書体デザイナー 藤田重信 – NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

筑紫書体などを生み出してきたフォントワークスのデザイナー、藤田重信さん。その藤田さんの仕事に迫る番組が放映されました。

藤田重信(2016年6月13日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

 

実際にフォント製作の現場を見て、あらためて何万という文字をデザインするのは、気の遠くなるような作業だと感じます。

しかも、一字が完成したと思っても、他の文字と組んだときに不自然な部分を修正する必要が出てくる。

そうなると、また別の文字が気になって…という、精緻に組み上げられたパズルのような世界。

 

そんな作業の中でもフォントの個性を保つために、「ためらわずに振り切る」ことで突き抜けたデザインをしていく。

「異端」と言われていますが、文字通りのプロフェッショナル。

 

開発中の書体をTV取材で公開したり、ブックデザイナーの祖父江慎さんや字游工房(競合他社!)の鳥海修さんに見てもらうというのも驚きです。

鳥海さんいわく、自身の「引き算」のデザインに対して藤田さんのデザインは「足し算」。

 

もともと、昔の文字に見せられてフォントに目覚めたという藤田さん。

たとえ今最先端の文字を作っていても、そこには過去何十年、何百年と「日本語の文字」を使ってきた人たちの思いが込められています。

 

だから、最終的にはひとりでデザインしたとしても、けっしてひとりだけの文字ではない。

もちろん、フォントがリリースされ、多くの人に使われることで、さらに未来まで、その文字は残っていくという夢があります。

 

デザイナー、クリエーターという仕事の奥深さを感じました。

 

 

迷わず使いわけたい! 筑紫A丸ゴシック・筑紫B丸ゴシック

ヒラギノ角ゴのお話をしたとき、Mac の最新OS El Capitan ではちょっとだけグレードアップしていると書きました。

実はそれだけではなく、新しい日本語フォントがいくつか追加でインストールされています。

そのうちのひとつ…いや、ふたつが今回紹介する、筑紫A丸ゴシックB丸ゴシック

 

本の表紙などでもよく見かける、使い勝手のいい丸ゴシック体です。


いきいきとした新世紀の明朝体 – 筑紫明朝

ヒラギノ明朝を紹介したので、次はヒラギノ角ゴ…と予想した方がもしいたら、なかなかわたしと近いフォント観。(フォント観ってなんだ?)

実際そうしようと思っていたのですが、ちょっとおもしろい事例を見つけたので、先に筑紫明朝のお話をします(笑)

 

筑紫明朝(つくしみんちょう)は、マティスと同じ、フォントワークスからリリースされているフォント。

 

フォントワークスの年表を見ると、マティスが1992年のリリース、筑紫明朝は2004年。

マティスと言えば新世紀エヴァンゲリオンですが、フォントワークスとしては新世紀のフォントは筑紫明朝のほうなのですね。

 

おもしろいのは、新しいフォントであっても、むしろ活字のような雰囲気を感じること。

 

いきいきした感じ。

生々しい漢字。

 

本のタイトルや、小説の本文で使われていても、とても映えます。

 

本のタイトルには、むしろバリエーションの筑紫Aオールド明朝のほうをよく見かけますね。

」の字を見比べると、わかってもらえるでしょうか。
オールド明朝のほうが、横棒が太くはじまって細くなっていく、筆遣いが強調されています。

 

さらに筑紫アンティーク明朝というものもあります。

「文」の字のはらいも表現されていて、名前どおり、アンティークな雰囲気をだしたいときにぴったりです。

あっ、ちなみにこの特別展はまだ行けてません。
夏に大阪に巡回するらしいので、その機会を狙ってます。

興味のある方、フォント観の近い方、お誘い合わせの上で行きましょう(笑)

 

さて、筑紫明朝に話を戻して。冒頭に言った、おもしろい事例というのはこちら。

木や石などの天然素材で建物を作る、三角屋のホームページ。

ほぼ日刊イトイ新聞が、最初で最後の「よその会社のホームページを作る仕事」をしたという、このサイト。

訪れてみると、Webフォントで筑紫明朝が(しかも縦書きで!)使われている、というのに嬉しくなりました。

フォントを見るだけで、ものづくりのことをしっかり考えている会社なんだな、と安心します。

 

そんな信頼感も伝える、筑紫明朝のお話でした。