よみがえれ。 – ライフピボットと今を生き抜く力

世の中はますます変化が激しく、先を見通すことが難しくなっています。

なんとなく将来の生き方・働き方に不安を感じる中、出逢ったのが「ライフピボット」という本です。

著者の黒田悠介さんはマーケティング会社に就職したのち、経験を活かして転職・独立、現在は議論メシというコミュニティを運営したり企業の支援を行うディスカッションパートナーとして活躍されています。

本書のタイトルにある〈ピボット〉とは、バスケットボールで、ボールを持ったまま一方の足を軸足に、もう一方の足を動かすプレイを意味します。

人生をハニカム構造の六角形のマスからなる盤面として、経験の蓄積と偶然を軸足にキャリアを転換(=隣のマスにピボット)していく、それがライフピボットという概念です。

転職や転身と聞くと変化が大きすぎて足がすくみそうでも、片足を地につけたままなら、以前にこのブログ〈凪の渡し場〉でも提案した「半歩踏み出す」と同じように不安も半減しそうです。

本の中では、過去の経験がキャリアにつながる例として、スティーブ・ジョブズのスピーチ「Connet The Dots」というエピソードも紹介されています。

Steve Jobs’ 2005 Stanford Commencement Address

Drawing from some of the most pivotal points in his life, Steve Jobs, chief executive officer and co-founder of Apple Computer and of Pixar Animation Studios, urged graduates to pursue their dreams and see the opportunities in life’s setbacks — including death itself — at the university’s 114th Commencement on June 12, 2005.

Steve Jobs’ 2005 Stanford Commencement Address

ジョブズが学生時代にカリグラフィ(西洋のいわゆる書道)の授業を受けたことが、のちに自らが手がけたマッキントッシュに多くのフォントを搭載することにつながった、というのは個人的にも好きなエピソードです。
彼の経験がなければ、今のようにパソコンやスマートフォンで自由にフォントを選べる時代はやってこなかったかもしれないのです。

あとから振り返れば、そのときは思いもしなかった経験が点と点でつながる。

ここで、わたしがつなげたいもうひとつの点が、声優・林原めぐみさんによる、自身が演じたキャラクターについて語った本です。

「らんま1/2」の早乙女乱馬(女)。
「ポケットモンスター」のムサシ。
「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ。
「シャーマンキング」の恐山アンナ…。

1980年代以降を少年少女として過ごした人なら、どこかで聞き覚えのあるキャラクターたちを、まさに全身全霊で演じてこられた林原めぐみさんの言葉は懐かしく、そして感動を新たにします。

キャラクターが、それぞれの作品の中で生きる〈点〉だとしたら、その役を演じた経験が次のキャリアに活きたり、制作者・共演者どうしの縁で新しい仕事につながっていくのはまさに「Connet The Dot」であり、ライフピボットと言えます。

あるいは、一度終わった(ピリオドを打たれた)作品が、ときを超えて続編が作られたり、リメイクされてよみがえる。
それもまた望外の嬉しい「Connet The Dot」でしょう。

 

過去や思い出は良いことばかりではなく、忘れたいこともあるけれど、どんな点も経験の蓄積として何かにつながっている。

正直に言うと最近はSNSを見る気力も起きず、アウトプットも停滞気味だったのですが、「ライフピボット」を読んでもう一度、軸足を見直してみようと思いました。

過去を恐れず、未来を恐れず、広大な人生を渡り歩いていきましょう。

ブログ五周年と、言葉にならないことば

きょう、令和3年3月6日で、ブログ〈凪の渡し場〉は五周年をむかえます。

五年前、当時よく参加していた勉強会と、そこからひろがった交流に刺激をもらい、自分なりの世界の楽しみかた、視点をいろんな人に知ってもらいたいと思って立ち上げたサイトです。

夕霧が世界を包むその前に さあ漕ぎ出そう凪の渡し場

About に掲出したこの短歌は、最初の記事をもとにして一年前に詠んだものですが、ちょうどそのころから、世界はまるで先の見えない霧に包まれたように様変わりしてしまいました。

