こうの史代が描き出す世界の風景 – 日の鳥・この世界の片隅に

今回は、漫画家・こうの史代さんの作品をご紹介します。

 

一匹の雄鳥が、東日本大震災で生き別れた妻を探して東北各地を巡るという形で描かれたスケッチ集。

震災の爪痕が残る風景。

日常を取り戻しつつある風景。

ときに重いテーマを扱いながら、こうの史代さんが描き出す世界は、いつでもあたたかい。
その世界観が、とても大好きな作家です。

 

そして、もう一作。

戦中の広島県呉市の日常を描く作品。

こちらは劇場アニメ化が決定しています。

 この世界の片隅に カット18大正屋呉服店この世界の片隅に - レイアウト原図 カット18の2

こちらの画像は、クラウドファンディングでの制作支援メンバーを対象にしたメールマガジンで、自由に公開・拡散が許可されたものです。

 

2016年秋の劇場公開を前に、呉市立美術館で7/23(土)から11/3(木)まで「マンガとアニメで見る こうの史代『この世界の片隅に』展」が開催されます。

お近くの方も、そうでない方も、ぜひどうぞ。

もちろん、わたしも行く予定です!

 

きっと見る人それぞれに、さまざまな感情を呼び起こす、こうの史代作品。

その世界が、より広がっていくのが楽しみです。

書体デザイナー 藤田重信 – NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

筑紫書体などを生み出してきたフォントワークスのデザイナー、藤田重信さん。その藤田さんの仕事に迫る番組が放映されました。

藤田重信(2016年6月13日放送)| これまでの放送 | NHK プロフェッショナル 仕事の流儀

 

実際にフォント製作の現場を見て、あらためて何万という文字をデザインするのは、気の遠くなるような作業だと感じます。

しかも、一字が完成したと思っても、他の文字と組んだときに不自然な部分を修正する必要が出てくる。

そうなると、また別の文字が気になって…という、精緻に組み上げられたパズルのような世界。

 

そんな作業の中でもフォントの個性を保つために、「ためらわずに振り切る」ことで突き抜けたデザインをしていく。

「異端」と言われていますが、文字通りのプロフェッショナル。

 

開発中の書体をTV取材で公開したり、ブックデザイナーの祖父江慎さんや字游工房(競合他社!)の鳥海修さんに見てもらうというのも驚きです。

鳥海さんいわく、自身の「引き算」のデザインに対して藤田さんのデザインは「足し算」。

 

もともと、昔の文字に見せられてフォントに目覚めたという藤田さん。

たとえ今最先端の文字を作っていても、そこには過去何十年、何百年と「日本語の文字」を使ってきた人たちの思いが込められています。

 

だから、最終的にはひとりでデザインしたとしても、けっしてひとりだけの文字ではない。

もちろん、フォントがリリースされ、多くの人に使われることで、さらに未来まで、その文字は残っていくという夢があります。

 

デザイナー、クリエーターという仕事の奥深さを感じました。

 

 

丸の内・丸ゴシック探索

まちあるきの楽しみ方はいろいろありますが、そのひとつに、風景の中から一定の縛りで何かを探すというものがあります。

今回は、街中のフォント(文字)の中でも、よく見かける丸ゴシック体を見つけてみます。丸ゴシック体だけに丸の内。

 

あっ、丸の内といっても東京ではなく、名古屋の丸の内です(笑)

 

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まずはこちら。名古屋市営地下鉄・丸の内駅。

ほとんどの出入口は新しい角ゴシックの看板に付け替えられていますが、なぜかここだけ、古いタイプの丸ゴシックが残っています。

 

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駐車場の看板。とくにまるまるとしてて、かわいい。

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はんこ屋さんの各種取り扱い商品、全部丸ゴシック。もちろん、実物は他のフォントも選べるはず!

 

 

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欧文フォントも丸ゴシック風味。「旧名称」が角ゴシック体なのがおしい。

というか、ビルの正面に旧名称が併記されているの、はじめて見ました。YHって何の略でしょう…。

 

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まさに、ワンダーMARUNOUCHI! な、まちあるきでした。

 

しまなみ海道の、知られざる転流のとき

このブログ「凪の渡し場」は、船が行き交う海の風景をイメージして名づけました。

海風と陸風が入れ替わる凪のとき、まるで世界が入れ替わる魔法がかけられたように、さまざまな視点を楽しむというのがコンセプト。

 

ところで、NHKの番組・新日本風土記を見ていたら、意外なことを知りました。

新日本風土記

平成28年6月10日(金) 放送回のテーマは、しまなみ海道。

広島県から愛媛県まで、大小さまざまな島に架かる橋が印象的です。

もちろん、橋が架かったいまでも、多くの船が行き交う光景は変わらずに見られます。

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その船の行き来を管制する仕事をしている人によると、潮の流れが変わる「転流」のときが、実はもっとも忙しいのだそうです。

海上では、船は右側通行というのが国際的なルール。

しかし、しまなみ海道の来島海峡付近では、潮流の関係で、あるときだけ島を避けるために左側通行にする必要があるそうです。

 

 

わたしの大好きな、いつでも穏やかに見える瀬戸内海の風景。

それは、このような知られざる努力によって守られているのだということを知り、ますます魅力が増しました。

 


こちらは番組でも紹介された、船長の視点で撮ったしまなみ海道の写真集。

広島を代表するパン屋さん、アンデルセン

わたしの広島への偏愛を一方的にお伝えする不定期シリーズ(笑)。

今回は、ベーカリー・アンデルセンのご紹介。

 

デンマークの童話作家、アンデルセンの名前を冠したパン屋さん。

わたしのお気に入りは、デニッシュハート。一口サイズなので、少食でも安心。差し入れにもぴったりです。
名古屋だと松坂屋栄店の本館地下2Fなどに店舗があります。それ以外にも、たまに各地の百貨店の催事場で販売していたりするので、見かけたら要チェック!

ハート型のペストリー『デニッシュハート』 | ベーカリーアンデルセン

 

そんなアンデルセンの発祥の地が、そう、広島。

この本によると、広島ではじめてサンドイッチを売ったパン屋さんだそう。

本通の一角にあった、原爆の被害を受けた被爆建物を購入し、誕生した店舗が広島アンデルセン

 

お店のオープン当時、ショーケースと建物の構造上、対面販売が難しいという問題が浮上したそうです。

それを解決するために生まれたのが、セルフサービス方式

いまや、全国のパン屋さんで見られるこの方式が、そんな建築の都合ではじまったというのがおもしろいですね。

 

ちなみに、この広島アンデルセン、立て替えのため一時的に紙屋町に移転しているそうです。

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こちらの店舗はまだ行ったことがないのですが、ウェブサイトを見ると仮店舗という印象はまったく受けません。

次に広島に行ったときは訪れてみたいです。

パーティー&セミナーフロアもあるのですが、入れる機会があるかどうか(^^;

建て替え後も、建物の外壁は一部残るそうなので、こちらも再オープンが楽しみ。

 

パンだけでなく、広島の歴史もあわせて味わいたい、アンデルセンのお話でした。