写植の時代から、未来の書体へ – 今田欣一の書体設計「書物と活字と」展

パソコン上で文字を扱う、デジタルフォントが普及する前の時代。

活字のほかに、写真の技術を応用して文字を印刷する技術がありました。

それが写真植字、写植。

そんな写植の時代から現在まで活躍されてきた書体設計士のおひとり、今田欣一さんの書体にふれることができる展示が大阪で開催されていました。

大阪DTPの勉強部屋 ” 今田欣一の書体設計「書物と活字と」展示会

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会場はJR環状線天満駅、または地下鉄堺筋線扇町駅の近く、カンテレ扇町スクエア。

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この3Fにあるメビック扇町は、さまざまなクリエーターによるイベント・展示のためのスペースになっています。

ちなみに別会場では、全国のまちの人がつくった小冊子・ポストカードなどを展示する「わたしのマチオモイ帖展」が2017/1/29(日) まで開催中です。

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こちらも一冊一冊じっくり読み込んでいると、いろんなまちを旅した気分になる、すてきな空間でした。

木津川アート行ってみたい…!

木津川アートマガジン

京都府木津川市で隔年開催。アートの力でわたしたちのまちに光をあてる芸術祭、木津川アート。

 

さて、本題に戻って、「書物と活字と」展。

写研の社員時代から、独立されてからの今田欣一さんの書体が一堂に展示されていました。

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写研時代の代表作のひとつが、ボカッシイ

[航海誌] 第14回 ボカッシイ: 文字の星屑

[航海誌] 第14回 ボカッシイ,タイプフェイスデザイン事始:タイポグラフィ前夜/貘書体/白澤書体/文字する時間タイプフェイスデザイン漫遊:航海誌/福岡の夢/東池袋KIDS/コンペは踊ろう/筆のバラードタイプフェイスデザイン探訪:偉人伝/見聞録

ゴシック体の中身を、45度の斜線で表現するという、いま見ても画期的なデザインです。

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講演会では、漢字のハネを読みやすくするために斜線の入れ方や太さに苦労された点などを聞くことができました。

 

また、LINE BLOG で使えるフォントとして紹介した、マティスみのりやまと

LINE BLOG - マティスみのりやまと

このみのりやまとも、フォントワークスのマティスと組み合わせて使うための「かな書体」(ひらがな・カタカナフォント)として、今田さんが独立後に制作されたものだそう。

(当時は別会社のフォントワークスインターナショナルから依頼されたもの)

 

さらに今後、60代、70代の代表作として設計される予定だという書体までが紹介されていて、その計画性にも驚きの声が上がっていました。

 

主催の大阪DTPの勉強部屋では、わたしよりはるかに文字に詳しく、文字愛にあふれる方々と交流できたりと、いろいろな意味で勉強になりました。

 

印象的なお話が、書体は一文字ずつ作っただけでは作品とは言えず、文章や本のタイトルなどで組まれて、人につたえるものになってはじめて完成するということ。

 

多くの人は意識せず、完成された文章だけを見ていることでしょう。

でも、その奥には、一文字一文字に命を吹き込む、フォントを設計する人がいて、そのフォントを選んで組む人がいる。

 

あらためて、ひとりでも多くの人に、そんな文字の奥深さを知ってもらいたいと感じる時間でした。

 

教えるフォント、学ぶフォント – 教科書体

日本各地で雪模様となった土日、大学入試センター試験が執り行われました。

受験生のみなさんも、まわりに受験生がいる人も、落ち着かない週末になったかもしれません。

さて、そんな受験シーズン、名古屋の駅構内には、こんな広告が出ていました。

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河合塾は、名古屋を本拠地とする予備校。

大学受験の予備校 河合塾

大学受験の予備校、学校法人河合塾の公式ウェブサイトです。大学受験の予備校、学校法人河合塾の公式サイトをご利用ください。

わたしは予備校に通ったことはないのですが、高校時代、模試や参考書(河合出版)でお世話になりました。

河合塾千種校のそばには、ちくさ正文館書店もあるので、いまでもなんとなく親近感をおぼえています。

 

そんなわたしでなくても、きっと日本で学校教育を受けた人なら誰しも、なんとなく懐かしさを憶えてしまうであろう、このフォント。

国語の教科書などで使われることを想定した、モリサワの教科書ICAと思われます。

教科書ICA R | 書体見本 | モリサワのフォント

「教科書ICA」は、教育分野に必携の書体です。筆書きの楷書体から生まれた教科書体は、一点一画が分かりやすいように字画が整理されてきました。現代では毛筆の勢いは抑えられて硬筆的な書風が一般的になっており、字を習うための規範となる形が素直に表されています。字形は、文部省発行「小学校学習指導要領」に準拠していますので、教科書、参考書、副読本、学習塾テキストなどの用途に安心してお使いいただけます。

