紙のまにまに – 「印刷書体のできるまで」展と紙博

今日も日本各地のどこかで、文字や紙にまつわるさまざまな催しが行われています。

今回は、東京のふたつのイベントをご紹介します。

 

まずは、以前の記事でも紹介した印刷博物館で2017年6月18日まで開催されている「印刷書体のできるまで」展。

印刷博物館:P&Pギャラリー > 印刷書体のできるまで 活字書体からデジタルフォントへ

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運良く、まだ桜が咲き残る時季に行くことができました。

 

今回の展示では、活版印刷の時代から受け継がれた凸版書体をもとに新しくつくられた凸版文久体の制作過程が明らかに。

制作を監修された小宮山博史さん、祖父江慎さんのノートも公開されています。

凸版文久見出し明朝のイメージは「しとやか姉さん」だったそう(笑)。

祖父江さん直筆イラストもかわいいのですが、残念ながら展示は撮影禁止のため、気になる方はぜひ会場へ足をお運びください。

またミュージアムショップでは、さまざまなフォントを百人一首のようにかるたでおぼえて楽しめる「フォントかるた」も期間限定で販売中です。

フォントかるた

君は文字を見ただけでフォントの名前がわかるか!? 解説つきフォントかるた!

品薄になることがあるそうなので、確実に手に入れたい場合は公式Twitterを事前にチェックしておきましょう。

 

さて、前回は飯田橋のほうから訪れたので、今回は神楽坂方面へ歩いてみます。

印刷博物館も凸版印刷の小石川ビル内にあるのですが、周辺にも印刷や出版にまつわる会社が多くあります。

出版物を出版社から書店に受けわたす取次として有名なトーハン。

孔版というのはスクリーン印刷ともよばれるもので、細かい穴(孔)のある版からインクをにじませて印刷する手法のこと。

入口にも箔押し! かつてない特殊印刷まちあるきが楽しめる界隈です。

こちらは京都タイポさんぽでも頻出のDF隷書体。みっつの文字、それぞれの要素がここちよく共鳴しています。

 

神楽坂まで来ました。新潮文庫の看板が目を惹く、なつかしい街の本屋さんに見えて、中に入るとカフェが併設された新業態の書店・かもめブックス

かもめブックス

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そんなかもめブックスを運営するのが、校正専門の鷗来堂。「鴎」ではなく印刷標準字体の「鷗」なのですね。

近くには本好きの憧れ、新潮社の本社も! おなじみの明朝体ロゴにふさわしい風格の建物が素敵です。

 

さて次は、2017年4月15日(土)・4月16日(日)と浅草で開催されていた、紙ものにまつわるクリエーター・ショップが集う「紙博」です。

紙博 |

ざらざら、つるつるといった触り心地。印刷したての用紙や、それに染み込んだインクの匂い。手にした時に、ほのかに感じる重さとぬくもり。紙にしか存在しない、五感に訴えかける魅力が、そこにあるからかもしれません。一本の線が描かれた時、デザインが施された時、ただの真っ白な紙が、暮らしに彩りを与えるアイテムに変わる、その魔法のような姿に心がときめくからかもしれません。

主催する手紙社さんのホームページで知り訪れたのですが、ブースによっては近付くのも難しいほどの盛況に驚きました。

すれ違った人の「みんな紙に飢えてる」という会話が妙に耳に残っています(笑)。

ステージイベントでは、ちょうどタイミングよく祖父江さんを遠目ながらも拝見することができました。

来場者プレゼントとして、紙の切れ端を自由に選んで持ち帰ることができるコーナーも。

なにかに有効活用したい…!

 

まだまだ果てしなくひろがる、紙と印刷の世界を存分に味わった週末でした。

写植の時代から、未来の書体へ – 今田欣一の書体設計「書物と活字と」展

パソコン上で文字を扱う、デジタルフォントが普及する前の時代。

活字のほかに、写真の技術を応用して文字を印刷する技術がありました。

それが写真植字、写植。

そんな写植の時代から現在まで活躍されてきた書体設計士のおひとり、今田欣一さんの書体にふれることができる展示が大阪で開催されていました。

大阪DTPの勉強部屋 ” 今田欣一の書体設計「書物と活字と」展示会

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会場はJR環状線天満駅、または地下鉄堺筋線扇町駅の近く、カンテレ扇町スクエア。

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この3Fにあるメビック扇町は、さまざまなクリエーターによるイベント・展示のためのスペースになっています。

ちなみに別会場では、全国のまちの人がつくった小冊子・ポストカードなどを展示する「わたしのマチオモイ帖展」が2017/1/29(日) まで開催中です。

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こちらも一冊一冊じっくり読み込んでいると、いろんなまちを旅した気分になる、すてきな空間でした。

木津川アート行ってみたい…!

