世間は狭いが役に立つ

たまたま知り合った人が、別のところで出会った人と意外なつながりをもっていたり。

昔からよく知っている人と共通の友人がいたり。

そんなことがあるたび、世間は狭いと感じます。

 

そうやって知人・友人のつながりをたどっていけば、たった6ステップで、世界中のすべての人が結ばれるといいます。

それが世に言う「6次のつながり」、あるいは「スモールワールド現象」。

 

でも、ちょっと待って。

6次のつながりで、たとえばアメリカ大統領とも、徳川家康ともつながることはできるでしょう。

そうだとしても、そんなに嬉しくない気がします。

それよりも、もっと身近な人との縁がつながるほうが、すくなくともわたしは嬉しい。

 

この違いはなんでしょうか。

 

縁とは、すなわち円。

誰かとのつながりが一方向の矢印ではなく、円環になっているからこそ、嬉しさが生まれる。

 

「情けは人のためならず」ということわざがほんらい意味していたように。

つながりが、輪になって自分のもとにもどってくることで、世界の小ささ、世間の狭さを感じることができるのです。

 

だから誤解を恐れずに言えば、世間は狭いが「役に立つ」。

 

もちろん、それが言いたかっただけではありません(笑)。

テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の最終回で、とりわけ好きなシーンがあります。

それは商店街主催の青空市に、いままですれ違っていた登場人物が集まり、意外な縁がつながっていくところ。

それが、神社という昔からの日本人の縁をむすぶ場所で起こったというのも象徴的に感じます。

 

いまの時代だからこそ、場所も世代も飛び越えて、縁をつなぐことができます。

 

さまざまな大きさの円。

さまざまなかたちの縁。

それらがたがいに重なったり、共鳴しあったりしながら、わたしたちの世界を満たしていきます。

 

 

明朝体とゴシック体のあいだ – アンチック体

日本語フォントの代表といえば、明朝体とゴシック体。

でも実は、そのどちらでもないフォントが、あるジャンルの本では多く使われています。

それが、今回紹介するアンチック体

アンチックセザンヌ M|書体見本|FONTWORKS | フォントワークス

フォントワークスは筑紫書体やロダンなど日本語書体・フォントの販売、OEM書体・フォントの開発、LETSを提供しています。

 

いっけん明朝体のように見えますが、縦棒と横棒の太さが同じゴシック体に近く、筆の強弱がおさえられています。

アンチックはAntique、つまりアンティークと同じ語源。

その名から連想するように、昔の金属活字時代、ゴシック体の漢字と組み合わせて使うためにデザインされた書体だといいます。

 

いまでもアンチック体が使われているのは、辞書の見出しや、マンガのフキダシ(登場人物のセリフ)。

マンガの本編を紹介することができないので、表紙にフキダシのある作品を探してみました。

 

 

ゆるい読書家ネタが楽しい「バーナード嬢曰く」。残念ながら(?)表紙のひらがなは普通の明朝体に見えます。

単に本編のコマを拡大したわけではなく、あくまで表紙として描き下ろされたものだからでしょうか。

 

 

もちろん、フキダシにはアンチック体しか使われないわけではありません。

キャラクターの感情やシーンに応じて、さまざまなフォントが使いわけられています。

ときには、そうやってフキダシのフォントに注目してマンガを読んでみるのも面白いです。

 

そして、その感情が引き立つのも、普通のフキダシにアンチック体が使われているからこそ。

明朝体とゴシック体、そして漫画家と読者をつなぐ、欠かせない存在です。

 

実際に、マンガなどでフリーフォントのアンチック体を使いたいときは、フロップデザインさんのブログを参考にしてみてください。

漫画・同人誌に役立つフリーフォントガイド〜アンチック体・見出し・口調〜コミック描くのに必要なフォントは何?

