ひさびさの広島偏愛シリーズ、今回は広島東洋カープを題材にした漫画「球場ラヴァーズ」をご紹介します。
野球漫画といえば、選手あるいは野球チームが主役というのが通例n。
でも、この作品の主役は、選手を応援するために球場に集まった観客。そのため「広島東洋カープ応援席マンガ」ともよばれています。まずは、その視点がおもしろい。
人のことだから応援するのよ(基町勝子)
野球とも、広島とも縁のなかった少女が、思わぬきっかけで球場に足を運び、熱烈なカープファンと出会うことで、それまでの生活が一変します。
まだ「カープ女子」ということばが世間を賑わす前、2010年から、主人公が交代しつつ、2015年のシーズンまでがリアルタイムに描かれます。
現実の通り、その間カープの優勝はなし。
選手だけでなく、応援席の彼女たちも、楽しいことばかりではなく、辛い現実も描かれます。
勝って負けて、おちこんで。
活躍できることもあれば、芽が出ないままのことも。
納得しがたい理不尽なことがあったり、奇跡とも思えるようなことが起こったり。
それはまるで、人生の縮図。
どんなプロ野球チームもそうだと思いますが、とくにカープというチームに焦点をあてることで、そのドラマティックな起伏が印象づけられます。
原爆の惨禍から、広島に球団をつくろうという運動がはじまり、初優勝まで25年。
そして迎えた黄金時代から、長く優勝から遠ざかった期間を経て、2016年、25年ぶりの優勝マジック点灯。
たしかにあるんだよな、振り返ればあの日だった!—って試合が。
たしかにあの日だった。あの日が今日につながった(松田美央)
あの日、あの場所に行かなければ、出逢わなかった人があった。
できなかった体験があった。
あの日、前に進むことを選んだからこそ、いまの自分があり、そして未来につながっている。
カープを応援し、自分自身もがんばろうとする主人公たちの姿には、野球に興味がなくても、カープファンでなくても、きっと胸を打たれることでしょう。
そして、思わず球場に行きたくなってしまうこと請け合い。
旧広島市民球場は、もう訪れることはできないけれど。
マツダスタジアム、いつの日にか行ってみたいです。