この記事を書いているのは2019年5月2日、元号は平成から令和となり、大きな時代の変わり目にいることを実感します。
今回は、新しい時代を生きるヒントになりそうな二冊の本を紹介します。
どちらもハードカバーと同じサイズ(四六判)ながらカバー無しの表紙に税抜670円と手に取りやすいデザイン、NHK出版から創刊された「学びのきほん」シリーズの本です。
本を開けば、全4回の著者による講義を聴くように、それぞれの分野についてわかりやすく学べる…という構成に見えますが、どうやら、それだけではありません。
批評家・随筆家の若松英輔さんによる「考える教室」では、プラトン、デカルト、ハンナ・アレント、そして吉本隆明といった名だたる思想家・哲学者の本をひもときつつ、哲学とは先人の考えを知ることよりも、むしろ自分自身にとっての問題を考えることが大事だということを教えてくれます。
国語辞典編纂者の飯間浩明さんによる「つまずきやすい日本語」では、〈正しい日本語〉〈間違った日本語〉があるわけではなく、コミュニケーションの手段としての言葉がときに誤解を生む理由をさぐりながら、人それぞれの言葉の使いこなし方を考えていきます。
〈学ぶ〉とは単に知識を得るだけのものではありません。
それは人が自分の人生を生きていくために必要な行為なのです。
ところで、飯間さんの本のあとがきでは、執筆のとき「どう表現するのが適当か、いちいち悩む」と書かれています。
まさにこのブログ「凪の渡し場」を書くときも、毎回同じことを悩んでいます。
単語の選びかたひとつ、文の組み立てかたひとつで、わかりやすい表現になったり、誤解を招く表現になったり。
もちろん、どれだけ気を配ったとしても、育ってきた背景や、ことばに対する感性は人それぞれなので、完全に伝え手の狙い通りに受けとめられることはないでしょう。
伝えたい想いが100%伝えられない。
それがことばのもつ限界であり、コミュニケーションの難しさでもあります。
けれど、それでも。
伝わらないかもしれなくても、伝えたい。
それがことばの存在する理由であり、その叡智が本というかたちで結集したからこそ、時代を超えて読み継がれることも可能になったのです。
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