自分だけの物語を見つける – ぼくらが旅に出る理由

 

宇品駅ターミナル

 

あなたは、今までどんなどころに旅行に行きましたか?
忘れられない思い出の場所、何度も訪れたくなる土地がある人も多いと思います。

わたしにも、そんな場所がいくつかあります。

 

そのうちのひとつが、広島。

 

瀬戸内海のしまなみが好きだったり、

食べ物がおいしかったり、

魅力を語ればきりがない。

 

そんな広島ですが、修学旅行で行ったこともなく、大人になるまで訪れたことがありませんでした。

 

広島=修学旅行のイメージといえば、原爆ドーム、平和学習。
でも、それは誰かから与えられた物語。

自分のものではありません。

 

大人になってから訪れてみることで、それだけではない、自分が興味のある分野とつながった、新しい「物語」が見つかることがあります。

たとえば、建築・まちづくりの観点で、広島の平和記念公園を設計した丹下健三という建築家の理念によって、原爆ドーム、慰霊碑、史料館が一直線に並ぶようにデザインされているということを知ったり。

広島駅やその周辺が、再開発で訪れるたびにその姿を変えていったり。

 

平和の大切さはもちろんだけれど、けっして時を止めたままのところばかりではない。

荒廃した街からの復興と、日常を取り戻したあと、さらに変わっていくところと変わらないところの両方を目の当たりにできることに個人的には惹かれます。

 

そこにもきっと、ひとりひとりの物語。

 
どこかに旅に出るというのは、そんな自分だけの物語を見つけるためなのかもしれません。


どこかにあったかもしれない百貨店 – 百貨店ワルツ

今日は、読んだ本のご紹介です。

 

本はこちら、マツオヒロミさんの「百貨店ワルツ」。


 

二十世紀初頭、架空のデパート「三紅百貨店」の店内を案内するという体裁のショートコミック&イラスト集。

架空とはいいながら、本当にありそうな(あったかもしれない)雰囲気が見事に描き出されています。

 

レトロモダンなフォントで彩られた空想ポスターやパンフレットなど、図版も豊富。

なつかし広告的なものが好きな人は、きっと楽しめるはず。


 

あとがきによると、名建築と言われた大丸心斎橋店の建て替えを惜しむ気持ちも込めて作られた本とのこと。

なくなってしまう場所へのノスタルジーだけでなく、もともとなかった世界へと読者を連れていく、そんな力をもった本だと感じます。

クラフト・エヴィング商會さんに近いかなあ。

 

ちなみに。

この本との出会いは、三省堂書店名古屋高島屋店

この本の「百貨店」とはずいぶんイメージが違うけれど、名古屋駅を代表する百貨店のなかにある本屋さんです。

 

名古屋駅周辺は、最近も大名古屋ビルヂングがリニューアルオープンしたりと、めまぐるしく変貌していっています。

その先駆けとも言えるJR名古屋タカシマヤの一角で、この本に巡り逢えたことも感慨深いです。