漫画の吹き出しで使う文字はアンチック体が違和感なくて望ましいです。「アンチック体」とは、ゴシック体の漢字にあわせた明朝体っぽい「かな」が組み合わされた書体。通称「アンチゴチ」として、マンガの吹き出しや、昔の絵本などに多く用いられています。 …

自分の資質を知り、強みを活かす – ストレングスファインダー

このブログ「凪の渡し場」では、人間を内向型と外向型に分けたとき、とくに内向型人間ならではの特質を、強みへと活かす方法を紹介しています。

大海へと漕ぎ出す羅針盤を手に入れよう – 内向型人間のための人生戦略大全

 

でも、ざっくりと内向型人間といっても、その特質、強みはひとりひとり違います。

調べてみると、もっと細かく、自分だけの資質を知る方法がいくつも見つかります。

その中のひとつが、人間の強み(才能)を34に分類した、ストレングスファインダー

 

対象書籍を購入すると、診断テストへのアクセスコードが手に入り、自分の五つの資質を明らかにすることができます。

比較的安価で診断できることもあってか、多くの方がブログでストレングスファインダーの結果を公開されています。

そのメリットは、自分の資質を知るだけでなく、他人の資質とも簡単に比較できること。

なんとなく自分と似ていると感じる人の資質が、自分とどれくらい一致しているのか知りたくなって、今回はこれを試してみました。

 

そして、わたしの結果がこちら。(本来は優先度に従って並んでいますが、あえて50音順にしています。カッコ内は意訳)

  • 学習欲(学ぶの大好き)
  • 個別化(ひとりひとりのユニークな個性に興味がある)
  • 慎重さ(用心深く油断しない)
  • 内省(考えること大好き)
  • 分析思考(データ大好き)

われながら、そしておそらく、わたしのことをよく知っている人なら、納得の結果となっています。

慎重さ」には、こんなことも書かれています。

あなたは自分のことをあまり話しません。

まさにこの資質ゆえに、あまり解説はしたくありません(笑)。

 

また、追加料金を払うことで、6位以下の資質も知ることができるようです。

ただ、わたしはいまのところ、それはやっていません。

それは「慎重さ」のためだけではありません。

ストレングスファインダーの設問や、自分と共通する資質を持った人が他にもっている資質から共感するものを分析することで、ある程度推測できるのでは? と考えたから。

これこそ「個別化」と「分析思考」のたまものと言えるのではないでしょうか。

 

たとえば、いろいろなものに好奇心をおぼえるから「収集心」は次点に上がりそう。

いろいろなものの結びつきを探したくなるので「着想」もありそうです。

あとは、知っている人とより深い関係を結びたくなる「親密性」。

逆に、「コミュニケーション」「自己確信」「司令性」は低そう。

 

このようなストレングスファインダーの結果を、リーダーシップやチームに活かすという考え方があります。

ストレングスファインダーをチームで活かす(実例ケーススタディ付き) | 今、夢に生きる

今回は、強み発見テスト・ストレングスファインダーをチームで生かす方法について。 ストレングスファインダーは、アメリカのギャラップ社が運営している「強み診断ウェブテスト」です。 テストを受けると、34個の資質のうち、自分が持っている上位5つの資質を教えてくれます。 個人でやるのも面白いんですが、チームで補完関係を考えるのに使うと、もっと面白いんです。 私を含めて3人で、 広島ぶろがー会 …

こちらでは、ストレングスファインダーの資質を実行力、影響力、人間関係構築力、戦略的思考力の四つに分けて、それらをカバーするチームが理想としています。

もういちどわたしの資質を見ると、明らかに〈戦略的思考力〉に偏っています。〈影響力〉はひとつもありません(笑)

