しまなみ海道の、知られざる転流のとき

このブログ「凪の渡し場」は、船が行き交う海の風景をイメージして名づけました。

海風と陸風が入れ替わる凪のとき、まるで世界が入れ替わる魔法がかけられたように、さまざまな視点を楽しむというのがコンセプト。

 

ところで、NHKの番組・新日本風土記を見ていたら、意外なことを知りました。

新日本風土記

平成28年6月10日(金) 放送回のテーマは、しまなみ海道。

広島県から愛媛県まで、大小さまざまな島に架かる橋が印象的です。

もちろん、橋が架かったいまでも、多くの船が行き交う光景は変わらずに見られます。

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その船の行き来を管制する仕事をしている人によると、潮の流れが変わる「転流」のときが、実はもっとも忙しいのだそうです。

海上では、船は右側通行というのが国際的なルール。

しかし、しまなみ海道の来島海峡付近では、潮流の関係で、あるときだけ島を避けるために左側通行にする必要があるそうです。

 

 

わたしの大好きな、いつでも穏やかに見える瀬戸内海の風景。

それは、このような知られざる努力によって守られているのだということを知り、ますます魅力が増しました。

 


こちらは番組でも紹介された、船長の視点で撮ったしまなみ海道の写真集。

あなたにとっての「お気に入りの本屋さん」を見つけよう

本好きであれば、自分だけの「お気に入りの一冊」があるという人は多いと思います。

では、あなたにとって「お気に入りの本屋さん」はあるでしょうか?

 

ほしい本があれば、Amazonなどネットですぐに注文できる時代。

それどころか、電子書籍であれば、届くのを待ったり、引き取りにいく必要もなく、その場で読みはじめることだってできてしまう。

 

それでもわたしは、本屋さんに足を運ぶ理由はあると思っています。

 

わたしが行きたいと思える本屋さんには、とくに買いたい本が決まっていなくても、何かおもしろい本がきっとある、という棚があります。

本屋さんの棚は、ひとつとして同じものはありません。
もし、機械的に売上順で並べられていたとしても、その店の立地条件だとか、客層などが反映されることで、結果的に個性が表れます。

それだけでなく、店員さんが売りたいという思いが込められていたり、その店の強みを生かしたコーナーが作られていたりすることも。

最近では、チェーン店ではない街の本屋さんでも、個性的なイベントやフェアが行われていたり。

 

いわば、本屋という空間自体が、ひとつの物語のようなもの。

せっかく本を買うのなら、それを買う行為自体も楽しんでみるのはどうでしょう。

 

もちろん、お気に入りの本屋さんを見つける視点もひとつだけとは限りません。

お店の建物やインテリアが好き、というのでも。
子供の頃、よく本を買ってもらった思い出がある、というのでもいい。
店員さんが素敵、というのだって、いいのではないでしょうか。

あなたの住んでいる街にも、あるいはよく訪れる場所にも、きっと、お気に入りの本屋さんが見つかるはず。

 

ちなみに、お気に入りの本屋さんを、知り合いといっしょに訪れてみるのもおもしろいです(^^)

自分ならふだんスルーしてしまうような棚に目をつけたり、あるいは本の選び方に、その人の個性が表れていたり。

また新しい視点に気づけると思います。


「平民宰相」の知られざる世界旅行 – 原敬の180日間世界一周

原敬といえば、歴史の教科書などで「平民宰相」として名前だけは知っている、という方がほとんどのはず。

そんな彼が、総理大臣に就任する十年ほど前に、私費をなげうって世界一周旅行に出かけていたことを知っているでしょうか。

 

この本は、その旅程を本人自筆の日記から読み解いていくノンフィクション。

基本的に、このブログで政治のことを話すつもりはありませんし、原敬の政治家としての活動がどうこう、というのもここでは触れません。

それでも、この本を紹介しようと思った理由はふたつあります。

 

ひとつは、これが大きな理由ですが、政治家の評伝にもかかわらず「世界一周」をメインに取り上げるという、その視点に感服したこと。

原敬自身も、基本的には政治家と会わず、工場や街の様子を熱心に観察して記録に残しています。

今ほど国際化していない、けれど180日間で世界一周ができてしまう程度には産業化が進展していた、そんな時代。

読み進めていくうちに、まるでいっしょに旅をした気になります。

 

そして、もうひとつ、こちらはとても私的な理由です。

この本を読んだのは、ちょうど旅行のとき。

まさか世界一周でもなく、ふつうの国内旅行。
大陸横断鉄道よりもシベリア鉄道よりも短い、けれど現代人には身近な新幹線。

読み切った本を旅行カバンに入れて、駅のホームを出ると、突然の雨。

その雨がしみ込んで、本を濡らしてしまいました。

今も昔も、紙には大敵の雨。

けれど、これも実に旅行らしいトラブル。

きっといつか、この本を手に取るたびに、そのことを思い出すでしょう。

 

