文字と路上観察が出逢う夜 – よきかな商店街

以前もブログで紹介した、まちあるきを文字で楽しむ本「まちの文字図鑑 よきかなひらがな」。

その出版を記念し、去る2016年8月27日、「よきかな商店街」というトークイベントが開催されました。
よきかな商店街
著者の松村大輔さんに加え、ゲストは八画文化会館の石川春菜編集長・酒井竜次さん。

八画文化会館とは、「終末観光」と銘打ち、日本各地の変わったスポットを紹介し続ける雑誌出版社。

八画文化会館 : 廃墟や珍スポットなど、日本各地の奇妙なモノを発見するインディーズ出版社、八画出版部

名古屋を代表する本屋さん、ちくさ正文館で創刊号を手にとって以来、毎号の愛読者なのです。

これはぜひとも行かなければ…! ということで、イベントに参加してきました。

 

会場は京都の本屋・誠光社さん。

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夜の19時、なんとも風情のある路地の一角で、イベントはスタート。

対談形式で、それぞれが撮られた商店街などの文字(ロゴタイプ)を鑑賞するというスタイルです。

 

さっそく松村さんから、フォントとロゴの違いについて解説される一幕も。

 

そのお店のためだけに、その看板で使われる文字だけをデザインしたのがロゴ。だから、基本は一点もの。

フォントは、いろいろな用途に使えるように一通りの文字を揃えているので、同じフォントで作られた看板をあちこちで見ることができます。

 

このブログも成り行き上、まちの文字に関する記事カテゴリを「フォント」にしていますが、そこはご容赦ください(笑)

 

何故か味のある文字が多いクリーニング美容室

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そのお店の業態や店名にぴったりのデザインをしたのが、どんぴしゃタイポ

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商店街の入口にある、栄光のアーチ

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地元・名古屋では定番ネタ、「車道」と書いて「くるまみち」と読む地名。

 

さらに、バーやスナックの集合看板・スナック団体戦など、まちあるきをより楽しめる概念の数々がつぎつぎと紹介されていきます。

少し時間をオーバーして、惜しむらくもイベントは終了。

 

しかし、本当のお楽しみはここから!

イベント終了後、著者の松村さんや八画文化会館のお二人にご挨拶。

本に「よきかなひらがな」のスタンプも押させていただきました。

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お話をしていると、なんとその場にいた参加者の方とともに、二次会(懇親会?)にお誘いいただけることに。

 

参加者にも、Twitterやサイトなどで、いろんな活動をされている方が多くいて、自然とお互いに自分の撮った写真を見せ合う流れに。

路上観察学、文字、フォントなど、少しずつ視点が違いつつ、同じものを見て、楽しむことができる。

そんな方々が「よきかな商店街」というイベントをきっかけとして一堂に会する。

きっと一生思い出に残る、刺激的な一夜でした。

著者の方々、出版の大福書林さん、そして参加者のみなさん、ありがとうございました!

 

と、ここでお礼がわりに、わたしの視点で、京都で見つけた文字を載せようかと思ったのですが、あまりに長くなりすぎるので別記事にします(^^;

かわりに、その場でお見せできなかった(京都以外で撮った)お気に入りの写真を。

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丸ゴシックで組まれた「カナモノ」と、「の」を丸く囲む角ゴシックの「カ」。

まさに、イイカナとよきかなの夢のコラボレーション。

 

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ロマンチック美容室、そして「シグ」のリガチャ(合字)。

 

 

岐阜市街で、時の流れを感じるまちあるき

まちには、人それぞれに抱く想い、イメージというものがあると思います。

 

わたしにとって、岐阜というまちは、ちょっと他のまちとは違う時間の流れかたをしているような、ふしぎな場所。

 

それは、こどものころ、祖父母の家が岐阜にあって、よく訪れていたという思い出のせいかもしれません。

かつて昭和の時代に栄えた柳ヶ瀬商店街と、路面電車の記憶。

いま訪れると、まちのあちこちで、別の形でにぎわいを取り戻していることを感じます。

 

今回はJR岐阜駅からスタート。中央改札の他に、アクティブGという商業施設への直通改札口ができていました。広島でいうとアッセ改札口のようなものですね。

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岐阜県のお土産を買えたり、各種ワークショップなども開催されている複合施設。

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となりのビル、岐阜シティ・タワー43へ。43階に無料展望室があると知って寄ってみました。

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案内表示が毛筆体というのは、なかなかめずらしいのでは。

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JR東海道本線の下をくぐる名鉄線。スケールの違いに驚かされます。

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柳ヶ瀬、高島屋方面を仰ぎ見て。

 

エレベータを降りて、ここからは岐阜市街をまちあるき。

お店も建物も、素敵な場所がたくさんあるのですが、今回は主に文字に絞った見どころをご紹介。しかも、柳ヶ瀬商店街にはたどり着きません(^^; またいずれ。

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いきなりの You are welcome。ど、どういたしまして…。

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「マ」のカーブがすばらしい。

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つづく4。

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FASHION CREATE □□□□。どんな店名だったのか、とても気になります…!

