まちなかのあらゆるものを観察の対象とする「路上観察学会」。
赤瀬川原平さんとともに路上観察学会の発起人となった一人に、建築家の藤森照信さんがいます。
その藤森さんの手がけた建築と、路上観察学の成果が同時に楽しめる特別展が、茨城県・水戸芸術館で2017年5月14日(日)まで開催されています。
1946年生まれの藤森照信は、高校卒業まで長野県茅野市で過ごし、東北大学、東京大学大学院に進学。近代建築史・都市史研究の第一人者として多くの業績を残したのち、45歳で神長官守矢史料館(長野県茅野市、1991年)を設計、建築家としてデビュー。以後、約25年のあいだに40余の独創的な建築作品を創り続けてきました。 …
最寄りの水戸駅へは東京駅、または上野駅から特急で一時間ちょっと。
駅北口のバスターミナルから出ているバスを使う場合、「泉町一丁目」で下車して北に向かいます。
周囲から浮き上がるように、特徴的な多面体の塔が現れるので、まず道に迷うことはないでしょう。
近付くとカメラのフレームに収めきれません。
展示は塔ではなく、奥の現代美術ギャラリーで行われています。エントランスホールで、入館料800円を支払います。
館内は10のスペースにわかれ、ジャンルごとに藤森さんの活動が紹介されていきます。
屋根にニラを植えた赤瀬川邸「ニラハウス」、粘土山を思わせる多治見市モザイクタイルミュージアムなど、人工物でありながら有機的なイメージを感じさせる藤森建築。
中でも印象的だったのは、和菓子で有名な「たねや」グループ本社に併設された「ラ コリーナ近江八幡」。
周囲の水郷や緑を活かした美しい原風景の中での、人と自然がふれあう空間づくり。和・洋菓子を総合した店舗および飲食施設や各専門ショップ、農園、本社施設、従業員対象の保育施設などを設けるたねやグループの新たな拠点です。
春夏秋冬、まるで違った表情を見せる空間は、手つかずの自然とも、都会の建築とも違うもの。
たねやのお菓子も出張販売していましたが、さすがに名古屋から水戸に行って近江(滋賀)のお土産を買うのもわけがわからないのでやめました(笑)。
いずれぜひ現地に行ってみたくなったので、そのときまでお楽しみにとっておきます。
そして展示のラストは言わずもがな、路上観察学会。
学会員のナレーションつきで歴代の名作を一点ずつ紹介していくスライドショーは図録の付属DVDにしてほしいほど。(公式図録は未発売)
今回は、会期中に開催されたワークショップで生まれた作品も「街なか展示」として市内の各地で見ることができます。
せっかくなので、帰りはその展示場を中心に、プチ路上観察をしてみました。
芸術館の近くから水戸駅近くまで伸びているアーケード。親子連れのピクトさんがかわいい。
地面に視線を落とすと、その屋根が正弦波(サインカーブ)を映し出しています。
なかなか危険なパイロン。どうしてずらして置いておくのか。
定番のマンホールは、やはりご当地・偕楽園をイメージした梅のデザイン。背景が赤色のものもきれいですね。
こちらは公式キャラクターのみとちゃん。この頭はねばねばしそう…。
梅の季節は過ぎていましたが、桜は折しも見頃。
茨城県三の丸庁舎。近代建築らしい威容を誇ります。
1Fの街なか展示は休日でも見ることが可能です。
駅北口までもどってきました。やけに下車を推す貼り紙。ちょっとテトリスっぽい。
ということで、水戸のまちあるきも楽しみつつの藤森照信展でした。
しかし、やはり水戸は遠い…。
そんな想いをお持ちの、とくに西日本にお住まいの方に朗報です。
こちらの展示、2017年9月29日(金)から広島市現代美術館での巡回が決定しています。
公立では全国初の現代美術を専門に扱う美術館として、現代美術の作品を収集、紹介している広島市現代美術館のウェブサイトです。
広島市現代美術館も市街から少し離れた山あいにあり、黒川紀章設計の建築と自然が同時に楽しめておすすめです。
藤森照信展の前には世界平和記念聖堂を設計した「村野藤吾の建築」展もありますよ!
と、思わず最後は広島偏愛シリーズになってしまったことをお詫びします。