歴史に名を残すような大人物でも、その業績とはほとんど関係のないところで、きっと無数の大事な思い出があったはず。

たまたま、それが日記の形で残っていたからこそ、この本が私たちの手に届いた。

この世界の片隅にあるようなブログでも、それを読んだ人に、何かが伝わるかもしれない。

それをありえないと言う前に、やってみればいい。

 

そんなことをふと思って、文章の形にしてみたくなったのです。

まちあるきの楽しみが無限にひろがる – 街角図鑑

まちかどのさまざまなものを対象として楽しむ、路上観察。

その楽しみを、さらにひろげてくれる一冊に出会いました。



「図鑑」という名の通り、街で見かけるさまざまなものを徹底的に分類・解説。

たとえば、工事現場で見かける赤いコーン。

あれの正式名称を「パイロン」というのだとはじめて知りました。

さらに、会社によってさまざまな商品名がついているようで、その見分け方まで丁寧に図解。
「とにかく太くて、重いやつだ」とか、こどものころに読んだ図鑑のような文体も楽しい。

 

これまでも、いろいろな視点でまちあるきを楽しんでいたつもりでしたが、まだまだ見えていないものがあることを思い知らされました。

 

実際、手持ちの写真をランダムに見返してみれば、いくらでもこの図鑑にあるものが写っていることに気づきます。

たとえば、タイルのカーブがかわいくて撮った、こちらの写真。

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そこには、ひっそりと埋め込まれた送水口が。
送水口とは「消防車からの放水が届きにくいところに水を送るために設置されるもの」だそう。

さらに上部には、自生したのか誰かが植えたのか、路上園芸が花を添える。

ひとつの完成されたアートのようにも見えてきます。
さらに、ずいぶん前に野良猫を追いかけて撮った、この一枚(笑)

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この本を読んだあとに見ると、こんな感想を抱きます。

かなり古そうな郵便ポスト。脚の長さと差入れ口がひとつなことから、1号角形らしいと推測。
(ちなみに郵便局の看板がオレンジなので、民営化後の「郵便局株式会社」時代のもの)

自販機が茶色いのは景観配慮型? 左右にある回収ボックスが兄妹みたいでかわいい。
「保険調剤」の看板手前の街灯がレトロでおしゃれ。
そのうしろに置かれた水色ののぼりベース、半球型でこれもかわいい。
いちばん奥、「止まれ」の標識が側溝側にカーブしていて、車のじゃまにならないようにしているっぽい。

あと、いちばん大きな「薬局」の看板がPOP体…というのは、この本を読む前から気になるところですね(^^;

 

もちろん、この本に載っていないものでも、気になるものがあれば自分なりの視点で観察してみるのが良いと思います。

それを習慣にすることで、カラーバス効果で、似たものがますます目につくようになり、さらに深く知ることができる。

そうやって、世の中の楽しみ方が無限にひろがっていきます。

 

6月11日には、著者の三土さんと寄稿者による出版記念のスライドトークも開催されるそうで、こちらも気になります。

ありふれた街の見え方が変わる『街角図鑑』

考える力を養うために、「説明する」習慣をつける

テレビや本などで、ニュースをわかりやすく解説することで知られるジャーナリストの池上彰さん。

 

そんな池上さんが、ある番組で「話題になっている言葉やことがらについて、つねにどう説明するか考える癖をつけている」ということを言っていたのです。

これを聞いて、いわゆる池上解説の秘訣に触れた気がしました。

 

人に説明するということは、想像する以上に難しいこと。

 

たとえ自分がよく知っていると思っていたことでも、それを何も知らない人に説明しようと思うと、とたんに言葉が出なくなります。

細部の知識があいまいだったり、専門用語を使わずに伝えることができなかったり。

 

つまり、どう説明するか考えることで、そのことについてより深い知識を得ることにつながっていきます。

 

 

このブログでもまさにそう。

「明朝体」とか「ゴシック体」というのはそもそもどんなものなのか。

説明の言葉を自分で探すことで、自分もフォントに対する知識を深めることができています。

 

 

同じように、あなたが自分の好きなことを紹介するなら、と考えてみてください。

 

ブログやTwitterなどのSNSアカウントをもっている方なら、実際に書くつもりで。
あるいは、家族や友人に対して説明するつもりで。

 

特定の相手を思い浮かべた場合、その人ならどういうふうに説明すれば興味をもってもらえるか、という視点も生まれます。

 

さらに、あえてちょっと変わった(ひねくれた)言い方で説明するなら…と考えていけば、もうそれだけでひとつの芸にもなりえます。

筒井康隆という作家が、そういうの好きですね(笑)



考えるほど面白さが生まれる、「説明する」習慣のお話でした。