フォントワークスのフォントがiPadでも – mojimo-select iPad β版

フォントワークスが提供するフォントサービス mojimo は、「ちょうどいい」文字を低価格で使えるのが魅力です。

2020年4月1日、そのコンセプトをさらに推しすすめたiPad専用サービス mojimo-select (β) が発表されました。

2020年8月9日追記:iPhone・iPad向けに正式リリースされました。以下の記事は古い内容です。

mojimo-select – iPad/iPhoneで使えるスタンダードなフォントパック

フォントを選んで、もっと伝える! iPad/iPhoneで使えるスタンダードなフォントパック iPadやiPhoneで写真の加工をしたり、ドキュメントを作ったり、マンガやイラスト、映像作品を作ったり。そんなとき「もっと好きな文字が使えたらな」と思いませんか? …

iPad は2019年リリースのiPadOS(iOS 13)から、パソコンと同じように好きなフォントをインストールできる〈カスタムフォント〉という仕組みが搭載されています。

正式版ではこの仕組みを使ったアプリが提供されるそうで、β版の段階では少しインストールの手間が増えますが、カスタムフォントに対応したアプリでフォントワークスのフォントを使えるようになります。

9月1日までは、入会金なしでふたつのフォントを無料でインストールすることができます。

既にmojimo会員なら会員ページにログインして、mojimo-select iPad 契約の追加を行います。

また、同じく「mojimo-manga iPad」「mojimo-live iPad」のβ版も公開されていて、同時に複数契約することもできるようです。

 

mojimo-select では「スキップ」や「ハミング」など、mojimo-mangaには含まれないフォントも加わった82書体がラインナップされています。

一度選択すると、β版の期間が終わるまで変更することができないので、じっくり考えて選んだ方が良さそうです。正式版では追加料金がかかったとしても利用期間が柔軟になると嬉しく思います。

わたしは mojimo-manga にもある筑紫Aオールド明朝を思わず選んでしまったのですが、その話は後ほど。

フォントを選んだら、iPadのSafariで会員ページを開いてインストールを行います。

「このWebサイトは構成プロファイルをダウンロードしようとしています。許可しますか?」のダイアログが出たら「許可」をタップします。

iPadの設定アプリを開くと〈FOT-***〉という名前のプロファイルが追加されているので、さらにそれをタップしてフォントをインストールしていきます。

プロファイルが未署名という警告が出ますが、mojimoとフォントワークスを信頼して続行します。

もし問題が起こった場合は、同じ設定の画面からプロファイルを削除することもできます。

これでフォントが追加されました。

実際にカスタムフォントに対応したアプリでフォント選択画面を開くと、「F」のところにmojimoのフォントが増えています。

今回は縦書きやルビの設定もできるTatePadを使ってみました。ちなみに、同じ作者からフリーフォントをインストールできるFontInstallというアプリもリリースされています。

ことしの正月に思いついた短歌を「スキップ」で詠んでみました。

この歌は「子」がポイントなので、縦棒がカーブを描くフォントが似合います。「ね」の左上もネズミのしっぽみたいでかわいいですね。

筑紫Aオールド明朝にすると縦棒がまっすぐで、意外にかっちりした印象です。のちにリリースされた筑紫ヴィンテージ明朝で組んだら、より味わいが出たかもしれません。

 

このように創作の幅をより広げてくれる mojimo-select iPad、正式リリースが楽しみです。

 

さくらのレンタルサーバで使えるモリサワのWebフォントが3種類追加

以前、さくらのレンタルサーバで、モリサワの日本語Webフォントが無料で使える!という記事を書きました。

モリサワと提携したさくらインターネットのレンタルサーバで30種類のフォントが無料で使えるというサービスなのですが、2020年3月より、新たに三つのフォントが追加されました。

  • UDデジタル教科書体R
  • ヒラギノ丸ゴ W4
  • しまなみ

UD(ユニバーサルデザイン)というのは、文化や年齢、障害などの有無を問わず、誰もが使いやすいデザインのことをいいます。

そんな理念のもと作られるのがUDフォントですが、「UDデジタル教科書体」はとくに教育現場で使われることを想定して、さまざまな読みやすさのための工夫がされています。

実際に他の教科書体とよばれるフォントと比較して読みすすめの速度が改善したそうで、最新のWindows 10にも搭載されるなど普及が進んでいます。

 

誰もが平等に読みやすく、分かりやすい”文字”を社会に広めたい。UDフォントを開発するモリサワ社の想いとは。 #さくマガ #さくらインターネット – さくマガ

株式会社モリサワ。1924年(大正13年)創業。「文字を通じて社会に貢献する」をビジョンに掲げる。「邦文写真植字機」を世界で初めて発明し、その後はDTP化やWebフォントへの対応など、様々な時代の変化に合わせた”文字”を取り扱う会社。 ーーまず始めに、ユニバーサルデザインの概念とは何でしょうか? …

