岐阜市街で、時の流れを感じるまちあるき

まちには、人それぞれに抱く想い、イメージというものがあると思います。

 

わたしにとって、岐阜というまちは、ちょっと他のまちとは違う時間の流れかたをしているような、ふしぎな場所。

 

それは、こどものころ、祖父母の家が岐阜にあって、よく訪れていたという思い出のせいかもしれません。

かつて昭和の時代に栄えた柳ヶ瀬商店街と、路面電車の記憶。

いま訪れると、まちのあちこちで、別の形でにぎわいを取り戻していることを感じます。

 

今回はJR岐阜駅からスタート。中央改札の他に、アクティブGという商業施設への直通改札口ができていました。広島でいうとアッセ改札口のようなものですね。

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岐阜県のお土産を買えたり、各種ワークショップなども開催されている複合施設。

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となりのビル、岐阜シティ・タワー43へ。43階に無料展望室があると知って寄ってみました。

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案内表示が毛筆体というのは、なかなかめずらしいのでは。

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JR東海道本線の下をくぐる名鉄線。スケールの違いに驚かされます。

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柳ヶ瀬、高島屋方面を仰ぎ見て。

 

エレベータを降りて、ここからは岐阜市街をまちあるき。

お店も建物も、素敵な場所がたくさんあるのですが、今回は主に文字に絞った見どころをご紹介。しかも、柳ヶ瀬商店街にはたどり着きません(^^; またいずれ。

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いきなりの You are welcome。ど、どういたしまして…。

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「マ」のカーブがすばらしい。

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つづく4。

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FASHION CREATE □□□□。どんな店名だったのか、とても気になります…!

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Coffee リー…? これも読めない。

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COFFEE TALK。「トーク」の置き方といい色使いといい、とても素敵なのですが残念ながら営業していません。
こんなお店で、あなたと珈琲トークしてみたい。

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なんてことを考えて歩いていたら、こんな立て看板を見つけました。

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空きビル再生プロジェクトで生まれた、カンダマチノート。カフェは週末だけオープンとのこと。

クリエーター向けにスペースの貸し出し、ワークショップの開催などもできるようです。

【岐阜】カンダマチノートOPEN!

ちなみにリンク先、さかだちブックスさんのホームページでは、ほかにも素敵な岐阜がたくさん紹介されています。

 

今と昔がふしぎに同居する、岐阜のまちあるきでした。

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アクティブG、夜になったら光るんだ…!


 

趣味旅行のつくり方 – ヨーロッパのドボクを見に行こう

あいちトリエンナーレも瀬戸内国際芸術祭も開催中だというのに、こんな本を読んだおかげで、急にヨーロッパ旅行に行きたくなりました。

ところで「ドボク」って?

専門用語としては、「建築」は家やビルなどの建物、「土木」は鉄道や橋といった公共施設を指すものとして使い分けられます。

ただ、ここでいう「ドボク」は、偏愛の対象としてのインフラ全体を総称するもの。

 

NHKの「熱中時間」にも出演されていた大山顕さんの団地・ジャンクション・高架下建築、石井哲さんの工場などが含まれます。(本書にも寄稿あり)

日本とヨーロッパでは、気候や地形の違いから、つくられるドボクのあり方もおのずと異なってきます。それは日本以上にスケールが大きく、想像を超えたデザイン。

 

干拓のために、32kmも続く大堤防を築き上げたオランダ。

リゾートホテルと巨大ダムが同居するスイス。

7132 Hotel – Exceptional Hotel and Therme Vals

露天掘りの炭鉱で掘られた褐炭を、ベルトコンベアで火力発電所に運んでいくことで電力需要をまかなうドイツ。

 

ぼんやりとイメージしていたヨーロッパとは違う光景がそこにはあります。

良い悪いではなく、こんなふうに自然と対峙してつくりあげてきた、それぞれの国の歴史を垣間見ることができます。

 

さて、この本を読んで、本当にヨーロッパのドボクを見に行きたい! と思ってしまったらどうするか。

 

