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変わりゆく街と道と – 芸備線 広島・備後落合・東城

ひさしぶりの広島偏愛シリーズです。

旅のはじまりは広島駅。
広島電鉄市内線の路面電車が高架に乗り入れ、大きく様変わりした駅ですが、今回はJR側からおでかけ。

全線を一枚に収めようとして、ものすごい長体になっている時刻表ですが、山陽線にくらべ半分以下の本数なのが、右端の芸備線。

とくに島根に向かう木次線と接続する備後落合駅は、昼間も5時間以上間隔が空き、到達するのも難しい〈秘境駅〉として知られています。

ただし、ことし令和七年度は芸備線利用促進策として、土曜休日に臨時列車が運行され、沿線でも連携企画が行われています。

備後落合駅だけでなく、沿線に行きたいところがあったので、この機会に乗車してみました。

備後落合行きの2輌編成は快速庄原ライナーとして運行され、かなりの混雑でした。

かつて陰陽連絡でにぎわった日々をしのばせる、長大な駅ホーム。

貴重な〈タブレット閉塞〉のタブレットがありました。

タブレット閉塞は列車が安全に行き違うため、タブレット通票を持つ列車しか走れない仕組みです。
もちろんコンピュータ搭載…ではなく人力のタブレット(通票)です。

昭和10年のプレート! 〈駅〉の点が省略されているところもポイントですね。

駅構内を散策していると、次の列車までの待ち時間があっという間です。
やってきた新見駅までの列車に乗り換え、東城駅で下車します。

ちょうど紅葉の季節、多くの乗客は景勝地・帝釈峡までの臨時バスに乗り換えていきました。

わたしはパイロンに見守られながら徒歩で街道をめざします。

歴史ある建物が点在する街道東城路。

登録有形文化財・三楽荘は明治期に建てられ、昭和の戦後からは旅館として使われていたそう。
細部にいたるまで丁寧なしつらえに感動します。

まさに谷崎潤一郎「陰翳礼讃」の世界。

毎年秋に街道を彩る〈お通り〉で使われる母衣(ほろ)。
もともとは戦国時代に身を守る武具だったものが、こどもを守る「母の衣」に変化したそう。
静かな街道が、ひととき華やかになる時間が頭に浮かびます。

街道を南に進むと、天保年間に創業したという酒蔵もあります。

「お」の一部が「の」になっているファッションセンスの高さに感嘆します。

東城川とも呼ばれた有栖川を渡ります。城山橋の欄干にも、お通りのレリーフが並びます。

川を渡ると、大きな本の字が見えてきました。

夏葉社「本屋で待つ」の舞台となった、ウィー東城店です。

実は本を読んでからずっと行きたいと思いつつ、芸備線のダイヤを考えると公共交通機関では訪問のハードルが高すぎて、なかば諦めかけていたのでした。

そんなわけで、作中に出てきたコインランドリーが併設された本屋さんがちゃんとここで待っていてくれたことに、うれしくなりました。

店内も、どこかなつかしい街の本屋さん。
化粧品やタバコも置かれていたり、ちょっと他では見かけない地元や広島の本がさりげなく置かれていたり、それでいて普通の雑誌や漫画がしっかり取り揃えられていたり、まちの日常生活になじんでいることを実感できました。

帰りは芸備線では当日中に広島に戻れないので、高速バスを利用します。
始発は駅前ですが、近くの東城小学校バス停が最寄のようなので、時間まで近辺を散歩します。

ヤマモトロックマシン旧自治寮に、イチョウが映えます。

「東城変電所」の丸ゴシック体、経年変化でかすれた墨によって、当時の筆使いがよみがえります。

高速バスは芸備線と異なる山陽自動車道ルートで、アストラムラインの大塚駅や、広島バスセンターを経由して広島駅に向かいます。アストラムラインも延伸が計画されており、まわりは真新しいビル群が目立ちます。

バスセンターといえば名古屋の名鉄バスセンター・名鉄百貨店はもうすぐ閉館してしまいますが、広島バスセンター・そごう広島はまだまだ健在。
謎のキャラクター・シカノスケが館内をわかりやすく解説してくれています。

そごう新館が入居していた隣のビルはリニューアルが進行中です。

この秋には「広島もとまち水族館」がオープンしています。

ゆらゆらと漂うクラゲを眺めつつ、変わってゆく街に想いを馳せます。

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