道が世界初だそうです。
ということで今回は世界初の公共交通DMVに乗りつつ、気になっていた沿線スポット「むろと廃校水族館」にも寄ってきました。
と、ここでいきなりお詫びと訂正がございます。
むろと廃校水族館には、実はDMVだけでは辿り着くことができませんでした。
2022年8月現在、阿佐海岸鉄道の室戸方面への運行は土日祝の一往復のみとなっています。
行きの便は阿波海南駅(JR四国との乗換駅)11:01発、むろと廃校水族館12:04着。
大阪や名古屋方面からは、前泊しない限り乗ることができません。
今回は瀬戸内国際芸術祭の夏会期にあわせて香川にも行きたかったので、往復とも時間が合わず。
高知方面から土佐くろしお鉄道〈ごめん・なはり線〉を使うマニアックなプランも考えたのですが、このご時世なので、無難に(?)徳島の高速バスから乗り換えることにしました。
ちなみに〈凪の渡し場〉では各種マイナー趣向にそった旅程のご相談・ご用命も承っております。
高速バスも名古屋方面からは直通していないので、前回の四国横断と同じく、JR西日本の舞子駅から高速舞子のバス停に向かいます。


時間帯によっては、ひっきりなしに高速バスが到着するので、よく行き先を確認して乗りましょう。
今回は室戸行き(室戸・生見・阿南大阪線)に乗ります。

海岸に特徴的な消波ブロックの群れが見えてきたら、もうすぐ甲浦(海の駅東洋町)です。
高速バスは「むろと廃校水族館」最寄りのバス停には停まらないので、室戸岬まで行かずに水族館へ向かう方法はふた通りあります。
ひとつは「海の駅東洋町」からDMVではない路線バスに乗り換えるか。(追加料金は1,200円)
または、そのまま高速バス「椎名」まで乗って、徒歩で来た道を戻るか。



漁港に「みなと」、「海岸」に「はま」とルビを振っているのがおしゃれ。



国語教科書に谷川俊太郎さんの「生きる」があったので、「言葉の獣」で描かれた朗読ごっこもできます。

「平成の子はOHPを知らない」というキャプションに驚愕しました。そ、そんなはずは!


二階に上がると、寄贈されたという剥製がずらり並びます。

そして、目玉のプール水槽へ。


帰りのバスまで二時間くらい空いてしまったのですが、のんびり魚たちを見ていれば、いくらでも過ごせます。
なお、復路の高速バスで「椎名」からは乗車できないのでご注意。水族館前から出ている普通の路線バスで「海の駅東洋町」まで戻ります。

のぼりやマーカーも真新しく、DMVへの意気ごみが伝わってきます。

座席は事前予約制になっていて、運転手さんに席番号と名前を伝えます。
ちなみに、運転席うしろの1Bが前方の視界良好という情報があったので狙ってみました。

乗車しても、雰囲気はまるでバス。
モードチェンジの際は、ディスプレイに阿波踊りのような音楽が流れて実況がはじまるのがおもしろい。



鉄道モード中はいくつものトンネルをくぐるので、この線路を残した意義がありそうですね。




運転シミュレータもあります。ペダルはアクセルしかないので自動運転かもしれません。

JR四国牟岐線とレールが途切れてしまったのは少し残念ですが、ここからDMVとして新たな歴史を刻むことでしょう。
駅前には待合室やモードチェンジ撮影スポットなどもあります。
世の中の常識が変わる、未曾有のとき。
DMVは、廃線の危機がささやかれる地方鉄道路線の救世主となることができるのでしょうか。
新しい公共交通機関の未来に幸あれ。