瀬戸内国際芸術祭2019 – 高松から郊外へ、瀬戸内海国立公園をめぐる

この記事は 瀬戸内国際芸術祭2019 – 四国を感じる、高松まちあるき の続きです。

丸亀町商店街から、高松市美術館へ向かいます。

高松市美術館公式サイト

高松市ホームページではJavaScriptを使用しています。JavaScriptの使用を有効にしていない場合は、一部の機能が正確に動作しない恐れがあります。お手数ですがJavaScriptの使用を有効にしてください。 【臨時休館のお知らせ】台風10号の接近により、8月15日(木曜日)は臨時休館とさせていただきます。 ふらっとアート 開催中 1:「とびだせ!びっくり人形」 2:「アートカードであそぼう!」 1:開館時間のいつでも自由に2:毎週木曜日・土曜日(正午~午後4時) 講座 次回開催 まぶさび教室シーズン6「ヤワコい日本のワタシ」(全5講) 2019年9月7日(土曜日)午前11時~正午※予約不要、無料 特別展 開催予定 安野光雅 空想と風景 絵本原画の魅力 2019年11月12日(火曜日)~2019年12月22日(日曜日) 特別展 開催予定 開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎― 2020年2月8日(土曜日)~2020年3月22日(日曜日) 常設展 2019年度 第2期常設展 2019年6月29日(土曜日)~9月23日(月曜日・祝日) 休館日:月曜日(祝日の場合は翌日) ※8月12日は開館 特別展 宮永愛子:漕法 2019年7月17日(水曜日)~2019年9月1日(日曜日) 休館日:月曜日(祝日の場合は翌日) ※8月12日は開館 ○開館時間9:30-17:00※展覧会場への入室は閉館時間の30分前まで※特別展開催期間中の月~土・祝は19:00まで○休館日月曜日(祝休日の場合は翌日) 子どもやその保護者をはじめとして来館した方が、気軽にアートを楽しむことのできる空間です。無料で体験できる多彩なアートプログラムを提供しています。また、子ども向けの美術図書や絵本をご用意しており、自由に閲覧していただけます。 PDF形式のファイルを開くには、Adobe Acrobat Reader DC(旧Adobe Reader)が必要です。 お持ちでない方は、Adobe社から無償でダウンロードできます。 Adobe Acrobat Reader DCのダウンロードへ

瀬戸内国際芸術祭2019夏会期中は特別展〈宮永愛子:漕法〉が開催中で、当日券は一般1,000円(パスポートがあれば2割引)です。

透き通ったガラスやナフタリンで作られた本や行李、その中に閉じ込められた鍵…瀬戸内の旅を思わせる、印象的な作品です。

特別展の半券を美術館周辺のサポートショップへ持っていくと、特典を受けることができます。

本好きの方向けには嬉しいことに、個性的な本棚とカフェも併設された本屋ルヌガンガさんや、完全予約制の古本屋・なタ書さんなどもサポートショップに含まれているので、ぜひ足を運んでみてください。

 

このあとは芸術祭にとらわれず、高松から郊外へ足を伸ばしてみます。まずは東へ。

ことでん松島二丁目駅から北へ15分ほど行くと、丹下健三の設計による旧香川県立体育館が見えてきます。

同じ丹下健三建築である国立競技場の体育館と同じ1964年の完成で、特徴的な屋根が見どころです。

耐震性の問題から2014年より閉鎖されており、いつ見られなくなってしまうかわかりませんのでお早めに。

 

さらに北に向かうと、〈本ならなんでもそろう〉のキャッチコピーで有名な宮脇書店の総本店があります。

垂れ幕かと思いきや、本の背表紙になっているという作り込みがおもしろい。

屋上に大観覧車がある本屋さんとして有名でしたが、こちらも残念ながら平成の終わりとともに営業を終了しています。

広い店内を歩きまわり、本との思わぬ出逢いを楽しめる場は、変わらずにあってほしいと願います。

 

さらに北には、四国八十八箇所霊場の第八十五番札所・八栗寺のある五剣山があります。

赤い車体がかわいい八栗ケーブルで山頂まで向かいます。

逆三角形のウロコがかわいいですね。

同行二人。歩いて行く人にはおへんろピクトさんのご加護があります。

高松市街の絶景とともに、弘法大師様がお迎えしていただけました。

電車も自動車も無い時代、ここまでたどり着いた人々に感服するばかりです。

 

