読書の秋、フォントの秋。文字を特集した雑誌を読みくらべ

つゆしもの秋。旅行のお供にも、嵐の夜にも、本さえあれば心落ち着くもの。そして、その本と切っても切れない関係にあるのが文字。

この秋には、嬉しいことに文字を特集した雑誌が何冊も発売されているので、一冊ずつ読み比べ、特色をまとめてみました。

 

まずは、誠文堂新光社から発行されている「デザインノート」。表紙のシンプルなデザインが美しい。

 

巻頭インタビューは字游工房の鳥海修さん。著書「文字を作る仕事」で語られた「水のような、空気のような」フォントへの想いは、こちらでも伝わってきます。

文字づくりを「素材づくり」と表現する鳥海さん。

その素材がどのような性格をもっていて、どのように料理すれば味を活かすことができるか。

文字を使う(遣う)側としては、それを考えることが大事だという学びを得られます。

 

2冊目は、マイナビ出版の「+DESIGNING」。
表紙の「実践文字組み講座」は見紛いようも無い、フォントワークスの筑紫Bオールド明朝。

 

こちらの巻頭はタイププロジェクト

凪の渡し場ではまだ紹介していませんが、雑誌の専用フォントからはじまった AXIS Font や、名古屋をイメージした「金シャチフォント」といった都市フォントなど、ユニークな取り組みをされている会社です。

 

この雑誌は、パソコンでフォントを扱う際の基本的な知識・技術がまとめられていて、実践という名前にふさわしい内容になっています。

とくにデザイナー以外にも役立つのが「OFFICEアプリのデザイン&レイアウト」。

WindowsやmacOSの標準フォント解説から、PowerPointやKeynoteなどでの読みやすく相手に伝わるプレゼン資料の作り方まで。

フォントの知識を、ビジネスの現場で活かすコツがまとめられています。

付録は「MORISAWA PASSPORT FONT MAP 2016」という、MORISAWA PASSPORTで使えるフォントを一覧にした小冊子。

 

そして、3冊目は月刊NdN。

(2016/10/16、雑誌の入手後に記載を修正しました)

昨年も同じテーマ「絶対フォント感を身につける」の特集があったり、たびたび漫画やアニメのタイポグラフィ演出について特集されている雑誌なので、その品質は折り紙つき。

ちなみに、この3冊の仲では唯一の右開き(記事がすべて横書き)の雑誌です。

 

絶対フォント感とは…。

文字を目にしたら、それがなんのフォントかを即座に見分けられる能力のこと。

絶対フォント感を鍛えるiPhone・Androidアプリもあります。

絶対フォント感

こちらの付録は「絶対フォント感を身につけるためのフォント見本帳 2016」。

2015年版の付録も、気になるフォントを見つけたときにすぐ調べられて非常に役立っています。

各社からリリースされているフォントがほぼ網羅されているので、正直なところ、この用途ではMORISAWA PASSPORT FONT MAPより便利ですね。

去年より16ページ増量してグレードアップ、掲載されるフォントは665種。

 

本誌も、絶対フォント感を身につけるための基礎知識から、実践編としてディテールの見分け方まで細かく解説。

本誌のインタビュー記事は、書体史研究家の小宮山博史さん。

さらに、全国の駅など鉄道にまつわる文字に注目したウェブマガジン「もじ急行」による「もじ鉄のススメ!」など、他にない独自の視点での記事が多くあります。

 

秋の夜長。本だけでなく、文字も存分に味わってみましょう。