木津川アートマガジン

京都府木津川市で隔年開催。アートの力でわたしたちのまちに光をあてる芸術祭、木津川アート。

 

さて、本題に戻って、「書物と活字と」展。

写研の社員時代から、独立されてからの今田欣一さんの書体が一堂に展示されていました。

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写研時代の代表作のひとつが、ボカッシイ

[航海誌] 第14回 ボカッシイ: 文字の星屑

[航海誌] 第14回 ボカッシイ,タイプフェイスデザイン事始:タイポグラフィ前夜/貘書体/白澤書体/文字する時間タイプフェイスデザイン漫遊:航海誌/福岡の夢/東池袋KIDS/コンペは踊ろう/筆のバラードタイプフェイスデザイン探訪:偉人伝/見聞録

ゴシック体の中身を、45度の斜線で表現するという、いま見ても画期的なデザインです。

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講演会では、漢字のハネを読みやすくするために斜線の入れ方や太さに苦労された点などを聞くことができました。

 

また、LINE BLOG で使えるフォントとして紹介した、マティスみのりやまと

LINE BLOG - マティスみのりやまと

このみのりやまとも、フォントワークスのマティスと組み合わせて使うための「かな書体」(ひらがな・カタカナフォント)として、今田さんが独立後に制作されたものだそう。

(当時は別会社のフォントワークスインターナショナルから依頼されたもの)

 

さらに今後、60代、70代の代表作として設計される予定だという書体までが紹介されていて、その計画性にも驚きの声が上がっていました。

 

主催の大阪DTPの勉強部屋では、わたしよりはるかに文字に詳しく、文字愛にあふれる方々と交流できたりと、いろいろな意味で勉強になりました。

 

印象的なお話が、書体は一文字ずつ作っただけでは作品とは言えず、文章や本のタイトルなどで組まれて、人につたえるものになってはじめて完成するということ。

 

多くの人は意識せず、完成された文章だけを見ていることでしょう。

でも、その奥には、一文字一文字に命を吹き込む、フォントを設計する人がいて、そのフォントを選んで組む人がいる。

 

あらためて、ひとりでも多くの人に、そんな文字の奥深さを知ってもらいたいと感じる時間でした。

 

日本のものづくりをつたえる、銀座ソニービルとアド・ミュージアム東京

日本の発展は、ものづくりによって支えられてきたといいます。

けれど、ものをつくっただけでは、それを多くの人に届けることはできません。

魅力的なものをつくること。

その魅力をつたえること。

そのどちらもが、モノとヒトのあいだのつながりには欠かせません。

 

そんなつながりを感じられるのが、東京・銀座ソニービルで2017年3月まで行われている「It’s a Sony展」。

今回は、その周辺も交えて紹介します。

 

まずは、JR・東京メトロ・都営地下鉄新橋駅近く、カレッタ汐留にあるアド・ミュージアム東京へ向かいます。

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ここは、日本で唯一という広告ミュージアム。

江戸時代の錦絵にまでさかのぼり、さまざまなメディアでつたえられてきた「広告」にふれることができます。

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館内は撮影禁止でしたが、昭和を感じる新聞・雑誌広告のデザインは見飽きることがありません。

TVやラジオのCMは実際に視聴できるブースが設けられています。

ことし30周年を迎えるJR東海、記念TOICAが発行されることで話題になった「クリスマス・エクスプレス」も。

 

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特別展として「D&AD Awards 2016」も1月14日(土)まで開催中です(こちらは撮影可能)。

いままでの広告の枠を超えた現代のマーケティング、デザインが楽しめます。

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神戸で開催されていたマスキングテープ「mt博」のミニ展示も!

 

また、近くにはパナソニック(旧・松下電工)の汐留ミュージアムもあります。

汐留ミュージアム | Panasonic

パナソニック 汐留ミュージアム(東京・汐留)では常設のジョルジュ・ルオー作品展をはじめ、様々なアートイベントをご用意しています。

今回はちょうど展示替えで休館中でしたが、いずれ行ってみたいところです。

 

さて、そのまま銀座方面まで歩いてみます。

行く手に、特徴的な建物が見えてきました。

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これこそが、戦後日本を代表する建築家・黒川紀章が設計した、中銀カプセルタワービル。

メタボリズムという考え方にもとづき、一室ごとが取り替え可能なカプセルとしてつくられました。

実際には、1972年に竣工してから一度も取り替えられることはなく、老朽化のため立て替えの危機に迫られています。

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もはや伝説と言える「カフセルタワーヒル」を生で見られて感激(笑)。