次は西のほうにある5つの連峰からなる五色台を紹介します。ここからの瀬戸内海の眺めもすばらしい。

北側の大崎山には、瀬戸内海歴史民俗資料館があり、瀬戸内の民俗資料が多数展示されています。2019年現在は入場無料です。

 

「引」の明朝体が見事。

近くの展望台には彫刻家・流政之さんの彫刻「またきまい」があります(撮るのを忘れました)。

 

さらに西に行くと、瀬戸大橋の開通によって四国本島と地続きになった沙弥島があります。

芸術祭は春会期のみだったので今回は行けませんでしたが、6年前の写真をすこしだけ。

五十嵐靖晃さんの、地元の方や漁師さんたちとつくる〈そらあみ〉。

瀬戸大橋を間近に眺められる海岸です。

瀬戸大橋をモチーフにした噴水と、瀬戸大橋記念館もあります。

 

多様で豊かな瀬戸内の文化を、ぜひ現地で楽しんでください。

 

瀬戸内国際芸術祭2019 – 四国を感じる、高松まちあるき

久しぶりの更新となりました。

夏真っ盛り、瀬戸内では三年に一度の瀬戸内国際芸術祭2019 夏会期がスタートしています。

瀬戸芸はアートと自然、地元の暮らしが融合した島めぐりが大きな魅力ですが、人出と日射しが心配…という方には、高松市街のまちあるきもおすすめです。

以前戦後を感じるモダニズム建築 – 香川・高松まちあるきという記事も書きましたが、今回はまた違ったスポットをご紹介しましょう。

 

まずは四国の玄関口、JR高松駅・高松港から東へ少し歩くと、香川県立ミュージアムがあります。

9月7日(土)までは特別展、祭礼百態ー香川・瀬戸内の「風流」が開催中です。

この地方に古くから伝わる祭礼・民俗芸能を描いた絵図や、祭りに使われる屋台・獅子舞などが展示されています。

ふさふさしてますね…!

地元の小学校児童が手作りした獅子舞もかわいい。

 

ミュージアムの東に広がる北浜エリアは、昭和初期に高松港の貨物一時保管場所として栄えた倉庫街です。

現在は倉庫街をリノベーションした北浜alleyとなり、雑貨屋さんやカフェレストランが集積しています。

瀬戸内国際芸術祭2019では「北浜の小さな香川ギャラリー」としてアート作品の展示も行われています。

丸亀うちわの骨6000枚を使った西堀隆史さんの「内輪の骨の広場」。

ドットアーキテクツと香川県立高松工芸高校の「Living Traditional Crafts」は、工芸・クラフトが織りなす絵巻風ものがたり。かわいいものは分け隔てなく大切にしたくなります。

そのとなり、石原秀則さんの「うどん湯切りロボット」からは、さぬきうどんの正しいつくり方を教わります。ハイテク!

 

さて、高松港に戻り、ことでん高松築港駅から中心街に向かいましょう。

ジュリアン・オピーの「銀行家、看護師、探偵、弁護士」は、地元産の石でまちを行くさまざまな人をかたどります。

ことでんといえば、シュールなマスコットキャラクターのことちゃんですね。ことでん100周年の2011年に恋人のことみちゃんとご結婚(おめでとうございます)。

今日もお子さんと三人で大活躍です。ぽい!

片原町、あるいは瓦町で下車して、高松丸亀町商店街を歩きます。

最寄り駅がふたつあることからわかるように、隣接する商店街を合わせると大阪の天神橋筋商店街に匹敵する長さを誇ります。

さて、ちょっと変わったねこのポスターは…?(←二通りの読み方が可能)

ヤノベケンジさんのパプリックアート「SHIP’S CAT」でした。瀬戸内国際芸術祭の連携事業「祝祭」のイベントとして、8月15日まで商店街を歩きまわるそうです。

ボラードに乗った猫、実に神々しいですね。

まちあるき恒例の看板タイポさんぽもいきましょう。「3びきの子ねこ」、〈3〉と〈子〉のフォルムを似せてあるのが良いですね。

近くには「3びきの子ぶた」もあります。こちらは果実店のイートインコーナーで、ジュースやジェラート、サンドウィッチを味わえます。

 

