ファシリーテーターという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ワークショップや参画型のミーティングなどで、コーディネーターとか司会進行に近い役目をもった人のことを言います。
ファシリーテート(facilitate)とは「容易にする」「促進する」と訳され、その場にいる人とのかかわりを容易にすることが、
ファシリテーションと言えます。
さまざまなイベントやワークショップに参加する中で、ときとして実に魅力的なファシリテーターの方に出会うことがあります。
わたし自身、ファシリテーターを引き受けることもありながら、その差は歴然としていて、それは何故か、どうしたらファシリテーションをうまくできるだろうか、と考えるようになりました。
そんなとき出会ったのが、以前に「自分をいかして生きる」という著書を紹介した「働き方研究家」西村佳哲さんによる、こちらの本。
さまざまな現場でワークショップを実践したり、ファシリテーターとして活躍されたりしている人との対話から「人とのかかわり方」という視点でファシリテーションについて考察していきます。
とくに、後半に紹介されている、心理学者カール・ロジャースの提唱した「パーソン・センタード・アプローチ」という概念が興味深いです。
ワークショップを促進するとはいっても、それは主催者の思惑による「こうあるべき」というゴールに向かうのではない。
あくまでそこに集った参加者ひとりひとりを中心に据えて、おのずから解決に向かって進み始める。
そんなパーソン・センタード・アプローチに必要な三つの条件があります。
- 共感
- 無条件の肯定的尊重
- 自己一致
自己一致というのはむずかしい概念ですが、この本を読むかぎりの理解は「自分らしくあること」。自分が思っている自分と、客観的に思っているその人が一致していること。
これもまた、なかなかに衝撃的でした。
まわりがいくら認めても、自分自身でそれに納得していないかぎり、一致していることにはならない。
そんなモヤモヤがわたしの中にあったこともたしかなので、それがわたしのファシリテーションに欠けている要素だったのかもしれません。
インタビューの中で、橋本久仁彦さんが語る言葉に、人間は「よくなりたい生き物である」というのがあります。
方法は人それぞれでも、毎日を生きる中で、ちょっとずつでもよくなりたい。
ワークショップという場は、そんなよりよく生きるための道の途中で、ふと集った人たちがつくりあげるもの。
そんな視点でファシリテーションをとらえ直せば、きっと、ファシリテーターとしての自分も、参加者としての相手も、よりよくなることができそうです。
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