建築で魅せる都市の力 – イケフェス大阪2017

今年(2017年)も、イケフェス大阪こと「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」に参加してきました。

イケフェス大阪2017 | 生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2017

生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪(通称:イケフェス大阪)は、毎年秋の週末に、大阪の魅力的な建築を一斉に無料公開する、日本最大級の建築イベントです。

 

イケフェスの説明については昨年の記事をどうぞ。

今年はあいにく台風の接近に伴い雨模様となりましたが、事前抽選のイベントに当選したこともあり、昨年にも増して楽しむことができました。

 

まずはキタと言われる梅田エリア、JR大阪駅から、さらに北に向かいます。

右奥に見えているのが今回の目的地、梅田スカイビルです。現在は看板にあるとおり、なかなかに長い地下通路を歩いて行く必要があるのですが、まもなく地上歩道が整備されるそうです。

スカイビル内の貸し会議室に集合し、ガイドツアーが始まります。

梅田スカイビルはふたつの独立したビルを上部でつなぎ、「空中庭園」という名の通り、まるで天空に浮かぶ空中都市が出現したような構造になっています。

 

その中ほどにある、オフィスフロアをつなぐ回廊も通らせてもらえます。近未来感にわくわくします。

 

バブル期に計画されたこともあってか、いわゆるバックヤード的なフロアまで絢爛豪華。

内装や外壁に使われる石にも、建築家のこだわりがあるそうです。

石といえば、このあと訪れた中之島地区でも、どの建物も随所にすてきな石が使われていました。

とある読書会でこちらの本が課題本になっているおかげで、建築を見ていてもまちあるきをしていても石が気になり、非常に困った状態になっております。

それはそうと、エントランスの天井に描かれたこの模様…。

実はこの建物、巨大な宇宙船の発着場(渡し場?)という設定だったとか。

先ほどの模様は、その飛び立った宇宙船の設計図なのだそう。

そう見るとたしかに、すっぽり宇宙船が入りそうなクレーターです。

そんな裏話もいろいろと聞けて、実に楽しいガイドツアーでした。

 

ちなみに空中庭園のロゴ、アルファベットのセリフと漢字のウロコが同じデザインでかわいいです。

 

空中庭園ではさらに、世界各地の建築みやげを展示したミニコーナーも。

台湾にもマスキングテープがあるのですね。いつか行きたい…。

イギリスの建築家、フランク・ロイド・ライトグッズ。建築好き・文房具好き・文字好きすべてにトリプルパンチ。

エジプトのヒエログリフのメジャーの神々しさといったら…! 誰かエジプト旅行する人がいたらお土産に買ってきてほしいです(笑)。

 

午後は前述の通り、中之島地区をまわります。

中でも今回、ぜひ紹介したいのは大阪ガスビルです。

床には貴重な沖縄の石。

名古屋でガスビルといえば栄や今池のどちらかを思い浮かべる方がほとんどでしょうが、ちょうどそれと同じように、大阪ガスビルもかつてはホールや料理教室などが入居し、大阪人のハレの場として認識されていたのだそうです。

 

大阪ガス:ガスビル食堂物語

大阪のシンボル・ストリート御堂筋に面して建つガスビル。その8階フロアにあるガスビル食堂は、大阪における欧風レストランの草分けのひとつです。その開業は、ガスビルが竣工したのと同じ昭和8(1933)年。それから約70年、ガスビル食堂は、同じ場所で、歴史と伝統を活かしつつ営業を続けています。

そして、8階のガスビル食堂は現在も一般向けに営業中です。

ゆるやかにカーブを描く窓際が一番人気の特等席だそう。

こちらはギリシャの家庭料理をアレンジした「ムーサカ」という名物料理。

 

80年あまりの歳月、この御堂筋の一角で時代の移り変わりを見つめ続けてきた建物。

どれだけの人々が、ここでともに食事をし、想い出に残る時間を過ごしたことでしょう。

 

歴史ある建物には、ひとの想いが息づき、いま新たに生まれてくる建物にも、その想いは受け継がれていきます。

それが重なって、建築というものが魅せる都市の力になります。

 

わたし自身は、大阪に住んだ経験はなく、おそらくこれからも大阪で暮らす可能性は低いでしょう。

けれど、これだけ豊かな財産があり、しかもそれをこうしたイベントによって日常の延長線上で魅せることができる、このまちを訪れるたびに、やっぱりいいな、素直にすごいな、と思います。

 

 

大阪に息づくたてものをめぐる – イケフェス大阪2016

大阪といえば、どんなイメージをもたれるでしょうか。

天下の台所、お笑い、たこ焼き、ソース二度づけ禁止、カモノハシのイコちゃん…。

でも、それだけではありません。

大阪には、明治から昭和まで、いわゆる日本の近代建築が数多く残り、その多くが、いまも現役で使われています。

その魅力に着目し、大阪のまちをまるごと建築の博物館に見立てて楽しむのが「生きた建築ミュージアムフェスティバル」、通称イケフェス。

生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2016

大阪の’生きた建築’が扉を開く特別な2日間。昨年は延べ3万人が参加した日本最大級の建築公開イベント。普段何気なく使われている大阪の’生きた建築’が主役の2日間です。いつもは中に入ることができない「あの建築」を見学する絶好のチャンス。秋の週末、一味違った大阪をお楽しみ下さい。

