広島乗り物めぐり – ヌマジ交通ミュージアム

今回も広島偏愛シリーズの記事です。

以前、広島市街に泊まるときは、新白島駅の乗り換えを活用しようにという記事を書いたのですが、先日の旅行の折も、自分でそれに従って(笑)本通からアストラムラインを利用しました。

そうして、新白島駅で乗り換えようとしたところ、ふと「広島乗り物めぐり」という車内広告が目にとまりました。

気になってよく見てみると、ちょうど会期中ではないですか。

開催場所のヌマジ交通ミュージアムというのは初めて聞きましたが、どうやらアストラムラインでそのまま向かえるようです。

わたしの知らない広島がすぐそこにあるなら、行ってみないわけにはいかない…!

 

 

ということで、急遽予定を変更し、向かうは新白島駅から先へ行くこと13駅、長楽寺駅です。

駅構内には「アストラムラインに沿って歩いてね(^_^)/」というわかりやすい案内が。

 

アストラムラインを運行する広島高速交通株式会社の本社のとなりにミュージアムがあります。

 

この妙に陽気な顔の子はヌマジロウといって、沼田自動車学校のキャラクター だそうです。

アストラムラインなのに自動車学校…!?

どうやら、「ヌマジ交通ミュージアム」という名前もネーミングライツによって2015年から使用されているものだそう。

名鉄自動車学校のようにグループ会社ではないようです。

Numaji Transportation Museum/ヌマジ交通ミュージアム

No Description

 

パイロン埋まってます。

 

入館料は大人510円。アストラムライン長命寺駅で利用証明書をもらうと100円引きになります。

 

広島乗り物めぐりは、アストラムライン、スカイレール、路面電車(広島電鉄)という広島にゆかりのある三つの交通機関をテーマにした企画展です。

それぞれのイメージカラーをアクセントにしたロゴがかわいいです。

 

スカイレールというのも初耳でしたが、広島市安佐区、JR瀬野駅から住宅街を結ぶ路線とのこと。

標高差があるのでロープウェイのようなワイヤーロープを使いつつ、駅構内はリニアモーター制御という珍しい駆動方式。

 

各車両に使われる部品がいろいろ展示されています。

いわゆる「次とまりますボタン」。わざわざ展示するとは…。

アストラムラインの座席、「すわることができます!!」と強調されています。いや、ここに来るまで存分に座ってきたのですが(^^;

 

企画展以外でも、ヌマジ交通ミュージアムは電車、船、自動車をはじめ、さまざまな乗り物の模型や資料が展示されています。

科学館のような趣で、子供連れで来ても楽しそうです。

京都市電など、全国各地の廃線となった路面電車から車輌を譲り受けてきた広島電鉄。模型もまた、この広島の地に集います。

 

3Fはパノラマ模型エリアになっていて、いろんな乗り物をスイッチ操作で動かして遊ぶことができます。

フェリーの積み荷おろしも!

 

屋外にはゴーカートがあったり、原爆の被害に遭った被爆電車(650形路面電車)が展示されていたり。

市街地からずいぶん離れたところでも、またひとつ、広島の素敵を見つけることができました。

 

 

近江八幡まちあるき(2) – 飛び出しぼうや、ヴォーリズ建築の聖地、そしてラコリーナ近江八幡

近江八幡まちあるきの後半です。前回の記事はこちらからどうぞ。

近江八幡まちあるき(1) – 近江商人、飛び出しぼうや、そしてヴォーリズ建築

 

今回は八幡堀からスタートします。

鳥居をくぐり、日牟禮八幡宮への参道を先に進むと、八幡山ロープウェー乗り場が見えてきます。

恋人の聖地などと書かれていますが「飛び出しぼうやの聖地」の間違いですね。それが証拠に、お土産屋さんには飛び出しぼうやのグッズがたくさん。

 

ロープウェーの往復乗車券は大人880円ですが、前回購入したパスポートで利用できます。

山頂には琵琶湖が見渡せるスポットも。

八幡山城跡まで行くと、京都より移築された村雲御所瑞龍寺があるそうですが、今回は立ち寄りませんでした。

 

ロープウェーはこのくらいにして、八幡堀まで戻ります。

手こぎの和船が行きかう風景を見ると、伏見桃山を思い起こします。これが安土桃山時代ということでしょうか。

なにやら由緒ありげな「八幡瓦由来」の立て看板が。文章をよく読んでみると…???