 

日本語フォントのスタンダードといえば明朝体ですが、歴史的経緯から、書き文字とは異なる骨格になっています。

それこそ「」という文字の縦棒も、手で書くときはまっすぐに伸ばさず、ちょっと猫背に書くはず。

漢字をおぼえはじめる子供たちが、そういった違いで混乱しないように、特別にデザインされたフォント、それが教科書体です。

 

児童、生徒にとってはあたりまえのように触れてきた、学ぶためのフォント。

でも、実は一文字一文字、教わる相手のことを思って作られた文字なのです。

 

これまで毎日、一歩一歩、着実に踏みしめた足取り。

その力を出し切れば、きっと花は咲く。

 

そんなメッセージにふさわしいフォントです。

 

新春・甚目寺タイポさんぽ

あけましておめでとうございます。

今年もまた、新たな視点を記事に載せてお届けできたらと思います。よろしくお願いします。

 

さて、新年の初詣は、尾張四観音がひとつ、愛知県あま市の甚目寺観音に行ってきました。

 

尾張四観音とは、江戸時代、名古屋城の東西南北を守護するために定められた四つの寺。

尾張四観音 | 識る | 名古屋を知る | 名古屋観光情報 名古屋コンシェルジュ

「尾張四観音」のページです。名古屋とその周辺の観光・イベント・コンベンション情報を提供する名古屋市の公式観光サイト「名古屋観光情報 名古屋コンシェルジュ」。名古屋の観光情報ならここをチェック!

北は甚目寺観音。

南は笠寺観音。

東は龍泉寺。

そして西は荒子観音。

毎年、その年の恵方に当たるお寺にお参りするのが良いとされています。

 

平成29年の恵方にあたる甚目寺観音の最寄駅は、名鉄甚目寺駅。

名古屋駅からは、一宮・岐阜方面の電車に乗ってから、須ヶ口駅で津島線に乗り換えて一駅です。

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改札口を下りると、さっそく路上観察にはうってつけな街並みの予感。

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いろいろとすごい美容室です…!

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まちあるきといえばマンホール。

ここは、2010年(平成22年)までは海部(あま)郡甚目寺町でした。

ということで、マンホールも、むかしの町名といまの市名が混在しています。

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「あまし・おすい」とひらがなで書かれると、なんだかよくわからない…。

 

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これも甚目寺町名義になっています。

こういった「飼い主があとしまつ」系の看板も、あちこちで見かけますね。

少し前から気になって収集しているので、いずれまとめたいところ。

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かと思えば、こんなかわいい「とまれ」も。

でもこれ、パンダの視点だと、左と右が逆では…?

 

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いい加減に甚目寺観音に向かいましょう。八画文化会館さん命名のハッシュタグでいうところの、宝石になった街路灯。

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角ばった和ろうそくのロゴがかわいい。

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貴重なローカルコンビニ? OKマートが見えてきたら、もう道路の向こうが甚目寺観音です。

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境内の街灯にもOKマート。

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けっこうな人出でした。

裏返っていますが、のぼりには節分会の案内が。

そういえば、元日に初詣をするのは明治以降に鉄道網が発達してからの風習なので、恵方参りとしては今日行かなくても良かったのでした。

まあ、それはそれとして、久しぶりにまちあるきをしてみたくなったのです。

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今年一年の無事を祈りつつ、帰路につきます。

 

おまけ。駅構内にPOP体が…。

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明朝体とゴシック体のあいだ – アンチック体

日本語フォントの代表といえば、明朝体とゴシック体。

でも実は、そのどちらでもないフォントが、あるジャンルの本では多く使われています。

それが、今回紹介するアンチック体

アンチックセザンヌ M|書体見本|FONTWORKS | フォントワークス

フォントワークスは筑紫書体やロダンなど日本語書体・フォントの販売、OEM書体・フォントの開発、LETSを提供しています。

 

いっけん明朝体のように見えますが、縦棒と横棒の太さが同じゴシック体に近く、筆の強弱がおさえられています。

アンチックはAntique、つまりアンティークと同じ語源。

その名から連想するように、昔の金属活字時代、ゴシック体の漢字と組み合わせて使うためにデザインされた書体だといいます。

 

いまでもアンチック体が使われているのは、辞書の見出しや、マンガのフキダシ(登場人物のセリフ)。

マンガの本編を紹介することができないので、表紙にフキダシのある作品を探してみました。

 

 

ゆるい読書家ネタが楽しい「バーナード嬢曰く」。残念ながら(?)表紙のひらがなは普通の明朝体に見えます。

単に本編のコマを拡大したわけではなく、あくまで表紙として描き下ろされたものだからでしょうか。

 