今回はひとまずここまで。次回は高松市美術館での展示や、郊外のスポットをめぐります。

 

 

筑紫書体の秘密は台形にあり – 筑紫書体と中村書体

2019年4月21日、名古屋の国際デザインセンター(ナディアパーク)で、「中村書体と筑紫書体」というセミナーが開催されました。

セミナー 中村書体と筑紫書体

4月21日に、名古屋の国際デザインセンターで「名古屋意匠勉強会ナルホ堂」と「フォントプラス」のコラボレーションセミナーとして、「中村書体と筑紫書体」を開催します。「ゴナ」「ナール」他多数の名作書体を生み出している中村征宏さんと、今話題の筑紫書体の作者、藤田重信さんをお招きして、…

名古屋でフォントに関するセミナーが少ない現状を変えたいという想いで活動されているという名古屋意匠勉強会ナルホ堂さんとフォントプラスさんにより開催されたこちらのイベント。

三重県出身の中村征宏さんと福岡県生まれの藤田重信さんという二人のフォントデザイナー、そしてフォントプラスの関口浩之さんによるWebフォントの紹介という贅沢な時間でした。

 

中村さんが生んだ「ゴナ」や「ナール」は昭和の末期から平成にかけて、雑誌や道路標識などに数多く使われ、日本に住むほとんどすべての人が目にしたことがあるはずです。

今みてもかわいい丸ゴシック体の名作・ナールの原字、すべて手描きである証拠に、ところどころ修正の後が見られます。

 

そして藤田さんは「凪の渡し場」でも幾度となく紹介していますが、この平成の終わり、書店に並ぶ新刊書の表紙や本文でひときわ目を惹く、個性的な筑紫書体シリーズの生みの親です。

 

とくに筑紫書体が他のフォントと大きく違うポイントとして、文字が「台形」をしているという話が印象的でした。

たとえば以前の記事で紹介した、筑紫アンティークL明朝で組んだ元号をもう一度見てみましょう。

 

日本語に使われる漢字やひらがな・カタカナなどは、正方形の枠の中にデザインされることが基本になっています。

けれど、筑紫書体の「平成」「令和」をよく見るとたしかに、正方形というよりは台形になっています。

これがデジタルのフォントなのになんとなく手書きのような表情を感じる理由でしょうか。

台形の文字が続く文章は、なんとなくでこぼこして、リズムが生まれます。

そして筑紫A丸ゴシックはまたうってかわって、明るくてかわいい。

セミナーでは制作中の筑紫書体も発表され、筑紫書体シリーズのもつ幅広い表現力をいまさらながらに思い知らされます。

 

長く、そして多くの人に愛されるフォントがどのような想いで作られているか、お二人の話から伝わってくるセミナーでした。

線路の上のブックマーケット – しましま本店

2019(平成31)年4月14日、信州松本を走るアルピコ交通上高地線にて、「しましま本店」というイベントが開催されました。

特別運行 BOOK×TRAIN 走る!しましま本店

『しましま本店-本と電車と春の筑摩野-』 特別運行『BOOK×TRAIN 走る!しましま本店』運行のご案内 【おしらせ】 3月20日を持ちまして、受付を締め切らせていただきました。沢山のお申し込みをいただきありがとうございます。

松本駅と上高地への玄関口である新島々駅の間に、二両編成の特別列車が運行され、朝の往路と夕方の復路は貸し切りの「走る本屋さん」が出現、さらに新島々駅に停車中は車内が開放されてのブックマーケット会場となります。

もと京王電鉄井の頭線を走っていた3000形車両の中に所狭しと本が並べられ、出店者さんや来場客(来乗客?)が行ったり来たりする、ふしぎな空間が広がっていました。

気になった本を手にとって、疲れたら座席に座りつつ読ませていただいたり出店者さんと交流できるのは嬉しいですね。

「books電線の鳥」さんのブースでは、前日に行われた「書物と活字」をテーマにする松本タイポグラフィセミナーとも連携し、講師の鈴木一誌さんの著書なども販売されていました。

