トヨタ博物館、そこは路上観察と都市鑑賞の宝庫だった

愛知県長久手市は、2005年に開催された愛・地球博の会場の一つです。

その跡地である愛・地球博記念公園(モリコロパーク)には、今年(2022年)秋からジブリパークの開業が決定しています。
オープン後はしばらく周辺が混みそうなこともあり、いまのうちにモリコロパーク以外で気になっていたトヨタ博物館を訪れてみました。

トヨタ博物館・豊田市美術館・トヨタ産業技術記念館といろいろあってややこしいですが、違いがわかれば立派な愛知通。
長久手にあるトヨタ博物館は、トヨタ自動車が設立した、世界の自動車とその歴史を学べる博物館です。
(ちなみに豊田市美術館はトヨタ自動車とは直接関係ありません)

公共交通機関ではリニモ(東部丘陵線)芸大通駅から徒歩5分。
自動車なら名二環の本郷IC、もしくは名古屋瀬戸道路の長久手ICが便利です。

広大なアプローチにパイロンがお出迎え。

クルマ館の受付で入場券(大人1200円)を購入したら、トヨタ初の量産車、AA型乗用車に見守られて二階のフロアへ。館内は一部を除き撮影自由です。

二階と三階のフロア一面、世界の自動車が年代順に展示されています。
ふつうの博物館感覚で、急げば一時間程度でまわれるかな、と思っていたのですが、展示物のスケールが違うので、とてもそれでは足りません。

車両だけでなく、当時のポスターや開発時の資料なども充実しているのが嬉しい。

右は1929とあるので、およそ百年前のフォントでしょうか。今見てもかっこいいゴシック体!


想像してみましょう。街をゆけば、こんなクルマと文字にであえた時代があるのです。

あっ、(二代目)新型コロナだ!
…森博嗣先生の「ツベルクリンムーチョ」のネタでしたね。

ちょっとお仕事モードで、トヨタのものづくりコーナーへ。

トヨタの仕事といえば、有名なトヨタ生産方式だけでなく、圧倒的な利益を生む製品企画に欠かせないのが主査(チーフエンジニア)制度なのだそう。

別館・文化館のミュージアムショップでは、チーフエンジニアとしてファンカーゴやコンセプトカーpodなどを手掛けた北川尚人さんの著書が売られていました。
さらに文化館の二階へ。7/18まで企画展「小さなクルマの、大きな言い分」が開催中です。
マツダ・スバルなどの軽自動車、今見てもかわいい。

「明日があるさ」など当時の懐メロが流れていて感傷的な気分を出しつつ、しっかり軽自動車ならではの技術特性も解説されているのは、産業系博物館ならでは。

そして奥に進むと常設のクルマ文化資料室、ここが圧巻でした。

自動車黎明期からのカーマスコット、カーバッジなどが整然と並びます。
「スズキのマー坊とでも呼んでくれ。」
文字間が極端に詰まった、この写植の組み方だけで昭和のポスターだとわかります。
さらに戦前のポスター。当時は「トヨタ」ではなく「トヨダ」でした。
現在のTOYOTAからは想像もつかないかわいいロゴ、後ろに見えるのは名古屋城?

などなど、ひとつひとつに見所がありすぎて、いくらでも見ていられます。

それは考現学、あるいは路上観察、はたまた都市鑑賞。

クルマというものづくりに夢をいだいた人がいて。
やがて、クルマが街のすがたを変えていく。
そんな時代の熱気を閉じ込めたような資料室でした。

日本のご当地ナンバーを含めた、世界のライセンスプレート展示も文字好き必見です。

今回は近くの陶磁美術館にも行きたかったので寄れませんでしたが、図書室やミュージアムカフェ、レストランなども併設し、一日中でも楽しめる施設でした。

そこは長久手、別世界への道 – 愛知県立芸術大学50周年記念展示

それは昨日のこと。

いつものように、あいちトリエンナーレのイベントに参加するため、名古屋市東区東桜にある、愛知芸術文化センターを訪れました。

その地下に、アート関係の本やグッズが置かれている本屋さん、ナディッフ愛知があります。

これも普段通り、一通り店内をのぞいたあと、ふと店の外のパンフレット置き場を眺めていると「芸術は森からはじまる」という展示カタログを見つけました。

100ページ超オールカラーの、かなりしっかりした装丁。

これが無料配布されていることに驚いて、手に取ってみると、愛知県立芸術大学の50周年記念展示とのこと。

創立50周年記念展示「芸術は森からはじまる」 « 創立50周年記念公式サイト

しかも、会期は当日2016年9月24日(土)まで。

なんだか呼ばれた気がする…ということで、思い立ってその足で展示に向かうことに。

 

愛知県立芸術大学の最寄駅は、リニモ(東部丘陵線)芸大通駅。

栄からは、地下鉄東山線で20分ほど、終点・藤が丘まで行ってから乗り換えます。

地下鉄の駅が地上にあり、リニモの駅が地下にある、というのは地元では有名な話。

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わたしからすると、リニモは愛・地球博記念公園(モリコロパーク)へのアクセス路線というイメージでしたが、芸大をはじめ、沿線には大学がいくつかあり、学生の足にもなっています。

ただ、駅からは距離があったり、運賃が高かったりで、バスで通う学生も多いのだとか。

ちなみに、藤が丘から芸大通までは4駅、10分弱で290円。栄から藤が丘(300円)とあまり変わらない(^^;

そうはいっても、記念すべき日本初の磁気浮上型リニアモーターカーを実用化した路線。乗り心地のよさも地下鉄とは比べものにならないので、なるべく乗って応援したい…という気持ちもあります。

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芸大通駅に着きました。その名の通り、駅の北側、大学までの坂道を芸大通とよぶようです。

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ここは長久手市、近くにはトヨタ博物館もある、ということを感じさせます。もうインスタレーションがはじまっているかのような錯覚。

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金属活字のような大学銘が見えてきました。

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文字の墨だまり(画の交わるところ)が印象的なロゴ。

 

展示は校舎内のものと、大学周辺の森にまでひろがる屋外作品が多数。

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寺井尚行さんのサウンドインスタレーション。時にはひとりでつぶやかれる、ときには唱和する学生(?)の声。

 

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大学キャンパスを楽器に見立てたという、土屋公雄さんの「フォルテ」。

 

写真撮影NGなのかどうか不明だったので写真は控えておきますが、奈良美智さんと森北伸さんの作品がとても印象的。

森の中に出現する、大きな頭のような土塀の小屋。

 

また、吉村順三・奥村昭雄により設計された校舎自体も、すぐれたモダニズム建築として見ごたえがあります。

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芸術大学というのに足を踏み入れたのは、おそらくこれが初めて。

サークル活動や講義案内の掲示板があるのは総合大学と同じでも、石膏像に埋まった建物があったり、アトリエがあったりと、別世界に迷い込んだようなふしぎな感覚。

美術館のように作品を展示するだけではない、まさにここからアートが作られているという熱気の気配を感じることができました。

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【追記】

2016年11月18日からは、新栄町のヤマザキマザック美術館で「森のDNA 芸術は森からはじまる」と題した展示が始まるようです。