新春・龍泉寺さんぽ

あけましておめでとうございます。今年も「凪の渡し場」をよろしくお願いします。

 

さて、お正月といえば初詣、今年も尾張四観音の恵方参りをしてきました。

新春・甚目寺タイポさんぽで紹介したとおり、名古屋城の東西南北を守護する四つの寺から、その年の恵方に当たるお寺をお参りします。

今年、平成31年は龍泉寺観音です。

竜泉寺というと、いまはスーパー銭湯「竜泉寺の湯」が有名になり、豊田市や関東にも同じ名前の支店があってややこしいですが、お寺のほうの「龍泉寺」は旧字体で書くのが正式のようです。

http://www.ryusenji.com

 

場所は竜泉寺の湯の本店近く、名古屋市守山区です。

公共交通機関では大曽根駅から名古屋ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」で向かいます。

ゆとりーとラインは、専用の高架線を走る、日本唯一のガイドウェイバスシステムです。車両はバスのように見えますが、軌道法に基づいて工事が着工された、れっきとした鉄道の一種です。

1月11日(金)から節分キーワードラリーも行われるようです。守山図書館でも尾張四観音のテーマ展示が開催中とのこと。

最寄駅(停留所)は「竜泉寺」なのですが、二つ前の「小幡緑地」で高架区間から平面区間に切り替わり、運賃が70円高くなるので、小幡緑地から歩くのも良いでしょう。平面区間はJR・愛知環状鉄道高蔵寺駅まで続いています。

龍泉寺にやってきました。

元号は延暦のころ、伝教大師最澄が創建したといういわれがあります。

「伝教大師が熱田神宮に参篭中、龍神のお告げを受けて、龍の住む多々羅池のほとりでお経を唱えると、龍が天に昇ると同時に馬頭観音が出現した」のだそう。

竜にはお目にかかれませんが、猫がいました。

 

お猫さまに導かれて宝物館となっている龍泉寺城に入ります。(入館料100円)

円空仏で有名な円空による馬頭観音・天照大神像などが納められています。

展望台からは庄内川・春日井市街の見晴らしが良いです。

「出口」のフォントもかわいい。

拝観後は、小幡緑地までちょっと寄り道していきましょう。

よく見ると「僕のンをかたづけて」と書いてあります。「ン」だけが残ったことに逆説的なメッセージを感じるあとしまつ看板です。

林の中を行く「木の道」として遊歩道が整備されています。

木々の緑の中に、赤パイロンがときおり現れるのも、散策の楽しみのひとつです。

パイロンが置かれているところは足場が悪いため注意して歩きましょう。

「通行止」は例によって創英角ポップ体でした。書き初めならぬ、よもやのPOP体初め…!

縁の中ほどにある緑ヶ池では、鴨がゆったりと泳いでいます。

「ノロノロ運転でよろしく」。

亥年ですが、ゆるゆるマイペースに、楽しい一年になりますよう。

感情をベースにする、自分視点のふりかえり

早いもので、今年(2018年)もあとわずかです。

年始に立てた目標や、やりたいことリスト(ウィッシュリスト)を見直して、どれくらい達成できたかふりかえる人も多いでしょう。

ちなみにわたしは、2018年の100個のやりたいことリストのうち、残念ながら1/4程度しか実現できませんでした。

けれど、目標というのは時として、「どれだけ実現できたか」よりも、実現したことで「どれだけ嬉しかったか」のほうが大切なことがあります。

文字通り、達成度よりも達成感です。

 

リストを見返すことで、ひとつひとつ達成したときの楽しかった気持ち、あるいは実現できず悔しかった想いがよみがえってきます。

その過程もまた、次のやりたいことを実現するための足がかりになります。

(やりたいことリストを作ったことがない人は、ぜひ来年は作ってみることをおすすめします)

 

さて、ここでもうひとつ、気をつけたいことがあります。

それは、自分では達成できた、楽しかったと思っていても、別の人から見たら違うかもしれないことです。

 

たとえば自分では読んで面白かったと思った本、観て面白かったと思う映画でも、他人の「つまらなかった」という感想を耳にすると、それに引きずられてしまうように。

たとえばイベントに参加していても、まわりに退屈そうにしている人がいると気になって楽しめなくなってしまうように。

 

