ノンフィクションといわれる本のなかに、対談というジャンルがあります。
対談という名があらわすとおり、ふたりの著者が一対一で話し合った内容をまとめた本のことです。
TVのトーク番組のように、一方がホストとして、気になる人・会いたい人と順番に話をするという形式の対談集もあります。
あるいは、対談の相手は変わらず、一冊まるごと、特定のテーマについて掘り下げるというものもあります。
どちらにしても、微妙に活躍するジャンルが違うふたりの対話から、とりわけ興味深い内容が生み出されることがあります。
それは、それぞれが、作家として、あるいは研究者として、ひとつの本を書き上げることができるだけの力があるからこそ。
ある話題について、どちらかが詳しい知識や経験を持っていたとき、「そういえば…」と、異なる視点の話題を俎上にあげることがあります。
そうやって話題を提供できる人のことを「ひきだしが多い」と言いますが、相手にとっては、自分の知らないひきだしから出されたそれは、まるで未知の領域のことかもしれません。
それでも、自分のひきだしの中をあさって、似たような状況、考え方はないか? と思いをめぐらしてみる。
そうすると、まるで意外なところから、それに対する返事がみつかったりします。
そうやって、対話がつながっていく。
たとえていうなら、単著は、著者の主張や世界観を、読者に対して語りかける、一対多の講義形式のようなものです。
対談は、そういった一方的に教える/教えられるという関係ではなく、おたがいに教えあい、学びあう。そんな勉強会を読者も一緒になって聞いている感覚が味わえます。
対談本には、体系的な知識を得られる単著とはまた違った、より周辺にしみ出していくような魅力があります。
大勢での会話が苦手で、ひとりで考えることを好む内向型人間にとっても、他人と話す力を身につけるのにうってつけかもしれません。
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