すっかり季節も秋めいてきました。
昨年(2016年)の記事 読書の秋、フォントの秋。文字を特集した雑誌を読みくらべ で紹介した雑誌「月刊MdN」では、今年もフォントの特集が組まれています。
今回は「絶対フォント感を身につける。[明朝体編]」。
日本語フォントの中でも基本と言える明朝体だけに、骨格が似通っていて、なかなか見分けることはむずかしい。
けれど、今でも毎年、いくつもの明朝体フォントがこの世の中に生み出されています。
ということは、それぞれにコンセプトがあり、それを主張できるだけの、ほかのフォントにはない違いがあるということです。
本書では、明朝体を歴史的な観点から「レトロ系」「ベーシック系」「アップデート系」の三つにざっくりと分類した上で、それぞれのフォントの特徴と見分け方を解説していきます。
レトロ系とは、かつての金属活字の時代に使われていたフォント、あるいはその影響を強く受けたフォントとしています。
その二大巨頭が築地体と秀英体。
活字で組まれた古い本をめくれば、今からすると文字組も小さくでちょっと読みにくい、けれどやっぱり、その時代ならではの味わいがあります。
アップデート系は逆に、現在主流の、横書きやディスプレイ上でも見やすいように新しくデザインされたフォントたち。
MacやiPhone、iPadなどアップル製品に標準搭載されているヒラギノ明朝体をはじめとして、今も多くのフォントが生まれています。
この中間にあるのが、ベーシック系。モリサワのリュウミンなど、安定感のあるオーソドックスな明朝体です。今回の記事も本文にリュウミンを使用しています。
筑紫明朝もベーシック系に入れられていますが、そのバリエーションである筑紫Aオールド明朝や最近リリースされた筑紫Q明朝などはレトロ系に分類されています。
わたしの場合、筑紫シリーズを目にしたら、レトロ系とかベーシック系とか考える前に一瞬で絶対フォント感が発動するくらい、大好きなフォントです。
ぜひ、この本で、あなたもお気に入りの明朝体を見つけてみてください。
たとえば秋の観光シーズン。
まちなかや旅行先で修学旅行生たちとすれ違ったとしましょう。
彼ら、彼女らはみんな同じ制服を着ていて、大人の目からは見分けがつきません。
けれど、その子たち自身は、何ヶ月も、何年も同じ時間を共有していて、お互いの個性もわかっている。
仲良しの関係もいたり、ひっそりと想いを寄せる相手もいたり。
フォントも同じことです。
みんなちがって、みんないい。
この世に同じ人間がいないように、同じ明朝体はひとつとしてないのです。