芸術の、その先へ。路上観察レジェンドDay

路上観察といえば、「凪の渡し場」でも何度か取り上げられている、赤瀬川原平さん。

その赤瀬川さんと生前ゆかりのあった方々を招いてのトークイベント、その名も「路上観察レジェンドDay」が先日、岡山市で行われました。

 

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当日のJR岡山駅。

駅前では「おかやま国際音楽祭」のマーチングコンサートがあったり、「岡山芸術交流」という芸術祭の会期がスタートしたりと、同時多発的にさまざまなイベントが行われていたようです。
岡山芸術交流については、後ほど別の記事で取り上げようと思います。

 

駅の西口から徒歩で数分、奉還町商店街へ。

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相変わらず、タイポさんぽをはじめると足の進みが遅くなってしまいます。

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このとなりのカフェバー、KAMPが会場です。

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主催は、日本ピクトさん学会の内海慶一さん。

「ピクトさん」とは、案内や警告に使われる人型ピクトグラム。
ときに、その身を犠牲にしてわたしたちに警告してくれる献身的な姿勢に対する敬称です。

 

ゲストは小学館「ドラえもんルーム」編集長の徳山さんと、おかやま路上観察学会主宰の河原さん。

徳山さんは、ご自身の路上観察の話だけでなく、赤瀬川さんが作られた「本物の零円札」を持参されていました。

世に言う「千円札事件」、千円札を模写したアート作品が偽札にあたるとして有罪判決を受けたあとの作品。

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この作品が「つくる」アートだとしたら、路上観察は「みつける」アート。

赤瀬川さんの著作「超芸術トマソン」は、当時の読売巨人軍の4番バッターながらまったく活躍しなかった助っ人外国人になぞらえて、街中にある無用物を「トマソン」として収集、分類した本です。

その記念すべきトマソン第一号が、このチラシのロゴにもなっている「四谷の純粋階段」。

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のぼっておりるだけで、どこにもつながらない階段。それは、すでに現代アートを超えた存在。

 

河原さんのトークでも、岡山にあったトマソン物件が話題に。

内海さんが地名を口に出されたので、気になってイベント後に現況を見にいってきました。

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こちらが、その階段。

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のぼると前には進めず。

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左に曲がるとスロープがあるのですが、

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それをおりると元の場所に戻るという。

 

近くに公園があり、当日はここでもおかやま国際音楽祭のイベントが行われていました。

芸術祭ではなく、音楽祭のイベントというのがおもしろいところ。

階段上のベンチで休憩したり、スロープで遊ぶ子供の姿も見られ、もはや無用物ではなさそうです。

かつてトマソンだった頃のエピソードは、地元でもほとんど知られていないとのこと。

引退して芸能界に転身した野球選手が、現役時代よりも有名になった…という感じなのでしょうか。

 

あまり岡山のことを知らない身からしたら、新鮮な話もありつつ、路上観察学の奥深さを感じることができました。

まちあるきには、無数の視点がある。

 

あつめる、わける、みえてくる – ゆるパイ図鑑

旅行が好きで、全国各地に出かけています。

そのさきざきで、お土産売り場やスーパーのお菓子売り場をのぞくと、なんとなく別の土地で見かけたようなお菓子があることに気づきます。

普通だと、その程度の認識ですぐ忘れてしまうところ、深く深く探索していく人がいます。

そしてついには、図鑑として一冊の本にまとめてしまったのがこちら。

 

 

発端は、言わずと知れた浜松名菓・春華堂のうなぎパイ。
うなぎパイ|お菓子|浜松のお菓子処 春華堂

「夜のお菓子」というキャッチコピーで一躍有名になったこのお菓子にあやかってか、いま、日本全国でご当地ゆるキャラならぬ、ご当地ゆるパイが増殖しているといいます。

この本では書名の通り、それらのパイを素材や形状で分類し、図鑑形式で紹介しています。

 

たとえば、あなご、どじょうといった特産の魚介類を練り込んだパイ。

あるいは、りんご、みかんなどのフルーツ系。

果ては、宇都宮餃子パイ、名古屋のきしめんパイ、広島風お好み焼きパイなど…。

なぜそこまでの情熱を傾けて、名産品をパイにしようとするのか、と思ってしまう品々。

 

形状の分類からも見えてくることがあります。

元祖うなぎパイをロールモデルとする長形パイ。

うなぎパイはウナギの形に似せているから長いことに違和感はありませんが、しじみパイ、りんごパイなどは、ほんらい長形にする必然性はありません。

葉っぱの形のリーフパイ、おまんじゅうのような包み形など、他の形状のパイと並べてみることで、うなぎパイに引きずられて長形になってしまったのでは…と推測できます。

 

