四国横断まちあるき – ご当地キャラとパイロンの旅

さて今回は、先日訪れた四国のまちあるきの記事をお届けします。

なお、このたびは文字通り「四国横断」、つまり本州と四国を行き来するのに瀬戸大橋を使わない、しまなみ海道も使わない、といういささか特殊なルートを選んでみました。

ということで、旅のはじまりは明石海峡大橋のたもと、JR西日本の舞子駅から。

東京・名古屋方面からは「神戸市内」までのきっぷで下車することができ、高速バスの停留所がすぐ近くにあるので、高速バスで淡路島・四国に向かう際は便利です。

駅に直結した商業施設のTio舞子には、ジュンク堂書店も入居しています。日本一海に近いジュンク堂かもしれません(笑)。

そんなTio舞子のパイロンに見送られ、本州をあとにします。

 

渦潮で有名な鳴門に着くと、素敵な結界タイプのパイロンがお出迎えです。

うすうすお気づきかもしれませんが、この記事には通常の観光地的な写真はほとんどありませんので、あしからず。

 

ご当地マスコットキャラクター自販機のそばで天寿を全うする、がんばれパイロン。

 

ホテルにもパイロンが…? と思ったらクリスマスツリーでした。

 

翌日は徳島駅から高知へ向かいます。徳島の名産品、すだちをモチーフにしたマスコットキャラクター「すだちくん」を守るパイロン。

列車乗り換えのため、阿波池田駅に着きました。

こちらの自販機は、今年(平成29年)から運行されている観光列車「四国まんなか千年ものがたり」をモチーフにしたもの。車内では地元の食材を使った食事が楽しめます。

香川・徳島の観光列車「四国まんなか千年ものがたり」JR四国

多度津から大歩危間を走る観光列車「四国まんなか千年ものがたり」。コンセプトは「おとなの遊山」。和の風情にしつらえた空間の中で、地元食材の料理を堪能し、大自然が生み出した里山や渓谷美に思いを馳せる列車旅をご提供します。

大型のマスキングテープ、ではないようで。グッズとして売っていたら買いたかった…。

そんなふうに駅構内を探索していたら、列車本体を撮り逃しました。

といいつつ、無事に次の大歩危駅で追いつきました。

 

千年ものがたりは乗りませんでしたが、JR四国といえばアンパンマン列車。やなせたかし先生が高知で育ったということもあり、列車や駅構内はやなせたかしキャラクターであふれています。

高知駅のパイロンとアンパンマンのツーショット。心なしか、ガラスケースに入れられたアンパンマンが切なそう。

もうひとり高知を代表するキャラクターといえば坂本龍馬。日本の夜明けぜよ、というセリフがぴったりの写真が撮れました。

 

高知の次は愛媛県に向かいます。

愛媛と言えばみかん、マスコットキャラクターのみきゃんです。パイロンも柑橘類を思わせる黄色。

繁華街である銀天街の無料休憩スペースには、こんなかわいいパイロンも。

見たことのないスリムなパイロンも…いやこれ、本当にパイロンでしょうか?

いやはや松山、非常にグレードが高いです。

 

そして道後温泉に向かいます。

道後温泉駅にはお土産屋さんが入っていたのですが、もうすぐスターバックスがオープンするそうです。

そのおかげで、工事中のパイロンが撮れたので、よしとしましょう。

道後温泉本館も改修を控え、近くに真新しい別館がオープンしていました。こちらも絶賛道路舗装中で、パイロンが大量生息する嬉しい光景です。

道後温泉で、みきゃんパイロンを見られるのは今だけ!(?)

道後温泉のお話は、また別の記事でまとめます。

 

その翌日、松山観光港から船で広島へと旅立ったのでした。

もちろん、ひろしまドリミネーションでもパイロンは大活躍していましたよ。

広島駅前には、こんなバリケードと一体化したようなパイロンも。

思わず、いろんな方向から撮ってしまいます。

 

最後は広島の話になってしまいましたが、四国ご当地マスコットキャラクターとパイロンの旅でした。

 

