あの輝きの世界へ – Osaka Metro 純喫茶めぐり

喫茶店という空間が好きです。

思い出すのは、ふかふかの赤いソファ。

コーヒーの香りに、お昼ならナポリタン、おやつどきならホットケーキの匂いが混じり合う。

現代的なカフェとはまた違った、五感に訴えかける居心地の良さがそこにはあります。

わたしが1980年代の生まれだからか、昭和という時代の残照のような、その存在に心惹かれるのかもしれません。

 

名古屋にも魅力的な喫茶店は数多くありますが、大阪をはじめ関西でも、喫茶店文化はいまだ健在です。

その大阪では2020年3月22日(日)まで、大阪市交通局から民営化された Osaka Metro による「純喫茶めぐり」キャンペーンが開催されています。

Osaka Metro沿線のおすすめ「純喫茶」店舗を紹介 ! 心の「活力」をチャージ「純喫茶めぐり」キャンペーンを実施します|Osaka Metro

[2020年1月10日]  Osaka Metroは、2020年1月14日(火曜日)から3月22日(日曜日)まで、温かみのある空間で、心の「活力」をチャージする「純喫茶めぐり」キャンペーンを実施します。  大阪は、全国でも喫茶店が多い街として有名で、なかでも昔ながらの風情がある昭和レトロな純喫茶は、多くの人々に愛される存在となっています。Osaka …

 

大阪市内の純喫茶32店舗をテーマ別に紹介するリーフレットはOsaka Metroの地下鉄駅で配布されており、1月25日(土)時点でもまだ手に入れることができました。

リーフレットを持参すると各店舗のロゴをモチーフにしたオリジナルコレクションカードがもらえるという、ロゴ好き・看板好きにとっても嬉しい仕掛けです。

こちらは堺筋線恵美須町駅・動物園前駅近くの「ドレミ」さん。

…というより、通天閣の目の前と言ったほうが良いかもしれません。

喫茶とインテリア west」によると、通天閣ができる前からこの場所にビルがあったそうで、立地も含めて歴史を感じさせます。

気になっていたプリンとともに、かわいいネコのイラストとロゴ入りのカードをいただきました。

 

ミナミでは、なんば・日本橋駅周辺に「アラビヤコーヒー」さんや「アメリカン」さんなど、まちのにぎわいそのままに活気のあるお店が軒を並べています。

店名さながら星条旗のようなメニューもきらびやか。

制服姿のウェイトレスさん(と、あえて書きます)が立ち回る、輝きに満ちた店内にいると、わたしが生まれる前の時代にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。

土日休みのお店も多いので、遠方からだとなかなか回るのに苦労しますが、都合の良さそうな純喫茶をさがして、名前も知らなかった駅に向かうのも楽しいです。

駅構内の蛍光灯さえ喫茶店のインテリアに見えてきます。

旅行で訪れた人間にとっては名も知らぬ駅でも、その土地に住む人にとっては日常です。

ひょっとしたら、このまちに住んで、こんなお店に通う人生もあったかもしれない…そんな夢想にふけりながら、特別な時間を過ごせる純喫茶めぐりです。

自分だけの星座をみつけたい

冬になると、よく夜空を見上げます。

家までの帰り道、日の入りも早くなり、澄み渡った空に星々がきらめくのを感じる季節です。

星見の楽しみ方は人それぞれだと思いますが、わたしはスマートフォンのアプリを片手に星座をみつけるのが好きです。

 

よく、北極星をみつけるのに、カシオペア座のWから交点を延ばすとか、北斗七星を使うという方法が紹介されることがあります。

でも、そう言われると、カシオペア座が北極星をみつける道具に過ぎないようにも思えてしまいます。

北極星だって、ポラリスという名前の、こぐま座を構成するひとつの星なのです。

星座の間に、優劣はありません。

 

さらに言えば、星座というのも古代の占星術や天文学という視点から生まれたものです。

ほんとうは距離も大きさもバラバラの星々を、ある時点の地球から見たうえで、勝手につなぎ合わせた星座のかたちは、宇宙のどこにも存在しません。

それでも、人はそれに意味を、物語を見出します。

一等星だけを探すのではなく、明るい星も暗い星もつなぎ合わせて意味をみつけるのは、人類の習性かもしれません。

 

視点を個人の趣味や特性に転じてみましょう。

 

仕事でも趣味でも、それだけに長年打ち込んでいる人を見ると、到底かなわないと思える瞬間があります。

 

たとえば、どれだけフォントが好きと言っても、一流のフォントデザイナーには追いつけない。

けれど、フォントが好きで、本や物語が好きで、まちの風景が好きで…といった視点をつなぎ合わせることで、日常のなかに新たな意味を見つけることができるかもしれません。

 

