まちあるきの楽しみが無限にひろがる – 街角図鑑

まちかどのさまざまなものを対象として楽しむ、路上観察。

その楽しみを、さらにひろげてくれる一冊に出会いました。



「図鑑」という名の通り、街で見かけるさまざまなものを徹底的に分類・解説。

たとえば、工事現場で見かける赤いコーン。

あれの正式名称を「パイロン」というのだとはじめて知りました。

さらに、会社によってさまざまな商品名がついているようで、その見分け方まで丁寧に図解。
「とにかく太くて、重いやつだ」とか、こどものころに読んだ図鑑のような文体も楽しい。

 

これまでも、いろいろな視点でまちあるきを楽しんでいたつもりでしたが、まだまだ見えていないものがあることを思い知らされました。

 

実際、手持ちの写真をランダムに見返してみれば、いくらでもこの図鑑にあるものが写っていることに気づきます。

たとえば、タイルのカーブがかわいくて撮った、こちらの写真。

machikado - 1
そこには、ひっそりと埋め込まれた送水口が。
送水口とは「消防車からの放水が届きにくいところに水を送るために設置されるもの」だそう。

さらに上部には、自生したのか誰かが植えたのか、路上園芸が花を添える。

ひとつの完成されたアートのようにも見えてきます。
さらに、ずいぶん前に野良猫を追いかけて撮った、この一枚(笑)

machikado - 2

この本を読んだあとに見ると、こんな感想を抱きます。

かなり古そうな郵便ポスト。脚の長さと差入れ口がひとつなことから、1号角形らしいと推測。
(ちなみに郵便局の看板がオレンジなので、民営化後の「郵便局株式会社」時代のもの)

自販機が茶色いのは景観配慮型? 左右にある回収ボックスが兄妹みたいでかわいい。
「保険調剤」の看板手前の街灯がレトロでおしゃれ。
そのうしろに置かれた水色ののぼりベース、半球型でこれもかわいい。
いちばん奥、「止まれ」の標識が側溝側にカーブしていて、車のじゃまにならないようにしているっぽい。

あと、いちばん大きな「薬局」の看板がPOP体…というのは、この本を読む前から気になるところですね(^^;

 

もちろん、この本に載っていないものでも、気になるものがあれば自分なりの視点で観察してみるのが良いと思います。

それを習慣にすることで、カラーバス効果で、似たものがますます目につくようになり、さらに深く知ることができる。

そうやって、世の中の楽しみ方が無限にひろがっていきます。

 

6月11日には、著者の三土さんと寄稿者による出版記念のスライドトークも開催されるそうで、こちらも気になります。

ありふれた街の見え方が変わる『街角図鑑』

文字を知り、文字を楽しむ雑誌 – Typography 09

文字を楽しむデザインジャーナル『Typography』(タイポグラフィ)の新刊、Issue 09 が5月に発売されました。

 

年2回の刊行で、はやくも創刊5年目。毎回、文字やフォントにまつわる知識を楽しく学ぶことができます。

 

今回の特集は「美しい本と組版」。

本とは切っても切れない関係にある文字。
そして、本文や章立て、図表などを読みやすくレイアウトするのが組版とよばれる技術です。

さまざまな雑誌や書籍を実例に、どう美しくて読みやすい本がつくられているかが解説されています。

新潮社や岩波書店といった出版社の組版ルールが公開されているのもおもしろい。岩波新書はヒラギノ明朝を使っているのですね。

本文は、著者の意図が読み手に正しく伝わることがもっとも大切。
なので、このようなルールは本来、読者が意識することはありません。

意識せずに読める本をつくりあげる、そんなプロの仕事に敬意を表します。

 

ちなみに、ブログやメールなどの文章では、またルールが少し違います。

たとえば、行頭の字下げ
 字下げとは、このように文の最初を一文字空けること。

この特集によると、字下げのメリットは、段落の変わり目がはっきりすること。字下げがないと、たまたま前の行で文が終わっていたとき、段落が変わっているのか、続いているのかわかりにくくなります。

著者の意図を正確に伝えるために、字下げを行うのが無難だといわれています。

 

ウェブ上では、ニュースサイトによっては字下げをしているところもあるようですが、ブログでは字下げをしないことが多いようです。

そのかわり、段落の変わり目は行間を空けるのが一般的だという印象。

 

このサイトでも、字下げなし・段落の変わり目は行間を空けるというルールにしています。

どちらにしても、読みやすさを考えたうえで、しっくりくるルールで統一すれば良いのではと思います。

 

もうひとつだけ、こちらはぜひ意識してほしいルールがあります。

それは、半角と全角の混在を避けること。

 

「2016年5月15日」のように、月だけが全角で、ほかは半角数字になっていたり。

「Typography」のように、大文字だけが全角で、ほかは半角アルファベットだったり。

 

フォントによっては、とても不揃いに見えてしまいます。

 

