誰しも、自分以外の人の気持ちを理解したいと思うことがあるでしょう。
それは自分にとって大切な人だったり。
仕事上の同僚、あるいはライバルだったり。
いわゆる「読心術」のような能力が本当にあったら、どんなに救われる人がいることでしょうか。
人間関係の悩みの多くは、他人の気持ちを理解することの難しさにあると言ってもいいかもしれません。
果たして読心術などというものは本当にあるのか…その謎に、オカルトではなく、まっとうな科学と心理学の手法で挑んだ本がこちら。
さて、一言で、この本の結論をネタばれしてしまうと。
残念ながら、そんなものはありません(!)
人間は、自分が思っている以上に、人のことを理解することが難しいようです。
とくに性別、年齢、信条など、自分とことなるカテゴリーにいると思われる相手に対しては、ステレオタイプな見方をしてしまいがちだと言われます。
たとえば「女性は男性より感情が豊かで、よく泣いたり笑ったりする」。
統計的に平均をとれば、そう見える部分もあるかもしれません。
でも、人の内面は、平均を取れるものではなく、ひとりひとり違いがあるもの。
平均的な男女の差をみることは、特定のふたりの関係を見る上では、ほとんど意味がありません。
それは、相手のことにあまり共感できないから、はじめから理解できないと思ってしまうようなもの。
それなら、お互いによく知っている間柄だったら、もう少しわかりあうことができるのでは?
そんなこいねがうような疑問にも、この本は否定的な答えを出します。
恋愛関係にあるパートナーに、お互いの好きなことなど、さまざまな質問に相手がどう答えるかを実験したところ、たしかに正答率は当てずっぽうよりは高いものだったといいます。
けれど、その確率は、お互いが予測したより、ずっと低いものだったとのこと。
「相手がどう思うか?」を相手の視点に立って考えることができるのは、人間の素晴らしい能力です。
でも、それもやはり、自分の視点から勝手な想像をしているだけという危険がつきまといます。
本書では、自分の心がハイビジョンテレビの映像だとしたら、他人の心は白黒テレビで観ているようなものかもしれないというたとえが使われています。
相手がどう思っているか、表面的な態度から推し量ろうとしても、情報量には限界があり、本心を誤解してしまうかもしれない。
だから、この本では、相手の視点を獲得するために、直接訊いたほうが早いというアドバイスがされています。
身もふたもない結論のようですが、それは一面、真実かもしれませんね。
少なくとも、本心から相手のことを理解したいと思えるような相手になら、勇気を持って、訊いてみたいことを訊いてみるもの良いかもしれません。