本書の最後には、それぞれ近い施設ごとに組まれた、5泊7日のモデルツアーが紹介されています。

さらに、旅行をアレンジするための計画・準備から実施・帰国までを綿密に解説した、「ドボク旅行のテクニック」なる章まで。

ドボクに限らず、決められたパックツアーではなく、自分の趣味に応じた旅行プランを練る際にはとても参考になります。

 

ちゃんと「同行者の趣味嗜好をわきまえて!」なんて注意書きもあって頭が下がりますm(_ _)m

一人旅で自由に旅程を組むのも楽しいもの。

でも、同行者がいるときは、お互いの視点を取り入れることで、新しい魅力を発見することができそうですね。その土地だけでなく、相手に対しても。

 

いろいろな意味で、旅行のための視野を広げてくれる一冊です。

 

原平という人がいた! – 赤瀬川原平の全宇宙

誰もが人生のなかで、いろいろな人に逢い、いろいろな本を読み、その影響を受けていきます。

けれど考えてみれば、その出逢った人も、本を書いた人も、また別の誰かから影響を受けて人生を生きています。

 

ふとした瞬間に、その源流、言ってみれば元ネタを知ることがあります。

わたしにとって、赤瀬川原平という作家はそんな源流…あるいは「原流」ともよべる存在です。

 

赤瀬川原平さんは1937年生まれ、2014年没。芸術家として活動したり、尾辻克彦という名前で書いた小説が芥川賞を受賞したりと、きわめて広範な活動をしていました。

そんなわけで、赤瀬川さんの名前を意識することはなくても、その影響を受けた人や活動がたくさんあります。

 

たとえば、街中のちょっと変わったもの、おかしな看板に目を留めること。

こどものころ、宝島社の「VOW」という本を読んで、そんなモノの見方があることを知り衝撃を受けました。

その源流は紛れもなく、赤瀬川原平さんの「トマソン観測センター」、そして路上観察学。

トマソンというのは、当時の読売巨人軍の助っ人外国人、トマソンから。

4番打者なのにまったく活躍しないというところから、街中の無用物をトマソンと名づけました。

当人には傍迷惑な話でしょうが、普通の人が見過ごしてしまうようなものに着目する感性、それを多くの人が興味を引くように「見立て」で語る手法は卓越しています。

一人で「ない仕事」を作る、みうらじゅんさんにも通じるところがあります。(実際、みうらさんも赤瀬川さんの本の解説を書いています)

その視点は、辞書にも向けられます。

新明解国語辞典」の例文がおもしろいことに気づいて書かれた「新解さんの謎」。

「舟を編む」などの辞書ブームの背景にもなっているのではないでしょうか。

 

変わったところでは、昔流行した3Dステレオグラム

なんと、これも赤瀬川さんが早くから目をつけていたのだそう。

二次元の写真が三次元になるという視点の転換。いま流行のARやVRも、そういう視点で考え直すと新しい発見がありそうです。

 

ちなみに、わたしが赤瀬川原平という名前を意識したのは、実はアニメ化物語

 

主人公の阿良々木暦が八九寺真宵におこづかいをあげるシーンで、千円札に「赤瀬川」と書かれています。

何のこと? と思って調べたら、アート作品の中で千円札をコピーして、裁判にまでなってしまった事件が元ネタの様子。

もちろん、西尾維新原作には一行たりともそんな記述はありません。

アニメ<物語>シリーズの演出自体、赤瀬川さんや、あるいはさらにその源流となる明治期の雑誌編集者、宮武外骨の影響がありそうです。

 

これからも、新しく興味をもったことが、実は意外な先人によって切り拓かれた道だったということがあるかもしれません。

 

それは、はるか昔、見知らぬ誰かから、しっかりとバトンを渡されたということ。

そして、わたしも、未来の誰かにバトンを渡せるようになれば嬉しく思います。

もし自分の人生経験を地図に表したら

生まれてきてからいままで、重ねてきた時間。

それを、都道府県別などで、過ごした時間の長さに応じて地図に色分けしてみたらどうなるでしょう。
ふと、そんなことを考えました。

 