 

そんな八幡瓦の歴史を楽しめるのが、かわらミュージアム

館内はもちろん、屋根に掲げられた瓦や中庭など、随所に遊び心を感じられます。

見にくいですが、よく見ると鯉模様…恋もよう? その謎は館内の展示で明かされます。

 

ちなみに、かわらミュージアムの周辺には、あちこちに鬼瓦を配した「お触書」があります。

このお触書を二か所以上見つけて、入館時に写真を撮って見せると、オリジナルストラップがもらえます。

どこにあるかは書きませんので、飛び出しぼうやとあわせて探しながら、まちあるきを楽しんでみましょう。

 

さて、かわらミュージアムから南に行くと、またまたヴォーリズ建築が現れます。

こちらは旧八幡郵便局

老朽化した建物を、地元の有志の方がセルフビルドで復元・保存活動を行っているそうです。

館内はその活動の紹介のほか、骨董品の販売も行われています。

道行く人も、ヴォーリズの名前は知らずとも、建物に惹かれて立ち寄る姿が多く見られました。

さまざまなきっかけで、もっと多くの人にこうした建築の魅力が伝わればいいなと思います。

 

そして、旧八幡郵便局から東に数分、ヴォーリズゆかりの近江兄弟社学園があります。

学校法人ヴォーリズ学園

滋賀県近江八幡にあります学校法人ヴォーリズ学園の公式サイトです。保育園・幼稚園・子供センター・小学校・中学校・高校・学園を紹介しています。

メンソレータム(現メンターム)で有名な近江兄弟社が設立した学園で、現在は学校法人ヴォーリズ学園となっています。

その一角が、学園の建築費を寄付したハイド氏にちなみハイド記念館として公開されています。(入館料200円)

この学校の卒業生という方に丁寧なご説明をいただきながら、ゆっくりと見学。

建物の雰囲気は同じくヴォーリズの学校建築として有名な旧豊郷小学校にも通じるところがあります。

幼稚園舎という建築の目的に沿い、窓枠や手すりが子供の目線に合わせて作られており、その建物と人の記憶がいまも、優しく時間を重ねています。

 

学園をぐるっと回って北に行くと、バス停までも美しい屋根とタイルで彩られています。

こちらの学園前バス停から長命寺線、あるいは徒歩で20分ほど北へ向かい、今回の最終目的地にたどり着きます。

 

そう、藤森照信展で模型を観て以来、ずっと行きたかったラコリーナ近江八幡です。

ラコリーナ入口のピクトさん。

 

四季折々の姿を見せるラコリーナ、ちょうど田植えが終わったところのようです。

館内はとても混雑していますが、入口すぐのメインショップより、中庭にあるお店のほうが空いているので、あまり焦らず中に進みましょう。

(2017年7月より、新しくフードガレージがオープンするようです)

ショップ情報|ラ コリーナ近江八幡 | たねや

周囲の水郷や緑を活かした美しい原風景の中での、人と自然がふれあう空間づくり。和・洋菓子を総合した店舗および飲食施設や各専門ショップ、農園、本社施設、従業員対象の保育施設などを設けるたねやグループの新たな拠点です。

 

建物・人・自然が一体となって、ここにしかない空間が現れる。

そんなたたずまいに感銘を受ける、近江八幡のまちあるきでした。

 

子供雑誌と童画の世界 – 描かれた大正モダン・キッズ

あなたがこどものころ、読んでいた雑誌はなんでしょうか?

 

わたしにとって思い出深いのは、小学館の学年別学習雑誌。

年号が昭和から平成に変わるころ、「小学一年生」から「小学六年生」まで6誌が揃っていたその雑誌を、自分の学年はもちろん、すこし背伸びして、ひとつ上の学年分も買ってもらった記憶があります。

いまや「小学一年生」以外は休刊してしまったことに時代の流れを感じますが、そんなこども向け雑誌の草分けのひとつ「子供之友」にまつわる企画展を見に、刈谷市美術館に行ってきました。

描かれた大正モダン・キッズ 婦人之友社『子供之友』原画展|刈谷市|刈谷市美術館

『子供之友』は婦人之友社から1914年に創刊され、大正から戦中の子どもたちに愛読されました。童話、伝記読物、漫画など多彩な内容で、北澤楽天、竹久夢二、武井武雄らの魅力的な作品が毎号誌面を飾りました。モダニズムの時代に花開いた幼年絵雑誌の軌跡を、原画150余点や同時代の雑誌などで辿り、その芸術性を紹介します。

刈谷市美術館の最寄駅はJR東海道線・名鉄三河線の刈谷駅。

駅前には、大きなポスターが掲出されていました。

駅から南へ徒歩10分ほど、まちあるきを楽しみつつ向かいます。

ちょうど6月ということで、あじさいがきれいに咲いていました。

といいつつ、刈谷市の花はカキツバタ。くるくるしたKARIYAのロゴがかわいい。

こちらのマンホールにもカキツバタが…と思ったら。消火栓が先か、点字ブロックが先か。

 

