本と珈琲の、幸せな邂逅 – 梟書茶房

本が好きです。本屋さんという空間が好きです。

たくさんの本が居並ぶ大型書店も心躍るし、思いがけない本と出会わせてくれる小さな本屋さんも素敵。

そして、またひとつ、本との新しい出会いかたを提案する場ができました。

それは、池袋の梟書茶房(フクロウショサボウ)

梟書茶房 [FUKUROSHOSABO]

選りすぐりの本と珈琲で「新しい出合い」を提供する「梟書茶房(フクロウショサボウ)」

場所はJR・東京メトロ池袋駅から直結の、エソラ池袋。

フクロウといえば丸善…? と一瞬思いましたが、おそらく関係なく、池袋だから、でしょうね。

ちなみにジュンク堂池袋本店も近くにありますが、文具専門の丸善池袋店も2017/8/10(木) にオープンするそうです。このときは開店直前で残念!

EsolaとEchikaで案内板のデザインを揃えているのが素敵です。

梟書茶房はエスカレーターかエレベーターで4Fへ。こちらも「書房」と「茶房」を合体させたようなロゴに心そそられます。

 

中に入ると、壁一面に中身の見えないブックカバーで包まれた本の数々。

神楽坂のかもめブックスさんがセレクトしたシークレットブックだそうで、表紙の紹介文を手がかりに、新しい本との出会いがみちびかれます。

何百冊という本の一冊一冊に、実に丁寧な紹介文が書かれていて、よく読めば、有名どころの本であれば「あ、あの本だな」とわかるものもあるので、選び手の言葉に信頼がもてます。

本のタイトルがわからないまま買うのにも不安をおぼえたのですが、この文章であれば裏切られることはないだろうと、こちらの本を購入。フクロウが隠れているカバーが気になったというのもあります(笑)

書名は明かせませんが、あとでカバーを開けてみると、気になりつつも未読の本だったので、ひとしきり感激してしまいました。

さて、こちらで本を購入すると、奥のカフェで梟ブレンド100円引きに使えるしおりがもらえます。

この「茶房」もまた、本と一体化した空間づくりがされています。

 

窓際、本棚に挟まれながら本に没頭できる空間。

開放的なテラスで、本とともに語り合える空間。

学校の図書館を思わせる、本と向き合える空間。

 

今回は図書館のブースを選んでみました。

このテーブルの下にも本が隠れていて、自由に読むことができます。

レシートのかわりに鍵が渡されるという粋な趣向も。

もちろん、コーヒーも食事もおいしく、至福のひとときを過ごせました。

本をモチーフにしたメニューもあるそうで、また次の機会は別のブースでも楽しみたいですね。

 

 

ひとりでも、誰かといっしょでも。

新しい何かとの出会いに、ぜひ足をお運んでみてください。

 

本を手にとる誰かを待つ仕事 – 本屋、はじめました

あなたは、月に何冊本を読むでしょうか。

何回、本屋さんに通うでしょうか。

 

いまや本を買うのには、コンビニ、ネット通販、電子書籍と、さまざまな方法があります。

それでも、本屋さんで実際に本を手にとってあじわう体験は、かけがえのないもの。

そんな想いに、すこしでも共感をおぼえてもらえるなら、ぜひ手にとってほしい本があります。

 

著者は、全国チェーンの大手書店であるリブロに長く勤めた辻山良雄さん。

名古屋店時代には、地元の本屋・雑貨屋と共同で、本でまちをつなぐイベント、ブックマークナゴヤを立ち上げています。

 

ブックマークナゴヤ  BOOKMARK NAGOYA OFFICIAL WEBSITE

BOOKMARK NAGOYA(ブックマークナゴヤ)名古屋を中心に大型新刊書店や個性派書店、古書店、カフェや雑貨店などが参加。街のあちこちで本に関連したイベントやフェアを開催する、『本』で街をつなぐブックイベントブックイベントです。

わたしにとっても「本屋」というものが、お店単独ではなく街と切り離せない存在であるという視点に気づかされたイベントです。

このイベントを通して知ったお店も多く、いまも毎年開催を楽しみにしています。

 

本書は副題に「新刊書店Title開業の記録」とあるとおり、辻山さんがリブロから独立し、2016年に東京の荻窪に自分のお店をオープンするまでの経緯と、開業後の様子までが描かれます。

本屋 Title

2016年1月、東京・荻窪の八丁交差点近くにオープンした新刊書店・Title(タイトル)。1階が本屋とカフェ、2階がギャラリーです。

事業計画や営業数値といった具体的なデータも交えながら、なぜこの時代に本屋を開くのかという想いが、静かに、それでいて力強く伝わってきます。

 

