広島の小さな土木遺産 – 京橋川の雁木群

※この記事は「凪の渡し場」創設以来ご好評をいただいている広島偏愛シリーズです。

広島といえば、厳島神社(宮島)と原爆ドームという、二つの世界文化遺産を有する街として知られています。

また、尾道水道、呉鎮守府、鞆の浦など、瀬戸内海の水の恵みによって発達したまちなみは、それぞれ日本遺産にも認定されています。

 

ですが、それ以外にもうひとつ、広島市には「土木遺産」として認定されたまちの風景があることをご存じでしょうか。

正式には「土木学会選奨土木遺産」といって、土木学会が認定するものです。

土木学会選奨土木遺産

土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存に資することを目的として、平成12年に認定制度を設立いたしました。 推薦および一般公募により、年間20件程度を選出しています。

土木というと、鉄橋やダムなど、大規模な公共工事で作られるインフラというイメージがあるかもしれません。

そうしたスケールの大きさも土木の魅力の一つですが、それだけではありません。

広島市に存在する土木遺産「京橋川の雁木群」は、ひとつひとつは小さく、水辺の風景に溶け込んで存在しています。

雁木とは、川岸に設けられた石段で、水辺に降りられるようになっているもののことをいいます。

かつては木で作られ、雁が群れになって飛ぶ姿が階段の形に似ていることから名づけられたそうです。

宮島の厳島神社が干潮と満潮で大きく姿を変えるように、広島では潮の満ち引きの差が大きく感じられます。

そこで、できるだけ長い時間、船を着けられるようにと雁木が設けられました。

 

広島駅のほど近く、京橋川には明治から大正にかけて作られた雁木群が多数存在します。

もともとは、この地域に住むひとびとがみずから築いた護岸だそうで、川沿いを歩いていくと、石の積み方も、雁木の形も、少しずつ異なる光景が展開されていきます。

そして、ここにも「厳島神社」が。

宮島と同じく、海上の守り神である市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)などをまつる橋本町厳島神社です。

いまでは水辺の空間を活かしたカフェテラスもあったりと、広島のひとびとと水とのかかわりの歴史を感じることができる、京橋川の風景です。

 

 

趣味旅行のつくり方 – ヨーロッパのドボクを見に行こう

あいちトリエンナーレも瀬戸内国際芸術祭も開催中だというのに、こんな本を読んだおかげで、急にヨーロッパ旅行に行きたくなりました。

ところで「ドボク」って?

専門用語としては、「建築」は家やビルなどの建物、「土木」は鉄道や橋といった公共施設を指すものとして使い分けられます。

ただ、ここでいう「ドボク」は、偏愛の対象としてのインフラ全体を総称するもの。

 

NHKの「熱中時間」にも出演されていた大山顕さんの団地・ジャンクション・高架下建築、石井哲さんの工場などが含まれます。(本書にも寄稿あり)

日本とヨーロッパでは、気候や地形の違いから、つくられるドボクのあり方もおのずと異なってきます。それは日本以上にスケールが大きく、想像を超えたデザイン。

 

干拓のために、32kmも続く大堤防を築き上げたオランダ。

リゾートホテルと巨大ダムが同居するスイス。

7132 Hotel – Exceptional Hotel and Therme Vals

露天掘りの炭鉱で掘られた褐炭を、ベルトコンベアで火力発電所に運んでいくことで電力需要をまかなうドイツ。

 

ぼんやりとイメージしていたヨーロッパとは違う光景がそこにはあります。

良い悪いではなく、こんなふうに自然と対峙してつくりあげてきた、それぞれの国の歴史を垣間見ることができます。

 

さて、この本を読んで、本当にヨーロッパのドボクを見に行きたい! と思ってしまったらどうするか。

 

本書の最後には、それぞれ近い施設ごとに組まれた、5泊7日のモデルツアーが紹介されています。

さらに、旅行をアレンジするための計画・準備から実施・帰国までを綿密に解説した、「ドボク旅行のテクニック」なる章まで。

ドボクに限らず、決められたパックツアーではなく、自分の趣味に応じた旅行プランを練る際にはとても参考になります。

 

ちゃんと「同行者の趣味嗜好をわきまえて!」なんて注意書きもあって頭が下がりますm(_ _)m

一人旅で自由に旅程を組むのも楽しいもの。

でも、同行者がいるときは、お互いの視点を取り入れることで、新しい魅力を発見することができそうですね。その土地だけでなく、相手に対しても。

 

いろいろな意味で、旅行のための視野を広げてくれる一冊です。