カプセル自体は通常の住宅として使われているため、無許可で見学・立ち入りはできませんが、一角にあるコンビニなら誰でも入れます。

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そのコンビニはなんと、広島偏愛シリーズでおなじみ、ポプラ

ふしぎなつながりを感じつつ、銀座までやってきました。

 

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こちらが今回のメイン、銀座ソニービル。

4月からの建て替えを前に、ソニー創業70年、ビル開館50年をふりかえる「It’s a Sony展」、その第一期が開催中です。

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1階には、雑誌POPEYEとコラボし、さまざまな人ゆかりのソニー製品が展示されています。

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みうらじゅんさんの著作にもよく出てくるカセットテープ。

そして2階からは年代別の展示がはじまるのですが、製品だけでなく、建物自体もみどころのひとつに据えられています。

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建築家・芦原義信さんの設計した「花びら構造」。

フロアの高さを90cmずつずらすことで、ビル全体をひとつの空間として連続させています。
ショールームとして、ものをひとにつたえるために計算された建物。
それは、福島のさざえ堂にも似た回廊空間。

ものと広告、そして人の記憶、さまざまな視点で楽しめます。

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丸ゴシックっぽいSoni-Tape のロゴ。時代を感じる影の処理も含めてかわいい。

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歴代ウォークマンの広告。

アドミュージアムでも見た猿のCMが、こちらでは、デジタルサイネージとしてよみがえります。

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5階から上は、2018年にオープンする「銀座ソニーパーク」の模型など、これからのソニーを感じる空間がひろがっています。

下北沢にある「本屋 B&B」がプロデュースする、EDIT TOKYOという新しい本屋さんのかたちも、いまなら見られます。

本屋 B&B

下北沢の本屋です。

 

いままでの人々がつたえてきたものを受け継ぎつつ、新しいもののかたちを考える、そんな一日でした。

 

国鉄中央線の記憶をたどる – 愛岐トンネル特別公開

中央線と言っても、東京ではなく、東海のお話。

 

JR名古屋駅からやってきた電車が高蔵寺駅を過ぎると、トンネルを通り、愛知県と岐阜県の県境を越えて多治見駅に向かいます。

いまでは10分程度で通り過ぎる、この区間のそばに、100年以上の昔、明治時代に作られた赤レンガの旧線が眠っています。

 

それは、忘れられかけた日本近代化遺産のひとつ。

 

その廃線路の記憶を呼び覚まそうと活動に取り組んでいるのが、愛岐トンネル群保存再生委員会。

愛岐トンネル群保存再生委員会 公式サイト

愛岐トンネル群の「秋の公開」が近づいてきました。11/26(土)~12/4(日)の特別な9日間です! 秋と言えば、やっぱり紅葉。 紅葉と明治の赤レンガトンネルが一緒に味わえる愛岐トンネル群へお出かけください。愛岐トンネル群保存再生委員会では、 公開に向け整備に頑張っています。

今回は、平成28年秋の特別公開に行ってきたので、その様子をご紹介します。

 

最寄駅はJR中央本線・定光寺駅

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ふだんは普通列車しか停まりませんが、特別公開中は一部の快速列車も臨時停車するようです。

 

定光寺駅はトンネルとトンネルの合間、崖っぷちのようなところにホームが作られています。

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名古屋からほど近いのに、まるで秘境駅の雰囲気を感じられる駅としても有名ですね。

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JR東海のICカード・TOICA圏内なので、Suica・ICOCAも使えます。

 

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2016年現在、保存再生活動の対象として一般公開されているのは 3号〜6号トンネル。

定光寺駅に近い3号トンネルが入口になります。中学生以上は、保険料・施設整備費として100円が必要。

 

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3号始発駅。すみ丸ゴシックではないですが、ちゃんと駅名標が用意されています。

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トンネルの中や外のあちこちに、かつての施設の痕跡やバラストが残されていて、あえて整備しすぎないようにしている印象を受けます。

路上観察学にも通じるものがありそう。

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かと思えば、誰が作ったのか、こんなかわいい木彫りの動物がいたり。

 

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3号トンネルを抜けると、竹林駅

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緑あざやかな竹林を抜け、さらに4号トンネルへ向かいます。

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大モミジ前駅。渓谷と色づくもみじの景色が楽しめます。

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会員の方のの手作り水車のある、水車前駅

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さらに進むと、お弁当や飲み物売り場のあるマルシェ駅

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せっかくなので、エビ味噌カツ弁当をいただきますね。

 