いいビルと、ビルを彩るものの世界 – いいビルの世界 東京ハンサム・イースト

まちを歩いていれば、いくつも目に入るビルの姿。

けれど、あたりまえにありすぎて、目をとめて「観る」ことは少ないかもしれません。

まちのなかにひっそりとたたずみ、ひとびとの暮らしや仕事によりそい、あるいはいつか消えてしまう…。

そんなビルの見方、楽しみ方を知ることができるのが、こちらの本です。

 

ビルがその建物を使う人のために設計されるように、この本も、ビルの魅力を伝えるため、いくつもの工夫が凝らされています。

たとえば、この本は、通常よりも高精細の印刷ができるフェアドット印刷という手法が使われているそうです。

大福書林 on Twitter

『いいビルの世界』は、モアレが出ないよう特殊な印刷をしています。普通の線数が200線くらいのところ、この本で使ったフェアドット印刷は350線と、ドットが細かく、配列も違うのです。カメラ店などで売っているルーペをお持ちの方は、眺めてみてください。ドットを見るだけで楽しめますよ。

 

そのおかげか、ステンレス・タイル貼りなどさまざまな素材でできたビルの外壁や内装が、実に色鮮やかに目に飛び込んできます。

 

そう、ビルを知るということは、ビルをいろどるさまざまなものの世界を知るということなのです。

「ビルの外側をいろどるもの」や「ビルと視点」といった記事では、ビルを楽しむ手がかりが図鑑のように紹介されていきます。

壁画といった大きなものから、ドアハンドルのコーディネートといった小技の光るものまで。

 

そして本書を読んで、大きな発見がありました。

Macユーザーならおなじみの、コマンドキーに印字された記号「」。

いったい現実世界では、どんなときに使うのだろう? と思っていたら、ドアハンドルの模様に描かれているのを本書の中だけでも二ヶ所見つけました。

これはぜひ、実物も探してみたくなります。

文字通り、知らない世界を開く扉であり、秘密のコマンドのようです。

 

わたしはよく、こうやって新しい知識を得たら、昔に撮った写真をもう一度見返してみることをしています。

そうすると、いままで見えていなかった景色が見えてきます。

 

つまりこういうことです。

中央の「丸高ビル」、一文字ずつの看板も素敵ですが、対照的に黒い外装、少し斜めにへこんだ窓が、実にいい表情を見せます。

こちらは本書にも紹介されていたJR上野駅のペデストリアンデッキ。

このときは、ちょうどタイルの清掃中で、かわいい積みパイロンに夢中でシャッターを切りました。

そして見返してみれば、パイロンが置かれた色とりどりのタイルも実にかわいい。

他にも上野には素敵なタイルやビルがあるそうなので、次に訪れるときは見逃さないようにしたいです。

ここにはおそらく、かつて公衆電話が置かれていたのでしょう。

公衆電話の数がめっきり減ったいまも、その置き場所だけがひっそりと時間を重ねていきます。

それによって、壁の少しずつ色が違ったタイルも、よりいっそう引き立つよう。

 

「いいビル」の味わいとは、そんな時間の流れを感じられることのように思うのです。

 

住んでいるまちを好きになるということ – なごやじまん

あなたは、自分の住んでいるまちが好きですか?

あるいは、かつて住んでいたまち、ふるさと、訪れた場所など…好きだと言えるまちはあるでしょうか。

 

いまわたしが住んでいるまちは、愛知県名古屋市というところです。

東京、大阪に次ぐ三大都市と言われながら、ときに「魅力のない街」などといったレッテルが貼られ、当の名古屋人でも、そう言われてうなずいてしまう人も少なくありません。

そんな風潮に異議を唱えるべく、名古屋在住のライター、大竹敏之さんがこんな本を出版しました。

表紙には、この地に昔から住んでいる方にはなじみが深いであろう、圧倒的な地元ブランドを誇る松坂屋百貨店でかつて使われていた包装紙が使われています。

本文でも巻頭記事として、その松坂屋がいかに名古屋を愛し、そのお返しのように名古屋の人に愛されてきたかという歴史が滔々と語られます。

 

普通の観光案内で取り上げられるような名所や、いわゆる「なごやめし」も当然取り上げられているのですが、あくまで地に足の着いた目線で、地元の人に長く愛される名店を中心に語られます。

あのちくさ正文館が、ナナちゃん人形や徳川美術館などと同列に並ぶ目次は壮観です。

 

