香川・岡山の島々では瀬戸内国際芸術祭2022の夏会期が9月4日まで開催されています。
春会期と同じく無理せず、密を避けてのんびりと瀬戸内の自然を楽しみましょう。
前回の記事、 世界初の公共交通・DMVに乗って、むろと廃校水族館へ の翌日に高松を訪れました。
商店街では今回も芸術祭会期に合わせて、さまざまな催しが行われています。
高松丸亀町商店街の「おいでまい祝祭」。
かわいくてちょっとせつない、いきものたちの姿を描く絵画・彫刻・インスタレーションと充実の内容でした。
少し歩いて、大竹伸朗さんの「針工場」まで。
漁船の木型を莫大小(メリヤス)針工場におさめた作品です。
となりの資料館にも映像や関連書籍の展示がありましたが、あまり時間がなく、じっくり見られなかったのが惜しい。
冨安由真さんの「かげたちのみる夢」。廃屋のような古民家に、小泉八雲「和解」をモチーフにした幻想的な空間を生み出します。
ガイドブックでは粟島aw11として紹介されていますが、夏会期は豊島で活動されるそうです。海から発掘されたものの収集、展示を行なっています。
こちらも帰りのバスの時間が迫っていたので、あまりゆっくり見られず。
のんびりと、と言っておきながら時間に追われるのはよくないですね。
いったん家浦港まで戻ってバスを乗り換え、唐櫃岡(からとおか)まで。
島キッチンは予約制なのを忘れていましたが、カレーとドリンクだけなら空きがあればテラス席で食べられるそう。
実に見事な石組が歴史を感じさせます。
古くから豊島の人々に大切にされてきたという、唐櫃の清水(共同用水場)があります。
制作から十年ほど、作品もまわりの自然とじょじょに溶けこんでいくよう。
少し集会所のほうまで戻り、「西本喜美子写真展 ひとりじゃなかよ」へ。
70代になってから写真を始めたという西本さん、その独創的な写真とキャプションに思わず笑みがこぼれます。
書籍も手にとって読めるようになっていました。
台所の裏にもこっそり作品があるのでお見逃しなく。
さて、いよいよ最後は豊島美術館に向かいます。
ゆっくりと港の方へ下り坂を歩いていくと、突然視界が広がり、瀬戸内海が一望できます。
芸術祭をきっかけに周辺の棚田の再生も進められており、豊島美術館はその中腹にあります。
芸術祭パスポートは使えないのでオンラインで事前予約が必要です。
すべて豊島に自生する植物、雑草を選んだという庭を回遊しつつ建物に入ります。
建物内は撮影禁止、物音すら立てるのをはばかられる静寂が支配します。
モノクロームの空間に、大きな開口部から自然の光がふりそそぐ。
床からは「母型」とよばれる小さな泉があちこちから湧き出し、水たまりを作りつづける。
表面張力でつくられるみずたまをじっと見つめていると、まるで生命のようで。
やがて重力にひかれ、また別の穴に吸いこまれていく。
はじめての探訪でしたが、また何度でも来たいと思わせる、島と一体となった魅力を実感しました。
みずたまは生きもののよう玉きわるいのちはいつか土へと還る —— 和泉みずほ