  • 学習欲〈戦略的思考力
  • 個別化〈人間関係構築力
  • 慎重さ〈実行力
  • 内省〈戦略的思考力
  • 分析思考〈戦略的思考力

収集心、着想も〈戦略的思考力〉に分類されます。親密性は〈人間関係構築力〉。

どうも、いわゆる内向型人間の強みは〈戦略的思考力〉に、外向型人間の強みは〈影響力〉に強く現れるようです。

なぜか〈実行力〉に分類されている慎重さも、内向型人間の典型的な強みですが、これは活かし方次第、と解釈しています。

わたしはいままで、慎重さと内省の結びつきが強すぎて、ほかの強みを活かせなかったことも多いので、慎重になりすぎないことも大事。

「やらない理由」を考えすぎてしまう人に贈る言葉

影響力はどうしようもないので、影響力の資質を持った誰かの力を借りることも重要かな、と思います。

 

個別化」の資質を別の言葉であらわすと、「みんなちがって、みんないい」。

 

自分だけの強みを見つけること。

自分自身の、そして誰かの強みを組み合わせること。

それが、人生をもっと楽しく豊かにします。

 

 

好きなことの語りかた – ヒト、モノ、バのどれにフォーカスするか

このブログ「凪の渡し場」では、日常を新たな視点で見るために、わたしが気になったこと、好きなことについて語っています。

 

好きなことを好きだと言えることはとても大切で、それをできるだけ多くの人に届く言葉で語ることも、同じくらい大事だと思っています。

 

では、どういう切り口で、好きなことを語ればいいのか。

今回は、ブログの記事を例に、好きなことの語りかたを三つに分けて語ってみます。

 

ヒト(人)

ひとつめは、ヒトにフォーカスして語る方法。

ある本や作品に触れたとき、その作り手自体の視点を強く感じることがあります。

そんな場合は、その作品の紹介というよりは、その人を友人に紹介する気持ちになって文章を書いています。

 

水のような、空気のようなフォントを世の中に生み出す人がいる – 文字を作る仕事 では、書体設計士の鳥海修さん。

原平という人がいた! – 赤瀬川原平の全宇宙 など多くの記事では、赤瀬川原平さん。

文章であらわす、わたしの姿 – 北村薫の創作表現講義 では、作家の北村薫さん。

 

ただ、この方法、実はわたしはまだ得意ではありません。

大愛知なるへそ新聞に参加して記事を書いたときにも、出来事を通してその人の個性を語ることの難しさを痛感しました。

その奥にあるのは、表面的なイメージで人をとらえたくないし、とらえられたくないという気持ち。

記事を見返すと、まだまだ表面的なイメージにとらわれているところもありそうなので、もっと掘り下げて、人のことを知りたい、語りたいと思います。

 

モノ(物)

ふたつめは、モノにフォーカスして語る方法。

文字通り、一般的なものがたりの手法でもあります。

迷わず使いわけたい! 筑紫A丸ゴシック・筑紫B丸ゴシックもう一つの丸明朝体、解ミンなど、フォントの紹介記事もこのタイプ。

図解で知る、深く味わう – 名古屋東海図鑑で書いたとおり、「図鑑」が好きというのも、この話に通じるところがあります。

ものがたりというと文系的ですが、理系的な視点も説得力を持たせるためには重要。

あるモノの特徴を数字や図解で示すことで、どんな特徴があるのか、何がすぐれているのかを客観的に語ることができます。

 

 

バ(場)

さいごに、ヒトやモノよりもっと広い場、つまり土地や集団といった面にフォーカスを当てる方法があります。

名古屋の本屋の中心に – ちくさ正文館と、喫茶モノコト〜空き地〜は、その典型的な例。

トリエンナーレの裏側で – 岡崎タイポさんぽなど、まちあるきの記事も、そこに行ったことがない人にもその土地らしさを感じてもらうことを目標にしています。

広島偏愛シリーズも、個々の記事ではモノにフォーカスしながら、それを生み出した広島という土地に対する興味から書き続けています。

 

 

個別にものを見ることも、場の全体を見渡すことも、どちらの視点も大事にしたい。

「凪の渡し場」が渡し舟ではなく渡し場なのも、そんな意味を込めていたりします。

 