車窓には、まだうっすら冬化粧の日本アルプスらしい風景が広がります。

車内に目を転じると、「井上友の会」のかわいい広告が吊革に。井上は松本市にある老舗百貨店だそうで、本以外も見どころが盛りだくさんです。

こちらは青地に新ゴがまぶしい駅名標です。駅ナンバリングがあるので新しい。AKはアルピコ交通上高地線の略称でしょうか。

アルピコ交通は旧社名・松本電気鉄道ですが、さらに昔、大正時代には筑摩鉄道といったそうです。筑摩書房とは関係ないと思いますが、ちくま文庫好きとしてはなんだか親近感がわきます。

やけに「新」がつく駅名の多い上高地線、「しんしましま」という駅名もかわいいですよね。

もともと隣にあった島々駅が終点だったのですが、現在は廃駅となっています。

島々駅舎は新島々駅の前に移築されて旧島々駅となっています。なんだかよくわからなくなってきました…。

そんな旧島々駅保存協会の方が制作された「しましまっぷ」を片手に、島々駅周辺を散策します。ロゴがちゃんと●と○のしましま模様なのもかわいいです。

ちなみに、一日フリー乗車券にあしらわれているのは公式イメージキャラクターの渕東(えんどう)なぎさちゃん。

名前の由来になった「渕東駅」「渚駅」の駅名標はフォントも違う特別仕様になっているので、ぜひ実物を見に訪れてみてください。

アルピコ交通上高地線イメージキャラクターの渕東なぎさですっ

アルピコ交通上高地線イメージキャラクター「渕東なぎさ」のご紹介

廃線跡が松林沿いに伸びています。

ゲストハウスしましま、山小屋風のかわいい看板です。

実際の桜は五分〜七分咲きといったところでしたが、こちらの「信濃路」には桜🌸が咲いていました。

 

良い本と、文字に出会える「しましま本店」でした。

 

 

毎日を生きるそれぞれの人に – 月とコーヒー

月とコーヒー。

それは、対照的な存在である「太陽とパン」のように、誰にとっても生きていくために必要なものではないかもしれません。

それでも、誰かにとっては、もしこの世から消えてしまったら、生きる意味を失ってしまうくらい大切なものだったりします。

そうした〈とるにたらないもの、忘れられたもの、世の中の隅の方にいる人たちの話〉を書きたい——それが作家・吉田篤弘さんの言葉です。

 

本書ではそれぞれ原稿用紙にして10枚ほどという短さで、月とコーヒー、そして食をテーマに、この世のどこかに生きるさまざまな人々の毎日を描いていきます。

個人的にもコーヒーが好きなせいか、吉田さんの文章はとても波長が合うようにここちよく、淹れたてのコーヒーのように、深く心にしみわたります。

 

もちろん「月とコーヒー」にあたる大切なものは、人それぞれ違うでしょう。

ある人はミルクだったり。

またある人はビールだったりするかもしれません。

でも、それぞれが、その違いをわかりあって、互いの好きなものをそのままに受けとめることさえできたら、世界はもう少し生きづらさが減るような気がします。

それは思わず月に祈るようなささやかな願いでしょうけれど、綺麗な月が出ている夜は、あんがい、そんなふうにどこかの誰かと思い合えるかもしれません。

 

それはそれとして、去る平成31年3月22日(金)、東京の代官山蔦屋書店では、本書の発売を記念して、クラフト・エヴィング商會の吉田篤弘さんと吉田浩美さんによるトークイベントが開催されました。

作品執筆の裏側を覗くようなエピソードもさることながら、お二人の仲の良さそうな雰囲気が、作品世界と地続きのように思えて素敵な一夜でした。

装幀としてのクラフト・エヴィング商會のお仕事では、この本のサイズ感についてのお話が印象に残っています。

ハードカバーなのに文庫判よりひとまわり大きいくらい(およそ166x118mm)、ちょっとかわいくて手になじむサイズは、熱いコーヒーが冷めないコメダのコーヒーカップのおもてなしに通じるものがあります。

コーヒーカップ&ソーサー – コメダ珈琲店 公式オンラインショップ

コメダ珈琲店で使用されている、オリジナルコーヒーカップやソーサー、ジョッキなどが購入できる、コメダ珈琲店公式オンラインショップです。

 

今後もこのサイズで吉田さんの本が出版される予定だそうで、またこの世界にめぐり逢う日を楽しみのひとつに、毎日を生きていきたいなと思わせてくれます。