霧の中で、発するべき言葉も、とどけるべき相手も見失いそうになるなか、もういちど〈ことば〉の意味を考え直そうと思える本にめぐり逢いました。

若松英輔さんの「読書のちから」は、ご自身が苦しみ、危機にある中で出逢い、救われた言葉について書かれた本です。

とくに、1960年代のミラノでカトリック改革に取り組んだ須賀敦子さんについて書かれた章が印象にのこります。

いっぽう、孤独のときは、人生になくてはならない。孤独のときこそが人に、自己のみならず、他者とそして、大いなるものとの静謐な対話をもたらす。しかし、孤独と孤立の差異が、あるときはよく分らなくなる。

若松英輔「読書のちから」(亜紀書房)p.46〈コトバを運ぶ人〉より引用

読書を通して、わたしたちは遠く離れた場所や時代を生きた人と、学者や宗教者といった知性と対話することができます。

ふしぎなことに、ある種の〈ことば〉には、時空を超えてとどく力があります。
遠い場所、異なる時代背景にいる人びとにかけられたはずの言葉が、いまを生きる自分にむかって投げかけられているように思えるときがあるのです。


もう一冊紹介した「言語の起源」は、なぜ人類が、このような〈ことば〉を発明できたのか、言語学者の視点だけでなく、人類学・考古学・脳科学にいたるまでの最先端の知見から明らかにしようとする本です。

〈ことば〉によって、ヒトは他者との効率的なコミュニケーション手段を得ることができました。

けれど、その発明は実は、とても不完全なものでもありました。

〈ことば〉の裏には、言葉にならない暗黙の価値観や文化が含まれていて、言語によるコミュニケーションとは、聞き手もその価値観を共有していることを前提として成り立つのです。

だから、ときにすれ違い、互いの意図を誤解したりする。

あるいは、文字通り言葉が通じない相手、違う価値観をもつ集団との対立が生じる。

けれど、文字というもうひとつの発明により、〈ことば〉は話し言葉だけでなく書物として残され、より遠くまでとどく伝道の翼を得ることができました。


もう一度若松さんの本から言葉を引きます。
須賀敦子さんを象徴する一語を〈霧〉、あるいは〈聖人〉とする章から。

(前略)彼女にとって「書く」とは、「霧の向う」で生きている人たちに言葉にならないおもいを届けようとする試みだった。

若松英輔「読書のちから」(亜紀書房)p.50〈霧の人〉より引用

ここでいう〈霧〉とは異界をあらわすものでありながら、けっして行き来できない存在ではありません。

言葉にならない〈ことば〉を伝えようとする人に敬意を表しながら、わたしはこう思います。

霧の中で自分の言葉が見つからない、進むべき道が分らないときは、あえて歩みを止めて、霧のむこうからとどく言葉に耳をすませてもいいのではないかと。

もちろん、これは誤読に近いでしょう。

けれど、そんな誤解・誤読こそが、〈ことば〉が時空を超えてとどく原動力であり、言動力でもあるのかもしれません。

2020年、越境する12冊+読書マップ

2020年も、まもなく終わりを迎えようとしています。

いまだ収束の兆しが見えないCOVID-19により、働きかたも、暮らしかたも大きく変わった一年でした。

そんな中で選ぶ〈今年の本〉。
直接的にコロナ禍を扱った本はなるべく避け、こんな時代だからこそ、本を通して外の世界を知る〈越境〉をテーマに12冊を選んでみました。

また、本をして語らしむる – 読書マップ(仮)のすすめで提唱した読書マップで本どうしのつながりを表し、関連書籍も加えてみます。

去年までの〈今年の本〉記事はこちら。

まずは読書マップから。

では、ひとつずつご紹介します。


0 総記

読書猿「独学大全」(ダイヤモンド社)

「アイデア大全」「問題解決大全」の著作もある読書猿さんの新刊です。

さまざまなジャンルを越境して、学び続けることの意義、その方法までが網羅されていて、ずっとかたわらに置いておきたい本です。

読書マップは、この本でも紹介されている日本十進分類法を参考に作成しました。

1 哲学

住原則也 「命知と天理」(天理教道友社)

