まちとひとの記憶地図をつくる – なるへそ新聞

まちを歩いていて、空き地を見つけたとき。

ここ、前はなんだったっけ? と、思わず考え込んでしまうことはないでしょうか。

あるいは、次になにができるのだろうと、気になってしまったり。

そうやって、少しずつ記憶の地層が積み重なり、まちは変化していく。

 

そんなまちの記憶を、新聞という形で再現するアートプロジェクトがあります。

紙面には、まちに暮らす人々の記憶が地図のように現れます。

そして、刊行を重ねるうちに、いくつかの記事は空き地となり、また新しい記事で更新されていく。

過去なのか現在なのか、モザイクのように時間が混在した、ふしぎな新聞。

 

そんな「なるへそ新聞」が、今年開催される「あいちトリエンナーレ2016」の出品作品として、愛知県にやってきます。

 

そして、このプロジェクトは、一般参加で記者や編集者を募集中。
ということで、わたしも参加してみることにしました!

 

実のところ、これに参加しようかどうか、そしてそれをブログで公表しようかどうか、ひとかたならず迷いました。

一回限りのセミナーでなく、こういう大きなプロジェクトに参加するというのは、これまでにない経験。
まちの人に取材というのも、はたして自分にできるのだろうか。

 

3年前のわたしだったら、不安が先だって手を上げられなかったでしょう。

 

でも、前回のあいちトリエンナーレ以来、ひとりで鑑賞するだけでは得られない、アートの楽しみ方があることを知りました。

いろんなイベント・セミナーに参加して、とても行動力のある方に出会って、その行動力を自分も身につけたい! と思うようになりました。

 

なにより、説明を聞いたときに、とても楽しそう! と思ってしまったのです。

まちの記憶といった対象だったり、昔の新聞を手書き文字で再現するプロセスだったり…。

わたしのなかにある好奇心がとても刺激されたのです。
これに参加しない方が、絶対もったいない。

そして、せっかくならブログで発信してみれば、さらにおもしろさがひろがるかもしれない。

ということで、「なせば大抵なんとかなる」の精神で、チャレンジしてみようと思います。

 

とはいっても、やっぱり取材は不安なので(笑)

わたしの知り合いで、愛知での変わったエピソード・お仕事の経験談などをお持ちの方、ぜひご協力をお願いいたします(^^;

まちあるきの楽しみが無限にひろがる – 街角図鑑

まちかどのさまざまなものを対象として楽しむ、路上観察。

その楽しみを、さらにひろげてくれる一冊に出会いました。



「図鑑」という名の通り、街で見かけるさまざまなものを徹底的に分類・解説。

たとえば、工事現場で見かける赤いコーン。

あれの正式名称を「パイロン」というのだとはじめて知りました。

さらに、会社によってさまざまな商品名がついているようで、その見分け方まで丁寧に図解。
「とにかく太くて、重いやつだ」とか、こどものころに読んだ図鑑のような文体も楽しい。

 

これまでも、いろいろな視点でまちあるきを楽しんでいたつもりでしたが、まだまだ見えていないものがあることを思い知らされました。

 

実際、手持ちの写真をランダムに見返してみれば、いくらでもこの図鑑にあるものが写っていることに気づきます。

たとえば、タイルのカーブがかわいくて撮った、こちらの写真。

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そこには、ひっそりと埋め込まれた送水口が。
送水口とは「消防車からの放水が届きにくいところに水を送るために設置されるもの」だそう。

さらに上部には、自生したのか誰かが植えたのか、路上園芸が花を添える。

ひとつの完成されたアートのようにも見えてきます。
さらに、ずいぶん前に野良猫を追いかけて撮った、この一枚(笑)

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この本を読んだあとに見ると、こんな感想を抱きます。

かなり古そうな郵便ポスト。脚の長さと差入れ口がひとつなことから、1号角形らしいと推測。
(ちなみに郵便局の看板がオレンジなので、民営化後の「郵便局株式会社」時代のもの)

自販機が茶色いのは景観配慮型? 左右にある回収ボックスが兄妹みたいでかわいい。
「保険調剤」の看板手前の街灯がレトロでおしゃれ。
そのうしろに置かれた水色ののぼりベース、半球型でこれもかわいい。
いちばん奥、「止まれ」の標識が側溝側にカーブしていて、車のじゃまにならないようにしているっぽい。

あと、いちばん大きな「薬局」の看板がPOP体…というのは、この本を読む前から気になるところですね(^^;

 

もちろん、この本に載っていないものでも、気になるものがあれば自分なりの視点で観察してみるのが良いと思います。

それを習慣にすることで、カラーバス効果で、似たものがますます目につくようになり、さらに深く知ることができる。

そうやって、世の中の楽しみ方が無限にひろがっていきます。

 

6月11日には、著者の三土さんと寄稿者による出版記念のスライドトークも開催されるそうで、こちらも気になります。

ありふれた街の見え方が変わる『街角図鑑』

文字を知り、文字を楽しむ雑誌 – Typography 09

文字を楽しむデザインジャーナル『Typography』(タイポグラフィ)の新刊、Issue 09 が5月に発売されました。

 

年2回の刊行で、はやくも創刊5年目。毎回、文字やフォントにまつわる知識を楽しく学ぶことができます。

 

今回の特集は「美しい本と組版」。

本とは切っても切れない関係にある文字。
そして、本文や章立て、図表などを読みやすくレイアウトするのが組版とよばれる技術です。

さまざまな雑誌や書籍を実例に、どう美しくて読みやすい本がつくられているかが解説されています。

新潮社や岩波書店といった出版社の組版ルールが公開されているのもおもしろい。岩波新書はヒラギノ明朝を使っているのですね。

本文は、著者の意図が読み手に正しく伝わることがもっとも大切。
なので、このようなルールは本来、読者が意識することはありません。

意識せずに読める本をつくりあげる、そんなプロの仕事に敬意を表します。

 