たとえば、ネコが好きでも、岩合光昭さんのような写真家になるのは難しいでしょう。

けれど、たとえば路上観察・都市鑑賞の視点を持ち込めば、〈猫とパイロン〉といった唯一無二の視点で写真を撮ることができます。

好きなものをたくさんみつけて、自由につなぎ合わせれば、自分だけの星座を描くことができるのです。

瀬戸内国際芸術祭2019 – 四国を感じる、高松まちあるき

久しぶりの更新となりました。

夏真っ盛り、瀬戸内では三年に一度の瀬戸内国際芸術祭2019 夏会期がスタートしています。

瀬戸芸はアートと自然、地元の暮らしが融合した島めぐりが大きな魅力ですが、人出と日射しが心配…という方には、高松市街のまちあるきもおすすめです。

以前戦後を感じるモダニズム建築 – 香川・高松まちあるきという記事も書きましたが、今回はまた違ったスポットをご紹介しましょう。

 

まずは四国の玄関口、JR高松駅・高松港から東へ少し歩くと、香川県立ミュージアムがあります。

9月7日(土)までは特別展、祭礼百態ー香川・瀬戸内の「風流」が開催中です。

この地方に古くから伝わる祭礼・民俗芸能を描いた絵図や、祭りに使われる屋台・獅子舞などが展示されています。

ふさふさしてますね…!

地元の小学校児童が手作りした獅子舞もかわいい。

 

ミュージアムの東に広がる北浜エリアは、昭和初期に高松港の貨物一時保管場所として栄えた倉庫街です。

現在は倉庫街をリノベーションした北浜alleyとなり、雑貨屋さんやカフェレストランが集積しています。

瀬戸内国際芸術祭2019では「北浜の小さな香川ギャラリー」としてアート作品の展示も行われています。

丸亀うちわの骨6000枚を使った西堀隆史さんの「内輪の骨の広場」。

ドットアーキテクツと香川県立高松工芸高校の「Living Traditional Crafts」は、工芸・クラフトが織りなす絵巻風ものがたり。かわいいものは分け隔てなく大切にしたくなります。

そのとなり、石原秀則さんの「うどん湯切りロボット」からは、さぬきうどんの正しいつくり方を教わります。ハイテク!

 

さて、高松港に戻り、ことでん高松築港駅から中心街に向かいましょう。

ジュリアン・オピーの「銀行家、看護師、探偵、弁護士」は、地元産の石でまちを行くさまざまな人をかたどります。

ことでんといえば、シュールなマスコットキャラクターのことちゃんですね。ことでん100周年の2011年に恋人のことみちゃんとご結婚(おめでとうございます)。

今日もお子さんと三人で大活躍です。ぽい!

片原町、あるいは瓦町で下車して、高松丸亀町商店街を歩きます。

最寄り駅がふたつあることからわかるように、隣接する商店街を合わせると大阪の天神橋筋商店街に匹敵する長さを誇ります。

さて、ちょっと変わったねこのポスターは…?(←二通りの読み方が可能)

ヤノベケンジさんのパプリックアート「SHIP’S CAT」でした。瀬戸内国際芸術祭の連携事業「祝祭」のイベントとして、8月15日まで商店街を歩きまわるそうです。

ボラードに乗った猫、実に神々しいですね。

まちあるき恒例の看板タイポさんぽもいきましょう。「3びきの子ねこ」、〈3〉と〈子〉のフォルムを似せてあるのが良いですね。

近くには「3びきの子ぶた」もあります。こちらは果実店のイートインコーナーで、ジュースやジェラート、サンドウィッチを味わえます。

 

今回はひとまずここまで。次回は高松市美術館での展示や、郊外のスポットをめぐります。

 

 

魅惑のアンダーワールド – 知られざる地下街

名古屋で暮らしていると、地下街を使いこなしたくなる気持ちが高まってきます。

栄や名駅といった繁華街の下に縦横無尽に広がる地下街の地理を覚えておけば、目的地まで安全に、快適に向かうことができます。

また、リニューアルで明るい雰囲気になる地下街を歩くのも楽しいですが、時が止まったような地下街のたたずまいも、また魅力的なものです。

知っているようで知らない、見えるようで見えない〈地下街〉に焦点を当てたのが、こちらの本です。

著者の廣井さんは2012年に名古屋大学減災連携研究センターの准教授に着任したのを機に、地下街を研究テーマに選んだのだそう。

名古屋、東京、大阪と言った都市部を中心に、全国で約80もあるという地下街の歴史、特徴などが詳しく解説されています。

 

個人的に名古屋の地下街で好きなのは、名古屋テレビ塔の下に広がるセントラルパークです。

地上の公園と一体となって「街全体を美しくし、楽しくするもの」というコンセプトで計画されたということで、丸善などの魅力あるテナントはもちろん、通路も広々としてとても明るい印象です。

突き当たりの地下鉄久屋大通駅に面した壁際は〈セントラルギャラリー〉として、定期的にさまざまな展示がされているのも楽しみのひとつです。

昨年末に訪れたときは、ちょうど今年開催される「あいちトリエンナーレ」の紹介と、過去のトリエンナーレのポスターが展示されていました。

 