日本唯一の宗教として知られる奈良県天理市。

そこを戦前に訪れた松下幸之助は、その壮大な都市計画と、それを生み出す精神に大きな感銘を受けたといいます。

それをヒントに、朝会・夕会や事業部制といった、それまでの産業界の常識を覆す試みを松下電器(現・パナソニック)に持ちこみ、戦後の発展につながります。

哲学(宗教)の分類に入れましたが、産業との越境という観点で楽しめる一冊です。

もう一冊、宗教家の釈徹宗さんと、歌人であり科学者の永田和宏さんによる対談「コロナの時代をよむ」(NHK出版)も越境の対談。
物語(ナラティブ)と情報(エビデンス)、どちらにもかたよらずに、両者の橋渡しをしようとするおふたりが印象的です。

永田和宏さんの歌人としての著作は 9 文学で紹介します。科学者としての著作も多く、未読だったことが悔やまれます。

3 社会科学

松村圭一郎「はみだしの人類学」(NHK出版)

いったん2を飛ばして3へ。

NHK出版の「学びのきほん」は、さまざまな著者による講義がコンパクトに納められ、そのデザインも含めて面白いシリーズです。

釈徹宗さんの本も年末に出版されましたが未読のため、こちらの本を選びました。

分断よりも「はみだし」のある社会でありますよう。

室橋裕和「日本の異国」(晶文社)

ときに画一的といわれる日本の都市にも、それぞれの特徴があり、それぞれの日常があります。

インド、ミャンマー、バングラデシュ…。

さまざまな理由で日本を訪れ、定住した人々が織りなす都市の様相を描き出します。

辺境探検家の高野秀行さんが帯文を寄せるとおり、「ディープなアジアは日本にあった」。ステイホームで異文化を感じられる一冊です。

食文化という観点でリンクする「発酵文化人類学」も刺激的な一冊。

6 産業

北島勲「手紙社のイベントのつくり方」(美術出版社)

多くの大規模イベントが中止となった2020年、いち早くオンラインで新たな試みをはじめた手紙社の北島勲さんの著作です。

オンラインイベントやセミナーも普及が進みましたが、現実のイベント体験との差はまだまだ大きく、これからの進化が気になるところです。

7 芸術

雪朱里「時代をひらく書体をつくる。」(グラフィック社)

フォントは印刷の一分類と考えれば芸術に入るのでしょうか。

もちろん、本づくり・ものづくりは産業とも密接に関わります。

現在のようなデジタルフォントが普及するまえ、活版印刷や写植(写真植字)の時代から文字に携わってきた橋本和夫さんのインタビューをまとめたもの。

技術や社会が変わるとともに、フォントもまた変わっていきます。

今年は〈凪の渡し場〉であまり紹介できませんでしたが、フォントに関する新刊はまだまだ他にもあります。

2 歴史

シャロン・バーチュ・マグレイン「異端の統計学 ベイズ」(草思社)

ここで2に戻りましょう。

といいつつ、一般的な歴史ではなく、ひとつの技術に焦点を当てたり、科学史を経糸にした本がさいきんのお気に入りです。

人工知能の分野などでも注目されているベイズ統計は当初、多くの科学者から異端視され、むしろ学界より産業界で利用がひろがっていったといいます。

これもまた、越境する科学のひとつ。

4 自然科学

加藤文元「宇宙と宇宙をつなぐ数学」(KADOKAWA)

数学は自然科学とは別の学問ですが、ここは10進分類に従います。

数学界の難問のひとつとされるABC予想を解決に導いた、望月新一教授による〈宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論〉。「未来から来た論文」とも言われるその斬新な発想を、望月産と親交のあった著者が丁寧に解説します。

元になったのが川上量生さんにより企画されたニコニコ動画の講演というのもユニークです。

科学・数学の本といえば、2020年のノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズの業績を解説する「ペンローズのねじれた四次元」も面白いです。