 

もちろん、フキダシにはアンチック体しか使われないわけではありません。

キャラクターの感情やシーンに応じて、さまざまなフォントが使いわけられています。

ときには、そうやってフキダシのフォントに注目してマンガを読んでみるのも面白いです。

 

そして、その感情が引き立つのも、普通のフキダシにアンチック体が使われているからこそ。

明朝体とゴシック体、そして漫画家と読者をつなぐ、欠かせない存在です。

 

実際に、マンガなどでフリーフォントのアンチック体を使いたいときは、フロップデザインさんのブログを参考にしてみてください。

漫画・同人誌に役立つフリーフォントガイド〜アンチック体・見出し・口調〜コミック描くのに必要なフォントは何?

漫画の吹き出しで使う文字はアンチック体が違和感なくて望ましいです。「アンチック体」とは、ゴシック体の漢字にあわせた明朝体っぽい「かな」が組み合わされた書体。通称「アンチゴチ」として、マンガの吹き出しや、昔の絵本などに多く用いられています。 …

日本の伝統をロゴで味わう – Typography 10

年二回刊行される、文字をテーマにした雑誌「Typography」。

10冊目となる2016年11月号の特集は「日本語のロゴとタイトル」でした。

 

日本最初に紹介されているのは、室町時代の京都から続く老舗の和菓子屋、とらや。

とらやの和菓子|株式会社 虎屋

室町時代後期、京都で創業した和菓子屋「とらや」のオンラインショップです。「とらや」を代表する羊羹や季節の生菓子の情報、和菓子にまつわる歴史・文化、店舗の情報、イベントのお知らせなどを随時更新しております。

和菓子と言えば、単なる食べ物としてだけでなく、色、形、パッケージといったトータルデザインで手に取る人を楽しませてくれる、まさに小宇宙。

そのロゴデザインに着目して味わうことができる、今回の特集。

小形羊羹 5本入 | 箱入・詰合せ | とらやの和菓子|株式会社 虎屋

室町時代後期、京都で創業した和菓子屋「とらや」のオンラインショップです。「とらや」を代表する羊羹や季節の生菓子の情報、和菓子にまつわる歴史・文化、店舗の情報、イベントのお知らせなどを随時更新しております。

小形羊羹「夜の梅」「おもかげ」「新緑」「はちみつ」「紅茶」…筆文字がよく似合う、このネーミングだけで心が躍ります。

和菓子の名前のことを菓銘というのだということを、はじめて知りました。

 

小形羊羹 | 歴史 | とらやの和菓子|株式会社 虎屋

室町時代後期、京都で創業した和菓子屋「とらや」のオンラインショップです。「とらや」を代表する羊羹や季節の生菓子の情報、和菓子にまつわる歴史・文化、店舗の情報、イベントのお知らせなどを随時更新しております。

とらやの公式ページを見ていたら、昔のパッケージも見つけました。ウエストがスリムな「羊」、このロゴも素敵ですね。

 

その他にも、本誌では様々なデザイナーの手がけたロゴが紹介されています。

美術館の特別展ポスターなど、なかなかデザイナーの名前が出ることは少ないので、作り手ごとの作品集として見られるのは嬉しいですね。

とくに気になったのが、野村デザイン制作室の野村勝久さん。

野村デザイン制作室

山口県にデザイン事務所を構えています。広告や美術館のグラフィックデザインなどをしています。

作品の一部はこちら。

特別展 超絶技巧!明治工芸の粋 ─これぞ、明治のクールジャパン!! – 山口県立美術館

特別展 超絶技巧!明治工芸の粋 ─これぞ、明治のクールジャパン!! 2015年2月21日(土)〜4月12日(日) 山口県立美術館にて開催。

コレクション特別企画 雪舟と雲谷派 テーマでくらべる – 山口県立美術館

コレクション特別企画 雪舟と雲谷派 テーマでくらべる 2014年10月30日(木)~2014年11月30日(日) 山口県立美術館にて開催。

「ロイヤル・アカデミー展 イギリス美術の華麗なる150年」|静岡市美術館

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明治・大正期のロゴの雰囲気を感じさせつつ、現代的なフォントを組み合わせても違和感がありません。

山口県で活動されていて、山口県立美術館や広島市現代美術館のポスターやカタログも多数制作されているそう。

思わぬところで広島偏愛シリーズとのつながりを感じて、勝手に嬉しくなりました(笑)。

ライフ=ワーク – 広島市現代美術館

「ライフ=ワーク」展では、広島の被爆者たちがその体験をもとに描いた「原爆の絵」(広島平和記念資料館蔵)を出発点に、自身の体験、生活、人生が色濃く反映する13作家の表現をあわせて紹介します。