2018年最初の更新となります。今年もよろしくお願いします。
最近はブログ「凪の渡し場」以外の活動も増えて更新頻度が下がっていますが、引き続きフォントやまちあるきなどを通して、日常を新たな視点で楽しめるきっかけづくりをしていきたいと思います。
さて、今回は昨年に訪れた四国松山は道後温泉の話題です。
日本最古の温泉地ともいわれる道後温泉では、並みいる温泉旅館や街並みの中にアートを取り入れた、道後オンセナートというイベントが行われています。
道後オンセナート2018
道後オンセナート2018
今回はそのひとつ、祖父江慎さんと道後舘の「部屋本 坊っちやん」をご紹介します。
祖父江慎さんといえば、誰も見たことも無いような驚きの造本、装丁を行うブックデザイナーとして知られています。
そんな祖父江さんが、黒川紀章設計の温泉旅館・道後舘の一室をまるごと本に見立て、松山・道後温泉を舞台にした夏目漱石の小説「坊っちゃん」を組む…。
こんな耳にしただけで心躍る組み合わせ、ぜひこの目で見にいかなくてはなりません。
道後舘へは市内電車の終点・道後温泉駅から、道後温泉本館を通り過ぎ、さらに北へ向かいます。
三沢厚彦さんのクマに見守られ、やや急な坂を上ります。
向かいが工事中で願望がよくないですが、建物が見えてきました。
部屋本「坊っちやん」の見学時間は11時から最終受付14時まで。泊まる必要はなく、フロントで申し込み、見学料金1,500円を支払います。
時間になると、係の方に部屋まで案内いただけました。
のれんをくぐり、部屋に入ります。
そこは、文字通り本の世界でした。
地の文は明治期の書体をイメージしたと思われる、築地体前期五号仮名。
登場人物のセリフには筑紫A丸ゴシック。
さまざまなフォントを使いわけることで、文字だけで作品に表情が生まれます。
極太の数字や、たまに登場する手描き風フォントも気になります。
そんな文字を通して見る、道後温泉の街並みに見とれます。
バッタを床の中に飼っとく奴がどこの国にある。ここにありました。
このように、文字だけでなく作品にちなんだ仕掛けも随所にあります。
こちらは笹の葉に水飴を挟みこんだ清の笹飴。噛むと歯にひっついてしまうため、噛まずになめるよう注意書きがありました。
20分ほどの見学時間はあっという間に過ぎ、名残惜しくも部屋をあとにします。
見学のあとは、一階にある喫茶室で、ご当地名物・坊っちゃん団子と珈琲をごちそうになります。
喫茶室内では、祖父江慎さんのデザインされた本も閲覧できます。
右の非売品『坊っちやん』道後舘新聞バージョンは見学のお土産です。
明治の文学が、最先端の文字組みで、その舞台となった温泉地の一角にあらわれる。
部屋本「坊っちやん」は2019年(平成31年)2月28日までの公開が予定されています。
ほかにも、道後にしかない、道後ならではの作品が見られる道後オンセナート、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょう。