日本の街中をよみなおす – まちの文字図鑑 よきかな ひらがな

以前、街中の文字観察を楽しむ一冊として、「タイポさんぽ」という本をご紹介しました。

その後も「タイポさんぽ 台湾編」という続編が出版され、日本の漢字とはまた違う自由度の高いデザインを楽しめるものになっています。



といいつつ今回は、日本ならではの文字・ひらがなに焦点を当てた本をご紹介。


著者の松村大輔さんはブックデザイナーとしても活躍され、「タイポさんぽ」でもデザインを担当しています。

今回は逆に「タイポさんぽ」の著者、藤本健太郎さんが装丁を担当。なんだか、こういう関係性はいいですね(^^)

 

本のコンセプトはというと、街中にある看板などの文字から、ひらがな一字だけを切り出して、五十音図鑑をつくるというもの。

 

本来は店名や注意書き文のために組まれた文字を、あえてバラバラにすることで、見えてくることがあります。

「わかる」は「分ける」という言葉からきているように、分別することは、ものごとをより深く観察するのに大切な手法。

レタリングや文字の書き写しをするのでもないかぎり、ふだん、ひらがなの一字ずつを注意することはないと思います。

じっくり観察してみると、同じ文字でもこんなにデザインの幅が広いものなのか! と驚かされます。

 

これはぜひわたしもやってみよう! と思って撮った写真を見返してみたら、意外にも、ひらがなの写っているものがあまりないことに気づきました。

お店の看板はカタカナの店名ばかり。お店以外だと、ちょっと古い漢字で組まれたものばかり。

たまたま、わたしがそういうものに惹かれるのか、そもそもそういうものなのか。

 

それはともかく、やっと探し出したものをちょっとご紹介。

 

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全体写真はこちら。古い看板だと、経年劣化で筆の運びがレントゲン写真のように見えてくるのがおもしろいですね。
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これは…?

 

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東海圏ではおなじみの、和食チェーン「サガミ」。

小さいころからよく家族で食べに行きましたが、まさか「が」だけひらがなだとは! はじめて気づきました(笑)

 

という感じで「ひらがな」に着目して街中をよみなおすことで、新たな発見も得られます。

 

続編として「イイカナ カタカナ」も刊行予定だとのことなので、こちらも楽しみです!

 

丸の内・丸ゴシック探索

まちあるきの楽しみ方はいろいろありますが、そのひとつに、風景の中から一定の縛りで何かを探すというものがあります。

今回は、街中のフォント(文字)の中でも、よく見かける丸ゴシック体を見つけてみます。丸ゴシック体だけに丸の内。

 

あっ、丸の内といっても東京ではなく、名古屋の丸の内です(笑)

 

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まずはこちら。名古屋市営地下鉄・丸の内駅。

ほとんどの出入口は新しい角ゴシックの看板に付け替えられていますが、なぜかここだけ、古いタイプの丸ゴシックが残っています。

 

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駐車場の看板。とくにまるまるとしてて、かわいい。

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はんこ屋さんの各種取り扱い商品、全部丸ゴシック。もちろん、実物は他のフォントも選べるはず!

 

 

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欧文フォントも丸ゴシック風味。「旧名称」が角ゴシック体なのがおしい。

というか、ビルの正面に旧名称が併記されているの、はじめて見ました。YHって何の略でしょう…。

 

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まさに、ワンダーMARUNOUCHI! な、まちあるきでした。

 

既製フォントの枠にとらわれない、路上の文字観察 – タイポさんぽ

世の中には、路上観察趣味というものがあります。

建築・土木のような大きなものから、看板や標識、マンホールのふたといった小さなものまで、およそ路上にあるあらゆるものを観察対象とすることで、ふつうに街を歩いている以上の楽しみが生まれる。

わたしが小さいころに、はじめてその楽しみを教えてくれたのは宝島社の「VOW!」(まちのヘンなもの大カタログ)。

もっと遡れば、やはり赤瀬川原平さんの「路上観察学入門」や「超芸術トマソン」に行き当たります。

そして今回は、その流れを汲んだ、街中の文字(タイポグラフィ)を楽しむ一冊をご紹介。



これまでブログで主に紹介してきたのは、コンピュータ上で使える、いわゆる既製のフォント。

でも、この本では、まだそのようなフォントが普及するちょっと前、手書きや看板職人さんの手触りが感じられるような文字を中心にしています。

 

 

VOWにしても赤瀬川さんの本にしても、面白いのは題材だけでなく、それを取り上げた著者の視点だと思っています。

その点では、この本もそれにまったく負けていない。

もともとグラフィックデザイナーであるという著者・藤本さんは、まちかどの文字を作り手を「詠み人」と称し、どういう意図をもってロゴをデザインしたのかを深読みしていきます。

 

もはや、風流まで感じさせます。

 

その文体の魅力を感じてでしょう、嬉しいことに、ふつうは本文を立ち読みしないと読めないその文章が、表紙(カバー)にもデザインされています。

画像を拡大すれば何とか読め…読め…ないですね、この解像度では(笑)

Amazonのリンク先では表紙や本文の大きいイメージもあるので、気になる方は覗いてみてください。

 

実はこの本、2012年に出版された本の増補改訂版。

旧版ももっていましたが、判型も大きくなっているので迷わず買い直しました。

 

ちなみにこの本、写真に写っているお店の電話番号やナンバープレートなどの数字が、加工して「0000」にされているのですよね。

そういう芸が細かいところも含めて、とても好きな一冊。

 

わたしも街で見かけた気になる文字をよく写真に撮っているので、文体は真似できないけれど、少しずつ上げていきたいと思います。

たとえばこんな感じでしょうか。

 

本書でも、いじられやすい文字としてあげられていた歯医者さんの「」の字。
横棒の片方だけが丸くなっているのは歯ブラシの柄をイメージしているのでしょうか。
あっ、あと、「FAMILLE」なのにファミールじゃなくてハミールなのは、まさか「歯見ーる」っていう…。

 

もうひとつ。


」の字の中が肉球になっていて、とてつもなくかわいいので、もうそれだけでご紹介(笑)。

 

ということで、路上の文字を楽しむタイポさんぽでした。