 

毎年開催されており、2016年は11月5日(土)と11月6日(日)のあいだ、多くの建物やビルが特別公開されました。

いくつかは、事前に申し込みが必要な抽選制となっており、残念ながら今回は落選してしまいました。

しかし、当日でも先着順で入場できるところが多くあり、じゅうぶん楽しめるイベントとなっています。しかも驚くことに、すべてが無料。

今回は、そのうちの一部をご紹介します。

 

まず、イケフェスを楽しむために必須なのが、公式ガイドブック(税込300円)。

2016年版は大阪市内の一部書店でしか販売されていないようだったので、当日購入することにしました。

今回は前から気になっていた、柳々堂さんへ。

地下鉄四つ橋線・肥後橋駅近く。店内に所狭しと並べられた建築関係書籍の数々、短い時間ながら楽しませてもらいました。

柳々堂(@ryuryudo)さん | Twitter

柳々堂 (@ryuryudo)さんの最新ツイート 大阪の建築書専門店です。営業時間は平日が8:30~19:00、土曜が8:30~15:00、日曜祝日は定休日です。 大阪市西区京町堀1-12-3

ここから東の御堂筋線・淀屋橋駅〜本町駅、堺筋線・北浜駅〜堺筋本町駅あたりは、イケフェス参加の物件が密集しています。

竹中工務店の入居する御堂ビル。こちらではガイドツアーに参加することができました。

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シンプルな内装を楽しめる受付ホール。改装前は、また違った雰囲気だったそう。

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屋上も。

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お土産に、神戸にある大工道具館の招待券もいただけたので、またそのうち行ってみたいです。

 

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ここからは戦前の建物。入口がかわいい芝川ビル。

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新井ビル。撮りたかった階段の写真!

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生駒ビルヂング。地下サロンのブループリントに、思わず溜息が漏れます。

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そして三井住友銀行大阪本店ビル。

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内部は天井のステンドグラスの一室のみ撮影可能でしたが、吹き抜けの営業フロアがすばらしい。

まさに商都としての大阪を象徴するような場所です。

ふだんの日常のなかで、こんな空間に訪れることができる大阪の人がうらやましく思えます。

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川を渡って、となりの住友ビルディングとツーショット。

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なんかいました。

 

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少し北に行って、イケフェスの公開対象ではないですが、大江ビルディング。

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この一室で、連携事業「みんなの建築ミニチュア展」が開催されていました。

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お城や太陽の塔など、名建築の数々をミニチュアで再現。

 

ちょっと寄り道して、京阪中之島線で天満橋駅まで。

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素敵かわいい紙もの・雑貨を扱う夜長堂さんにお邪魔しました。

夜長堂 | レトロモダン雑貨

~お知らせ~ 「夜長堂さんは何屋さんですか?」と、出会った人からよく聞かれます。 夜長堂は2006年頃より、古道具の買い付けと卸をメインで活動していました。 …

 

店主の井上タツ子さんは、関西のいいビルを愛好するBMC(ビルマニアカフェ)のお一人でもあります。

最新刊「喫茶とインテリア」はビル好き・喫茶店好きの方どちらにもおすすめ。この本についての記事は、またいずれ…。

 

さて、今回は基本的に中之島周辺に絞って建物を巡ったのですが、一か所、どうしても行きたいところがありました。

それは、地下鉄四つ橋線/御堂筋線・大国町駅近く、モリサワ本社ビル。

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言わずと知れた、大阪ならず日本を代表するフォントメーカー。このサイトでも、Webフォントサービス「TypeSquare」でお世話になっています。

株式会社モリサワ

「文字を通じて、社会に貢献する。」株式会社モリサワの企業サイト。フォント製品・ソリューション、文字を通じた文化活動、カスタマーサポート、企業情報を掲載しています。

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受付ホールの椅子、これがホントの字形!

イケフェスの一環として、5Fのショールーム「MORISAWA SQUARE」が特別公開されていました。

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エレベータ前フロアの数字も立体化。

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展示はというと、巨大フォント見本帳、活字、写植機など、まさにモリサワと文字の歴史を実感でき、とても今回だけでは時間が足りません。

モリサワ主催のイベント・セミナーで見学できることもあるそうなので、また何かの機会を見つけて、ぜひ再訪したいところ。

 

 

イケフェスの建物は、ふだん一般公開していないところもあれば、お店として普通に入れるところもあります。

その混在ぶりもまた、生きている都市らしさを感じます。