大阪市内のさまざまな建物が無料公開される、生きた建築ミュージアムフェスティバル・通称イケフェス大阪。
今年(2018年)も10月27日と10月28日に開催されました。
過去の記事はこちらからどうぞ。
今年は事前抽選のイベントには落選してしまいましたが、そのかわり二日間、天候にも恵まれ大阪のまちじゅうを散策することができました。
イケフェス大阪は、「フェス」という名が表すとおり、建築に興味のある人でないと楽しめないものではありません。
むしろ、ふだん建築を気にも留めず暮らしている人こそ、いつもと違う視点で街を眺めることで、新たな楽しみが生まれてくるはずです。
イケフェスでまちあるきを楽しむなら、京阪・大阪メトロ淀屋橋駅付近がおすすめです。
キタ・梅田とミナミ・難波を結ぶ御堂筋線は大阪の大動脈とも言える地下鉄路線です。
それに並行して走る四つ橋線(四つ橋筋)・堺筋線と、大阪では南北の道に「筋」という名前がつけられています。
南北の筋と東西の通で構成される碁盤の目のあちこちに、魅惑の建物が点在しています。
たとえば、淡路町通には、船場ビルディングというビルがあります。
船場というのは、豊臣秀吉の大坂城築城によって生まれた市街地の名前で、江戸・明治と時代が変わっても栄えてきました。
この建物は1925(大正14)年に立てられ、現在はオフィス用の賃貸物件となっていますが、中に入ると、おどろきの空間が広がります。
吹き抜けの中庭に、光が差し込みます。
屋上庭園で、タヌキと埴輪のツーショット。
入居しているオフィスのよそおいもどことなくセンスを感じさせ、こうした環境での働き方を想像してしまいます。
もう二区画北に行くと、道修町とよばれる通りに、また素敵な色合いのビルが見えてきます。
武田道修町ビルと呼ばれるこのビルも、入ってみると意外な空間でした。
武田科学振興財団の運営する杏雨書屋(きょううしょおく)は、本草・東洋医学書の資料館として、さまざまな貴重書や医学道具が展示されています。
杏雨書屋 | 事業内容 | 公益財団法人 武田科学振興財団
武田科学振興財団の杏雨書屋のご紹介です。国宝、重要文化財を含む貴重な資料の常時閲覧、特別展示や特別講演会を開催しております。
収蔵品には、中国最古の字書である国宝「説文解字」もあり、複製展示とはいえ、こんなところでさらりと国宝に出会えるとは思いませんでした。
この道修町は日本の医薬品産業発祥の地といわれ、多くの製薬会社の本社や資料館、薬の神様を祀る少彦名神社などが建ち並んでいます。
本好きや博物館好きにもたまらないエリア、通常の平日にも無料開館しているそうなので、ぜひ足を運んでみてはどうでしょう(道修町だけに)。
さらに本好きといえば、中之島にある大阪府立中之島図書館も外せません。
パイロンも思わず、図書館エントランスで記念写真です。
中に入ってすぐ、中央ホールのみ撮影可能です。
天井ドームに目を奪われがちですが、周囲のレリーフには古今東西の哲学者・文学者などの偉人の名が刻まれているので、ぜひその目で確かめてみてください。
展示室では近代大阪の礎を築いたという大林組の「大林芳五郎展」が開催中です。
さらに奥のレンタルスペースでは「プティ・タ・プティのテキスタイル展」と、プティ・タ・プティのお一人でもあるナカムラユキさんの展示が開催されていました。
左のエッフェル塔のイラスト、よくポスターや本などで見かけるタッチながら、日本人とは思っていなかったので、これからチェックしてみようと思います。
中之島図書館の隣には、設立100周年を迎える中央公会堂が悠然と鎮座しています。
市役所と図書館、そして中央公会堂が川に挟まれて並び立つ中之島の風景は、キタやミナミに負けず劣らず、大阪の顔といえるでしょう。
といいつつ、実はわたし、昔からよく大阪に遊びに行っていながら、こんな素敵な場所があることを最近まで知りませんでした。
それに気づかせてくれたのも、イケフェス大阪と、関連書籍のおかげです。
中央公会堂は中も外も、とにかく素敵なのです。
丸窓のステンドグラスのひとつには、大阪市の市章である澪標(みおつくし)も描かれています。
建物から、それに含まれるモチーフ、由来、物語…楽しみ方はどこまでもふくらんでいきます。