わたしたちは日々、さまざまなものに囲まれて暮らしています。
そんな中で、なんとも言えず手になじんだり、末永く大切に使いたいと思えるものに出会うことがあります。
そんな、モノへのあたたかで丁寧なまなざしが感じられる、こちらの本を今回はご紹介します。
民芸品のような一点ものの手仕事から、食器、綿棒のように大量生産されるものまで。
「はたらく」「あそぶ」「もてなす」「たしなむ」といった日常のシーンに合わせて、形も大きさもさまざまな品が登場します。
でもどれも、どこかなつかしくあたたかい。
こんなふうに、作り手の想いが込められたものに囲まれて暮らす日々を想像するだけで楽しくなります。
また、著者の津田さんの文章が、実に静かで素敵なのです。
好きなものを語るとき、誰しも独特の熱量がこもります。
それでいて、声高に主張しすぎない。それこそが著者のいう「たしなみ」につながるものだと感じます。
大きな声を上げた瞬間、聞こえなくなるものがある。見えないものに気づかなくなる。
日々の暮らしに静かに寄り添うものだからこそ、語り口もそれにふさわしく、静かで地に足のついたものでありたい。
そんな、ものを語る視点でも勉強になる一冊です。
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