戦後を感じるモダニズム建築 – 香川・高松まちあるき

瀬戸内国際芸術祭の四国側玄関口となる、香川県高松市。県庁所在地として、新しい建物と歴史的な建物が混在した街並みは、歩いていて飽きることがありません。

今回、女木島の案内所でもらった「めぐるーと高松」というパンフレットがとても参考になったので、これを片手にまちあるきを楽しんでみました。

 

スタートはJR四国・高松駅から。外観が顔になっていてかわいいです。

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香川県庁を目指すため、バスターミナルへ。路線が複雑で乗り間違えそうになりますが、運転手の方に行き先を言うと、どのバスに乗ればよいか親切に教えていただけました。

 

こちらが香川県庁舎。

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手前の東館(旧・本館)の竣工は昭和33年。日本の戦後を代表する建築家・丹下健三が設計した、モダニズム建築の傑作と言われます。

奥の現・本館も同じく丹下健三によるもので、こちらは平成12年に竣工。

 

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ちょうど通りがかったバスのラッピング広告がかわいかったので、いっしょに撮影。広告のロゴといい、50年以上の時代のギャップを感じさせず、不思議に調和していますね。

当時の県知事・金子正則の「県民に開かれた空間」にしたいという想いが、実際に訪れるとよくわかります。 モダニズム建築の特徴とされるピロティが、歩道からスムーズにつながって、誰でも入りやすい空間になっています。

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「いま、ここは閉じています」は、新ゴっぽいフォントからして、だいぶ後の時代に作られたと思われます(笑)

 

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ピロティの奥は日本庭園。

 

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一階ロビーも開放されています。中央の猪熊弦一郎による陶板壁画は、瀬戸内国際芸術祭の205番アート作品という扱いにもなっています。

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奥に県庁舎や丹下建築の歴史を紹介した展示も。既決・未決箱が高まる!(^^)

 

さて、県庁から中央公園沿いに丸亀町まで向かうと、素敵な建築がたくさんありました。パンフレットには載っていない、個人的に気になったものもまとめてご紹介。

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上下水道工事業協同組合ビル。明朝体が渋ビルっぽさを増しています。

 

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ロゴがすばらしい、番町書店と美容室トキムネ。トキがムネムネしますね!(笑)

 

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「混在併存」がポリシーの大江宏が設計した、香川県文化会館。

 

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なるほど〜。って、何がなるほどなのか?

 

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向かい合う、香川市庁舎と香川国際交流会館(旧・県立図書館)。

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そのとなりにある、和菓子屋・巴堂さん。ぶどう餅おいしかったです!

 

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百十四銀行本店。緑青のブロンズとガラスがとても美しい。そうと知らなければ、昭和41年の竣工とは思いもよらなかったでしょう。

 

あとは、もはや建築ではないけれど、気になった子たち。

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後から貼られた文字は、たいていウェイトが揃わないので気になります。

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中央公園、パイロンに守られたタヌキの石像。名前はハゲさんだそう(^^;

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地下道には、星座を模した壁画が。

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いい丸ゴシック!

 

今回紹介した市街地以外にも、香川には魅力的な建築がたくさんあります。

直島で開催中の「直島建築+The Naoshima Plan」もおすすめです! 安藤忠雄のANDO MUSEUM、地中美術館とあわせてどうぞ。


 

瀬戸内ステンシル – 必要はフォントの母

さて、ではさっそくわたしの視点で、瀬戸内国際芸術祭の感想を書いていきます。

最初のテーマは、このブログらしく「文字」。

 

文字といえば、2010年の芸術祭の頃に強く思い出に残ったのは、男木島の港に浮かぶ男木交流館「男木島の魂」。

ですが今回訪れてみて、それ以外に印象的だったのは、街のあちこちにあるステンシル体でした。

 

ステンシルというのは、木や金属などのテンプレートに文字をくりぬいておき、それをなぞったり、上から塗装することで、いろいろな場所に文字を書ける手法。

テンプレートがひとつなぎになるように、文字に欠けた部分ができるのが特徴です。

必要に迫られてデザインされたフォントといえるでしょう。(厳密には、手書きのものはフォントではないですが)

 

宇野と直島をつなぐフェリーの中に、そんなステンシル体がいくつも残っていました。

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ひとくちにステンシル体といっても、字体もさまざまで、書いた人の個性を強く感じます。

なぜか消火装置ばかり(笑)

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そして、必要に迫られてといえば、これも男木島で有名なオンバ・ファクトリー

ONBA FACTORY

坂や路地の多い島内で暮らすための必需品であるオンバ(乳母車)を制作する工房。

そのオンバに刻まれた「ONBA FACTORY」のロゴも、しっかりステンシル。

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せっかくなので、工房の方に話を伺えれば良かったのですが…また次に訪れた機会にはきっと!

