陸から見つめるせとのうみ – 瀬戸内国際芸術祭2025 夏・志度/津田/引田
2025年の瀬戸内国際芸術祭、夏会期がはじまりました。
春会期の記事はこちら。
今年は四国本島の沿岸部、さぬき市の志度・津田と東かがわ市の引田(ひけた)エリアがはじめて会場に加わりました。
いずれも夜21時まで開場しているので、島めぐりの後に、または暑い日中を避けて日没後になど、瀬戸芸の楽しみかたがよりひろがりそうです。
各エリアへの鉄道でのアクセスはJR高松駅から高徳線・徳島方面へ。引田まで特急で30分ですが、本数が少ないので要注意です。

また駅にもコインロッカーはなく(2025年8月時点)、芸術祭の会場まで少し歩くので、レンタカーで巡るのも一案です。
さて、まずは引田へ。
会場のひとつ、東かがわ手袋ギャラリーは、この地での手袋生産の歴史を伝える施設です。


〈hk02 レオニート・チシコフ みんなの手 月まで届く手袋を編もう!〉は、2022年の沙弥島での「月への道」からつづくものがたり。
月を目指す宇宙飛行士を、それよりも大きな手袋がやさしく見守ります。

となりの讃州井筒屋敷は休憩所にもなっています。

〈hk04 東京藝術大学×香川大学まちづくりプロジェクト ぐんだらけ〉の作品、プラスチックごみから描かれる大漁旗が中庭を彩ります。

会場ではありませんが、醤油屋さんの「かめびし屋」にも立ち寄りましょう。
土日祝のお昼限定でランチメニューがあり、二種類の醤油でさぬきうどんの食べ比べができます。


歴史を感じさせる煙突広場でも「ぐんだらけ」のプロジェクトが展開されています。

〈あまりもの〉を使って、奉納和船を会期中に少しづつ組み上げていくようです。遠方から訪れた人間には、完成まで見届けられないのが残念。

なんだか昭和なビルの一角、こちらには…?

引田に暮らす住民の方々の半生を、聞き書きをもとに図解する「引田記憶印刷所」がありました。
それぞれの人生の節目となった、さまざまなアイテムがカードとして記録されていきます。
次の会場である津田へ。
最寄駅は讃岐津田駅ですが、普通列車のみ停車します。他のエリアからのシャトルバスも運行されています。

海水浴場のそばに、〈津田の松原〉の絶景がひろがります。

松原にまぎれて、〈st05 ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット 時間との対話〉が。無数のレンズがまちと訪れた人を照らします。
津田エリアの公式作品はここだけですが、少し周辺をぶらぶらしてみましょう。

「わたしを5分間使って下さい」…?
近くにある料亭「洗心亭」の一角では、会期中「津田の松原商店」もオープンしています。
あえて瀬戸内の中でも東讃エリア(さぬき市・東かがわ市・三木町)の逸品だけを揃えたそうで、いつもの瀬戸芸ではなかなか見かけない珍しいお土産が見つかります。

こちらはまた別のアートプロジェクトのようで、海岸にTシャツが並びます。

北に向かうと、舟町の家屋をリノベーションしたお店が点在する「ウラツダ」とよばれる地域があります。

海をテーマに、さまざまな本が並ぶ私設図書館「うみの図書館」は宿泊もできます。
そろそろ日も暮れかけてきました。志度に向かいましょう。
志田駅で旅人をお出迎えするのは…?

この地に生まれた江戸時代の発明家、平賀源内です。
JRの駅から琴電志度駅を越えた先、長い街道に源内ゆかりの施設が点在します。
そのひとつ、平賀源内記念館は常設展の入館料が別途必要です(芸術祭パスポートで大人250円)。エレキテルの見本など、さまざまな源内の業績が紹介されます。
なんと独自で万博のようなイベントも開催していたそう。
源内万博、どんな様子だったのか見てみたかったですね。

記念館の二階に〈st03 やんツー〉作品が展開されます。
現代のエレキテルでマイニング?

平賀源内旧邸では〈st04 筧康明 Echoes as Air Flows〉という作品がありました。
会場の吹子に息を吹きかけると、遠くの会場にシャボン玉が舞います。
秋会期の本島につながる吹子もあり、なんだか不思議な気分です。
時空を飛び越えて、陸から海へ、想像力と科学力が世界をつなぎます。
島巡りとはまた違った魅力を感じる、瀬戸内国際芸術祭でした。