おわり、はじまり、またつづく – 2023年広島、アートとまちあるき

おわり、はじまり、またつづく – 2023年広島、アートとまちあるき

三年ぶりの、制限のないゴールデンウィークがやってきました。

ということは、ということで。
本ブログ〈凪の渡し場〉でも、三年ぶりに広島偏愛シリーズを再開することができます。

三年のうちに、ひともまちも、大きく様変わりしました。

こちらは三年前、COVID-19による行動制限がはじまる直前に撮った写真です。
広島駅ビル ASSE が閉店し、駅周辺は2023年現在も大規模なリニューアル工事が進行中です。
「左側通行にご協力ください」のJR工事現場ねこがかわいい。

ポプラは中部地方から店舗が消滅し、広島市内の店舗も大半がローソン+ポプラになってしまいました。

真っ赤に燃える広島のコンビニ、ポプラ

それはそれとして。
今回は、2022-2023年にリニューアルしたアートスポットと、アートイベントを中心に紹介します。

広島市の写真を先に載せてしまいましたが、今回の旅は福山から。

広島県内で最も東に位置する山陽新幹線の駅である福山駅は「のぞみ」も停車するので、東名阪からも訪れやすいです。
もちろん九州新幹線乗り入れの「みずほ」も停まりますよ。

福山城の反対側、南口を出て西へ10分ほど歩いたところに、かつて百貨店「福山そごう」があったビルをリノベーションした「iti setouchi」がオープンしています。

施設を横切るように公道が通り、フードコートやシェアオフィス、公園のようなスペースが混在する不思議な施設になっています。
規格外デニムとパレットで作られたというソファは、座りごこちが抜群。
「iti」という名称は住所が福山市西町1-1-1であることと、「1F」をかけているようです。
エスカレータ部分がケージで閉ざされているのは工事中なのかと思いましたが、百貨店時代のモニュメントのような意味合いが込められているのでしょうか。

中央の吹き抜けを飾るのは、SLAP(Setouchi L-Art Project)によるアーティスト招聘プロジェクト「一日は、朝陽と共に始まり、夕陽と共に終わる」(福田恵)。地下部分では公開制作が行われていました。

こちらに置かれたパンフレットで、SLAPも参加する「GWは広島のギャラリーを巡ろう」というイベントを知りました。

Hiroshima Art Galleries Week 2023 (HAGW) - 2023/4/29(sat)-5/7(sun)

2023年4月29日(土)~ 5月7日(日)9日間 各ギャラリーの開館時間・休館日・イベント情報は こちら 広島県内のギャラリーをめぐるアートイベントHAGW (ハグ)13のギャラリーが連携し、初開催! 広島にはたくさんのギャラリーやアートスペースがあることをご存じですか? Hiroshima Art Galleries Week(通称= ...

期間中、広島市内を中心に、複数のギャラリーでさまざまなアート作品が展示されています。
予定に入れていなかったので一部しか回れませんでしたが、まちに溶け込むような空間で、路上観察的にも見どころがあります。

広島芸術センター
タメンタイギャラリー鶴見町ラボ

さて、広島といえば比治山公園に位置する広島市現代美術館は外せません。

大規模な改修工事が終わり、リニューアルオープン記念特別展「Before/After」が6/18まで開催中です。

広島駅から向かうなら、広島電鉄(ひろでん)5号系統の路面電車に乗って比治山下電停で下車、交番横の坂道を登るのが便利です。

驚いたことに、道に沿って置かれた桜色パイロン(これ自体かわいい)に、俳句があしらわれています。
短歌パイロンにもいつか会いたし。
さまざまのこと思ひ出す桜かな - 松尾芭蕉
印象的な円形屋根、黒川紀章の名シンボルはそのままに、アップデートされた現代美術館です。
これまでの広島をテーマにした作品、これからの未来を予感させる作品、そして美術館の改装自体をテーマにした展示まで、多岐にわたります。
そのひとつ「新生タイポプロジェクト」と連動してか、コインロッカーの番号が、ひとつづつ違ったデザインになっています。キーを選ぶのもたのしくなります。
新旧のサインデザインを見比べられる展示は、フォント好き必見。
ユニバーサルデザインという観点からは現代のゴシック体ほぼ一択ですが、明朝体の〈順路〉も、どこか違う時空へいざなわれる感じがします。
日常では絶対に押せない非常ベルも、この展示なら押し放題です!

せっかくなので帰路は、アートイベントをめぐりつつ、ゆっくり広島まちあるきを楽しみましょう。

パイロンの奥、「みうら」のロゴが絶品です。

比治山下からひとつ広島駅寄り、稲荷町電停の交差点。
このあたりは路面電車のルートが変更される予定で、すでに着々と工事が進んでいます。
今から四年後、2027年に見られる光景が楽しみです。
そのころには、まちなかの案内図もいっせいに架け替えられるはずで、これも貴重な歴史的資料になります。
電車で移動するとなかなか気づきませんが、路側には、かつての広島のまちを記録する銘板があちこちにあります。
こちらは「Before/After」でも展示があった、原爆ドームの在りし日の姿、産業奨励館。

原爆ドーム周辺・旧広島市民球場の変化も印象的でしたが、それはまた別の記事で。

何かがおわって、何かがはじまる。
そして人々の生活はつづいていく。
広島というまちを訪れるたび、その力強い悠久のいとなみを感じます。

Published by mizuho

文字遣い/探索士 ——夕霧に包まれ消えゆく島の名を知る術も無し凪の私は

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