検索してみると、2010年4月ですが、ステンシル制作の様子を公式ブログで見つけました。

ONBA FACTORY

 

必要性から生まれる美しさという点で、アートとフォントの共通点を感じる体験でした。

よりみちしてみないと、正しい道はわからない

限られた時間の中で、寄り道をすることなく、まっすぐに正しい道を歩いていきたい。

そんな考え方もあると思います。

けれど、人生の中で、正しい道というのがはっきり見えているとは限りません。
寄り道をして、それがたとえ行き止まりや回り道だったとしても、それがわかったことで、進むべき道がはっきりする。

それなら、それはけっして無駄なことではないと思います。

逆に、ちょっと息抜きにと寄り道したことが、あとあと大きな意味をもってきて、実はそれが正しい道につながっていた…ということもあります。

 

人生を、自分だけの物語だとするなら、それは「伏線」とよびます。

 

思い切って参加してみたセミナーで、思わぬ知り合いに会って、別の一面を垣間見たり。

今まで興味がないと思っていたことが、やってみたら案外面白くて、自分に向いているかも、と思ったり。

 

振り返ってみると、長いようでいて短い人生、まだやったことのないこと、行ったことのないところがたくさんあります。
それらの中に、この先、新たな物語の伏線が隠れているかもしれないと思うと、なんだかわくわくしてきます。

そう思えば、寄り道も悪くないものです。

他県人の視点から見た広島の魅力 – 広島はすごい

「広島県究極のガイドブック」をもらいに、栄に行った日。
ついでに覗いた本屋さんで、なんともストレートなタイトルの新書を見つけました。

著者は日本経済新聞社の広島支店長。北九州出身で、大学からは東京で暮らしていたといいます。

広島に赴任して一年でその魅力に取り憑かれ、アウトサイダーの視点から本書を出版したそう。まさか、このブログの広島偏愛シリーズと、コンセプトがほぼ一致する本が現れるとは(笑)

 

ブログでも取り上げたパン屋さん・アンデルセン

2016年現在、セントラルリーグのペナントレースを独走中の広島東洋カープ。

個性的なクルマづくりが評判を呼ぶマツダ。

そんな現代の有名企業・団体のエピソードをはじめ、戦国時代に瀬戸内海を制覇した村上水軍などの歴史から、広島人の気質を読み解いていきます。

 

とくに好きなのは「へじゃがのう(それはそうだが)…」という広島弁が語られるくだり。

これは、庄原市で人間幸学研究所を主宰する和田芳治さんの口癖とのことです。

このことばには、常に物事の対極を考える、世間で常識とされていることを別の視点から考えてみるという姿勢があらわれています。

実際に広島が地元の方からすれば「それは違う!」と言われかねないのではという気持ちもありつつ、このような本を書きたくなってしまう人がいて、実際に出版されてしまうほど、ふしぎな魅力にあふれた街なのだと思います。

 

あっ、ただですね。

名古屋人としては、家電量販店・エディオンの前身はデオデオだけじゃなくてエイデンもですよ! とだけは言わせてください(笑)

グループ沿革|企業情報|家電と暮らしのエディオン

エディオングループは、「買って安心 ずっと満足」のコーポレートメッセージのもと、お客様から安心と信頼をいただける企業として、企業価値の向上に努めてまいります。店舗数家電量販店ナンバー1 日本各地に1,200店舗を越える家電流通ネットワークのエディオングループ

 

未読ですが、和田さんの著書も読んでみたくなりました。これもまた、常識を逆手にとったタイトルで気になります。

 

しまなみ海道の、知られざる転流のとき

このブログ「凪の渡し場」は、船が行き交う海の風景をイメージして名づけました。

海風と陸風が入れ替わる凪のとき、まるで世界が入れ替わる魔法がかけられたように、さまざまな視点を楽しむというのがコンセプト。

 

ところで、NHKの番組・新日本風土記を見ていたら、意外なことを知りました。

新日本風土記

平成28年6月10日(金) 放送回のテーマは、しまなみ海道。

広島県から愛媛県まで、大小さまざまな島に架かる橋が印象的です。

もちろん、橋が架かったいまでも、多くの船が行き交う光景は変わらずに見られます。

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その船の行き来を管制する仕事をしている人によると、潮の流れが変わる「転流」のときが、実はもっとも忙しいのだそうです。

海上では、船は右側通行というのが国際的なルール。

しかし、しまなみ海道の来島海峡付近では、潮流の関係で、あるときだけ島を避けるために左側通行にする必要があるそうです。

 

 

わたしの大好きな、いつでも穏やかに見える瀬戸内海の風景。

それは、このような知られざる努力によって守られているのだということを知り、ますます魅力が増しました。

 


こちらは番組でも紹介された、船長の視点で撮ったしまなみ海道の写真集。