もちろん客観的な視点を得るのは大事なことで、仕事や学校など、社会的にはそれが評価基準になることも多々あります。

 

けれど、自分の立てた目標のふりかえりをするときには、自分視点を大切にしてほしいのです。

 

自分の人生が楽しかったかそうでないか、本当に評価できるのは自分しかいないから。

誰にとっても生の時間は有限で、他人の人生を生きる暇はありません。

 

今年も「凪の渡し場」にお越しいただきありがとうございます。

まだ年内に二、三回更新するのを目標とはしていますが(笑)、少し早めのご挨拶です。

よいお年を。

旅と路線図と鳥瞰図 – たのしい路線図

観光や仕事で鉄道の駅を利用するとき、路線図の存在は欠かせません。

目的の駅までの乗り換えや、運賃、付近の観光案内まで。

普通の地図とは似て非なる機能性を持つ「路線図」の世界を味わう本があります。

日本全国、さらには海外の路線図がひたすら紹介され、ただ「いいねぇ」という溜息を漏らすのみです。

とくに首都圏など大都市部では、JRや私鉄・地下鉄など数多くの路線が入り乱れて、どうわかりやすく見せるかの工夫が求められます。

作り手が伝えたい情報と、乗客が知りたい情報、それぞれに応じて何種類もの路線図が使われることもあります。

たとえば先日、東京に行った際、渋谷駅でこのようなインバウンド向け路線図を見かけました。

何気なくツイートしたところ、わたしのアカウントにしては多くのRTがあって驚きました。

山手線より東京メトロや都営地下鉄大江戸線が目立つように描かれているのは、地下鉄の出入口付近だったからでしょう。

その山手線が楕円ではなく、上野や秋葉原のあたりで出っ張っているのはデザイナーの苦心のあらわれのようです。

このエリアは上野動物園のパンダや浅草雷門が描かれ、「Cultural Fusion」(文化の融合)と命名されています。

その他の地域も「Cool Tokyo」や「Night Life」などと色分けされ、なんだか日本地図の形にも見えてきます。

さらに東武スカイツリーラインの先には日光の三猿、京王線の先は高尾山の天狗が描かれるなど、細かいところまで見る人を飽きません。

 

これを見ていて思い出すのが、大正時代に一世を風靡した鳥瞰図絵師の吉田初三郎です。

紙上からはばたく、鳥瞰図の世界

初三郎は若い頃に描いた京阪電車の案内図が、のちの昭和天皇から「これは綺麗でわかりやすい」との評判を得たことで頭角を現します。

初三郎の鳥瞰図も、大観光時代を迎えた当時の日本で、実用品だけでも、美術品だけでもない、その土地を新しい視点で見るものとして受け入れられていったのでしょう。

現代は現代で、駅の案内図や路線図は機能性を重視しながらも、利用する人にわかりやすく、見やすいものを提供するという心は共通するものがあります。

そんな作り手の想いが込められているからこそ、時代や受け手が変わっても、路線図は見る人々の心を躍らせてくれます。

旅情のパイロン

旅先では、あらゆるものが新鮮に映ります。

日本全国、どの路上にもあるパイロン(カラーコーン)も、あらためて目をとめてみれば、旅情を誘うものです。

今回は、そんな路上=旅情のパイロンズを紹介します。

まずは偏愛する広島から。

広島では、毎年ゴールデンウィークにフラワーフェスティバルが開催されますが、このような交通規制が敷かれる大きなイベントでは、必ずといっていいほど活躍するのがパイロンたちです。

イベントの直前にまちを訪れると、パイロンが静かに出番を待っている光景に出会えます。ひときわ大きなパイロンに出会えるチャンスも。

 

広島からもう一枚、こちらは広島電鉄の車庫がある江波で、路面電車とのツーショット。

バラエティ豊かな車両が楽しめる広島電鉄の路面電車ですが、基本となるグリーンの帯が、同じくグリーンのパイロンとよく調和していて、お気に入りの一枚です。

広島乗り物めぐり – ヌマジ交通ミュージアム

 

