はやくも暦は11月となり、瀬戸内国際芸術祭2016の秋会期も終わりが迫ってきました。
どうしても会期中にお伝えしたいのが、秋会期だけ会場となる西の4島、本島・高見島・粟島・伊吹島の魅力。
(四国本島と陸続きになっている沙弥島のみ、春会期)
東の島々に比べれば宇野港や高松港からも遠く、面積も小さいながら、そのぶん濃密な、島の時間を味わうことができます。
アート作品自体も、島の歴史や風習をテーマにしたり、島の人々といっしょに作り上げたものが多く見られます。
そこで、この島々では、ぜひ地元の人に話を聞くことをおすすめします。
芸術祭の公式サポーター・こえび隊のみなさんはもちろん、それ以外でもボランティアでガイドや手作りのおみやげをつくられている方が多くおられます。
粟島や伊吹島には、島四国とよばれる八十八か所めぐりがあります。
四国本島のお遍路さんと同じく、そうした旅人へのお接待の文化が引き継がれているおかげかもしれません。
今回は、そんな西の島のひとつ、粟島をご紹介します。
日本初の海員養成学校だった建物を利用した、粟島海洋記念館。
記念館向かいの「一昨日丸」とともに、日比野克彦さんのプロジェクトが展開されています。
一昨日丸が海底から引き上げたものを展示し、見る人に想像させる SOKO LABO。
路上観察学ならぬ、海底観察学でしょうか。
ここから三十分ほど歩き、港と反対側の西浜へ。
引き上げたレンガでつくられた「Re-ing-A」(レインガ)が沖合に漂流しています。
堤防には、日比野さんのことばを、地元の小学生が一文字ずつ手書きしたパネルがまっすぐに並びます。
そこにあるのは、過去形の記憶。けれど、こどもたちといっしょにことばをつむぐことで、それは現在進行形になり、未来へと向かっていく。
そんな希望を感じさせます。
漂流する記憶といえば、漂流郵便局。
届け先のわからない、あるいはもう届けることのできない人へ向けた手紙を預かる郵便局です。
三年前にはじまったこのプロジェクトが、ずっと継続され、いまも毎日、誰かからの手紙が届き続けています。
さいごに、旧粟島中学校の校舎を利用した粟島芸術家村。
島に滞在するアーティストが、島にゆかりのある人々から注文を聞いて作品を作り上げる「誰がための染物店」。
作品を見るということは、人の記憶にふれるということ。
ものがたりに耳をすますということ。
あなたは、島から、どんなものがたりを聴くでしょうか。
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