そんなこんなで、刈谷市美術館に着きました。

婦人之友社から、大正〜昭和の戦時中に刊行された「子供之友」誌。

その表紙や誌面を彩った原画が一堂に会していました。

今回は立ち寄れませんでしたが、この美術館には茶室が併設されており、展示にちなんだ和菓子の呈茶サービスもあります。

 

原画展は、時代の空気を感じるものから、猫などの動物を擬人化した童話のようなカットのように、現代にも通じるセンスのものまで色とりどり。

見開きのポスター、絵の一部が立体的に飛び出す仕掛け絵、正月付録のすごろくなど、雑誌らしい工夫もたくさん紹介されていました。

 

会場の解説ではじめて知ったのですが、婦人之友社は現在も存続していて、社名と同じ名前の雑誌「婦人之友」や、家族向け雑誌「かぞくのじかん」などを刊行しているとのことでした。

婦人之友社 生活を愛するあなたに

2015年に建業112周年を迎えた婦人之友社。生活を愛する気持ちとよい家庭がよい社会を作る、そんな信念のもとで雑誌作りを行っている出版社のホームページです。

 

「子供之友」も2017年6月現在、2冊だけ復刊されています。

この当時は原画家が雑誌のロゴも描いているのか、号によってロゴが変わるのもおもしろい。

個人的には、下のポスターで右上に写っている竹久夢二のロゴが好きです。

ちなみにこのポスターのロゴはモリサワの見出ゴMB31(この記事のタイトルと同じです)、およびカタオカデザインワークスのと思われます。

 

文字や絵、果ては雑誌までもがデジタルになっても、こどもの夢をはぐくみ、大人も楽しめる世界はきっと、いつまでも変わらずにあり続けますように。

 

フィンランド独立100周年 – フィンランド・デザイン展と愛知県美術館コレクション展

今年・2017年からちょうど100年前、1917年と言えば、世界史の授業で習ったロシア革命の年です。

そして、その影響はロシアの西、北欧にも及び。

スカンジナビア半島とロシアに挟まれたフィンランドが同年、独立を果たします。

その独立100周年を記念したフィンランド・デザイン展が、名古屋を皮切りに、日本各地に巡回します。

フィンランド独立100周年記念 フィンランド・デザイン展|2017年4月7日(金)〜 5月28日(日)愛知県美術館

「フィンランド独立100周年記念 フィンランド・デザイン展」は2017年4月7日(金)から5月28日(日)まで愛知県美術館で開催されます。その後、福井、東京、宮城に巡回します。

 

名古屋会場はあいちトリエンナーレでもおなじみ、愛知県美術館(愛知県芸術文化センター10F)。地下鉄栄駅または久屋大通駅から、オアシス21を抜けて行くと便利です。

 

企画展の入場料は一般1,200円。当日のドニチエコキップか、公式ホームページから印刷した割引券の提示で100円引きになります。

展示は5部に分かれ、独立前後のフィンランドの伝統工芸から、いわゆる北欧デザインとして連想する家具・食器、そしてフィンランドにまつわるデザイナーの作品まで、色とりどりの内容となっています。

会場を出たところでは、展示をモチーフにした休憩スペースがあり、自由に撮影が可能でした。

ムーミンで知られる作家、トーベ・ヤンソン。

とびきりかわいい、エーロ・アールニオの椅子。もうひとつあったボールチェアは大人気で座れずじまい。

Amazonで見てみると、なんというお値段…!

 

特設ショップでもフィンランド・デザインの商品が多数あり、ここだけでも雑貨屋を見て回るような楽しさがあります。

目を惹いたのが、Glimmis(グリミス)というキラキラ交通安全グッズ(自動車のライトに反射して光るリフレクター)。

Glimmis / グリミス|スウェーデンのリフレクター

glimmisは、北欧で生まれたアクセサリー感覚で着けられる交通安全グッズ。スウェーデンで生まれたリフレクターそれがグリミスです。

ベビー用品として売られていますが、ストラップのように多くのデザイン・キャラクターが取りそろえられているので、老若男女幅広く好みのものを選べます。

バッグにつけるなどして、外出時は身につけておきたいです。

 

 

さて、ここまではフィンランド・デザイン展のご紹介。

 

もうひとつ、愛知県美術館では、コレクション展「美術館を(一足早く)解体する」が同時開催されています。

 

愛知県美術館は改修工事のため、今年末から1年半以上の休館が予定されています。

それに先駆けて、常設展示の一部の作品が「美術館の解体」をテーマにした展示に組み替えられています。

 

たとえば、彫刻作品を一部解体して展示することで、芸術と工芸の境目が浮かび上がってきたり。

絵画の裏側に貼られたシールから、作品の意外な変遷を知ることができたり。

 