9 文学

三島芳治「児玉まりあ文学集成」(リイド社)

いよいよ最後の9です。まずはタイトルに〈文学集成〉を冠したこちらのマンガから。

結城浩さんの「数学ガール」に対比すれば、こちらは言わば文学少女。

詩のように改行の多い話し方をする文学的な少女・児玉さんと笛田くん、ふたりだけの「文学部」の活動。

一話ごとに紹介される参考文献も楽しみです。

〈男子が好きなやつ〉として紹介されていた「未来のイヴ」が気になったので読んでみたところ、あのエジソンがアンドロイド(※携帯電話ではない)を発明していたというおどろきのSF小説でした。
男子、好きですよね。

「真鍋博の世界」(PIE)

SFといえば秋に開催された真鍋博展の図録は外せません。

少し感染が落ち着いた時期で、あこがれの筒井康隆さんの講演を聴けたことも幸せでした。

河野裕子・永田和宏「たとへば君 四十年の恋歌」(文藝春秋)

ふたたび永田和宏さんです。乳癌により逝去された妻の河野裕子さんと学生時代から交しあった短歌を収録した歌集・エッセイ集。

四十年という時間をともに過ごす存在がいるということは、いまのわたし想像を超え、つむがれる歌は胸を打ちます。

たとへば君 ガサッと落葉すくふやうにわたしを攫つて行つては呉れぬか

河野裕子 – 「たとへば君 四十年の恋歌」(文藝春秋)第一章より

一日が過ぎれば一日減つてゆく君との時間 もうすぐ夏至だ

永田和宏 – 「たとへば君 四十年の恋歌」(文藝春秋)第六章より

穂村弘「あの人と短歌」(NHK出版)

最後は、歌人・穂村弘さんが各界の短歌が好きな〈あの人〉と語り合う対談集。

昨年「北村薫のうた合わせ百人一首」を紹介した北村薫さんはもちろん、ブックデザイナーの名久井直子さん、翻訳家の金原瑞人さんなど、さまざまな分野との〈越境〉が楽しめます。

対談集を読むと、対談相手の著作にも興味がわき、読みたい本が増えてしまうのが困った(?)ところ。
いわば対談集一冊のなかに読書マップが織りこまれているようなものです。

それでいくと、この本では対談相手はもちろん、穂村さんとの間で話題に上る詩歌までも気になって、マップは三次元的にひろがります。

そしてまた、次の本との出逢いが待っているのです。


〈本を読む〉という日常がある幸せに感謝しつつ、2021年も、良い本を。

よみがえる昭和SFの残照 – 愛媛県美術館 真鍋博展

令和2年、2020年。

いまから20年前に亡くなったイラストレーター、真鍋博さんをご存じでしょうか。

その名を知らなくても、星新一さんや筒井康隆さんといった日本SF第一世代の作品や、海外SF・ミステリに親しんだ人ならば、その装幀やイラストを見るだけで懐かしく思うことでしょう。

真鍋さんは愛媛県新居浜市出身ということで、愛媛県美術館で回顧展が11月29日まで開催されています。

没後20年 真鍋博2020|企画展|展覧会|愛媛県美術館

1932(昭和7)年、愛媛県宇摩郡別子山村(現・新居浜市)に生まれた真鍋博はイラストレーションの世界を舞台に様々な作品を世に送りだしました。本展は、真鍋博の没後20年という節目の年に開催される大規模な回顧展です。真鍋が大学在籍中に制作した油彩画から、星新一や筒井康隆などの装幀の原画にいたるまで、約700点の作品群を展示いたします。1964年の東京オリンピックや1970年の大阪万博など、わが国…

10月31日には筒井康隆スペシャルトークも開催されるということで、それにあわせて訪れてみました。

(ただし、この記事では筒井さんの講演内容には直接触れていませんので、ご注意を)

 