毎年秋に開催されている「やっとかめ文化祭」を紙上で再現するという記事の中では、名古屋渋ビル研究会(高度成長期の渋いビルを愛でる会)や、建物にタイルで建物に描かれたアートを鑑賞するモザイク壁画などのまちあるき企画も紹介されています。

YATTOKAME LIFE丨やっとかめライフ

やっとかめライフオフィシャルサイトです。

住み慣れた場所であっても、その歴史を学んだり、ふだん通り過ぎてしまうものに目を向けることで、新しい楽しみを見つけることができるのがまちあるきの魅力です。

わたし自身、まちあるきをするようになって、そのまちをもっと好きになることができました。

地元だからこそ、その魅力に気づかないのだとしたら、それは自分のことを好きになれない自己肯定感の低さにもつながっているかもしれません。

 

好きなお店や食べ物。

ここで出会った人との想い出。

それが地層のように積み重なって、自分だけのまちとのつながりが生まれます。

それを大切にすることで、まちも自分自身も好きになっていけるはず。

 

そして、好きなまちができたら、まわりにアピールしなければもったいない。

自分の好きなまちの魅力を発信するとともに、いろんな人の住んでいるまちのことをもっと聞きたいと思います。

そうすることで、お互いが、まちのことをもっと知ることができます。

 

大阪「此花シカク」と此花区タイポさんぽ

東京の本屋さんの話題が続きましたが、関西にもパワフルで個性的なお店がたくさんあります。

今回は、そのひとつ「シカク」さんのご紹介。道中のまちあるきがあまりにも面白かったので、前の記事とはテンションを変えてお送りします(笑)。

 

シカクは、自主制作の書籍やリトルプレスを扱うお店として2011年に梅田の近く・中津にオープンしたそうです。

2017年7月、此花区に移転して「此花シカク」となったばかり。

シカクが語る「リトルプレスの現在」 第1回|Zing!

リトルプレスを中心に、さまざまなインディーズ出版物を扱う大阪のセレクトショップ「シカク」がリトルプレスの魅力を発信する連載企画。第1回は、はしゃ『フィリピンではしゃぐ。』や金原みわ『さいはて紀行』などを紹介します。

 

シカク/ハッカク/シカク出版総合ページ

2017.08.14 秘宝館ロマン秘史―秘宝館資料展―特設サイトを公開しました!トークイベントも予約受付開始! 2017.08.03 味わいのありすぎるTシャツブランド、 ポッポコピーのTシャツストアが期間限定でシカク内にオープン!8月13日(日)〜8月20日(日)まで! 2017.07.30 9月に開催する展示情報2つ更新!此花シカクでは「秘宝館ロマン秘史―秘宝館資料展―」中津ハッカクでは「いしの朝個展 SHE」どちらも特設サイト制作中です! 2017.07.08 7月23日、 小林銅蟲の一日店長が決定! 2017.07.08 かねこ鮭・北極まぐ ロジウラブ展 中津ハッカクにて7月29日〜8月13日開催! 2017.06.23 シカク/ハッカク/シカク出版の全てを網羅した総合ページオープン!

 

最寄り駅は阪神電気鉄道・阪神なんば線の千鳥橋駅。大阪難波駅からは5駅、10分ほどで着きます。

駅前は大規模な工事中。

南に歩くと、住宅街と昔の商店が並ぶ、路上観察にうってつけの街並みに期待が高まります。

え、まさか麗子さんでは…?

 

LOVEの書体に、まさに一目惚れ。

こちらも喫茶…風の恋人と書いて「ふれんど」!! フレンドなら友達でしょ…大好き。

あとかたのパイロン。

 

数分歩いただけでこれだけの収穫。すごいまちです。

そして此花シカクにやってきました。

「ねこの飛び出し注意!」と書かれているので緊張しながら扉を開けたのですが、ねこはいませんでした。猫本屋ではなかったです。

しかし店内は、これまで入ったどんな本屋さんにも見かけなかった本が大量に。

日本には、まだまだ、こんなニッチなテーマに興味のある人がいて、それを本というかたちにするとこうなるのか…!