生まれ育った場所。

大学時代を過ごした場所。

社会人になり、いまも暮らしている場所。

この三つが、もっとも濃い色で表されるだろうことはすぐに想像がつきます。

それから、住んだことはないけれど、よく遊びに行く場所。

個人的には、偏愛する広島と、仕事でも行く機会の多い東京では、累積するとどちらが長いのか? が気になるところです。

 

実際に、手動で地図をつくることのできる「経県値」「経県マップというサイトがあります。

あるいは、iPhoneの写真アプリでは、写真を撮影場所ごとに地図上に表示することができますし、同じことが日記でできる Day One というようなアプリもあります。

もちろん、これだとスマートフォンを持っていなかったころの経験はカウントされないので、ちょっと寂しいですね。

この先、技術が進歩すれば、生まれた瞬間から位置情報を記録して、こんな地図が誰でも自動的に作れてしまうかもしれません。

 

こうやって地図を眺めていると、自分の人生経験を表しているようでおもしろいです。

 

ただ、これはあくまで「経験」を単純に数値にしたもの。
数えるほどしか行っていなくても思い出のある場所、あるいは、一度も行っていなくても思い入れのある場所だってあるかもしれません。

それは、経験を超えた、かけがえのない体験。

 

そして、まだ行ったことのない空白の場所を「行ってみたい」と眺めている、その瞬間も。

この先の未来に、未知の体験につながっていると言えます。

 

人生というのは、長い長い、時間と空間の旅。
いままでの、どこで過ごした瞬間も、きっとこれからのどこかにつながっていることでしょう。

 

考証バンドワゴン効果 – バスに乗り遅れよう

経済学やマーケティングの用語で、バンドワゴン効果というものがあります。

バンドワゴンとは、大家族の古本屋…ではなく、パレードの先頭を走る楽隊車のこと。

流行しているもの、多くの人に選ばれているものに対して、それだけで自分も選びたくなってしまうという心理が働くことはないでしょうか。
そのおかげで、ますますひとつのものに人気が高まることがあります。

バスに乗り遅れるな」と言われることもよくあります。

これを聞くと、いつも頭のなかに、乗客でぎゅうぎゅうになったバスの光景が思い浮かびます。

でも、ちょっと立ち止まって考えてみます。
バスに乗り遅れたとして、それでどうなるのでしょう?

 

数学の問題で、一定の間隔でバスが発車する路線があるとします。

なにかのきっかけで、そのうちの一台が少しだけ遅れたときのことを考えましょう。

すると、次のバス停では、そのぶん到着が遅れます。
そうなると、本来はそのバスに乗れなかった人も乗ることができるので、その乗車時間ぶん、また発車が遅れます。

それがくり返されると、その遅れたバスは、どんどん混雑していきます。

それ以外の条件が同じだとすると、次のバスに乗る人は少なくなるので、到着は遅れず、バスの発車の間隔は詰まっていきます。

最終的には、ひとつのバスだけが満員になって、すぐ後に来るバスはガラガラ…という状況が発生してしまいます。

実際に、ここまで極端でなくても、バスや電車のダイヤが乱れたときに、慌てて遅れてきた便に乗ろうとせずに、一本見送れば意外にすいていることがあります。

 

つまり、何が言いたいのか? というと。

 

「バスに乗り遅れるな」と言われたときは、「既にそのバスは遅れているのではないか?」という視点を持っておきたいということです。

 

自分で選んだものであれば、行動や決断を早めることで有利になることはあります。

けれど、バンドワゴン効果の場合、それは自分で選んだこととは限りません。
本当に得をするのは、その前のバス(あるいは、バンドワゴン)に乗っていた人だけだったりするもの。

そんなときは、むしろ混雑を避けて「バスに乗り遅れよう!」と考えてみても良いかもしれません。