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Coffee リー…? これも読めない。

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COFFEE TALK。「トーク」の置き方といい色使いといい、とても素敵なのですが残念ながら営業していません。
こんなお店で、あなたと珈琲トークしてみたい。

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なんてことを考えて歩いていたら、こんな立て看板を見つけました。

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空きビル再生プロジェクトで生まれた、カンダマチノート。カフェは週末だけオープンとのこと。

クリエーター向けにスペースの貸し出し、ワークショップの開催などもできるようです。

【岐阜】カンダマチノートOPEN!

ちなみにリンク先、さかだちブックスさんのホームページでは、ほかにも素敵な岐阜がたくさん紹介されています。

 

今と昔がふしぎに同居する、岐阜のまちあるきでした。

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アクティブG、夜になったら光るんだ…!


 

愛知の現在・過去・未来を感じる – あいちトリエンナーレ2016 栄会場

今回は、あいちトリエンナーレ2016の名古屋地区、普通チケットの「栄会場」で入場できる展示を紹介します。

今も昔も名古屋最大の繁華街に位置するとあって、都市としてのまちの魅力をもっとも感じられるものになっています。

 

今日は地下鉄桜通線、久屋大通駅を使って訪れてみました。4A出口、もしくは4出口から桜通を西に向かいます。

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あとで貼ったような地下鉄マーク、「久屋大通駅」、「Central Park」が気になる…。

 

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花柄プリウスが見えてきたら、ひとつめの会場・損保ジャパン日本興亜名古屋ビル(N-54)に到着です。

こちらのラッピングカーもデザインした大巻伸嗣さんの作品。

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15分入れ替え制となっていて、中に入ると、色彩豊かな外とはうって変わって真っ暗な空間。

都会の中で、15分間、ずっと闇を感じるという異質の経験ができます。
もし空いていれば、奥の方に入って鑑賞するのが個人的にはおすすめです。

また、ビルの正面玄関にまわると、並行企画事業の「人類と人形の旅」も観覧できます。

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期間中、いろいろな人形劇が行われるようなので、こちらも注目。

人類と人形の旅 ~human with puppet~ – 特定非営利活動法人 愛知人形劇センター presents

 

さて、外に出て南に向かいます。ふたつめの会場、旧明治屋栄ビルへ。

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1F、ケルスティン・ブレチュさんの作品(N-48)。

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ステンドグラスをのぞき込むと、向かいの丸栄のモザイク壁画が。

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床の矢印。

トリエンナーレの矢印ではなく、明治屋の店舗として使われていたころの案内が残されているのでしょうか。
まちと建物の記憶が一体となった印象的な会場です。

2F/3Fはいったん外に出て、別の入口から階段を上ります。

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あっ、ポップ体がっ。

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2F、端聡さんの作品(N-49)。炎のように見えるもの、それは実は…。

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3F、寺田就子さんの作品(N-52)。元バレエ教室だという会場が、いまは時を止めて、静かに来場者を待ち受けます。

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そして、かつて丸善名古屋店のあった駐車場の前を通り、中央広小路ビルへ。

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べら珈琲、コメダ珈琲のあるビルの2Fに展示はあります。

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山田亘さんの大愛知なるへそ新聞社(N-53)。
まちの記憶、ひとの記憶を新聞として形にする、その作業すべてが作品になっています。

そう、なるへそ新聞は読むだけでは終わらない、参加型のアートプロジェクト。

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ということで、わたしも準備期間中から記者として参加しています!

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記事を文字起こししたり…。

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刷り上がった新聞をのりづけしたり…。

もちろんいまからでも、だれでも参加可能。

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水曜・日曜の編集日であれば、その場で文字を書いたり、イラストを描いたりと、新聞づくりに参加することができます。

あるいは、取材を受けて、愛知にまつわるあなたの記憶を、記事となって紙面に登場させることも。

取材を受けていただける方、募集中です!

 

また、この会場は、普通チケットでも後日再入場することができます。

期間中に新聞は何号も発行されるので、少しずつまちが変わっていく様子を、ぜひ何度も訪れて体験してみてください。

日本の街中をよみなおす – まちの文字図鑑 よきかな ひらがな

以前、街中の文字観察を楽しむ一冊として、「タイポさんぽ」という本をご紹介しました。

その後も「タイポさんぽ 台湾編」という続編が出版され、日本の漢字とはまた違う自由度の高いデザインを楽しめるものになっています。



といいつつ今回は、日本ならではの文字・ひらがなに焦点を当てた本をご紹介。


著者の松村大輔さんはブックデザイナーとしても活躍され、「タイポさんぽ」でもデザインを担当しています。

今回は逆に「タイポさんぽ」の著者、藤本健太郎さんが装丁を担当。なんだか、こういう関係性はいいですね(^^)