胸が熱くなります。

「八画文化会館」のバックナンバー(1号以外)など、商業出版もツボを突いた品揃え。

ひとりしきり唸って購入する本を絞り込み、店をあとにします。

 

駅前まで戻る途中、何やら素敵な商店街(八画文化会館さん命名、栄光のアーチ)が目に入ります。

 

これは行くしかありません。

 

「タイポさんぽ」や「よきかな ひらがな」を読んだ人ならわかるはず…。「マ」と「ヤ」を同じ骨格で作ろうとして、縦棒も全部揃えているという詠み人の丁寧な仕上げが…。

「毎週火曜日デンチ入替へサービスの日」ですって! 行かなくちゃ! 雨の日は休みなので気をつけて!

 

と、良き文字に導かれて、思わず商店街を抜けて隣町まで来てしまいました。

フジサイクル、日の丸に富士山のロゴが素敵です。

 

埋め立てられた川の真ん中に、ぽつりと小さな黄色いパイロン…謎すぎます…。

一瞬、時間も空間も飛び越えて、異次元に来てしまったのかと思える、そんな暑い夏の日でした。

 

この記事を読んで、まちあるきの底知れない魅力を一端でも感じていただけた方は、ぜひ「此花シカク」へ。さらなるディープな世界があなたを待っているはずです。

 

東京・荻窪、本屋Titleへの道

先日、東京を訪れた際に、「本屋、はじめました」を読んでからずっと行きたかった本屋「Title」さんへお邪魔しました。

本屋 Title

2016年1月、東京・荻窪の八丁交差点近くにオープンした新刊書店・Title(タイトル)。1階が本屋とカフェ、2階がギャラリーです。

今回は、その道中を、記録に残したくて記事にしてみました。

 

はじまりはJR新宿駅から。

「階段」の文字は「美しい日本のくせ字」にも登場した通称「修悦体」ですね。

 

荻窪へは東京メトロ丸の内線でも行けますが、ここはやっぱり、中央線で訪れたいところです。

新宿から西へ、ずっとずっとまっすぐ、筆で引いたように伸びている線路。

中野、高円寺、阿佐ヶ谷…と、東京に住んだことのないわたしには、小説や漫画の世界で登場するイメージでしか聞き覚えのない駅名が続きます。

その次が、荻窪駅。

名古屋から中央線(中央西線)で4駅と言えば大曽根駅ですが、ちょうどそのくらいの距離感なのでしょうか。

けれど、名古屋よりも人一倍、そう文字通り、人の数が多い。

そんな喧噪の駅前を過ぎ、北西に延びた道を歩いていきます。

途中には杉並公会堂もあり。

まちの歯医者さんも。こんなかわいい「歯」の模型は見たことがありません…!

 

やがて少しずつ、まちを歩く人の数が減ってきて、落ち着いた街並みに。

古本屋さん、スーパーマーケット、小さな商店…。

そうした、あたりまえの風景に溶け込んで、本屋「Title」は姿を現します。

けっして広くない店内に、驚くほど多くのお客さん。

でも、とても静か。みんな、その目は本棚に引きつけられているかのよう。

棚の本を見ればわ、その理由はかります。

お気に入りの本、誰かにも読んでほしい本、ずっと探していた本、思いがけない本との出会い…。

 

二階に上がると、ちょうど絵本『赤い金魚と 赤いとうがらし』刊行記念の原画展が行われていました。

小さいころ、夏休みに親戚の家に遊びに行ったときのような、なつかしい感覚。

訪れてみて、「まったく新しい、けれどなつかしい」というキャッチコピーが、そういうことだったのかと実感できました。

 

奥のカフェではコーヒーを飲んだり、かき氷を食べたりして談笑する人々の姿がありました。

東京に行くと、いつも予定を詰めこんでしまって、今回も残念ながら本を買うだけで時間が来てしまいました。

後ろ髪を引かれつつ、来た道を急ぎ足で戻ります。

本当は、この道をずっと行けば、西荻窪、そして吉祥寺と、さらにまた魅力的なまちがひろがっているのです。

 

こんな本屋さんが身近にあるまちなら、一度くらい東京に住んでみても良かったかな、と思いました。

どうしても地方から東京に来ると、まず品川駅や東京駅など山手線沿線からアクセスすることになり、せわしないイメージばかりが目に飛び込みます。

けれど、その円の外にも、まちは広がっている。

静かに、時を刻んでいる。

 

 

その貴重な空間が、末永くあり続けることを願います。