かつて、無数の植物や動物の形態を観察し、比較し、分類することで、博物学や本草学といった学問体系がつくりあげられていったように。

現代にあふれる商品の中からでも、なにかに注目して、みわけることで、新たな発見があります。

 

これもきっと、路上観察、文字観察と同じように、現代の考現学のひとつ。

 

ちなみに、この類の本が、なぜか別々の出版社から同じ新書サイズで出ているので、購入しては同じ本棚に並べて揃えています。

いつか、こういった本だけの図鑑を作ってみたくなります。

 

真っ赤に燃える広島のコンビニ、ポプラ

広島東洋カープの優勝決定後、なかなか広島に行くことができていません。そのもやもやを解消する意味もこめて、ひさびさの広島偏愛シリーズをお届けします。

カープと言えば、真っ赤なチームカラーがトレードマーク。

ですが、広島には他にも、赤色をモチーフにした会社があります。

そのひとつが、コンビニエンスストア・ポプラ。
ポプラ | コンビニ

東京や大阪にも店舗がありますが、本社は広島。

名古屋をはじめ東海地方には店舗がないので、広島に行ったときはもちろん、他の地方でも見つけたらつい入ってしまいます(笑)。

広島の店舗の写真が見つからなかったので、瀬戸内海を挟んでお向かいの愛媛県松山市、南堀端店の写真をどうぞ。

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と思ったら、2016年9月現在、なんとこの店舗だけでなく、四国地方からポプラは撤退してしまっているようです。はからずも、貴重な写真になってしまいました。

 

そんなポプラの主力商品といえば、こだわりのHOT弁当、ポプ弁。
ポプラのこだわりHOT弁当(ポプ弁) – 商品のご案内 | コンビニ ポプラ

棚にはおかずだけのお弁当が並んでいて、レジで炊きたてのご飯を、その場でよそってくれるというサービス。

ご飯の量も、ちょっと少なめ・大盛など、自分の好みに応じて変えられるのもうれしい。

旅行で訪れると、なかなかコンビニ弁当を買う機会もないかと思いますが、素泊まりのホテルを利用した際など、一度ご賞味を。

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お弁当だけでなく、スイーツもお気に入りです。

こちらも広島を代表する洋菓子店・バッケンモーツアルトと共同開発したというhitotemaシリーズは、他のコンビニチェーンにも負けない味。

平和大通り近くに位置するクリスタルプラザ店では、他にも各種ブランドのお菓子が揃っていて、ちょっとしたお土産にも使えます。

 

最後に、もうひとつ。

ポプラでは、楽天スーパーポイントが貯まる楽天ポイントカードも使えます。

同じく楽天ポイントカードが使えるサークルKサンクスといい、なぜか赤系統のトレードマークが共通していますね。

そのサークルKサンクスは、親会社・ユニー(愛知県稲沢市)のファミリーマートとの合併で間もなく消滅してしまうので、いずれ楽天ポイントカードが使える唯一のコンビニチェーンになってしまうかも。

愛知の仇を広島で討つ…というわけではないですが、他のチェーンに負けず頑張ってほしい! と応援したくなるコンビニでした。

 

本展だけじゃもったいない! あいちトリエンナーレをモバイルで楽しむ

名古屋市・豊橋市・岡崎市、それぞれの会場で開催中の、あいちトリエンナーレ。

しかし、この現代アートの祭典、実はこれら三つの市以外でも楽しめることはご存知でしょうか。

それが、「旅する展覧会」と題したモバイル・トリエンナーレ。

設楽町・大府市・一宮市・安城市を順番に旅する、小さな巡回展です。

 

巡回展なら、本展を見ていれば、わざわざ行く必要はない…?

いえいえ、ミニサイズだからこそ、本会場とは違った楽しみ方があります。

 

Pokémon Go だって、モバイル端末でリリースされたからこそ、本家のポケモンとは違う層にも広まったように。

主催者にとっては、地元の公共施設で開催することで、トリエンナーレや現代アートのことを知らなかった人にも、認知度を高めるという狙いがありそうです。

逆に参加者の立場では、それでどのような展示の差が出るのか、あるいは他の来場者の見方がどう違うのか、といった複数の視点を感じることができます。

もちろん、ついでにまちあるきも楽しめる、というおまけつき。

 

今回は、大府市勤労文化会館で行われたモバイル・トリエンナーレを簡単にご紹介。

最寄駅はJR共和駅。

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駅前には、良い年月の経過を感じる看板が残っています。

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西尾信用金庫、略して「にししん」。西尾維新みたいですね。と言いたかっただけです。

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半田信用金庫は、もちろん「はんしん」。

 