わたしはATOKを使っているので、最初から変換候補に半角数字だけが出てくるようにしています。
どうしてもうっかりミスは起こり得るので、ツールで防ぐというのもひとつの手。

 

そんな日常に役立つヒントも得られる、Typography誌のご紹介でした。


 

【祝】西尾維新デジタルプロジェクト・戯言シリーズアニメプロジェクト – 西尾作品をフォントで紹介してみる

人気作家・西尾維新の全シリーズの電子化が発表されました。

さらに、デビュー作の戯言シリーズもついにアニメ化決定。

 

「京都の二十歳」というキャッチフレーズもなつかしい、デビュー以来ずっと小説で追いかけてきたファンとしては、期待半分・不安半分といったところ。

化物語がアニメ化されるまでは、あの特異な文体とストーリーはアニメ化できないと思っていた原作読者は少なくなかったはず。

しかし、小説の持ち味を生かした独特の文字演出によって違和感を帳消しにするという発想の転換には驚きました。

 

今回は、主にそんなフォントにまつわる観点で、西尾作品を紹介していきます。

 

まずは、その記念碑的アニメ化を果たした〈物語〉シリーズ



原作小説、およびアニメのタイトルロゴは、宋朝体に斜体をかけたフォントが使われています。
宋朝体というのは、明朝体よりももっと前、宋の時代の木版印刷をもとにしたフォントで、ちょっと楷書の雰囲気があります。

吸血鬼や怪異といったファンタジー要素がありつつも、キャラクターどうしの雑談が楽しい、普遍的な学園生活・青春を描いた作品だということがうかがえます。

また、アニメ作中の字幕では「HG明朝B」が使われていることが明示されています。

放映当時、なにかのスタッフインタビューで読んだところによると、原作小説の講談社BOXが同じく本文使用書体を明示していることへのリスペクトだそうな。

 

このHG明朝、実は、Windowsに搭載されている「MS明朝」や「MSゴシック」と同じく、リコーが開発したフォントなんですね。

 

 

ふしぎなことに、劇場版の「傷物語」でだけ、原作と同じフォントワークスの筑紫明朝が使われているみたいなのですよね。

筑紫明朝はそのうち別途取り上げる予定ですが、文字のメリハリがついていてとても引き締まった印象を持つフォント。

 

予算の違いか、劇場の大画面での見栄えを想定したのか、はたして。

 

 

次はドラマ化もされた「掟上今日子の備忘録」にはじまる〈忘却探偵〉シリーズ



と、そのフォントを調べようとしたら、既に書かれているブログを見つけました(笑)

掟上今日子の備忘録のロゴはあの超有名フォントだった話 | YLCL -ユリクリ-

でも、他の人が同じこと書いてたとしても、わたしの視点で紹介してほしいと尊敬する後輩に言われたので、このまま進めます(^^;

 

原作小説やドラマのタイトルロゴは、やはりリコーの「HG明朝L」、または「MS明朝」。

ドラマ公式サイトの文章はWebフォントではなくて画像化されているのが残念ですが、モリサワの「リュウミン」が使われているように見えます。

作中の字幕や小物に使われているフォントは「リュウミン」か「小塚明朝」か迷うところ。

推理作家・須永昼兵衛の著作99冊、もっと高い解像度で全部表紙を見たい(笑)

Blu-rayの特典に…ないかな。

いずれにしても、西尾作品の中ではもっともオーソドックスなつくりで楽しめる作品になっているので、フォントもとても端正なもの。

 

 

そして、戯言シリーズのスピンオフシリーズのひとつ、人類最強の請負人・哀川潤が活躍する〈最強〉シリーズ


タイトルロゴはとても角の切れ味が鋭い明朝体で、ちょっとまだ何のフォントかわかりません。既製フォントを加工したものかも?

さておき、今回の各種発表もされたこちらの公式サイトでは、光朝フォントが印象的に使われています。

purelove

(説明のためスクリーンショットを引用します)

光朝はデザイナーの田中一光さんの文字をもとにしたフォントで、非常に横棒が細いのが特徴。
その横棒がアニメーションで点滅しつつスクロールする、潤さんにも負けず劣らず力強いデザインです。

 

 

ほかにも、まだまだ西尾作品には印象的なフォントを使ったタイトルがあるのですが、長くなったのでこのくらいで。

今回紹介した明朝体ベースのものだけでも、実にバリエーション豊かだということがおわかりいただけたかと思います。

小説の中身も同じく、どれをとっても個性的で刺激的。

 

電子化を機に、もっといろんな作品に触れる方が増えることを願います!