ブログだけでなく、好きなことを語るときに、どうやって想いを伝えたらいいのか、その語りかたの参考になれば幸いです。

日本の伝統をロゴで味わう – Typography 10

年二回刊行される、文字をテーマにした雑誌「Typography」。

10冊目となる2016年11月号の特集は「日本語のロゴとタイトル」でした。

 

日本最初に紹介されているのは、室町時代の京都から続く老舗の和菓子屋、とらや。

とらやの和菓子|株式会社 虎屋

室町時代後期、京都で創業した和菓子屋「とらや」のオンラインショップです。「とらや」を代表する羊羹や季節の生菓子の情報、和菓子にまつわる歴史・文化、店舗の情報、イベントのお知らせなどを随時更新しております。

和菓子と言えば、単なる食べ物としてだけでなく、色、形、パッケージといったトータルデザインで手に取る人を楽しませてくれる、まさに小宇宙。

そのロゴデザインに着目して味わうことができる、今回の特集。

小形羊羹 5本入 | 箱入・詰合せ | とらやの和菓子|株式会社 虎屋

室町時代後期、京都で創業した和菓子屋「とらや」のオンラインショップです。「とらや」を代表する羊羹や季節の生菓子の情報、和菓子にまつわる歴史・文化、店舗の情報、イベントのお知らせなどを随時更新しております。

小形羊羹「夜の梅」「おもかげ」「新緑」「はちみつ」「紅茶」…筆文字がよく似合う、このネーミングだけで心が躍ります。

和菓子の名前のことを菓銘というのだということを、はじめて知りました。

 

小形羊羹 | 歴史 | とらやの和菓子|株式会社 虎屋

室町時代後期、京都で創業した和菓子屋「とらや」のオンラインショップです。「とらや」を代表する羊羹や季節の生菓子の情報、和菓子にまつわる歴史・文化、店舗の情報、イベントのお知らせなどを随時更新しております。

とらやの公式ページを見ていたら、昔のパッケージも見つけました。ウエストがスリムな「羊」、このロゴも素敵ですね。

 

その他にも、本誌では様々なデザイナーの手がけたロゴが紹介されています。

美術館の特別展ポスターなど、なかなかデザイナーの名前が出ることは少ないので、作り手ごとの作品集として見られるのは嬉しいですね。

とくに気になったのが、野村デザイン制作室の野村勝久さん。

野村デザイン制作室

山口県にデザイン事務所を構えています。広告や美術館のグラフィックデザインなどをしています。

作品の一部はこちら。

特別展 超絶技巧!明治工芸の粋 ─これぞ、明治のクールジャパン!! – 山口県立美術館

特別展 超絶技巧!明治工芸の粋 ─これぞ、明治のクールジャパン!! 2015年2月21日(土)〜4月12日(日) 山口県立美術館にて開催。

コレクション特別企画 雪舟と雲谷派 テーマでくらべる – 山口県立美術館

コレクション特別企画 雪舟と雲谷派 テーマでくらべる 2014年10月30日(木)~2014年11月30日(日) 山口県立美術館にて開催。

「ロイヤル・アカデミー展 イギリス美術の華麗なる150年」|静岡市美術館

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明治・大正期のロゴの雰囲気を感じさせつつ、現代的なフォントを組み合わせても違和感がありません。

山口県で活動されていて、山口県立美術館や広島市現代美術館のポスターやカタログも多数制作されているそう。

思わぬところで広島偏愛シリーズとのつながりを感じて、勝手に嬉しくなりました(笑)。

ライフ=ワーク – 広島市現代美術館

「ライフ=ワーク」展では、広島の被爆者たちがその体験をもとに描いた「原爆の絵」(広島平和記念資料館蔵)を出発点に、自身の体験、生活、人生が色濃く反映する13作家の表現をあわせて紹介します。