GOTOトラベルキャンペーンを利用して、3年ぶりの四国・松山です。以前に訪れたときの記事はこちら。

新型コロナウイルス感染拡大防止として、愛媛県のゆるキャラ・みきゃんも〈3密せん!けん〉宣言です。

道後温泉本館はまだまだ絶賛保存修理中でした。

修理中は「道後REBORNプロジェクト」として、手塚治虫さんの「火の鳥」とコラボしたラッピングやプロジェクションマッピングが行われています。

本館前には火の鳥マンホールもあるので、現地に行かれる方は探してみてください。

真鍋博と手塚治虫。

ともに日本SF作家クラブに所属し、かたやイラスト・かたや漫画という形で、昭和SFの歴史に残る仕事をした二人。

その作品が、この令和の激動期に松山の地でよみがえることは運命的にも思えます。

 

さて、道後では愛媛県美術館の真鍋博展に連動して、セキ美術館でも関連展示が行われています。

道後温泉本館から駅へと延びる道後ハイカラ商店街、その中ほどにある〈にきたつの路〉を抜け、閑静な住宅街のなかにセキ美術館はありました。

印刷会社が母体ということで、真鍋作品の原画と印刷指示書、年賀状の色指定についての書簡なども公開されていて見ごたえがあります。

 

さて、いよいよ愛媛県美術館です。伊予鉄道市内線の南堀端電停で降り、お堀を橋で渡ります。

とても全容を写真におさめきれないほど広大な愛媛県美術館は松山城三の丸跡に建てられ、ロケーション抜群です。

11月6日までは設立50周年記念展が同時開催されています(真鍋博展の観覧券で入場可能)。

ちょうどガラスに反射して松山城が綺麗に見えています。

館内からも、ポスターと松山城を同時に写せる撮影可能スポットがあります。

 

二会場に分かれた展示は質量とも膨大で、ただただ圧倒されます。

さまざまな作品世界を体現したイラストにみえる色彩感覚と想像力。

細かい文字で書かれた分刻みのスケジュール帳からうかがえるマメさ。

 

PIEより刊行されている公式図録を兼ねた書籍「真鍋博の世界」を、じっくり読み返したいです。

 

そして幸運にも、とある展示を見ていたら講演前の筒井さんご一行がいらっしゃいました。遠巻きに拝見するだけで、どきどきが抑えられません。

講演もあらゆる意味で筒井さんにしかできない内容、かつてあこがれ見た昭和SFの残照がそこにある、夢のような時間でした。

 

擬人化フォントの学園生活 – フォント男子!

主にマンガ・アニメを中心としたカルチャーにおいては〈擬人化〉という表現手法があります。

実在の国や地域、商品、植物、はては細菌やら鉱物にいたるまで、あらゆる事どもを人(キャラクター)に見立てて、その特徴や個性を描き出すもの。

そしておそらく日本、いや世界初?のフォントを擬人化したマンガが、ヴァーニジア二等兵さんの「フォント男子!」です。

主人公はモリサワ学園に通うアンチックANくん。

マンガのフキダシによく使われるアンチック体をモチーフにしていて、組み合わせて使われることの多い太ゴB101が幼なじみと、フォントどうしの関係性が反映されています。

学園の名前からわかるとおり、フォントメーカーのモリサワが制作に協力しているため、生徒や先生もモリサワのフォントが勢ぞろいしています。

生真面目な明朝体のリュウミンくん、温和な丸ゴシックのじゅんくんなど、元になったフォントを知っていれば納得、知らなくてもキャラクターを思い浮かべるだけでフォントの名前を覚えられるようになるかもしれません。

2巻では街中(秋葉原)に出かけて看板に使われているフォントを見分けたり、いわゆる〈絶対フォント感〉を身につける授業が行われたりと、キャラクターと一緒になってフォントを学べる作品になっています。

KADOKAWA作品らしく「エヴァ」のフォントが「別の学校だけど」と匂わされる一幕も。これはフォントワークス学園とのライバル校対決があるのか、と思いきや2巻で完結というのが心残りですが、こんなふうにフォントを身近に楽しく学べる学園生活、あこがれます。