このブログ「凪の渡し場」では、日常に新しい視点を取り入れるために、旅に出ることの効用を何度も書いてきました。
また、一歩を踏み出す勇気が出ない人には、〈片足を日常に置いたまま、半歩ずつ踏み出す〉というコツもお伝えしました。
それを実現できるのが、日帰りで近隣の府県を訪れる「半日旅」です。
わたしは名古屋在住なのですが、愛知・岐阜・三重のいわゆる東海三県だけでなく、京都・滋賀・奈良・大阪といった関西地方も、その気になれば日帰りで行けてしまうのが便利なところです。
東海道新幹線を使えば大阪まで一時間ですが、在来線や高速バス、そして近鉄特急といった手段でも往復できます。
関西は歴史も古いだけ、さまざまな文化が何層にも重なり合っていて、新しい視点をみつけたり、いつもと違った経験をするのにうってつけです。
たとえば近鉄で大阪難波に着いたら、南海電車で和歌山に足をのばしたり、阪神電車で神戸に行ったり、さらにはそこから阪急電車で京都に行って、京阪電車でまた大阪に帰ってくるといったこともできてしまいます。
わたしはとりたてて鉄道マニアというわけではありませんが、ふしぎと関西の鉄道にはこころ躍るものがあります。
こちらの本では、漫画家・イラストレーターの細川貂々さんが描くイラストが、見事にそのときめきを表現しています。
表紙に描かれた顔をながめているだけで、行く先々に待ち受けているものがたりを予感させます。
ときめきといえばこちら。関西を中心に〈いいビル〉の魅力を発信するBMC(ビルマニアカフェ)のメンバーが執筆する、喫茶店という空間に秘められたものがたりを記録する写真集です。
関西に行くたび、こちらで紹介された喫茶店をひとつひとつ訪れるのが密かな楽しみです。
こんなふうに、ひとつのテーマに沿って旅をすることは、本を読むことにも似ています。
それは、さながら「ものがたり旅」といえます。
はじめて訪れた場所でも、前に行った場所と似た雰囲気を感じたり。
その街やお店の歴史を学ぶことで、思わぬつながりをみつけたり。
そして、次に行きたい旅の目的地が頭に浮かぶことも。
ものがたりの世界は、はてしなくひろがっていきます。