何度も愛知県美術館に足を運んでいる人も、きっと新しい視点での発見があることでしょう。

休憩スペースの横から、企画展のチケットを提示して入場することができます。とてもおすすめですので、ぜひお見逃しなく。

 

藤森照信展 – 自然を生かした建築と路上観察

まちなかのあらゆるものを観察の対象とする「路上観察学会」。

赤瀬川原平さんとともに路上観察学会の発起人となった一人に、建築家の藤森照信さんがいます。

その藤森さんの手がけた建築と、路上観察学の成果が同時に楽しめる特別展が、茨城県・水戸芸術館で2017年5月14日(日)まで開催されています。

水戸芸術館|美術|藤森照信展―自然を生かした建築と路上観察

1946年生まれの藤森照信は、高校卒業まで長野県茅野市で過ごし、東北大学、東京大学大学院に進学。近代建築史・都市史研究の第一人者として多くの業績を残したのち、45歳で神長官守矢史料館(長野県茅野市、1991年)を設計、建築家としてデビュー。以後、約25年のあいだに40余の独創的な建築作品を創り続けてきました。 …

 

最寄りの水戸駅へは東京駅、または上野駅から特急で一時間ちょっと。

駅北口のバスターミナルから出ているバスを使う場合、「泉町一丁目」で下車して北に向かいます。

周囲から浮き上がるように、特徴的な多面体の塔が現れるので、まず道に迷うことはないでしょう。

 

近付くとカメラのフレームに収めきれません。

 

展示は塔ではなく、奥の現代美術ギャラリーで行われています。エントランスホールで、入館料800円を支払います。

 

館内は10のスペースにわかれ、ジャンルごとに藤森さんの活動が紹介されていきます。

屋根にニラを植えた赤瀬川邸「ニラハウス」、粘土山を思わせる多治見市モザイクタイルミュージアムなど、人工物でありながら有機的なイメージを感じさせる藤森建築。

中でも印象的だったのは、和菓子で有名な「たねや」グループ本社に併設された「ラ コリーナ近江八幡」。

ラ コリーナ近江八幡 | たねや

周囲の水郷や緑を活かした美しい原風景の中での、人と自然がふれあう空間づくり。和・洋菓子を総合した店舗および飲食施設や各専門ショップ、農園、本社施設、従業員対象の保育施設などを設けるたねやグループの新たな拠点です。

 

 

春夏秋冬、まるで違った表情を見せる空間は、手つかずの自然とも、都会の建築とも違うもの。

たねやのお菓子も出張販売していましたが、さすがに名古屋から水戸に行って近江(滋賀)のお土産を買うのもわけがわからないのでやめました(笑)。

いずれぜひ現地に行ってみたくなったので、そのときまでお楽しみにとっておきます。

 

そして展示のラストは言わずもがな、路上観察学会。

学会員のナレーションつきで歴代の名作を一点ずつ紹介していくスライドショーは図録の付属DVDにしてほしいほど。(公式図録は未発売)

今回は、会期中に開催されたワークショップで生まれた作品も「街なか展示」として市内の各地で見ることができます。

せっかくなので、帰りはその展示場を中心に、プチ路上観察をしてみました。

 

芸術館の近くから水戸駅近くまで伸びているアーケード。親子連れのピクトさんがかわいい。

地面に視線を落とすと、その屋根が正弦波(サインカーブ)を映し出しています。

なかなか危険なパイロン。どうしてずらして置いておくのか。

 

定番のマンホールは、やはりご当地・偕楽園をイメージした梅のデザイン。背景が赤色のものもきれいですね。

こちらは公式キャラクターのみとちゃん。この頭はねばねばしそう…。

 

梅の季節は過ぎていましたが、桜は折しも見頃。

茨城県三の丸庁舎。近代建築らしい威容を誇ります。

1Fの街なか展示は休日でも見ることが可能です。

 

駅北口までもどってきました。やけに下車を推す貼り紙。ちょっとテトリスっぽい。

 

ということで、水戸のまちあるきも楽しみつつの藤森照信展でした。

 

しかし、やはり水戸は遠い…。

そんな想いをお持ちの、とくに西日本にお住まいの方に朗報です。

こちらの展示、2017年9月29日(金)から広島市現代美術館での巡回が決定しています。

藤森照信展 自然を生かした建築と路上観察 | 広島市現代美術館

公立では全国初の現代美術を専門に扱う美術館として、現代美術の作品を収集、紹介している広島市現代美術館のウェブサイトです。

 

広島市現代美術館も市街から少し離れた山あいにあり、黒川紀章設計の建築と自然が同時に楽しめておすすめです。

藤森照信展の前には世界平和記念聖堂を設計した「村野藤吾の建築」展もありますよ!

と、思わず最後は広島偏愛シリーズになってしまったことをお詫びします。