そして、名古屋以外の地下街も、それぞれに特色があって、比較してみるのも面白いです。

たとえば、高速神戸駅からJR神戸駅にいたる「デュオこうべ」は、開放的なドームが印象的です。

いっぽう、新開地のほうに足を伸ばせば、一気に昭和な雰囲気の「メトロこうべ」が広がります。

ネコが微妙にかわいくない…。

そして、日本最西端・福岡市営地下鉄の「天神地下街」は、ヨーロッパ風の天井やステンドグラスで彩られた、ほの暗い空間が忘れられません。

「通路は客席、店舗は舞台、主役はお客様」という劇場空間のコンセプトなのだそう。

訪れたときは実に現代的な印象だったのですが、誕生から40年以上もリニューアルしていないというのに驚きです。

 

本の中では、このような地下街の紹介だけでなく、地震や津波など災害時の備えや、技術の進化にともなって変わっていく〈これからの地下街〉のありかたなども語られています。

 

地上のまちあるきとはまた違った「ちかあるき」を楽しんでみたくなります。

 

トンネルを抜けると霧の国 – 亀岡まちあるき

以前「半歩踏み出す、ものがたり旅」という記事で〈半日旅〉をすすめる本を紹介しました。

この本で気になった場所のひとつに、京都府亀岡市があります。

JRで京都駅からも20分程度、けれど旧国名では丹波国に属し、京都に似ているようで違う、落ち着いた雰囲気の街らしいです。

ということで、さっそく行ってきました。

 

まずはJR京都駅、嵯峨野線(山陰本線)ホームへ。

今年(2019年)3月には、京都鉄道博物館や梅小路公園の最寄駅として梅小路京都西駅も開業予定です。

駅構内ポスターは安定のPOP体でした。

嵯峨嵐山駅を過ぎると、ぐっと乗客は減って、長いトンネルで険しい山峡を越えます。

山城国と丹波国、国境のトンネルを抜けると、霧の国だった——

そう言いたくなるほど美しい霧が広がる市街が見えてきました。

盆地のため霧が広がりやすく、竜ヶ尾山の山頂付近には「霧のテラス」という名所もあるそうです。

かめおか霧のテラス ライブカメラ|ぶらり亀岡 亀岡市観光協会

かめおか霧のテラス ライブカメラ|亀岡市観光協会のページです。亀岡の観光の見どころや、湯の花温泉、保津川下り、嵯峨野トロッコ列車の紹介はもちろん亀岡の、四季の花や、グルメ情報、イベント情報を発信しております。いろいろな亀岡を探索して頂きながら、あなただけの亀岡を探してみてください!

 

亀岡駅舎、特徴的な形をしています。

北口では京都スタジアム(仮称)が工事中でした。2020年のオープン予定だそうです。

 

「国鉄山陰線」という表記におどろいた看板、〈京都府下随一のスケールと楽しいインテリアを創造する〉というスケールの大きい謳い文句も惹かれます。

 

まるいフォルムと外階段の対比がかわいい。

マンホールは上下どちらから見ても亀の形をしています。

「🐕のフンは飼主が持ち帰りましょう!」と、犬のイラストを絵文字のように使うあとしまつ看板は意外にめずらしい。

 

まちあるきを楽しんだら、亀山城址へ向かいます。

亀岡市は明智光秀が築いた丹波亀山城の城下町として栄えました。

織田信長の謀反人というイメージが強い光秀ですが、2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主役となるなど、再評価が進みそうな予感がします。

そして、城の名前は「亀山城」なのに何故「亀岡市」なのかというと、三重県に同じ亀山という地名があってややこしいため、明治の廃藩置県ごろに亀山から亀岡に改称したとのこと。亀岡県となるも、ほどなく京都府に合併されます。

なんだか数奇な運命をたどったまちですが、さらに変わっているのは現在の亀山城、実は宗教法人大本の所有する土地となっています。

大本の聖地〈天恩郷〉とされていますが、一部の禁足地以外は本部で申し出れば誰でも自由に見学できます。

 

亀山城址の近くには亀岡市文化資料館もあります。

もとは亀岡市立女子技芸専門学校だったそうで、白い建物はなつかしい学校らしさを感じさせます。

入館料は210円、古代からの亀岡の歩みを学ぶことができます。

そして、ここ亀岡は「こち亀」で有名な秋本治先生の新作漫画「ファインダー」の舞台ともなっています。

文化資料館にも作品や秋本先生の紹介があり、さらに近くのハンバーガーショップ「ダイコクバーガー」は登場する女子高生たちの行きつけの店として大々的にコラボレーションしています。

こちらの意味での〈聖地巡礼〉をする人も増えているのだとか…。

 

いろんな楽しみ方ができる、亀岡市まちあるきでした。