 

いっぽうのヒラギノ丸ゴはMacやiPhone、iPadなどのアップル製品で昔から搭載されているフォントで、こちらも読みやすい丸ゴシック体です。

 

さて、気になるのは最後の「しまなみ」です。

モリサワのホームページでは、オールドスタイルの明朝体ながら、毛筆のニュアンスを取り入れたエレメントが特徴と紹介されています。

とりわけ、穏やかに波打つようなひらがなが印象的です。まさに〈凪の渡し場〉にもぴったりなフォントで気に入っています。

2020年3月12日現在、さくらインターネット公式のWordPressプラグインでは未対応のようですが、JavaScriptでの利用は可能となっています。

HTMLのヘッダ部分に以下のタグを追加します。

<script type=”text/javascript” src=”//webfonts.sakura.ne.jp/js/sakurav3.js”></script>

スタイルシートで、それぞれ以下の font-family を指定します。

  • Shimanami JIS2004
  • UDDigiKyokasho R JIS2004
  • Hiragino Maru Gothic W4 JIS2004
.shimanamifont {
    font-family: "Shimanami JIS2004" !important;
}
<p class="shimanamiFont">ここはしまなみフォントで表示します。</p>

新たなWebフォントの世界に漕ぎ出しましょう。

広島五日市・コイン通りと通貨の歴史

今回は久しぶりに広島偏愛シリーズの記事です。

広島市内から厳島神社のある宮島口までをむすぶ広島電鉄こと「ひろでん」は、路面電車としては日本一の路線網を誇ります。

それゆえに、○○町、○丁目などといった似たような名前の電停が多いのですが、個人的になかなか覚えられなかったのが宮島線の〈広電五日市(いつかいち)〉と〈広電廿日市(はつかいち)〉です。ともにJRの駅とも隣接しています。

後者はとなりに〈廿日市市役所前〉という早口言葉のような駅があることからもわかるように、広島県廿日市市にあります。厳島神社のある宮島町も2020年(令和2年)現在は廿日市市の所属となっています。

いっぽうの五日市は旧佐伯郡五日市町が広島市に編入されたもので、現在は佐伯区に属します。となりの駅〈佐伯区役所前〉は五日市駅がJRの駅近くに移設されたことを期に新設されたそう。

ちなみに西広島から宮島口までは厳密には路面電車ではなく線路を走る鉄道路線(なので、電停ではなく「駅」扱い)。緑の駅名標も格好いいですね。

そんな五日市には〈コイン通り〉というちょっと変わった名前の商店街があります。

コイン通り商店街

広島市佐伯区(五日市)のパワースポット。日本に3つしかない造幣局に面した約1.5キロの通称「コイン通り」とその周辺地域からなる商店街です。金運アップの「金持神」に会える街、コイン通り商店街にお越し下さい。

 

日本のコイン(硬貨)を製造する造幣局広島支局が存在することから名づけられたそうで、街路灯には「金持神に会える街」というキャッチフレーズののぼりが立ち並びます。

ゆるキャラ(Ⓒみうらじゅん)はうちでのこづちちゃん

さらに歩いていくと、日本史上に流通したコインを手にする動物の石像が次々に現れます。

写真を見返して気づきましたが、向かいにはボンドのコニシ株式会社がありました。ガラス扉の奥に写る巨大ボンドも気になります。

かねもちたい! といいつつ、この体勢は持っていないと思いますが…。

このベンチにも何かきざまれているようですが、よくわかりませんでした。

そして金持神がまつられている金持稲荷大社は、ビルの屋上という謎のロケーションにあります。

絵馬やお札、金運上昇の〈銭洗い〉の受付などは一階の酒屋さんで授与されるとのこと。

金持酒というのもあるので、お酒好きな方へのお土産にぴったりですね!

「ご注意ください」の貼り紙が大きすぎて何かと思ったら、一円玉の表にきざまれた若木をモチーフにした開運の若木だそうです。

 

とにかく遊び心にあふれたスポットばかりのコイン通りでした。

春には、桜の通り抜けで有名な大阪造幣局から広島造幣局に移植された桜が咲き誇る〈花のまわりみち〉も開催されるそうです。

(残念ながら2020年は新型ウイルスの影響で中止とのこと)

 

縦目と横目、書体の世界 – ユリイカ 2020年2月号

おそらく2020年初の、フォントに関する雑誌特集です。

青土社から出版されている月刊誌・ユリイカは[詩と批評]を冠に、数々の作家や作品などの特集が毎回充実しています。

2020年2月号の特集は〈書体の世界〉。

休刊した雑誌「MdN」などでもフォントに関する特集は毎年行われていましたが、判型の違い、なにより縦書きというのがまた違った雰囲気を感じます。

平成とともに歩んだ雑誌 – MdnN

本や雑誌に使われる紙はパルプとよばれる繊維からできていて、縦目と横目という繊維の向きがあります。

ユリイカの特集では寄稿者の論考は比較的独立しているので、無数の糸が天井から垂らされているような印象を受けます。

 