刺激に敏感すぎる自分に振り回されずに生きる方法

内向型人間は、刺激に対して敏感な気質をもっている。

このような人を、HSP=「Highly Sensitive Person」とよぶそうです。
自分がHSPだとしたら、どうすれば良いのか。

そんなことをぼんやり思って本屋さんに行き、本棚を眺めていたら、こんな本を見つけました。

 

読んでいると、HSPは日本の医学界では認められていないとか、超能力的な力をもつ人もいるとか書かれていて、おおっ…と思ってしまうところもあるのですが (^^;
(理系なので、そういう科学的でないことを言われると引いてしまうのです。です)

 

でも、刺激に敏感なことで生きづらさをおぼえているときの対症療法として、とても参考になると思ったのでご紹介します。

まず何よりも大事なのは、自分を知るということ。知ろうとすること。

ひとくちに内向型人間、HSPといっても、もちろんその程度はさまざま。
本に書かれているチェックリストを自分に照らし合わせてみても、○がつくものもあれば、そうでないものもあります。

以前『内向型人間のすごい力』から引用したチェックリストは、たまたまわたしが○をつけたものをピックアップしたので、また違ったタイプの内向型人間の方もいると思います。

 

したがって、自分個人の特徴、傾向をしっかり知る、そうして、自分に合った対処法をみつけていくのが大切です。

 

そのために活用したいのが、ふりかえり

わたしは、コボリジュンコさんのワークショップに参加したことをきっかけに、100年日記というものをつけています。

名言コツコツ

この100年日記で、毎日のなかで幸せだと感じたこと、失敗から学んだことを書きとめておくということをしています。

 

たとえば、人混みの中で疲れてしまったこと。

たとえば、季節の変わり目に体調を崩しやすいこと。

 

読み返すことで、自分がどんな刺激に弱いのか、どうすれば良いのかが見えてきます。

 

また、「幸せだと感じたこと」を書きとめることも、どうしても辛いことがあって落ち込んだときに、気持ちを切り替えるきっかけになります。

 

『「敏感すぎる自分」を好きになれる本』のなかでは、プラス思考ではなくて、プラス感情を大事にする、と書かれています。

落ち込んだときに、とくに考えすぎてしまう内向型人間にとっては、無理に思考を変えるよりも、感情を上向かせるほうが楽になれそう。

 

 

ほかにも、いろいろなふりかえりの手法があるので、それこそ自分に合った方法を見つけてみてください。

そして、刺激に敏感すぎる自分でも大丈夫、と言えるようになれますように。

世の中には、二種類の人間がいる – 「内向型人間」のすごい力

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はじめに、簡単な質問をいくつか。
「はい」か「いいえ」でお答えください。

 

  • グループより1:1の会話を好む
  • 文章のほうが自分を表現しやすい
  • ひとりでいる時間を楽しめる
  • 「物静かだ」「落ち着いている」と言われる
  • 外出して活動したあとは、たとえそれが楽しい経験だったとしても、消耗したと感じる

 

 

どれくらい「はい」があったでしょうか?

「はい」のほうが多かった人は、内向型人間の可能性が高いです。
逆に「いいえ」のほうが多かった人は、外向型人間の可能性が高いことになります。

ちなみに、わたしは全部に「はい」と答えました(^^;)

 

内向型の人、ぜひこの本をお読みください。これはわたしたちのための本です!!

外向型の人も、家族や知り合いに外向型人間はきっといるはず。そういう人と自分の違いを考えながら読んでみてほしいです。


 

内向というと、引っ込み思案とか、内気といった形容をされて、あまり良くない印象を持つ人も多いと思います。

実際、わたしも子供の頃からそう言われ続けて、それは直さないといけない性格のように思いこまされてきました。

 

けれど、実は、そんなことはまったく無いのです。

 

単に、世の中には「内向型」「外向型」という性質の違う二種類の人間がいるというだけのこと。

世の中に右利き人間が多いから、いろんなものが右利き中心に作られて、左利き人間が不便に感じているように。

たまたま、いまの世の中が外向型中心社会だから、内向型にとって居心地の悪いことが多いだけのこと。

 

でも、だいじょうぶ。

内向型には内向型にしかない強みがあって、それを正しく伸ばすことで、大きな力を発揮することができます。

じっさい、内向型人間は左利き人間ほど少数派ではなく、アメリカ人の1/3〜1/2 は内向型人間だそうです。

典型的な外向型にみえるアメリカでさえそうなのだから、日本では、もっと多いかも。

 

ちなみに、内向型・外向型という言葉を生み出したのは心理学者のユングという人。

フロイトとアドラーという二人の心理学者の違いを見て、フロイトは外向型、アドラーは内向型という分類をしたと言われています。

アドラー心理学は、最近日本でも人気ですね。

今のような時代だからこそ、内向型の力はますます重要になってくるのだと思います。

 

 

たとえば、内向型が活躍できる場所はどういうところがあるか。

あるいは、どうしても外向型のように振る舞わないといけない場合は、どうしたらいいのか。

 

そういったことも、これからブログで少しずつ話していきたいと思います。