年二回刊、文字をテーマにした雑誌「Typography」。
2017年5月に発売された11号の特集は「欧文書体を使いこなす」でした。
欧文書体は、アメリカ・ヨーロッパをはじめ世界各国で使われる、ラテン文字(アルファベット)を中心としたフォント。
いわゆる漢字文化圏とは成り立ちから異なるため、ひとくちに同じ文字といってもさまざまな違いがあります。
そのひとつが、「プロポーショナル」という考え方です。
日本語フォントは、基本的に一文字ごとに同じ幅と高さをもっています(等幅といいます)。
だから、同じ文字数であればどんな文章でも、幅がきれいに揃います。
では、同じことを欧文フォントで行うとどうなるでしょう。
Menlo というのは、プログラミングで使われることを想定して、macOSに搭載されている等幅フォント。
ソースコードなどのプログラムを書く際には、一文字ごとの幅が揃っているほうが都合がいいのですが、文章としてみると読みにくい。
r の間が不自然に空いていたり、LとMの間が詰まっていたりして、むしろ不揃いに見えてしまいます。
そこで、欧文フォントでは、アルファベットごとに文字の感覚が違うプロポーショナルフォントが基本になっています。
このように、r や I のように細長い文字は幅を短く、M は逆に幅を長くして、プロポーション良く文章を組むことができます。
さらに、f と i など特定の文字がくっつく「合字(リガチャ)」のように、文字を美しく見せるため、さまざまな工夫が凝らされています。
特集の中に、歴史ある欧文フォントメーカー・Monotype社の小林章さんのインタビュー記事があります。
小林さんが新しく開発した欧文書体「Between」と、Monotypeからはじめてリリースされる日本語書体「たづがね角ゴシック」。
どちらのインタビューからも感じられるのは、文字ひとつひとつの個性を大事にしているということ。
Between では、3種類のフォントそれぞれで、文字の形や幅が異なりつつ、リズム感を生み出している。
たづがね角ゴシックは、現代日本の時代背景をふまえて、アルファベット・ひらがな・かたかな・漢字が自由に組み合わさっても読みやすいことを目指している。
しかも、文字の太さ(ウェイト)も10種類用意されているので、ほかのフォントとも組み合わせて使うこともできます。
今回の付録には、それ以外にもさまざまなフォントのマッチング例を紹介する「Fontworks × Monotype 和文・欧文フォント組み合わせガイドブック」があり、こちらもあわせて楽しめます。
アルファベットは、日本語よりも文字の数が少ないとはいえ、けっして単純ではありません。
人それぞれに、違う個性があるように。
けれど、チームとして力を合わせ、ひとつの目的に向かっていけるように。
それぞれの文字のもつ個性を組み合わせることで、より幅広い魅力を生み出すことができます。