 

本のコンセプトはというと、街中にある看板などの文字から、ひらがな一字だけを切り出して、五十音図鑑をつくるというもの。

 

本来は店名や注意書き文のために組まれた文字を、あえてバラバラにすることで、見えてくることがあります。

「わかる」は「分ける」という言葉からきているように、分別することは、ものごとをより深く観察するのに大切な手法。

レタリングや文字の書き写しをするのでもないかぎり、ふだん、ひらがなの一字ずつを注意することはないと思います。

じっくり観察してみると、同じ文字でもこんなにデザインの幅が広いものなのか! と驚かされます。

 

これはぜひわたしもやってみよう! と思って撮った写真を見返してみたら、意外にも、ひらがなの写っているものがあまりないことに気づきました。

お店の看板はカタカナの店名ばかり。お店以外だと、ちょっと古い漢字で組まれたものばかり。

たまたま、わたしがそういうものに惹かれるのか、そもそもそういうものなのか。

 

それはともかく、やっと探し出したものをちょっとご紹介。

 

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全体写真はこちら。古い看板だと、経年劣化で筆の運びがレントゲン写真のように見えてくるのがおもしろいですね。
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これは…?

 

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東海圏ではおなじみの、和食チェーン「サガミ」。

小さいころからよく家族で食べに行きましたが、まさか「が」だけひらがなだとは! はじめて気づきました(笑)

 

という感じで「ひらがな」に着目して街中をよみなおすことで、新たな発見も得られます。

 

続編として「イイカナ カタカナ」も刊行予定だとのことなので、こちらも楽しみです!

 

戦後を感じるモダニズム建築 – 香川・高松まちあるき

瀬戸内国際芸術祭の四国側玄関口となる、香川県高松市。県庁所在地として、新しい建物と歴史的な建物が混在した街並みは、歩いていて飽きることがありません。

今回、女木島の案内所でもらった「めぐるーと高松」というパンフレットがとても参考になったので、これを片手にまちあるきを楽しんでみました。

 

スタートはJR四国・高松駅から。外観が顔になっていてかわいいです。

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香川県庁を目指すため、バスターミナルへ。路線が複雑で乗り間違えそうになりますが、運転手の方に行き先を言うと、どのバスに乗ればよいか親切に教えていただけました。

 

こちらが香川県庁舎。

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手前の東館(旧・本館)の竣工は昭和33年。日本の戦後を代表する建築家・丹下健三が設計した、モダニズム建築の傑作と言われます。

奥の現・本館も同じく丹下健三によるもので、こちらは平成12年に竣工。

 

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ちょうど通りがかったバスのラッピング広告がかわいかったので、いっしょに撮影。広告のロゴといい、50年以上の時代のギャップを感じさせず、不思議に調和していますね。

当時の県知事・金子正則の「県民に開かれた空間」にしたいという想いが、実際に訪れるとよくわかります。 モダニズム建築の特徴とされるピロティが、歩道からスムーズにつながって、誰でも入りやすい空間になっています。

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「いま、ここは閉じています」は、新ゴっぽいフォントからして、だいぶ後の時代に作られたと思われます(笑)

 

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ピロティの奥は日本庭園。

 

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一階ロビーも開放されています。中央の猪熊弦一郎による陶板壁画は、瀬戸内国際芸術祭の205番アート作品という扱いにもなっています。

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奥に県庁舎や丹下建築の歴史を紹介した展示も。既決・未決箱が高まる!(^^)

 

さて、県庁から中央公園沿いに丸亀町まで向かうと、素敵な建築がたくさんありました。パンフレットには載っていない、個人的に気になったものもまとめてご紹介。

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上下水道工事業協同組合ビル。明朝体が渋ビルっぽさを増しています。

 

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ロゴがすばらしい、番町書店と美容室トキムネ。トキがムネムネしますね!(笑)

 

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「混在併存」がポリシーの大江宏が設計した、香川県文化会館。

 

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なるほど〜。って、何がなるほどなのか?

 

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向かい合う、香川市庁舎と香川国際交流会館(旧・県立図書館)。

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そのとなりにある、和菓子屋・巴堂さん。ぶどう餅おいしかったです!

 

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百十四銀行本店。緑青のブロンズとガラスがとても美しい。そうと知らなければ、昭和41年の竣工とは思いもよらなかったでしょう。

 

あとは、もはや建築ではないけれど、気になった子たち。

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後から貼られた文字は、たいていウェイトが揃わないので気になります。

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中央公園、パイロンに守られたタヌキの石像。名前はハゲさんだそう(^^;

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地下道には、星座を模した壁画が。

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いい丸ゴシック!

 

今回紹介した市街地以外にも、香川には魅力的な建築がたくさんあります。

直島で開催中の「直島建築+The Naoshima Plan」もおすすめです! 安藤忠雄のANDO MUSEUM、地中美術館とあわせてどうぞ。