本屋の仕事は「待つ」に凝縮されていると辻山さんは言います。

本屋の毎日の光景として真っ先に思い浮かぶのは、お客さまで賑わっている店頭ではなく、まだ店内に誰もいない、しんとした景色です。静まりかえっていますが、本はじっと誰かを待つようなつぶやきを発しており、そうした声に溢れています。

 

そして、そんな本に出会うために、本屋を訪れる人がいる。

 

本を読む人が減っている、街の本屋が少なくなっていると言われ続けている中、それでも本屋さんで本を買いたい人は必ずいます。

 

実際に、第1回ブックマークナゴヤが開催された十年前と比較しても、本屋さんに求められるものは変わりつつあります。

けれど、その芯にあるもの、本を誰かに届けたいという想いはずっと変わらないでしょう。

その上で、不特定多数の「みんな」ではなく、特定の人に向けて届けるため、平均的な品揃えの良さではなく、ここでしか出会えないような本を置き、その瞬間でしか体験できないイベントを開催する。

本屋に限らず、誰のために仕事をするのか、なんのために人生を生きているのか、というテーマにも通じるものがあります。

 

 

最後に、この本自体について。

奥付に、使用されたフォントや用紙の種類までが記載されていたりと、細かいところまで実に丁寧につくられています。

ちなみに表紙のタイトル(店名ではないほうの)に使われているのはフォントワークスのニューシネマA

 

さらに、カバーを外すと、本屋Titleのある荻窪の地図が現れます。

いつか、この地図に描かれたまちを実際にあるき、本屋Titleを訪れる、その日が楽しみになりました。

 

名古屋の本屋の中心に – ちくさ正文館と、喫茶モノコト〜空き地〜

【追記】2023年、ちくさ正文館は惜しまれつつ閉店しました。この記事はアーカイブとして、当時の文章をそのまま残しておきます。
「喫茶モノコト」は大須の店舗で営業中です。


中日本、中京地区という異名をもつように、東京と京都・大阪の中間に位置する名古屋。

東西の文化の中継地点として、互いに交じり合いながら、独特の文化がはぐくまれてきました。

そんなまちの文化拠点のひとつといえば本屋。では、名古屋の本屋さんの中心といえばどこでしょうか。

わたしにとって、それは名駅のある中村区でもなく、栄のある中区でもなく、千種(ちくさ)区にあります。

栄から地下鉄東山線で2駅。

そこはまた、JR東海・中央本線とも交わる中継点。

そこに、ちくさ正文館という本屋さんがあります。

駅前のターミナル店は予備校も多いので、学生向けの参考書や漫画・雑誌にスペースをとった品揃えです。

けれど、ちくさ正文館といえば、そこから少し歩いた本店。

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このお店については、いままでも多くの本で語られています。

わたしがこの本屋さんをはじめて訪れたのは、ずいぶん前のこと。

でも実はそのとき、このお店がそんなに有名だということを知らなかったのです。

普通にまちあるきをしていて、普通に本屋さんがあると思って入りました。

そして圧倒されました。

こんな品揃えの本屋さんは、後にも先にも、見たことがありません。

ベストセラーが置いていないわけではなく。

買いたいと思って探していた本が必ず見つかるわけでもなく。

けれど、ここに来れば、ここに来ないと出会えなかったような本に、必ずといっていいほど出会える。

それが、実にさりげなく、押しつけがましくなく置かれている。

まるで凪のような、あるいは台風の目のような、その静かな空間のまわりに、大きなエネルギーが渦巻いている。

その意味で、ここが名古屋の中心であると思うのです。

そして、つい先日、このお店の二階が改装され、新しいスペース「喫茶モノコト〜空き地〜」がオープンしました。

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プレオープン企画として、あいちトリエンナーレ2016でも作品を展示されていた、岡部昌生さんと鯉江良二さんによる「ヒロシマの礫」の展示が行われていました。

広島の被爆した土と、こねられた団子。

港千尋監督の言葉に添えられた「あとはこれをどこに投げるかだ!」というキャッチフレーズが印象的です。

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トリエンナーレがはじまる前にも、同じ場所で、岡部さんの展示が行われていたことを思い出します。

投げられる日を待っていたかのように、静かに時を刻んでいた空間。

リニューアルされて、喫茶店となりながらも「空き地」というキャプションがつけられた場所で、これから何が起こるのか。

11/18(金)〜11/30(水) は写真家・キッチンミノルさんと詩人・桑原滝弥さんの「メオトパンドラ」出版記念展が開催中。

わたしが訪れた際は、まだ定休日など諸々未定だと伺いましたが、徐々にメニューも増やして喫茶店としても充実していくそう。

本屋として、喫茶店として、これからますます楽しみな場所です。