ちなみに、ブログやメールなどの文章では、またルールが少し違います。

たとえば、行頭の字下げ
 字下げとは、このように文の最初を一文字空けること。

この特集によると、字下げのメリットは、段落の変わり目がはっきりすること。字下げがないと、たまたま前の行で文が終わっていたとき、段落が変わっているのか、続いているのかわかりにくくなります。

著者の意図を正確に伝えるために、字下げを行うのが無難だといわれています。

 

ウェブ上では、ニュースサイトによっては字下げをしているところもあるようですが、ブログでは字下げをしないことが多いようです。

そのかわり、段落の変わり目は行間を空けるのが一般的だという印象。

 

このサイトでも、字下げなし・段落の変わり目は行間を空けるというルールにしています。

どちらにしても、読みやすさを考えたうえで、しっくりくるルールで統一すれば良いのではと思います。

 

もうひとつだけ、こちらはぜひ意識してほしいルールがあります。

それは、半角と全角の混在を避けること。

 

「2016年5月15日」のように、月だけが全角で、ほかは半角数字になっていたり。

「Typography」のように、大文字だけが全角で、ほかは半角アルファベットだったり。

 

フォントによっては、とても不揃いに見えてしまいます。

 

わたしはATOKを使っているので、最初から変換候補に半角数字だけが出てくるようにしています。
どうしてもうっかりミスは起こり得るので、ツールで防ぐというのもひとつの手。

 

そんな日常に役立つヒントも得られる、Typography誌のご紹介でした。


 

人の想いにふれる旅 – 瀬戸内国際芸術祭

BS朝日「人生を変える7日旅」、平井理央さんが巡る瀬戸内国際芸術祭。

 

前半の感想はこちら
後半は、男木島・女木島・豊島を巡る旅。

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過疎化に悩む男木島では、芸術祭をきっかけに若い世代の移住者が増えたといいます。

そんな島で、私設図書館の設立や、休校になった小学校の復活運動に取り組んだ人に出会う平井さん。

【全国から応援、蔵書は3500冊】男木島図書館がオープンしました!移住相談窓口も Ogi island library
また、違法産廃問題に揺れた豊島では、島の農業を再生するため、イチゴのハウス栽培に取り組む人に出会います。

 

何かを好きな気持ちは、伝えようとしなくてもすごく伝わってくる」という言葉が印象的でした。

 

人見知り、内向型であっても、思いきって聞いてみれば、その人の想いをわかちあえる。
内向型だからこそ、想いを深くわかりあえる。

人生も旅も、そうやってさまざまな人の想いにふれることのくりかえしなのだと感じました。

 

そして、また行きたいと思える場所ができる。

また会いたいと思える人ができる。

 

それは、とても素敵なこと。

 

2016年の瀬戸内国際芸術祭、夏会期は7月18日(月)から9月4日(日)まで、秋会期は10月8日(土)から11月6日(日)まで。

わたしも、ぜひまた訪れたいと思います。

 

きっと、特別な思い出ができるはず。

(追記)そのほかの瀬戸芸の記事は、こちらからどうぞ。


いきいきとした新世紀の明朝体 – 筑紫明朝

ヒラギノ明朝を紹介したので、次はヒラギノ角ゴ…と予想した方がもしいたら、なかなかわたしと近いフォント観。(フォント観ってなんだ?)

実際そうしようと思っていたのですが、ちょっとおもしろい事例を見つけたので、先に筑紫明朝のお話をします(笑)

 

筑紫明朝(つくしみんちょう)は、マティスと同じ、フォントワークスからリリースされているフォント。

 

フォントワークスの年表を見ると、マティスが1992年のリリース、筑紫明朝は2004年。

マティスと言えば新世紀エヴァンゲリオンですが、フォントワークスとしては新世紀のフォントは筑紫明朝のほうなのですね。

 

おもしろいのは、新しいフォントであっても、むしろ活字のような雰囲気を感じること。

 

いきいきした感じ。

生々しい漢字。

 

本のタイトルや、小説の本文で使われていても、とても映えます。

 

本のタイトルには、むしろバリエーションの筑紫Aオールド明朝のほうをよく見かけますね。

」の字を見比べると、わかってもらえるでしょうか。
オールド明朝のほうが、横棒が太くはじまって細くなっていく、筆遣いが強調されています。

 

さらに筑紫アンティーク明朝というものもあります。

「文」の字のはらいも表現されていて、名前どおり、アンティークな雰囲気をだしたいときにぴったりです。

あっ、ちなみにこの特別展はまだ行けてません。
夏に大阪に巡回するらしいので、その機会を狙ってます。

興味のある方、フォント観の近い方、お誘い合わせの上で行きましょう(笑)

 

さて、筑紫明朝に話を戻して。冒頭に言った、おもしろい事例というのはこちら。

木や石などの天然素材で建物を作る、三角屋のホームページ。

ほぼ日刊イトイ新聞が、最初で最後の「よその会社のホームページを作る仕事」をしたという、このサイト。

訪れてみると、Webフォントで筑紫明朝が(しかも縦書きで!)使われている、というのに嬉しくなりました。

フォントを見るだけで、ものづくりのことをしっかり考えている会社なんだな、と安心します。

 

そんな信頼感も伝える、筑紫明朝のお話でした。