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10分ほど歩くと、大府市勤労文化会館が見えてきました。大きな赤い椅子は、もとからあったパブリックアートのようです。

 

 

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入口前の広場には、名古屋市美術館(N-34)など、複数の会場で同時展開されているジョアン・モデさんのNET Project(M-14)がありました。

来場者がつないだ紐が、最終的には一つの大きなネットになります。

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なつかしの第1回の草間彌生作品! …ではなく、何かのイベントで使われたカボチャのようです。ハロウィンでも姿を変えて展示とのこと。

 

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エントランスに入ると、アドバルーンがお出迎え。と思ったら、こちらは高橋士郎さんのバルーンアート作品(M-37)だそうです。

形が定まっていない、あいちトリエンナーレ2016の九本のロゴにちなんで、三本のバルーンがゆっくりと動いています。なんだか文字組が気になる…。

 

くちなしホールでは、思った以上に大型の作品がゆったりと並べられていて、見ごたえがあります。

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味岡伸太郎さんの、各モバイル・トリエンナーレ会場の土を採取した作品(M-01〜04)。

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タロイ・ハヴィニさんの、パプアニューギニアの装身具をモチーフにした作品(M-07)。

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竹川宣彰さんの、人類の歴史とセミの家系図をかけあわせた作品(M-38)。

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なるへそ新聞もありました!(M-39)

 

控室では映像作品も上映されていました。

こちらは山村浩二さん(M-42)の作品。和室の小さなモニターで「あたま山」を見るというシュールな体験。

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今後は一宮市、安城市を旅するモバイル・トリエンナーレ。

本展と同じモチーフを使った作品もたくさんあるので、あわせて見ればもっとおもしろい。

アートといっしょに旅する楽しみを見つけてみてはどうでしょう。

名古屋テレビ塔で、いつもの日常が非日常に変わる – カメラ視点学

名古屋栄に位置する、街のシンボル・テレビ塔。

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そのテレビ塔で、9月10日、大ナゴヤ大学の授業が行われていました。

大ナゴヤ大学は街中をキャンパスに、誰でもが生徒、先生になれる学びの場。

今回は7周年を記念して、テレビ塔をリアルキャンパスにした企画が開催されました。

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そのうちのひとつ、「カメラ視点学」の授業に参加してのレポートをお伝えします。

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先生はグラフィックデザイナーの鷹巣由佳さん。

普通のスマホで撮る写真でも、切り口を少し変えるだけで、日常と非日常がくるりと入れ替わる。

そんな写真や、それを素材にした作品を制作されています。

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まずは先生から、日常を切り取る視点、「自分フィルター」のつくりかたをレクチャーいただいてから、実際にみんなで街に出て実践していきます。

わたしも、ふだんはあまりやらない方法で写真を撮ってみました。

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隙間から、向こう側の世界をのぞいてみたり。

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植物の下から世界を見てみたり。

 

そんな中、マンホールに彫られた文字を見つけて、ふと思いついたのが、文字を一字だけ切り取る方法。

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手持ちの紙を筒状にして、スマートフォンのカメラにあてて撮影。

朧月夜のような、ふしぎな世界が生まれました。

これに味をしめて(笑)、いろんな文字を撮っていきます。

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名古屋の市章、まるはちのマンホール。

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テレビ塔の一室、ドアに貼られた謎の数字も。

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文字が円の外に拡散していくようなエネルギーを感じます!

タイポさんぽの折、「よきかなひらがな」のように一文字だけ切り出したい、というときにも応用できそうですね。

 

テレビ塔に戻ったら、全員で撮った写真を共有。他の生徒の方の写真も、それぞれの視点で面白いものばかり。

授業時間が短かったのが残念でしたが、まちあるきの楽しみがますますひろがるヒントをもらえました。

 

ちなみに、授業では写真を撮るときの手法として、カラーフィルターなどを使う手法が紹介されていたのですが、その後すぐ、思いがけず実践する場にめぐまれました。

それはあいちトリエンナーレ2016の、田島秀彦さんの作品(N-17)。

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愛知芸術文化センター11F。展望回廊の壁に、タイルや鏡などの日用品を並べた作品ですが、その窓側に多彩なカラーフィルターが貼られていたのです。

芸術文化センターはオアシス21を挟んでテレビ塔のすぐそば。ということで、テレビ塔を存分にカラーフィルターで撮影することができました!

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まさに非日常のテレビ塔。

なお、テレビ塔一帯では、10/15(土)・10/16(日)に、SOCIAL TOWER MARKETというイベントが開催されます。
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こちらも毎年、素敵な名古屋に出会える場となっています。

ぜひ、あなたのまだ知らないテレビ塔に会いに行ってみてください。