古代中国の甲骨文字から生まれた漢字と書の歴史。

西洋における活版印刷の普及と表裏一体をなす、聖書によるキリスト教布教。

 

糸をたどって見上げる天井、あるいは天上こそは書体の世界ということでしょうか。

そこは、まだまだ知らないことばかりという認識を新たにします。

たとえば〈「ネオ・グロット」とスイス・スタイルの受容〉という山本政幸さんの論考では、1964年の東京オリンピックをフォントの観点から考察していきます。

昭和の東京オリンピックは多くの日本人デザイナーが協力し、海外からの観客のために公共のサインやピクトグラムを統一した大会として知られています。

その統一アルファベットフォントとして、通称「ネオ・グロット」とよばれたHelvetica(ヘルベチカ)がいちはやく採用されたそうです。

長らくiPhoneのやMacの標準フォントとなっていたヘルベチカですが、半世紀も前の東京オリンピックで使われていたのは驚きです。

ところが、よく知られた亀倉雄策のポスターで見られる縦長の「TOKYO 1964」ロゴはどう見てもヘルベチカではありません。

Tokyo 1964 Summer Olympics logo.svg
Yusaku Kamekura – taken from sportslogos.net by 英語版ウィキペディアParutakupiuさん, パブリック・ドメイン, リンクによる

 

太い縦長でちょっと時代を感じさせる、けれど伸びやかなフォント。

当時の活字見本帖でも見つからない、このフォントの謎を追っていくと、実はいまやWindowsパソコンで普通に使えるフォントだったという結末が待ち受けていました。

縦目と横目がはりめぐらされた世界は、思わぬところでつながっているようです。

あの輝きの世界へ – Osaka Metro 純喫茶めぐり

喫茶店という空間が好きです。

思い出すのは、ふかふかの赤いソファ。

コーヒーの香りに、お昼ならナポリタン、おやつどきならホットケーキの匂いが混じり合う。

現代的なカフェとはまた違った、五感に訴えかける居心地の良さがそこにはあります。

わたしが1980年代の生まれだからか、昭和という時代の残照のような、その存在に心惹かれるのかもしれません。

 

名古屋にも魅力的な喫茶店は数多くありますが、大阪をはじめ関西でも、喫茶店文化はいまだ健在です。

その大阪では2020年3月22日(日)まで、大阪市交通局から民営化された Osaka Metro による「純喫茶めぐり」キャンペーンが開催されています。

Osaka Metro沿線のおすすめ「純喫茶」店舗を紹介 ! 心の「活力」をチャージ「純喫茶めぐり」キャンペーンを実施します|Osaka Metro

[2020年1月10日]  Osaka Metroは、2020年1月14日(火曜日)から3月22日(日曜日)まで、温かみのある空間で、心の「活力」をチャージする「純喫茶めぐり」キャンペーンを実施します。  大阪は、全国でも喫茶店が多い街として有名で、なかでも昔ながらの風情がある昭和レトロな純喫茶は、多くの人々に愛される存在となっています。Osaka …

 

大阪市内の純喫茶32店舗をテーマ別に紹介するリーフレットはOsaka Metroの地下鉄駅で配布されており、1月25日(土)時点でもまだ手に入れることができました。

リーフレットを持参すると各店舗のロゴをモチーフにしたオリジナルコレクションカードがもらえるという、ロゴ好き・看板好きにとっても嬉しい仕掛けです。

こちらは堺筋線恵美須町駅・動物園前駅近くの「ドレミ」さん。

…というより、通天閣の目の前と言ったほうが良いかもしれません。

喫茶とインテリア west」によると、通天閣ができる前からこの場所にビルがあったそうで、立地も含めて歴史を感じさせます。

気になっていたプリンとともに、かわいいネコのイラストとロゴ入りのカードをいただきました。

 

ミナミでは、なんば・日本橋駅周辺に「アラビヤコーヒー」さんや「アメリカン」さんなど、まちのにぎわいそのままに活気のあるお店が軒を並べています。

店名さながら星条旗のようなメニューもきらびやか。

制服姿のウェイトレスさん(と、あえて書きます)が立ち回る、輝きに満ちた店内にいると、わたしが生まれる前の時代にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。

土日休みのお店も多いので、遠方からだとなかなか回るのに苦労しますが、都合の良さそうな純喫茶をさがして、名前も知らなかった駅に向かうのも楽しいです。

駅構内の蛍光灯さえ喫茶店のインテリアに見えてきます。

旅行で訪れた人間にとっては名も知らぬ駅でも、その土地に住む人にとっては日常です。

ひょっとしたら、このまちに住んで、こんなお店に通う人生もあったかもしれない…そんな夢想にふけりながら、特別な時間を過ごせる純喫茶めぐりです。