体力を回復したら、5号トンネルへ。

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トンネルを抜けると、レンガ広場前駅

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C57型SLの動輪が展示されていました。

自転車のペダルをこぐことで動かすことができる、というめずらしい動態保存の形式。

 

そして、いよいよラスト、6号トンネル。

ここまでは100m未満のトンネルばかりでしたが、6号トンネルは全長333m。

工事中に崩落があったために80m延長したそうで、トンネルの途中に元の入口跡があります。

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こんな神秘的なパイロンは初めて見ました。

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懐中電灯がないと、ほんとうに真っ暗。iPhoneの懐中電灯機能でもいいですが、ちゃんとしたものを持っていくことをおすすめします。

 

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そして、トンネルを抜けると、終点の県境駅

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そう、この先はもう岐阜県多治見市。

向かいの7号トンネル自体は名古屋市の所有ながら、いろいろ壁があって、行くことはできないのだそうです。

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委員会としては、7号、8号トンネルも公開対象として、その先の古虎渓駅までつなぎたいとのこと。

ふしぎな言い方になってしまいますが、いつか、この廃線跡が全線開通する日の来ることを待ち望みます。

 

 

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ということで今回は、来た道を戻ります。意図的か偶然か、「アイチしょうゆ」のかごを横目に。

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ゆっくり探索しながらだと、往復2時間くらいの道のりでした。次回は2017/5/3(火)〜5/7(土) に公開予定とのこと。

 

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おまけ。やけにフレンドリーなよびかけの中部電力さん。

 

名古屋の本屋の中心に – ちくさ正文館と、喫茶モノコト〜空き地〜

【追記】2023年、ちくさ正文館は惜しまれつつ閉店しました。この記事はアーカイブとして、当時の文章をそのまま残しておきます。
「喫茶モノコト」は大須の店舗で営業中です。


中日本、中京地区という異名をもつように、東京と京都・大阪の中間に位置する名古屋。

東西の文化の中継地点として、互いに交じり合いながら、独特の文化がはぐくまれてきました。

そんなまちの文化拠点のひとつといえば本屋。では、名古屋の本屋さんの中心といえばどこでしょうか。

わたしにとって、それは名駅のある中村区でもなく、栄のある中区でもなく、千種(ちくさ)区にあります。

栄から地下鉄東山線で2駅。

そこはまた、JR東海・中央本線とも交わる中継点。

そこに、ちくさ正文館という本屋さんがあります。

駅前のターミナル店は予備校も多いので、学生向けの参考書や漫画・雑誌にスペースをとった品揃えです。

けれど、ちくさ正文館といえば、そこから少し歩いた本店。

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このお店については、いままでも多くの本で語られています。

わたしがこの本屋さんをはじめて訪れたのは、ずいぶん前のこと。

でも実はそのとき、このお店がそんなに有名だということを知らなかったのです。

普通にまちあるきをしていて、普通に本屋さんがあると思って入りました。

そして圧倒されました。

こんな品揃えの本屋さんは、後にも先にも、見たことがありません。

ベストセラーが置いていないわけではなく。

買いたいと思って探していた本が必ず見つかるわけでもなく。

けれど、ここに来れば、ここに来ないと出会えなかったような本に、必ずといっていいほど出会える。

それが、実にさりげなく、押しつけがましくなく置かれている。

まるで凪のような、あるいは台風の目のような、その静かな空間のまわりに、大きなエネルギーが渦巻いている。

その意味で、ここが名古屋の中心であると思うのです。

そして、つい先日、このお店の二階が改装され、新しいスペース「喫茶モノコト〜空き地〜」がオープンしました。

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プレオープン企画として、あいちトリエンナーレ2016でも作品を展示されていた、岡部昌生さんと鯉江良二さんによる「ヒロシマの礫」の展示が行われていました。

広島の被爆した土と、こねられた団子。

港千尋監督の言葉に添えられた「あとはこれをどこに投げるかだ!」というキャッチフレーズが印象的です。

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トリエンナーレがはじまる前にも、同じ場所で、岡部さんの展示が行われていたことを思い出します。

投げられる日を待っていたかのように、静かに時を刻んでいた空間。

リニューアルされて、喫茶店となりながらも「空き地」というキャプションがつけられた場所で、これから何が起こるのか。

11/18(金)〜11/30(水) は写真家・キッチンミノルさんと詩人・桑原滝弥さんの「メオトパンドラ」出版記念展が開催中。

わたしが訪れた際は、まだ定休日など諸々未定だと伺いましたが、徐々にメニューも増やして喫茶店としても充実していくそう。

本屋として、喫茶店として、これからますます楽しみな場所です。