瀬戸内海を渡って、お向かいの四国は愛媛県松山市。こちらではオープン直後の道後温泉別館で、ご当地キャラの「みきゃん」をあしらったオレンジのパイロンに出会えました。

このときの様子は 四国横断まちあるき – ご当地キャラとパイロンの旅 にまとめていますので今回は割愛し、北に向かいましょう。

鳥取県、境港市にやってきました。この街出身の漫画家・水木しげるさんにちなんで、境港駅前は妖怪のブロンズ像が800mにわたって続く「水木しげるロード」として整備されています。

ねずみ男パイロンに、ぬりかべパイロン。道行く人々はとなりのブロンズ像に夢中でシャッターを切るばかりで、まるでパイロンは目に入っていないかのよう。

観光案内所で販売されているガイドブックにも掲載されていない、まさに妖怪のように見えない存在です。

鳥取といえば砂丘でも有名ですが、地質のせいか、砂丘以外の海岸でも砂に埋まりかけたパイロンに出会えました。

まだ訪れたことはないのですが、鳥取砂丘パイロンの情報もお待ちしています。

おとなり島根県出雲市は出雲神話で知られます。

高天原から現れたタケミカヅチが国譲りを迫ったという伝承のある稲佐の浜では、二千年の時を超えて、パイロンが地の平和を祈っています。

よく見られるコーンバーではなく、しめ縄のように足元で四方のパイロンを縛る光景は、神々しさを感じずにはいられません。

 

最後は京都です。景観に配慮した街ならではの竹かごパイロンは、もはや京名物のひとつに数えてもよいでしょう。

「迷惑駐車お断り」の案内もはんなりと、まさにぶぶ漬け文化の極みです。

まだ見ぬ各地のパイロンを探しに、また旅に出たくなります。

 

半歩踏み出す、ものがたり旅

このブログ「凪の渡し場」では、日常に新しい視点を取り入れるために、旅に出ることの効用を何度も書いてきました。

自分だけの物語を見つける – ぼくらが旅に出る理由

自分視点の旅のすすめ – できるだけがんばらないひとりたび

また、一歩を踏み出す勇気が出ない人には、〈片足を日常に置いたまま、半歩ずつ踏み出す〉というコツもお伝えしました。

一歩を踏み出す勇気が出ないなら、半歩踏み出してみる

 

それを実現できるのが、日帰りで近隣の府県を訪れる「半日旅」です。

わたしは名古屋在住なのですが、愛知・岐阜・三重のいわゆる東海三県だけでなく、京都・滋賀・奈良・大阪といった関西地方も、その気になれば日帰りで行けてしまうのが便利なところです。

東海道新幹線を使えば大阪まで一時間ですが、在来線や高速バス、そして近鉄特急といった手段でも往復できます。

関西は歴史も古いだけ、さまざまな文化が何層にも重なり合っていて、新しい視点をみつけたり、いつもと違った経験をするのにうってつけです。

たとえば近鉄で大阪難波に着いたら、南海電車で和歌山に足をのばしたり、阪神電車で神戸に行ったり、さらにはそこから阪急電車で京都に行って、京阪電車でまた大阪に帰ってくるといったこともできてしまいます。

わたしはとりたてて鉄道マニアというわけではありませんが、ふしぎと関西の鉄道にはこころ躍るものがあります。

こちらの本では、漫画家・イラストレーターの細川貂々さんが描くイラストが、見事にそのときめきを表現しています。

表紙に描かれた顔をながめているだけで、行く先々に待ち受けているものがたりを予感させます。

 

ときめきといえばこちら。関西を中心に〈いいビル〉の魅力を発信するBMC(ビルマニアカフェ)のメンバーが執筆する、喫茶店という空間に秘められたものがたりを記録する写真集です。

関西に行くたび、こちらで紹介された喫茶店をひとつひとつ訪れるのが密かな楽しみです。

 

こんなふうに、ひとつのテーマに沿って旅をすることは、本を読むことにも似ています。

それは、さながら「ものがたり旅」といえます。

 

はじめて訪れた場所でも、前に行った場所と似た雰囲気を感じたり。

その街やお店の歴史を学ぶことで、思わぬつながりをみつけたり。

そして、次に行きたい旅の目的地が頭に浮かぶことも。

 

ものがたりの世界は、はてしなくひろがっていきます。