漢字に触れて楽しむ、漢字ミュージアム

今回は、この6月、京都の祇園にオープンした漢字ミュージアムのご紹介。
漢検 漢字博物館・図書館 [漢字ミュージアム]

京阪電鉄・祇園四条駅から徒歩5分。と案内の上ではありますが、一大観光地のなかにあるので人も多く、たどり着くのには時間がかかります。

市バスだと「祇園」バス停すぐですが、渋滞がひどく確実に遅延するので、時間に余裕をもって行きましょう。17時閉館ですが、16時半には受付終了となります。

漢字ミュージアム

漢字ミュージアム

正式名称は「漢検 漢字博物館・図書館」というそう。

これも隷書ですが、DF隷書体ではなく、モリサワの陸隷に見えます。ロゴのほうはちょっとアレンジしているようです。

陸隷はTypeSquareでも使えますが、さくらのレンタルサーバで使えるWebフォントには入っていなかったので、かわりにこの記事のタイトルは「隷書101」にしてみました。

 

漢字ミュージアム

となりのビルのモザイク画、ちょっとひらがなの「」に見えませんか?

というのは、中のロビー部分で「漢字のある風景」というフォトコンテストの展示をしていたので、あとで写真を見返して気づいたこと。

漢字に限らず、文字に見える風景をさがすというのも、まちあるきの新しい楽しみ方になりそうです。

 

さて、受付で入館料(大人800円)を払うと、体験シートという冊子をもらえます。

よくある展示案内とは一味違って、実際にこのシートを使っていろいろと楽しめる工夫がされています。

漢字ミュージアム

まずは甲骨文字占い。漢字のもとになった甲骨文字が印刷されていて、展示のところにある金属片でこすると、漢字と占い結果が出てきます。

他に団体で来ていた人の様子を見ても、ひとりひとり違う文字が印刷されているようです。

わたしの結果は…

新 - 新しいことが何かはじまるよ

このあとの、よきかな商店街イベント(というか二次会の交流)を思うと、当たっていたかも…!

 

漢字ミュージアム

さらに、万葉仮名や、ひらがな・カタカナのもとになった漢字のスタンプが並んでいます。

スタンプで自分のなまえを押すと、漢字として結果が押されます。

万葉仮名とは、日本に漢字が伝わった当初に使われていたもので、漢字を意味ではなく音として使ったもの。

知識としては覚えていても、ひらがな・カタカナのもとの字とはまた違うものだというのが、こうしてみると実感できました。

 

1Fは他にも、漢字の成り立ちから今に至るまでの歴史までが絵巻になって解説されていたり、書・印刷の道具が展示されたりしています。

漢字ミュージアム

漢字ミュージアム

定番の金属活字に、和文タイプライターまで。

 

2Fに上がる前に、階段の横にある大きな柱に注目。漢和辞典に採録された約5万の漢字が全面に印刷された「漢字5万字タワー」になっています。

漢字ミュージアム

漢字ミュージアム

青色の大きな文字は教育漢字。オレンジ色は常用漢字。

自分のなまえを探そう! と言われても、これだけあって探せるのか…と思ったら、偶然にもあっさり見つかりました(笑)

 

2Fは、さらに漢字と触れて楽しめる体感スペースになっています。

漢字ミュージアム

ワークショップも多数。あっ、どうしてここでPOP体を使ってしまうのか…。

漢字ミュージアム

気を取り直して、お待ちかねのフォント(書体)のコーナー!

漢字ミュージアム

フォントの実例のチョイスが、何故か丸明オールドじゃなくて丸明Fujiだったりと、ツッコミどころが少々(笑)

 

漢字ミュージアム

「乾拓であそぼう」のコーナー。

日本や中国の昔のコイン(復元)を紙の上からこすって、文字を浮かび上がらせます。

漢字ミュージアム

 

漢字ミュージアム

9月30日までは、「漢字縁日」というイベントも実施中。

縁日の屋台を、漢字で再現。

漢字ミュージアム

漢字しおり、釣れました!

 

全体を通しての印象は、ここはひとりで学びに行くより、誰かといっしょに行ったほうが楽しい施設ですね。

夏休みとあって、親子連れの姿も目立ちました。

いつか結婚してこどもができたら、ここに連れてきて、漢字や文字の楽しさ、奥深さに気づいてもらいたい…そんなことを思いました。

もちろん、大人同士でも楽しめます。ぜひ、知人・友人を誘って、訪れてみてください。

 

 

誤解されるフォント – 創英角ポップ体

これまで、このブログではさまざまな日本語フォントについて取り上げてきました。

多くのところで使われているフォントといえば、創英角ポップ体の話題を避けては通れません。

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マイクロソフト Office に標準で搭載されているフォントということで、Windowsユーザであれば誰もが一度は目にしたことがある、そして何の気なしに使ってしまったことがあるフォントだと思います。

 

しかし、フォントというのは、話し方やファッションのように、それぞれに目的があって使い分けるためのもの。

その場その場で、もっともふさわしいフォントは何か? を考えるのが本来のありかたです。

 

創英角ポップ体の場合、なんとなくパソコンに入っているから、太字で目立たせたいから、といった理由で使われてしまっている、というのが正直な印象。

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では、創英角ポップ体の本来の目的とは何なのか?

 

実は、それはしっかりとフォントの名前に示されています。

ポップ体のPOPとは「Point of Purchase」、つまり商品の購買意欲をそそるための広告の意味。
あの「HG創英角ポップ体」の元となった直筆生原稿を見た – デイリーポータルZ

レジの売り上げを管理するシステムをポス(Point of Sales)と言うのと同じ。

わたしのまわりで最近よく聞くところで言うと、コーチングツール・Points of You をPOYと略すのと同じです(笑)

 

それはともかく、広告だからこそ、わざと個性的な、目を惹くデザインがされているフォント。

なので、たとえばこんなのは、正しい創英角ポップ体の使い方ということになります。

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東京で見かけた、イオン系のスーパーマーケット・まいばすけっと。この看板がなければ、外壁や電灯からはスーパーとは気づけなさそう。

 

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こちらは…どうでしょう? なんとなく親しみは感じる気がします。それで購買意欲をおぼえる人がいるかもしれませんものね!

 

しかし残念ながら、商品とは関係のない場所で使われて浮いてしまっていることが多い創英角ポップ体。

その点で、もっとも誤解されている日本語フォントであると思います。

 

もちろん、フォント自体が悪いわけではありません。

そうと知らずに、うっかり本来の目的から外れた使い方をしてしまった人が悪いわけでもありません。

 

それはたとえば、セイヨウタンポポなどの外来種が在来種を駆逐して広がってしまったように。

いまさら誰が悪いと言ってみても仕方のないことではないかと思うのです。

 

ただ、強いて言えば、ポップ体というその名前が、そもそもの誤解のはじまり。

いまや「Point of Purchase」ではなく「Popular」のほうが通りが良いほど一般に人気のあるフォントになってしまったことが、歴史の皮肉と言えるかもしれません。

 

まさに文字通り、名は体を表す。